I82
東京医大の“女子差別”問題、本来別々であるべき学問(医学)と職業(医師)の区別がなく、一体となっているのが原因 −「女性に合わせて基準を下げろ」は通用しない−

 3月22日のNHKは、「東京医大不正入試で元受験生の女性33人が提訴」と言うタイトルで、次のように報じていました。
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東京医大不正入試で元受験生の女性33人が提訴
2019年3月22日 17時37分医学部入試 NHK

 女子の受験生の点数を一律で減点するなど不正入試が明らかになった東京医科大学に対し、過去に不合格にされた元受験生の女性33人が賠償を求める訴えを東京地方裁判所に起こしました。

(中略)

 去年まで3年連続で不合格とされた20代の女性は会見で、「
医学部の入試は職業に直結し、得点操作は決して許されない。女性だけが夢を追いにくいということがなくなるように、裁判を通して根本からの改革を望みたい」と話していました。

 また、弁護団の角田由紀子弁護士は「裁判によって
性差別のない社会に一歩でも近づけたい」と話していました。

 一方、東京医科大学は「現時点ではまだ訴状を見ていないので、コメントは差し控えさせていただく」というコメントを出しました。

不正入試の経緯
 東京医科大学は、文部科学省の幹部の息子を裏口入学させたり、長年、
女子受験生浪人生の得点を一律に減点したりするなど、入試に不正があったことが明らかになりました。

(以下略)
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 それ以前にも、この東京医大の問題については、下記のように度々報じられていました。
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[不正入試]<上>女子抑制
「罪悪感ない」
08/30 05:00 読売

 東京医科大(東京)が、医学部医学科の一般入試で、女子受験者らの合格者数を抑制する一方、特定の受験者の得点に加点して裏口入学させていた。一連の不正の実態や背景を検証し、あるべき医学界の姿を探る。
          ◇
(中略)

 元幹部は後に臼井からこう打ち明けられたという。「
普通に試験をしたら女子が半分を占めてしまう。だから女子の得点に係数を掛けるんだ」

 
女子らへの差別は、遅くとも06年から行われていたことが、同大の内部調査で判明した。今年は、2次の小論文で受験者全員の得点に「0・8」を掛けて減点。その後、現役と1、2浪の男子に20点を、3浪の男子に10点を加点する一方、女子4浪以上の男子には加点しないという複雑な操作だった。

 元幹部は断言する。「
罪悪感はない。『女子が多くなると困る』という意見に本心から反対する人はいないはずだ」(敬称略、社会面に続く)

朝夕刊
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[不正入試]<上>「
女性増なら外科潰れる」…入試段階で「戦力減」懸念
08/30 05:00 読売

 「脳神経外科0・0%」「整形外科0・0%」「心臓血管外科0・0%」――。東京医科大病院では今月1日現在、この三つの外科における常勤女性医師の割合はいずれも0・0%。つまり、
女性は一人もいない。

 「外科は完全な男社会。女性を寄せ付けない雰囲気があった」。同大出身で50歳代の女性内科医はそう振り返る。

 外科系では
夜間の緊急呼び出しが日常的にあり、時には手術が10時間以上にも及ぶ。男性とは体力的に差があり、出産や育児を望む女性には、働きやすい職場とは言い難い。

 厚生労働省によると、非常勤を含む全国の女性医師の割合は2014年末で20・4%。診療科ごとでは
皮膚科46・1%眼科37・9%なのに対し、外科系では脳神経外科5・2%、整形外科4・6%と落ち込む。

 東京医科大病院における診療科全体の女性医師の割合は、常勤だけで30・2%と決して低くはないが、偏りは顕著だ。同大幹部は「学内には、以前から
女性が増えると外科が潰れるとの声があった」と明かす。

     ◇
 医学部の持つ特殊性が差別を助長していた可能性もある。私大の医学部では、医師国家試験に合格した卒業生の多くが大学病院の医局に入る。その後は大学病院にとどまるか、系列、関連病院に派遣される仕組みが確立されており、
入試が「医大グループ」の採用試験の意味合いを持つ。

 医師の育成は医局ごとに行われ、派遣先も医局が決定する。女性医師が出産などで離職すると、別の医師を新たに派遣したり、派遣自体が中止になったりするケースもある。

 ある
女性外科医は05年頃、東京医科大の系列病院に1年半ほど勤務した。午前7時半〜午後10時までの勤務が週6日、入院患者を受け持つ期間は休日も出勤した。

 この
女性は「外科系の勤務は劣悪で、女性は少なく、いても独身が多かった。医局や系列病院の人材確保のためには、離職リスクの低い男性医師を育成した方が理にかなう」と話す。

 国立大学の病院に勤務していた40歳代の女性医師は十数年前、消化器外科の医局に入った後、妊娠が判明した。男性教授から地方の関連病院への異動を打診されたが、断った。「嫌なら他に行け」。教授からそう言われ、別の大学の医局に移ったという。

 「どうやって女子を落とすんですか」「
数学を難しくしたりとか色々とやってますよ」。数年前まで東京医科大で要職にあった元幹部は、医学部を持つ私大の学長や理事長らが集まる会合では、女子の合格者をどう減らすかが日常的な話題だったと明かす。

 こうした会合で元幹部は、女子の割合が低いことで知られる大学の関係者に「 秘訣ひけつ 」を尋ねたが、「企業秘密だから言えませんよ」とかわされたという。元幹部は「どの大学も同じはずだ。
感情論では国民の役に立てない」と言い切る。
     ◇
(中略)

 だが、現場にはいまだ女性医師に否定的な意見は残る。「
女子の合格者が増えれば、医局で戦力になる人員が減り、必ず現場にしわ寄せが来る」。別の同大幹部はそう本音を漏らし、語った。「『男女平等』の風潮は本当に迷惑だが、今は『差別は前理事長が勝手にやったこと』で押し切るしかない」

 そこには過去と決別しようとする意識はみえない。(敬称略)
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 記事にもあるように
学問と職業は別であり、学問を修めた者すべてが、その職業に就く必要はありません。例えば、文学を修めた者が全員文学者や作家になるわけではなく、むしろ少数派です。しかるに医学部卒業生のほぼ全員が医師になり、それ以外の者は医師になれないと言う点が、今回の問題に大学入試の一般論が通用しない点なのです。
 

 現状に問題があれば別ですが、
女子医学生のために医師の仕事のレベルを下げようというのは本末転倒の考えです。医師という職業は患者のためにあるのであって、医師のためにあるのではありません。
 最近、
「働き方改革」のかけ声(美名)の下、広範な部門で女性のために仕事のレベルを下げようと言う運動が繰り広げられていますが、これは必ず患者(消費者)の負担増となって跳ね返り、国民経済の上でも大きなデメリットとなって表れます。

 学問と職業は別物です。彼女らが医師になりたいのであれば、男性と同様に医師としての
意欲・能力を発揮できることを証明しなくてはなりません。残念ながら?今までの女性医師達はそれを証明できず、反対に発揮できないことを証明してきたのです。それだからと言って、「女性のために基準を下げろ」では、かえって男女平等の考え方に反するのではないでしょうか。

 どうしても「医師」にと言うなら、医師とは別に、仕事の難易度を下げた(例えば
手術をしない、外来専門)「女性医師」という新たなカテゴリーを設けるしかありません。
 これは差別ではありません。例えば警察官には別に
「女性警察官」というカテゴリーがあって、男子に限定される警察官とはべつのカテゴリーとして存在し、女性が“活躍”しています。自衛官にも「女性自衛官」という別のカテゴリーがあります。

 それでもなければ医師の
免許制度を科別に細分化し、それに合わせて医学部の募集・定員も各科別に細分化することも、皮膚科眼科を目指して入学してくる女子の増加から、大学の医学部・付属病院を守る為に有効であると思います。医療の高度化・専門化が進む中で、全部OKの単一医師免許制度はこの機会に見直されて良いと思います。

 毎年の
ノーベル賞の受賞者や、各種スポーツ囲碁将棋などの世界は完全に男女別世界です。これを差別と言ったり、男女差をなくすために女子に合わせてルールを変えよう(簡略化しよう)と言う声は全くありません。これらの分野における男女の能力差は否定できません。

 しかし、男女差はすべての分野で一律ではなく、分野によっては
差が無い分野も(逆に女性の方がすぐれている分野も)あります。各種の筆記試験はその一つです。女性は医大の入学試験(筆記試験)では男性と差の無い成績を出せるのです。
 筆記試験は
記憶力根気反復訓練(受験勉強)などに左右される部分が大きく、科目によっては男女差が少ない分野で、それが女性達に大きな自信誤解(錯覚)を生む原因になっています。

 
筆記試験はあくまで筆記試験でしかありません。その結果で医学生としての適否は判断出来ても、医師としての能力・意欲を判断することはできないのです。そしてこれは医師という職業に限った話ではないのです。

 
医学部入試で、現状のまま女子学生の制約を撤廃すれば、病院の劣化が現実のものとなることは疑う余地がないと思います。

 医学部の入試の結果が、
医師の採用に直結している以上、現状の女性制限は妥当な判断と言うべきです。

平成31年4月2日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ