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母性の尊重を謳う「男女雇用機会均等法」は、すべての女性が母親になることを前提としている −
大阪市立茨田北中学の寺井寿男校長の「女性は2人以上産むことが大切」発言は間違っていない−
 3月12日の朝日新聞は、「『子を産めない人は寄付を』、『2人以上』発言の校長」と言う見出しで、次のように報じていました。
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朝日新聞デジタル
「子を産めない人は寄付を」 「2人以上」発言の校長
石原孝、長野佑介
2016年3月12日18時55分
http://www.asahi.com/articles/ASJ3D4SV1J3DPTIL008.html

大阪市立茨田北中学の寺井寿男校長

 大阪市鶴見区の市立茨田北(まったきた)中学校の2月末の全校集会で「
女性にとって最も大切なことは、子どもを2人以上産むこと。仕事でキャリアを積むこと以上に価値がある」などと発言した寺井寿男校長(61)が12日、朝日新聞の取材に応じ「人口が減るなかで、日本がなくならないためには女性が子どもを産むしかない。間違った発言とは思わない」と述べた。

(中略)

■「公人として配慮を欠いた発言」

 関西大の赤尾勝己教授(教育学)の話 人生をどう生きるかは個人個人で考えることで、他人が指図するべきことではない。社会には結婚をしたくてもできない人もいるし、夫婦になっても
子どもを産まないという選択肢もある。今回の発言は、多様な生き方を否定するような発言だ。特に公人であり、生徒と向き合う校長がこのような画一的・硬直的な発言をしたことは、配慮を欠いた発言と言わざるをえない。
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 記事は「子供を産まないという選択肢もある。・・・多様な生き方を否定するような発言だ」などと言って、寺井寿男校長の発言を非難しています。

 ところが一方で、女性の地位向上のための法律である、「男女雇用機会均等法」は、第二条で次のように謳っています。
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男女雇用機会均等法(抜粋)
(基本的理念)
第二条  この法律においては、労働者が性別により差別されることなく、また、
女性労働者にあつては母性を尊重されつつ、充実した職業生活を営むことができるようにすることをその基本的理念とする。
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 このように、女性労働者については年齢、既婚・未婚の別、子の有無を問わず「
母性を尊重」としているところから、国は女性=母親(あるいは将来の母親)である事を前提としているように読み取れます。女性にとって母親であること、母親になることは「生き方」以前の大前提と考えて良いと思います。少なくともこの法律はそういう前提に立っていると思います。

 およそ権利と義務は表裏一体であり、すべての女性の「母性尊重」を求める以上、すべての女性は母親となるのは義務である、あるいは母親となることを期待されていると言うことになるのではないでしょうか。

平成28年4月10日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ

(平成28年4月11日 追記)
 この赤尾教授の論法で言えば、例えば
男性が家事・育児をするかどうかは、「個人個人で考えること」で、それを「他人が指図する」のは「多様な生き方を否定する」ことにならないのだろうか。