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職業、役職における「男女別定員制度」は、男女平等に反する

 2月13日の読売新聞は、「スキャナー 川淵氏、辞退すると『言っていない』『ガセネタだな』」と言う見だしで、次の様に報じていました。
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スキャナー 川淵氏、辞退すると「言っていない」「ガセネタだな」
大会運営 サッカー IOC
20210213 1138 読売

 12日朝、川淵三郎・日本サッカー協会相談役は、まだ東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の会長就任に前向きだった。

(中略)

日本のスポーツ界 
女性役員 登用進まず
組織委理事7/35
 東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の理事、評議員による緊急会合では「組織委役員の
女性割合を増やすべきだ」といった意見が噴出した。組織委の理事35人中、女性は7人にとどまり、その差が顕著だ。

 スポーツ界では、これまでも日本オリンピック委員会(JOC)を中心に競技団体役員の
女性登用を進めてきたが、目標に遠く及ばない。スポーツ庁が競技団体向けに策定した指針「ガバナンスコード」では、女性理事の割合目標40%としている。だが、内閣府の調査では、2019年9月時点でJOC加盟67団体の役員に占める女性の割合は14・2%にとどまる。

 背景には、
女性アスリートが引退後に結婚や出産、育児などを経て指導者になるケースが男性と比べて少なく、役員の候補者が限られるという現実がある。16年リオデジャネイロ五輪選手団の女子の割合では、選手は48%と半数を占める一方で、監督・コーチになると12%女性のリーダーを育成する土壌が整っていない実態が浮かぶ。

 国際オリンピック委員会(IOC)も
「男女平等」を理念に掲げ、取り組みを推進している。14年のIOC総会では、東京五輪・パラリンピックに向けて五輪運動への提言をまとめた「アジェンダ2020」を採択。「男女平等の推進」を明記し、具体的な方策として「国際競技連盟と協力し、五輪への女性の参加率50%を実現」「男女混合の団体種目の採用を奨励」などを示した。

 九州産業大学の西崎信男教授(スポーツマネジメント)は「企業の経営戦略では基本理念を決め、それに応じて人材を集める。
重要なのは性別ではなく、どんな基準で選ぶかだが、組織委の女性理事7人は少なすぎる。五輪開催を機に国際基準に合わせることが必要だ」と指摘する。(運動部 佐藤謙治)
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 記事は政府(スポーツ庁)が、競技団体向けに策定した指針「ガバナンスコード」で、
女性理事の割合目標を40%としていると報じられていますが、オリンピックに限らずすべての公職性別を問わず、希望者の「意欲・能力」だけを基準にして、適任者を選出すると言うのが大原則ではないのでしょうか。

 
性別をそれよりも優先させ、「意欲・能力」に於いて劣るものが性別を理由に、勝るものを退けてその職に就くというのは、「男女平等(機会均等)」の原則に反するのではないでしょうか。
 現在オリンピックだけでなく、
政治の世界、企業活動の分野で、少なくない女性達が一定の女性の「枠」を要求しています。政府がその要求を受け入れるのであれば、その数字の根拠法的根拠も含めて)を明らかにすべきだと思います。

 国が(たとえ目標としてであっても)
女性の割合を40%など、男女比率50:50以外の「男女別定員制度」を定めることは、「制度的男女の役割分担」に繋がる可能性があります。
 また、今回指針に基づいて男女の理事の割合を
50:50としても、希望者数に男女で大きな違いがある時などは公平とは言えない場合もあり、(目標はあくまで目標に過ぎず)採用選考時の個人評価は、性別に拘わらず公平で無ければなりません。

 さらに現状では割合目標が定められていない、その他の
“男女差がある既存職種・役職”をどうするという問題が生じます。全職種・役職に一律50:50を強制することは不可能ですから、その他の職種・役職の多くは現状の男性多数、女性多数を放置することになります。
 現状がこのまま進めば結果的には
一部の職種・役職についてのみ、男女別の定員比率が行政によって、恣意的に決定されることになります。

 こう考えると、政府の
割合目標設定は、どのような数値を目標としても、「男女無差別、男女平等(機会均等)思想の原理・原則に相反し矛盾する」と言う結果になるのではないでしょうか。

 政府の指示が「目標」に止まり、
法的な根拠を欠いているまま進行しようとしているのは、このように理想として掲げていることと、現実に対してしていることが、一致せず矛盾していて、法制化に堪えないからだと思います。

 しかしこのような「平等・機会均等」に拘わるだけでなく、
職業選択の自由にも関係する重要な指示(一昔前の悪名高い“行政指導”)が法的裏付け無しに行われることは、日本が「法治国家」から逸脱した、「人治国家」に成り下がったことになりかねません。

 このままで行けば、やがて
公職選挙における立候補者数の男女別比率の目標数値が示され、最高裁判事の男女別比率の“目標値”が示されるのも遠い先のことではなくなるかもしれません。

 記事の最後にある西崎信男教授の「
重要なのは性別ではなく、どんな基準で選ぶかだ」と言う部分は、その通りだと思いますが、次の「女性理事7人は少なすぎる」は、それに矛盾する“蛇足”です。

令和3年2月14日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ