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「生理の貧困」を「女性活躍、男女共同参画」の“引き立て役”に使うのは、逆効果にしかならないはずだ

 6月1日と2日のNHKテレビニュースは、「女性活躍と男女共同参画 重点方針原案 『生理の貧困』支援など」、「『生理の貧困』生理用品の配布など支援・検討 255自治体に」と言うタイトルで、それぞれ次の様に報じていました。
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女性活躍と男女共同参画 重点方針原案
「生理の貧困」支援など
2021年6月1日 21時34分  NHK

 
女性活躍と男女共同参画のことしの重点方針の原案が政府の会議で示され、新型コロナウイルスの感染拡大が特に女性に深刻な影響を与えているとして、経済の変化を見据えて女性デジタル人材を育成するほか、いわゆる「生理の貧困」への支援を行うなどとしています。

 総理大臣官邸で開かれた会議には、加藤官房長官や
丸川女性活躍担当大臣らが出席し、ことしの女性活躍と男女共同参画重点方針の原案が示されました。

 原案では新型コロナウイルスの感染拡大が、
特に女性に深刻な影響を与えていると指摘し、経済や産業構造の変化を見据えて女性デジタル人材を育成するほか、ひとり親への職業訓練を支援するとしています。

 また、
生理用品が十分に手に入らない状態、いわゆる「生理の貧困」への支援や、男性の育児休業の取得の促進、それに希望すれば週に3日休める「選択的週休3日制」を導入しやすい環境整備なども盛り込んでいます。

 加藤官房長官は「コロナ対策で、
女性女児最大限配慮するとともに、固定的な性別役割分担意識などに基づく 構造的な問題にも取り組んでいかなければならない」と述べました。

 政府は原案をもとに与党と調整を行い、近く重点方針を決定することにしています。
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「生理の貧困」生理用品の配布など支援・検討 255自治体に
2021年6月2日 7時00分 NHK



 
生理用品を十分に手に入れることができない、いわゆる「生理の貧困」をめぐり、生理用品を配布するなどの支援を行うか、検討している自治体はことし5月の時点で少なくとも255に上ることが内閣府のまとめでわかりました。

 
経済的な困窮親のネグレクトなどが原因で生理用品を十分に手に入れることができない「生理の貧困」に直面している人は、新型コロナウイルスの経済的な影響が長引く中、若い女性を中心に一定の割合に上ることが複数の団体の調査で明らかになっています。



 こうした人への支援の状況について内閣府が全国の自治体に聞いたところ、先月19日の時点で支援に取り組んでいるか、検討している
自治体は少なくとも255に上りました。

 支援の方法としては多くの自治体が役所や社会福祉協議会の窓口で配布したほか、
子ども向け小中学校や高校のトイレなどに置いた自治体も94ありました。

 配布した
生理用品の調達方法としては、防災備蓄品としてすでに確保してあったものを配布したケースが184件ともっとも多く、柔軟な対応で素早い支援につなげたケースが目立ちました。

 内閣府は「自治体の支援の広がりは
新型コロナの影響で経済的に困窮する人が増えていることやこうした状況に対する関心の高まりを反映している。問題の根本的な解決に向けて支援につなぐことが重要だ」としています。

東京 品川区では
 東京 品川区ではことし4月から区役所の窓口での配布に加え、区立の小中学校など46校に生理用品合わせて832パックを配布しました。

区の教育委員会は新学期が始まる直前の4月1日に「できるかぎり
個室トイレに設置するように」とすべての学校の校長に依頼しました。



 
トイレの中に設置することにこだわった理由は、生理であることを先生などに打ち明けなくても自由に生理用品を使えるようにすることで子どもたちが手に取りやすくなり、プライバシーも尊重できると考えたからです。



 このうち品川区立大崎中学校では4月6日から校内の28か所の個室トイレに5個ずつ生理用のナプキンを設置しました。

1日2回見回って減った分を補充しています。



 設置を始めてからおよそ2か月で250個ほどが利用されたということで、生徒や保護者からは「急に生理になった時にも安心で助かった」「ありがたい」という声が寄せられているということです。



 菊地信江校長は「生理用品がすぐ手に取れる場所にあることは、子どもたちが安心して学校生活を送るために必要なことだと分かりました」と話しています。

 品川区が今回、配布した生理用品は防災備蓄品として購入していたもので数に限りがありますが、無くなっても学校のトイレに継続して設置できるようにしていきたいということです。



 品川区教育委員会事務局の有馬勝庶務課長は「生理用品はこれまでも保健室に用意していましたが、トイレに置いたことで本当は必要だけど言い出せなかった生徒にも届くのではないかと思います。生理をめぐる不安を1つ取り去ることで、子どもたちの学びの環境整備になると思います」と話しています。
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 「
経済的な困窮や親のネグレクトなどが原因で生理用品を十分に手に入れることができない」事態を「生理の貧困」と認識し、捉えるのであれば、『経済的な困窮や親のネグレクト』の影響は、「生理用品」に止まっていない可能性があります。

 
高額商品では無く、月に数日程度の高額とは言えない出費である「生理用品」が満足に買えないのであれば、「ハンカチ、ティッシュペーパー、歯ブラシ・・・」等にも及んでいる可能性があります。これらは生理用品と違って毎日使う物です。
 
 もし、「経済的な困窮や親のネグレクトなどが原因で」、児童・生徒がこれらにも
不自由している実態があった時は、学校のトイレに「ハンカチ、ティッシュペーパー、歯ブラシ・・・」等を常備しておくと言う発想になるのでしょうか。

 それとも対象はあくまで
「生理用品」に限ると言うことになるのでしょうか。もし、そうだとしたらその理由は何なのでしょうか。

 学校以外の社会では、
トイレにトイレットペーパーがあるのは常識ですが、トイレに手を洗った後に使うタオルやハンカチ、ペーパータオルが用意されているのは一般的ではありません。生理用品が公衆トイレに用意されている事ももちろんありません。

 そういう社会にあって、
生理用品が、学校のトイレに常備されているのが当たり前で良いのでしょうか。自分(自宅)で用意すると言う事を教えるのも教育の一部ではないでしょうか。
 教育の場が
現状追認、対症療法がすべてであってはならないと思います。

 指摘されている
「生理の貧困」があるとすれば、それは日本で拡大する社会の劣化(貧困の拡大、家族の崩壊等)の一側面です。社会の劣化に対して、原因を突き止め効果的な対策を実施するという正当な対応を取らず、現状の追認と対症療法の繰り返しを続ければ、社会の劣化には歯止めが掛かりません。

 それにしても、
なぜ、急に「生理の貧困」などと言い出したのでしょうか。それは記事の冒頭に挙げられている“女性活躍、男女共同参画社会”に活力を与え、注目を集めるための“女性アピールの目玉”として、“新型コロナ”、“デジタル化”等の流行語と合わせて採用されたと見受けられます。
 「生理」は男が口出しできない
“女の聖域”であり、それが“切り札”として使われたのです。

 しかし、皮肉なことですが、
“女性活躍、男女共同参画社会”こそが「生理の貧困」の一大遠因では無いでしょうか。
 わかりやすく、端的に言えば
子供の「生理の貧困」と言う社会現象があるとすれば、それをもたらしたのは、子を持つ夫婦の“離婚”の増加であり、さらにそれをもたらしたのはと言えば、“父母の役割分担”、“夫婦の役割分担”、突き詰めれば“男女の役割分担”の全面否定による社会の変化(劣化)です。

 それらの否定は
男らしさ、女らしさ(その中でも男の責任感と女の我慢強さ)と言う二つを喪失させ、未婚の増加離婚の増加を招きました。その他の要因(例えば大企業の国内工場の閉鎖、国外移転の増加による貧富の差の拡大という経済の劣化)も、もちろんありますが、単純化して言えばこうなるのでは無いでしょうか。
 
 つまり
女性活躍と男女共同参画推進のための、“女性アピール”の目玉として、“新型コロナ”、“デジタル化”などと合わせて、“生理の貧困”が採用されましたが、皮肉なことに、それは「悪い結果(生理の貧困)」が、その「原因(女性活躍、男女共同参画社会)」の引き立て役に使われていると言う事にしかならないのです。素直に考えれば、逆効果にしかならない事が平然と行われているのです。これは“生理は女の聖域”という過信(誤認)があればこその展開と言えるでしょう。

 
「少子化問題」が本当の原因から目を背け、原因に見合う対策を取らず、偽りの少子化対策(子育て支援)を繰り返し、続けた結果、人口減少が加速し今日の事態を招きました。同じ誤りを繰り返してはなりません。

令和3年6月5日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ