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配偶者控除の廃止を主張する女性達の大きな欺瞞 −専業主婦への敵意(その5)−


 8月30日の読売新聞は、「配偶者控除見直しへ 
女性の働く意欲 後押し…共働き増加にも対応」と言う見出しで、次のように報じていました。
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[スキャナー]配偶者控除見直しへ 女性の働く意欲 後押し…共働き増加にも対応
2016年8月30日5時0分  読売

 自民党の税制調査会の宮沢洋一会長は、2017年度税制改正で、専業主婦がいる世帯などの所得税の負担を軽くする「配偶者控除」の見直しに取り組む方針を示した。少子高齢化で「働く世代」が減少する中、政府が最重要課題に掲げる「働き方改革」の一環として、
女性の社会進出を後押しする狙いがある。ただ、負担増になる世帯からの反発は根強く、丁寧な議論が求められる。(経済部 沼尻知子 中西梓)

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利用1500万人

 「年末になると
『103万円の壁』のせいで、パートのやりくりが厳しくなるのが、悩みの種だ」。東京都内のスーパー店長が愚痴をこぼす。

 
配偶者控除は、1年間の妻の給与収入が103万円以下であれば、原則として、その世帯が払う所得税額を決める夫の所得から38万円を差し引くことができる。

 このため、年収が103万円を超えないよう、働く時間を調整するパート主婦などが多くなり、
女性の働く意欲を損ねる「103万円の壁」ともいわれている。

 配偶者控除は1961年に導入された。当時は9万円で、生活に必要な最低限の金額と想定されていた。95年には38万円まで拡大したが、その後は財政再建への配慮もあり、据え置かれている。夫の年収に上限はなく、高所得者でも利用できる。現在、約1500万人が利用しており、全体で6000億円程度、税負担が軽くなっている。


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103万円の壁

 
所得控除には、扶養控除や医療費控除など全部で15種類ある。このうち、誰でも利用できるのが「基礎控除」で、所得から38万円を差し引ける。さらに給与収入の人には最低でも65万円を差し引ける給与所得控除がある。この65万円と基礎控除の38万円の合計が103万円となり、配偶者控除の基準になっている。

 さらに、配偶者特別控除によって、103万円を超えても141万円未満までは、控除の恩恵を受けることができる。

 ただ、妻の給与収入が103万円を超えるかどうかで、給与に上乗せする家族手当の支給を決める企業は多い。人事院の調査によると、家族手当を支給する企業のうち、8割が
妻の収入制限を設けており、うち7割が103万円を基準としている。

 配偶者控除の見直しには、こうした
弊害をなくして、女性の働き手を増やす狙いがある。今月8日に開かれた経済財政諮問会議で、伊藤元重・学習院大教授ら民間議員は配偶者控除の見直しを提言している。

 共働き世帯が増えた社会の変化に対応する意味もある。80年に1114万世帯あった専業主婦世帯は、15年に687万世帯とおよそ半減した。
共働き世帯はその間に倍増し、97年以降は共働き世帯が専業主婦世帯を上回っている。

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夫婦控除に転換

 
今後の議論では、配偶者控除は廃止し、夫婦であれば年収や働き方を問わず誰でも控除が受けられる「夫婦控除」に転換する案が検討の中心になる見通しだ。配偶者控除の対象世帯を拡大する形だが、税収が大きく減らないように、夫の年収が一定額以上の世帯は対象から外す可能性が高い。

 配偶者控除を廃止すれば、夫の年収が550万円の世帯で約7万円の負担増になるとの試算もある。代わりに夫婦控除が導入されたとしても、現在、配偶者控除の適用を受けている高所得世帯には増税となりそうだ。このため、夫婦控除に転換する場合、猶予期間を数年間、設ける方向だ。

 さらに、自民党の税調や財務省は配偶者控除の見直しを手始めに、数年かけて所得税改革を進め、全ての控除制度を見直す青写真を描いている。

税以外の対策 必要…子育て・介護 雇用の壁

 税制だけを改革しても、
女性の就労拡大にはつながらず、総合的な対策が必要だ。

 パートなどで働く妻の年収が130万円以上になると社会保険料の負担が発生し、世帯の手取り収入が減るという「130万円の壁」もある。サラリーマンの夫の収入でその世帯の生計を立てている場合、その妻は保険料を負担する必要はない。だが、妻の年収が130万円以上になると、夫が養っているとはみなされなくなり、妻本人が負担する保険料が生じるためだ。

 さらに今年10月からは、「
106万円の壁」も生まれる。従業員数501人以上の企業に週20時間以上勤務するなどの条件を満たした人は、年収106万円以上で厚生年金に入って保険料を負担するようになるためだ。

 出産や育児をきっかけに仕事との両立を
諦め、退職する女性が多い状況を変える必要もある。一度退職すれば正社員になかなか復帰できないため、低賃金で不安定な非正規雇用になる女性も多い。在宅勤務や柔軟な勤務体系など企業が取り組むべきことも多い。

 
働きたくても、子育てや介護で就労できない専業主婦も少なくない。待機児童の解消や介護保険の拡充といった政府による課題解決策も求められている。

 ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次氏は「長時間労働をよしとする男性の働き方も変えなければ、家事や育児の分担が進まず、女性の就労促進につながらない。社会全体のあり方を見直す必要がある」と指摘する。
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 以前も言ったことがありますが、問題を議論するに当たって必要なことは、1.
問題認識(何が問題なのか) 2.原因分析 3.対策の検討 4.対策の実施 5.効果と弊害の検証と言う事になるはずだと思います。
 
 それでは今までさんざん言われてきた、いわゆる「配偶者控除」を巡る問題とは、一体何が問題なのでしょうか。
 この記事を順を追ってみてくると、まず 

1.問題認識
(1).
女性が思うように社会(労働市場)に進出できていない (2).女性の働く意欲が損ねられている (3).女性の働き手を増やす必要がある
 以上の3点にまとめられるかと思います。
 (1)、(2)と(3)は若干微妙な違いがあり、(1)と(2)は配偶者控除の対象となる女性本人の問題ですが、(3)はそうとも取れるし、人口減少対策から女性の働き手を増やすべきだと言っているようにも取れます。

2.原因分析
(1)
配偶者控除を受けるための限度額103万円の存在が「壁」となり、配偶者控除の対象となっている女性の働く意欲を削いでいて、女性の社会進出を妨げ、また女性の働き手を増やす上で妨げとなっている。

3.対策
(1)
配偶者控除の廃止
専業主婦(パートタイムなどの準専業主婦を含む 以下同じ)は税制上の優遇があるために、本当はフルタイムで働きたいのに、労働を控えているので、優遇をなくせばフルタイムで意欲的に働けるようになる。

 議論を整理すれば単純にこういうことになろうかと思います。

 まず指摘すべきは、1.の
問題認識が正しいかと言うことです。というのは、この種の問題認識を主張しているのは、この記事の執筆者を見ても分かるように、女性新聞記者、女性大学教授、女性官僚などほとんどが配偶者控除適用対象外の女性たちです。配偶者控除適用対象の妻で、配偶者控除の廃止を主張する人にはお目にかかったことがありません。なによりも直接の納税当事者である、専業主婦を妻に持つ男性納税者からの意見は皆無と言って良いくらい無視されています。上記の記事でも愚痴をこぼしているのはスーパーの店長であって、パートで働く主婦ではありません。
 
配偶者控除の存在が控除対象の女性達にとって、「103万円の壁」になっているというのは、正しい認識でしょうか。はなはだ胡散臭い話だと思います。

 スタートの問題認識が既に疑わしいので、以下の原因分析、対策の妥当性はもはや論じるまでもないと言うことになりますが、そもそも、専業主婦達が配偶者控除を受ける(フルタイムで働かない)のは、
仕事(金銭の収入)よりも家庭(家族)を大切にしたいという思いからであり、それを犠牲にして就労の拡大を望むとは考えにくいと思います。
 仮に
「103万円の壁」を感じることがあったとしても、その時に彼女達が要求するのは、103万円の限度額の引き上げ(例えば200万円に)であって、廃止ではないはずです。

 以下は蛇足ですが、夫婦控除の創設とか、所帯数が変化したとかは、「女性の働く意欲を後押しする必要がある」という問題認識から考えると、問題の本質とは関係ないと思います。
 配偶者控除の廃止とそれに代わる夫婦控除の創設によって利益を得るのは共働きの夫婦であって、配偶者控除の対象となっている女性達ではありません。彼女達は不利益を受ける側です。これを配偶者控除の対象となっている女性達に対する「後押し」と言うのは、いくら何でも
人を馬鹿にした話ではないでしょうか。

 また、専業主婦が減ってフルタイムで働く女性の割合が増えた事実は、だから配偶者控除を廃止してさらに専業主婦を減らすべきだという議論には結びつきません。結びつくとすれば、対象者が減少したのだから、
少数派となった彼女達の不利益は無視してもかまわないという理屈しかないと思いますず、これは「女性の多様な生き方の否定」になると思います。

 このあたりでは、「問題認識」とそれに対する「原因分析」とは
無関係の「対策」が提案されているところに注目すべきだと思います。

 最初の問題認識とは無関係の対策が提案されているのは、一体なぜでしょうか。それは元々問題認識の主張が
虚偽であり、主張している人達の本当の本音の問題認識は別の所にあり、対策はその本音の問題認識に対する対策として考えられたものだからだと思います。

 それでは彼女らはなぜストレートに本音の問題認識を語ろうとしないのでしょうか。それは、彼女らの
本音が、公然と語るのが憚られる種類のものだからだと思います。それでは、その本音の問題認識とは一体なんでしょうか。それは、専業主婦が存在することそのものであり、共働き妻達の専業主婦に対する嫉妬と嫉妬から来る敵意だと思います。だから彼女達が口にする対策はすべて、自分たち共働き所帯が受けている制度的恩恵には口をつぐみ、専業主婦所帯が受けている制度的恩恵はすべて剥奪して、専業主婦いう生き方が不可能になることを目的としているのです。

 彼女達は自分たち共働きの夫婦が少数派である時は、「多様な生き方を認めろ」と主張していましたが、
自分たちが多数派になるや、一転して多様な生き方を否定しています。実に陰湿な女性達です。

平成28年9月8日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ