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支離滅裂になっていく「男女平等」、機会均等に反する大阪大学の教員「女性限定」募集(その1)−「男女平等」とは機会の平等(均等)であって、結果の平等ではない−

 2月2日の読売新聞は、「阪大教員
女性限定で募集 文学部20年度12人」と言う見出しで、次のように報じていました。
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阪大教員
女性限定で募集 文学部20年度12人
2020/02/02 06:00  読売

「研究者の道支援」


 大阪大は、文学部で2020年度に新たに雇う
教員12人全員を女性限定で国際公募する方針を決めた。同学部の教員に占める女性の比率は21%(2019年)で、「積極的に女性を登用して女性研究者のロールモデルを示し、研究者の道に進む学生を育成したい」という。国連が30年までに世界で実現すべきだとした「SDGsエスディージーズ(持続可能な開発目標)」の一つには「ジェンダー平等」があり、成果が注目される。(編集委員 沢田泰子

 国は20年までに
指導的地位に女性が占める割合を少なくとも30%程度とする目標を掲げ、ポジティブ・アクション(積極的改善措置)を推進している。しかし、大学などの研究者に占める女性の割合は16・6%(総務省調べ、19年3月時点)にとどまる。文部科学省は09〜14年度、特に女性研究者が少ない理学、工学、農学分野で人件費などを支援。これらの分野の一部で女性限定の公募が広がったが、文系学部で新規採用者全員を女性に限定するのは珍しい。

 阪大は全学で
女性教員らの採用を進めており、研究者全体に占める在職比率は15年の15%から19年には19%に上昇。文学部は理工系などに比べると女性教員の比率が高いが、教授は51人中3人で6%にとどまる。

 一方で、学部の学生は60%が女性だ。福永伸哉・文学部長は「
優秀な女性を計画的に採用して研究・教育を進めてもらい、キャリアアップしていってほしい。後に続く女性が増え、いい循環を生み出せる」と期待する。女性限定公募をするのは、20年度に新規採用する教授、准教授、講師、助教のポスト全て。順調に採用が決まれば30%に近づく。

 経済協力開発機構(OECD)の資料(2011〜17年)によると、日本はデータのある国の中で女性研究者の割合が最も低い。米ハーバード大学院を修了し、海外での勤務経験が長い村上由美子・OECD東京センター所長は「社会で
リーダーシップを発揮するのは男性という偏見を子どもの頃から刷り込まれ、企業のトップや政治家、大学教授になる女性が増えない日本の現状を変えるためには、積極的な改善措置が必要だ。男性教員とは価値観の違う女性教員が増え、外国や産業界など多様な考え方の人を受け入れる心構えができれば、大学の国際競争力も高まるだろう」と指摘する。

女性教授少なさ目立つ 工学系は1割未満

(中略)

 同ネットワーク実施責任者の工藤真由美・大阪大理事・副学長は「分野を問わず、採用登用を決める
教授のほとんどを男性が占めており、女性の上位職増加に向けた積極的な取り組みが必要だろう。理工系では女子中高生らに関心をもってもらう対策も不可欠だ。多様な人々が力を合わせてこそ社会変革につながる研究が実現できる」と話す。
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 この記事では、「阪大教員
女性限定で募集 文学部20年度12人」と報じていますが、周知のことですが、男女雇用機会均等法(雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(全文は下記参照))の関係条文は次の通りとなっています。

(目的)
第一条 この法律は、法の下の平等を保障する日本国憲法の理念にのつとり雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を図るとともに、女性労働者の就業に関して妊娠中及び出産後の健康の確保を図る等の措置を推進することを目的とする。

性別を理由とする差別の禁止
第五条 事業主は、労働者の
募集及び採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。

 上記の通り、男性のみ、
女性のみの募集を禁じています。今回大阪大学がしたことは、明白な違法行為です。

 しかるに記事は、「男女雇用機会均等法」に全く触れていませんが、編集委員の
沢田泰子さん気がつかなかったのでしょうか、それとも完全に無視しているのでしょうか、大変不思議です。

 次に言及されている「
指導的地位に女性が占める割合を少なくとも30%程度とする」と言う目標設定は、「いかがわしさ満点」と言うべき代物で、この30%には何の根拠も示されていません。本当は半分と言いたいところだが、いきなりそれは無理だし、無理すればぼろが出てかえってマイナスなので、とりあえず30%ぐらいにしておこうか、と言うところでしょうか。それになぜ「指導的地位」だけに目標値があり、それが30%なのか理解に苦しみます。

 女性が少ない職場の中には、3K(危険・汚い・きつい)職場などがあると思いますが、これらの職場でも「平等」の目標は必達と考えて良いのでしょうか。
 一般論として、
権利と義務は表裏一体のものと考えれば、結果の平等を権利として主張するからには、女性に3K職場に就労する義務があると言うことにはならないでしょうか。

 また、記事(沢田泰子編集委員)は女性の割合が少ない職種だけを問題視していますが、女性が多い(男性が少ない)職種は何故問題視しないのでしょうか。

 今回何の疑問を感じることもなく、平気で「女性限定」を行動に移そうとするのは、人の権利は老若男女問わずすべて平等である、
権利が平等であると言うことは機会の平等に止まらずその結果も平等であるはずだ(あるべきだ)、と言う話のすり替えまたは勘違いが有るのだと思います。

 しかし、
人間の能力は千差万別であって、決して平等でも均等でもありません。当然のことですが権利の平等は結果の平等を意味しません。それは男女間でも、男性の中、女性の中でも同じです。結果の平等を主張し、実現しようとするなら、あらゆるレベルでの「選考(選別)行為は差別となり、すべてはくじ引きに依るしかなくなります。

 「均等法」が
権利の平等と言わず、「機会の均等」と言っているのは、求められているのは「結果の均等」ではないことを明確にしていると思います。

令和2年2月6日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ

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昭和四十七年法律第百十三号
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律
目次(省略)

第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、法の下の平等を保障する日本国憲法の理念にのつとり雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を図るとともに、女性労働者の就業に関して妊娠中及び出産後の健康の確保を図る等の措置を推進することを目的とする。

(基本的理念)
第二条 この法律においては、労働者が性別により差別されることなく、また、女性労働者にあつては母性を尊重されつつ、充実した職業生活を営むことができるようにすることをその基本的理念とする。
2 事業主並びに国及び地方公共団体は、前項に規定する基本的理念に従つて、労働者の職業生活の充実が図られるように努めなければならない。
(啓発活動)
第三条 国及び地方公共団体は、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等について国民の関心と理解を深めるとともに、特に、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を妨げている諸要因の解消を図るため、必要な啓発活動を行うものとする。
(男女雇用機会均等対策基本方針)
第四条 厚生労働大臣は、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する施策の基本となるべき方針(以下「男女雇用機会均等対策基本方針」という。)を定めるものとする。
2 男女雇用機会均等対策基本方針に定める事項は、次のとおりとする。
一 男性労働者及び女性労働者のそれぞれの職業生活の動向に関する事項
二 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等について講じようとする施策の基本となるべき事項
3 男女雇用機会均等対策基本方針は、男性労働者及び女性労働者のそれぞれの労働条件、意識及び就業の実態等を考慮して定められなければならない。
4 厚生労働大臣は、男女雇用機会均等対策基本方針を定めるに当たつては、あらかじめ、労働政策審議会の意見を聴くほか、都道府県知事の意見を求めるものとする。
5 厚生労働大臣は、男女雇用機会均等対策基本方針を定めたときは、遅滞なく、その概要を公表するものとする。
6 前二項の規定は、男女雇用機会均等対策基本方針の変更について準用する。
第二章 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等
第一節 性別を理由とする差別の禁止等
(性別を理由とする差別の禁止)
第五条 事業主は、労働者の募集及び採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。

第六条 事業主は、次に掲げる事項について、労働者の性別を理由として、差別的取扱いをしてはならない。
一 労働者の配置(業務の配分及び権限の付与を含む。)、昇進、降格及び教育訓練
二 住宅資金の貸付けその他これに準ずる福利厚生の措置であつて厚生労働省令で定めるもの
三 労働者の職種及び雇用形態の変更
四 退職の勧奨、定年及び解雇並びに労働契約の更新
(性別以外の事由を要件とする措置)
第七条 事業主は、募集及び採用並びに前条各号に掲げる事項に関する措置であつて労働者の性別以外の事由を要件とするもののうち、措置の要件を満たす男性及び女性の比率その他の事情を勘案して実質的に性別を理由とする差別となるおそれがある措置として厚生労働省令で定めるものについては、当該措置の対象となる業務の性質に照らして当該措置の実施が当該業務の遂行上特に必要である場合、事業の運営の状況に照らして当該措置の実施が雇用管理上特に必要である場合その他の合理的な理由がある場合でなければ、これを講じてはならない。
(女性労働者に係る措置に関する特例)
第八条 前三条の規定は、事業主が、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保の支障となつている事情を改善することを目的として女性労働者に関して行う措置を講ずることを妨げるものではない。
(婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いの禁止等)
第九条 事業主は、女性労働者が婚姻し、妊娠し、又は出産したことを退職理由として予定する定めをしてはならない。
2 事業主は、女性労働者が婚姻したことを理由として、解雇してはならない。
3 事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第六十五条第一項の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第二項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
4 妊娠中の女性労働者及び出産後一年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は、無効とする。ただし、事業主が当該解雇が前項に規定する事由を理由とする解雇でないことを証明したときは、この限りでない。
(指針)
第十条 厚生労働大臣は、第五条から第七条まで及び前条第一項から第三項までの規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するために必要な指針(次項において「指針」という。)を定めるものとする。
2 第四条第四項及び第五項の規定は指針の策定及び変更について準用する。この場合において、同条第四項中「聴くほか、都道府県知事の意見を求める」とあるのは、「聴く」と読み替えるものとする。
(以下略)
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