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少子化問題、女性問題を語る東大女性教授(白波瀬佐和子氏、本田由紀氏)のレベルへの疑問−男女雇用機会均等法以降未婚が増加−

 読売新聞は11月28日、29日と相次いで、選挙に絡んで二人の
東大の女性教授の意見を報じていました。私はこの二人の意見を見て、日本一と評される東京大学の女性教授のレベルについて疑問を感じざるを得ませんでした。

 記事はその体裁から見て、インタビューを文書化したものとみられますので、記者の聞き方、文書化の優劣の問題もあろうかと思いますが、文書にしたものは本人も確認しているはずですので、すべて本人の問題と考えて以下のように考えました。

 お二人に共通する点として、
 前提となる現状認識に関して、根拠の提示・例示がほとんど無いので、根拠があるのか単なる本人の思い込みなのか、社会の実態を正確に把握しているのかが不明。従って説得力に欠ける。

 そして、改善すべきだと言うだけで、どうやって、何を改善すべきかと言う具体的な提案がない。従って、有益性に欠ける。

 多岐にわたる総花的な意見表明で、結局何を言いたいのかがよく分からない。

 たまたま、東大女性教授の記事が二日連続したので、興味を引きましたが、日頃レベルに疑問を持つのは東大の女性教授に限りません。念のため。以下具体的に疑問を述べます。

茶色の字は記事  黒字は私(安藤)の意見
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[視座 14衆院選]<5>人口減対策 子は財産 社会で共有…白波瀬佐和子 東大教授
2014年11月28日3時0分 読売新聞




しらはせさわこ。1958年生まれ。専門は人口社会学。筑波大助教授などを経て2010年から現職。
日本創成会議・人口減少問題検討分科会の委員


 
人口減により896自治体の存立が難しくなる可能性があると警告した民間研究組織「日本創成会議」(座長・増田寛也元総務相)の議論には、私も参加した。会議がまとめた報告は、現状のままでは、どのような現実が待っているかを示した将来の投影だ。今を変えれば、将来も変わる。だから将来を変えるのは、ほかでもない自治体を担うあなたたち自身だというメッセージに大きな意味がある。

 
地方の問題は、少子化問題・日本の人口減少問題とは全く別の問題ではないでしょうか。産業構造の変化に伴って、人口の都市集中・さらに大都市集中は少子化問題が表面化する以前から進行していたと思います。
 日本が、農業国から工業国、更に情報・サービス産業中心へと変化するに従い、
人口の都市集中は避けられなかったと思います。例え農村の人口が減少して、一部の集落が消滅の危機に直面したとしても、住民が移住して豊かな生活が出来、総人口が維持できれば国家として基本的に問題は無いと思います。
 日本以外の国でも人口の都市集中と言う事情は大体同様で、問題は地方の小規模集落の存亡ではなく、日本国全体の人口減少なのです。
 今になって
急に自治体消滅云々と言い出すのは、少子化対策の破綻から目を逸らそうとする悪質な話のすり替えだと思います。

 
日本の少子化の要因は、女性について言えば、子どもを産むか仕事を続けるかという二者択一を迫られてきたことだ。

 それではかつて、日本が少子化ではなかった時代はどうだったでしょうか。端的な言い方をすれば、少子化が問題になる少し
前の時代には、「仕事を続ける(子供を産まない)」という選択肢は無かったと言えると思います。その時代は女性は皆、当然のように結婚退職して、「子供を産む(仕事を続けない)という“選択”」をしていた時代です。その時代には「少子化問題」は有りませんでした。

 しかるにその後、
「仕事を続ける」という選択肢が出来たために、結婚しない人が増えたと言えるのではないでしょうか。そうであれば少子化の原因は、女性に「仕事を続ける」という選択肢が出来たためと言うことになるのではないでしょうか。
 新しい選択肢が出来たこと自体の当否は別にして考えれば、そう言う事になると思います。

 そして現在少子化対策として実行されている
公的子育て支援の諸施策と、反対に配偶者控除見直し議論に見られる専業主婦(準専業主婦を含む)迫害は、明らかに「仕事を続ける」という選択肢を推奨(半ば強制)し、「子供を産む(仕事を続けない)」という選択肢を抑制する結果になっています。

 従って、少子化問題を考えるに当たっては、「仕事を続ける」という選択肢ができたことの当否、そして、国家がそう言う選択肢を推奨(半ば強制)する社会に問題が無いかを考える必要があると思います。

 教授の言うように女性が二者択一を迫られているとすれば、国家が「仕事を続ける」という選択肢を強く推奨する社会は、女性が「子供を産む(仕事を続けない)」と言う選択をすることを困難にし、少子化を促進する社会に他ならないと言えると思います。

 内閣府の「女性の活躍推進に関する世論調査」では、
毎年多数の人が「夫は外で働き,妻は家庭を守るべきである」と言う考え方を支持しています。この質問は、「女性を家庭に閉じ込める」と言う印象を与える悪意を含んだ質問ですが、質問の表現を「『女性は結婚、出産後もフルタイムで働くべきである』と言う考え方について」として、賛否を問う内容に変更したら、「賛成(仕事を続ける)」を選択する人はもっと減るでしょう。

 女性の高学歴化が進み、専門職につく可能性も高くなったが、近くに親が住んでいるなど特別な支援がないと、子育てをしながら働き続けるのは難しい。つまりは、女性の潜在能力を十分に活用できていなかったわけで、そこに目をつけた安倍政権の女性登用を促進する成長戦略は巧妙だった。

 女性の高学歴化と言うよりも、男女を問わず高学歴化したと言うべきでしょう。専門職に就く可能性が高くなったのは否定できませんが、
全体から見れば少数にとどまります。少数の例だけ取り上げて、あたかもそれが一般的であるかのごとき議論は的を射た議論とは言えません。教授の議論は、すべての女性に「潜在能力」が有り、かつ「働き続けることを望んでいる」かのようですが、それは現実とはかけ離れています。自分の周辺だけ見てものを言ってはいけません。

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「夫は外で働き,妻は家庭を守るべきである」という考え方に対する意識
平成26年度 女性の活躍推進に関する世論調査  内閣府
http://survey.gov-online.go.jp/h26/h26-joseikatsuyaku/zh/z01.html


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 男性については、労働市場が悪化し、大学などを出たらフルタイムの仕事を持てるという構図が崩れた。それでも、一家を担う準備が整わなければ結婚できないという呪縛から逃れられず、女性以上に生涯未婚率が高くなっている。

 労働環境が悪化したのは事実です。しかしそれは
男性に限った問題ではありません。大学が増えて、高学歴者が増加したことと、日本の産業構造が変化して、高度な技術を必要とする製造業以外の製造業が衰退した結果です。「男性については・・・構図が崩れた」という表現は、「男性についてだけ構図が崩れた」と受け取られますが、それは現実ではありません。

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生涯未婚率の推移(男女別)  内閣府男女共同参画局
http://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h25/zentai/html/zuhyo/zuhyo01-00-20.html


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 男女の「生涯未婚率」とは50歳の人の未婚率を言いますが、単純に考えて、我が国では一夫多妻も同性婚も認められておらず、結婚は男女1対1によって成り立つものですから、男女新生児の出生数や平均寿命がほぼ同じとすれば、男女の「生涯未婚率」は同じになるはずです。
 「生涯未婚率」に男女差があるのは
年齢別人口構成の変化とか、結婚年齢の差とか、再婚率が違うとか、別の要因によるものと思われます。教授の言う「呪縛」と「生涯未婚率」の間に相関関係があるとは思えません。いや、そもそもそのような呪縛は実際に存在するのでしょうか。はなはだ非科学的な主張と思われます。

 
敗戦後の混乱期は日本人は皆貧しく、大学を出てフルタイムの人などはごく少数だったと思われますが、その時代がベビーブームの頂点で未婚率もゼロに近かったことに注目する必要があります。貧困は未婚や少子化の主要な原因ではありません。
 生涯未婚率の推移表を見ると、
昭和から平成に変わる時期を境に、男女とも未婚率が急上昇しているのが分かります。これは、昭和60年に制定された、「男女雇用機会均等法」による影響も考えられます。もし、呪縛と言うのであれば「男女平等思想」こそが“呪縛”と言うにふさわしいのではないでしょうか。

 子どもがほしいと思う人は多いのだから、それをかなえるための環境を整備しなければならない。ポイントの一つは、結婚する前の若者が自立できるように支援することだ。多くの企業に職業訓練を行う余裕がなくなり、即戦力を求めるようになった分、専門学校や大学などでキャリア教育を提供する必要がある。

 高度成長の時代には、中学卒業の子供達は「金の卵」と言われて集団就職して自立していきました。その時に比べれば今の子供達は教育の機会に恵まれています。しかし、もはや「金の卵」とは言われていません。
 職業訓練が必要というなら、もっと具体的にどういう職業訓練をすべきなのかを主張をしなければ意味がありません。今の大学卒の若者の失業は世界的な傾向で、職業訓練だけで解決する問題ではありません。分析がお粗末すぎます。今の若者の就職難はマクロ経済学の問題だと思います。目先の職業訓練で解決するとは思えません。

 
二つ目は、子どものいる夫婦のワーク・ライフ・バランスだ。幼い子がいるのに毎晩10時に家に帰るのでは厳しい。幼い子や、看護や介護の必要な家族がいる場合、午後6時には何ら罪悪感なく退社できるような、社会としての慣行を作っていくべきだ。

 
では、どうすれば6時に退社できる社会の慣行が出来るか、それを言わなくてはあなたのご意見はあまり価値がありません。
 幼い子が居る家庭で父親の帰りが遅くても、母親が在宅していれば大きな不都合は無いと思います。母親の不在は大きな不都合です。夫の家事参加、育児参加は長年かけ声だけで、少しも変化はありません。これだけ時間をかけて大声で訴えても変化がないと言うことは、訴えていることに元々無理があると考えるべきです。
 
職業や家庭生活のすべてについて男女同一にするという建前を取り払う必要があると言えるのではないでしょうか。労働条件に限らず、職業や結婚生活に関する「男女平等思想」という“呪縛”を取り払うことが必要不可欠なのではないでしょうか。職業や家庭生活についての男女平等は、メリットよりもデメリットの方が大きいという現実を直視すべきです。

 
三つ目は子ども自身への支援。すべての子どもを社会の財産として育てていくという考えを社会全体で共有する。公教育をもう少し手厚くし、質の高い教育を提供する。子どもをもたない理由に教育費が高いことを挙げる人が多いのだから、そういう人たちにも強いメッセージになるはずだ。

 公教育を手厚くという趣旨には同感です。今の公立小中学校は“手薄”に過ぎます。日教組の影響からか学校運営が生徒・父母の立場よりも教師の立場が優先されていて、教師の職務を狭く限定し、時代の変化に対応できていません。今の公立学校教師は憲法の表現を真似れば、言わば
“健康で文化的な最低限度の教育”をしているに過ぎず、それで物足りなさを感じる多くの父母は、塾などに子供を通わせています。それが教育費が高い原因です。それを改めるためには、たとえば「部活指導」や「生活指導」、「補習授業」は教師の職務で有ることを明確にするなど、職務内容・範囲を明確にし、給与体系も悪平等の一律を廃して、業務量や評価に応じたものに変更すべきです。また、生徒(父母)に教師選択権、教科書選択権を与えるなどして、教師の向上意識を高める工夫も必要です。そうすれば貧しい家庭の子供でも、見劣りのしない教育を受けられます。
 
公教育に問題があることを指摘するなら、もっと具体的に問題点と解決策を主張すべきです。

 政治家には、人口問題がマクロの話であると同時に、個々の「人」の話だということを忘れてもらいたくない。人口が増える背景には、子を産む人がいて、その人たちの様々な選択がある。最終的には個人の問題が介在することを、常に意識してもらいたい。

 何か奥歯にものが挟まったような言い方ですが、これは多分独身女性や子供の居ない夫婦、子供はいらないと考えている夫婦からの反論を意識しての発言だと思いますが、多くの問題がマクロの問題であると同時にミクロの問題であるというのは、言わずもがなの当たり前のことです。
 例えば地球温暖化防止、その為の二酸化炭素排出抑制はマクロの問題ですが、国民一人一人が自分の問題として節電・省エネにミクロの努力しなければ、マクロの改善はありません。

 子供を産む・産まないは個人の自由と言っても、それは社会全体で人口規模が維持できればの話で、人口規模が維持できず、社会(国家、民族)が衰退・消滅に向かう事態になればそんなのんきなことは言っていられません。産むことを物理的に強制することは出来ませんが、マクロで考えれば、人口規模を維持するために子供を産まない人に代わって、誰かが多くの子供を産み育てているのですから、
その人達のために、何らかの代替負担を求められることは覚悟してもらわなければなりません。

 
人口は、今何か対策を行っても効果はすぐに表れず、しばらく減り続ける。それだけに継続して考えるべき問題で、即時的な効果を求めたり、一時の流行の議論にしたりすべきではない。

 少子化問題は1989年の「出生率1.57ショック」以来、喫緊の課題と認識されて、
すでに25年経過しています。その間、保育所の増設や、育児休暇制度の新設をはじめとする、既婚の共働きの子持ちの女性を対象にした子育て支援策が、「少子化対策」として多額の予算と人員を投入して実施されてきました。しかし、少子化は解消するどころか、ますます深刻の度合いを増しています。その今になって、「効果はすぐには表れない」とか、「即時的な効果を求めるべきではない」と言うのは、国家公務員の専門家、人口減少問題検討分科会の委員として、あまりに無責任ではないでしょうか。今までの効果の無い少子化対策を推進してきた人は、率直に誤りを認め辞職すべきだと思います。
(聞き手・地方部 渡辺亮)
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[論点スペシャル]14衆院選  女性・若者は ここを見る
2014年11月29日3時0分 読売新聞

(前略)

尊厳守る雇用政策を…東大教授 本田由紀氏



沼田光太郎撮影

 
今回の選挙では雇用問題がポイントの一つになる。

 若者の就職率は少し上向いた。だが、楽観できない。団塊の世代が退職したので、企業が新卒者の採用を増やした面があるからだ。若い社員を酷使して使い捨てる「ブラック企業」や、非正規雇用の低賃金などの問題はずっと続いている。


 雇用問題はマクロ経済の問題です。貿易自由化、関税などの障壁撤廃、投資の自由化などによって、単純労働、低技術労働の産業は日本では立ちゆかなくなったのです。この程度の認識、意見しか述べられない人はマスコミがインタビューする価値はありません。

 少子高齢化で労働力人口が減少する中、女性の活躍への期待が高まっている。ただ女性の現状を見つめた上でというより、できるだけ外へ出て働いてくれという雰囲気が強い。家事、育児で消耗している女性たちの間には、これ以上働きたくないという、ぐったりした気持ちも生まれている。

 なぜ、「女性の就労」と言わずに、「女性の活躍」なのか、女性が働くと活躍になるのか。安倍総理もくだらないことを言ったものだと改めて思います。現状の認識に大きな間違いは無いと思いますが、
だからどうすべきか何も言っていません。

 
一方、男性には、女性活用策のもとで、女性ばかりが優遇されているのでは、という不公平感もある。大事なのは、全ての人が力をつけ、その力を発揮できるように働き方を整えることだ。若者であれ、育児で仕事を離れた女性であれ、高齢者であれ、それならやってみようという気になる。そのためには、高校や職業訓練の場で、仕事に結びつく専門教育を行う必要もある。そして、それを尊重した採用と処遇を企業が進めることを期待する。

 「男性には・・・不公平感もある」との指摘ですが、それは単なる「〇〇感」というだけの感じ方の問題なのでしょうか。それとも実際に不公平があると認識されているのでしょうか。その辺は専門家として言及すべきだと思います。そして、「不公平」と認識するのであれば改善を主張すべきです。
 それ以下で言っていることは、
単なるきれい事の羅列で具体的な内容に乏しく、お粗末と言うほかはありません。

 
政府は、戦後一貫して、企業がもたらす賃金、手当、雇用安定に依存してきた。そのため企業に対して遠慮がちだ。しかし、バブル崩壊後、正規雇用と非正規雇用の「悪いところ取り」をしたような働き方を強いる企業も目立つ。正社員で責任が重いのに処遇が悪い、非正規社員なのに責任は重いなどだ。政府が強く介入しないと、希望を持って働けるようにならない。

 
私たちの周りには、そこかしこにリスクがある。男性だからといって安定した職につけるとは限らない。離婚が増える中、女性が男性に依存して経済力を持たないリスクも大きい。労働力人口の減少とは別に、そういうところから雇用を考える必要がある。人の尊厳という意味も含めた雇用政策が求められる。(聞き手・編集委員 知野恵子)

 言っていることに内容的に具体的指摘も、主張としての
まとまりもなく何を言っているのか何を言いたいのか全く分かりません。東大でも女性だとこの程度でも教授が務まるのでしょうか。税金の無駄遣いのような気がしてなりません。
     ◇
 
専門は教育社会学。著書に「社会を結びなおす」「もじれる社会」など。49歳。

(以下略)

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平成26年12月1日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ