私の研修時代に影響を与えた人たち

学生時代の講義は大きな講堂で、「いまからメモをとってください」といったものが多かった。プリントをもらえば、それ以上でもそれ以下でもないという退屈な講義であった。学生がわかろうが、わかろまいが関係なく自分の言いたいことだけを話して帰っていく先生が多かった。

1976年初めてカルフォルニアへいった。UCSFで見学させていただき、レジデントによる学生への教育に参加させていただいた。お互い質問しながら問題点を明らかにし、教えていくというものだった(いまでいう問題解決形式)。日本で、私が受けた講義とまたく異なっていた。昼の講義でも非常にわかりやすく、相手をみて、相手が理解できて初めてその講義が優秀であるとの考え方をもっている医師が多かった。

その後、大阪医大の6回生の時、ポリクリで臨床を小グループで教えてくれた、淀川キリスト病院の外科の白木先生。1年前にみたUCSFでのレジデントによる教育と同じ形式であり、勉強する意欲をわかしてくれた。もし、後で述べる弘田先生とあわなければ淀川キリスト病院で腹部外科を専攻していたかもしれない。

大阪医大の脳外科の太田富雄先生。かれの講義もユニークだった。大講堂なのに、順番に学生をあてて答えさす。講義に引き込まれていったのを思い出す。

当時大阪医大の3内科の助手であった故弘田雄三先生は、私が6回生の学生であった1977年時、先生の当直の夜一緒に患者をみせてもらった。25才のASDの症例で、病歴を一緒にとり、身体所見をとり、弘田先生が聴診器をあてて拡張期にのみ注意しなさいといわれPRの雑音がわかり、心電図、レ線と合わせて学生の私がASDの診断にいたった。

勉強は、受ける人間に勉強するmotivationがなければ不可能であり、memorizeするのではなく、理解するものである。自分の20年前を思い出しながら、勉強の楽しさ、臨床をすることの楽しさ(日々新しい患者をみることにより、自分に着実に実力がついて来るのを実感する)を学生・研修医に教えてみたいと思っている。 99-10-15