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「女性蔑視と取れる発言」をめぐる“森叩き”の原因は、「女性理事4割」、 −なし崩し的に進む、男女別定員社会は“平等”に逆行する−
東京五輪組織委員会の森会長の“女性差別発言”騒ぎは、ますます過激の度を増しています。昨日、今日の2日間でこの問題をめぐるNHKのテレビニュースは、19件に及んでおり、論点は拡大・過熱の一途をたどっています。
この中で、2月4日の森会長の「【詳細】東京五輪・パラ JOC評議員会での森会長発言」と、2月8日の「森会長発言 東京オリパラ大会ボランティア 約390人が辞退」を見てみます。
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【詳細】東京五輪・パラ JOC評議員会での森会長発言
2021年2月4日 13時57分 NHK
東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森会長が、3日行われたJOCの評議員会で「女性の理事」について発言した主な内容は以下のとおりです。
以下 森会長の発言
テレビがあるからやりにくいんだが、女性理事を選ぶっていうのは4割、これは文科省がうるさく言うんでね。
だけど女性がたくさん入っている理事会は、理事会に時間がかかります。
うちの恥を言いますが、(日本)ラグビー協会、今までの倍、理事会に時間かかる。女性がなんと5人います。女性っていうのはやっぱり優れたあれがありまして、競争意識が強い。
誰か1人が手をあげて言われると、自分も言わなきゃいけないと思うんでしょうね。それでみんな発言されるんですよ。まわりの発言した人に続いて、思いのままどんどん言うわけです。
結局、女性っていうのはそういう、あまり言うとまた新聞にもれると俺がまた悪口言ったってことになりますけど。
女性の数を増やしていく場合は、発言の時間をある程度規制を促しておかないとなかなか終わらないんで困っているって、誰が言ったか言いませんけど、そんなこともあります。
私どもの組織委員会にも女性は7人ぐらいおられますが、みんなわきまえておられて、みんな競技団体からのご出身であり、また国際的に大きな場所を踏んでおられる方々ばかりです。
ですからお話もきちっとした、的を射た発言をされて非常にわれわれ役立っておりますが、欠員があるとすぐ女性を選ぼうということにしているわけであります。
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森会長発言 東京オリパラ大会ボランティア 約390人が辞退
2021年2月8日 20時50分 NHK
東京オリンピック・パラリンピックの組織委員会は、森会長の女性蔑視と取れる発言のあと、大会ボランティアおよそ390人が参加を辞退したことを明らかにしました。
組織委員会の森会長はJOC=日本オリンピック委員会の会合で「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」などと女性蔑視と取れる発言をし、その後、発言を撤回し謝罪しました。
東京大会では、競技会場や選手村などで活動する「フィールドキャスト」と呼ばれる大会ボランティアをおよそ8万人採用していますが、組織委員会によりますと、森会長が発言を撤回した2月4日から8日正午までの間に、大会ボランティアおよそ390人が参加を辞退したということです。
組織委員会は、「大会の運営に支障はない」としていますが、ボランティアに対しておわびのメッセージを出していて、「不愉快な思いをされた皆様に改めて深くおわび申し上げます。大会のビジョンである『多様性と調和』にもあるようにあらゆる面での違いを肯定し、自然に受け入れ、認められる社会を実現することを目指し、大会を運営していきたい。4月からは役割別研修・リーダーシップ研修が始まり、5月からはユニフォームなどをお渡しします」などと協力に理解を求めています。
また、同じ期間に、組織委員会のコールセンターには抗議の電話とメールがおよそ4000件寄せられ、聖火リレーはお笑いコンビ「ロンドンブーツ1号2号」の田村淳さんを含め2人が辞退したということです。
組織委員会はこれまで大会が延期された際でも辞退者の数は公表してきませんでしたが、今回は、東京都などが採用している都市ボランティアにも辞退者が出るなどの影響を考慮し公表したということです。
都市ボランティア辞退 少なくとも60人超
また、この発言を受け、東京大会で観客らに交通や観光の案内をする「都市ボランティア」を採用している自治体のうち、5つの自治体で活動を辞退する人が出ています。
具体的には、8日までに
▼東京都で少なくとも53人、
▼埼玉県で4人、
▼千葉県で3人、
▼静岡県で2人、
▼神奈川県藤沢市で1人の、
合わせて少なくとも63人から森会長の発言を理由に辞退したいとの連絡があったということです。
また、東京都には抗議や意見などの電話やメールも8日までに1162件寄せられているということです。
東京大会の都市ボランティアは4万人以上が活動する予定で、各自治体では今後、研修などの準備を進めることにしていますが、今回の発言を受け、「発言は許されるものではなく、批判が出る事態となったことは残念というほかない」という声が聞かれました。
自民 二階幹事長「進退言及は過ぎたこと」
自民党の二階幹事長は、記者会見で「すでに撤回し、今後、発言や行動に十分留意すると聞いているのでそれ以上のことはない。進退は、本人や周りの関係者の判断が中心であり、党として辞めるべきだとか、辞めないでおくべきだということを言及するのは過ぎたことだ。冷静に見守るのがいちばんいい」と述べました。
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報道を見ると、かつての「銃後の守り」の時と同じで、発言の前後、全体を見れば、賛否はともかく、全く問題のない発言であるにも拘わらず、一部だけを捉えて、しかも「女性蔑視と取れる発言」などと言いがかりを付けて、議論もせず“問答無用”で退任を迫るのは極めて悪質なやり方です。
“取れる”というのは、そういう受け取り方をする人もいると言う程度でしかありません。世の中にはいろいろな受け取り方をする人がいますが、そういう受け取り方だけを報じるのは、明らかに“偏向報道”に当たります。
また、8万人のボランティアの中の390人が辞退したという点は、無視して良い人数であり、報道するとしたら「辞退者はほとんどいない」として報じるべきですが、「森会長発言 東京オリパラ大会ボランティア 約390人が辞退」と言う見出しは正反対の効果を狙ったもので、極めて悪質です。
4万人の参加予定者に対して、63人が辞退を通告してきたという都市ボランティアについても無視して良い数字です。敢えて記事にするなら、辞退者はほとんどいないと書くべきです。
今回の問題を順を追って考えると、最初に文科省が理事の4割を女性とするように強要したところが出発点に当たると思います。4割には「根拠」があるのでしょうか。文科省には4割を森会長に「強要」する権限があるのでしょうか。
次には、「女性理事がたくさん入ってくると、理事会に時間がかかる」という森会長の指摘は、事実に即した指摘なのでしょうか、それとも事実に反しているのでしょうか。
また、仮に事実に即した指摘であったとしても、それは甘受すべきことなのでしょうか。
もしそうだとしたら、その根拠はあるのでしょうか。
それらの点に全く触れずに「女性蔑視と取れる発言」を繰り返すのは、明らかに欠陥報道と言うべきです。
オリンピックに限らず、すべての公職は性別を問わず希望者の「意欲・能力」だけを基準にして、適任者を選出すると言うのが、大原則ではないのでしょうか。性別をそれよりも優先させ、「意欲・能力」に於いて劣るものが、性別を理由に勝るものを退けて、その職に就くというのは、「男女平等(機会均等)」の原則に反するのではないでしょうか。
現在、オリンピックだけでなく、政治の世界、企業活動の分野で少なくない女性達が、一定の女性の「枠」を要求しています。
これらの「枠」のほとんどは法的根拠のないものです。法的根拠がないのは、「男女別定員(枠)制度」が男女平等(機会均等)の原理・原則に反するからに他なりません。
そして彼女らが求める男女別定員制度の多くは「上位職」、「高給職」で、女性の割合が少ない分野に限られています。反対にいわゆる「3K(危険・汚い・きつい)職場」、「薄給職場」など、女性達が行きたくない職種、既に女性が多数を占めていて満足している職場(上位職、高給職)は含まれていません。それらの職場は今まで通りの「男性多数」、「女性多数」が維持されることになります。
このような法的根拠がないままなし崩し的に進む、「男女別定員社会」は「男女平等」のあるべき姿でしょうか。
現状は甚だ憂慮すべき事態と言うほかはありません。
令和3年2月9日 ご意見・ご感想は こちらへ トップへ戻る 目次へ