〜2002年カンヌ国際映画祭グランプリ受賞〜

最優秀主演女優賞 カティ・オウティネン


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いま、ここにあるしあわせ。 

 ヘルシンキに流れ着いたひとりの男。しかし彼は暴漢に襲われ瀕死の重傷を負い、一命をとりとめるも、過去のすべての記憶を失ってしまう。過去を失った男は、絶望の淵でささやかな人生をひとコマづつ重ねていく中で、イルマという女と出会うのです。
それは男にとっては初めての、あたたかで満ち足りた思いとなって、人生を柔らかく包みこむのでした…。
ミニマルかつ叙情的、ユーモラスで牧歌的でありながらも人生の苦渋を浮かび上がらせ、やがて生まれる再生と希望を見事に描いたアキ・カウリスマキ監督の最高傑作。都会の片隅で静かに息づく人間の営みと幸せのありかを、カウリスマキ独特の時間軸の中で美しく表出させた至福の映画が誕生した。

 

2002年カンヌ国際映画祭。カウリスマキ的幸福感が世界を包んだとき―

 2002年5月。カンヌは、アキ・カウリスマキ監督の最新作『過去のない男』に、グランプリそして主演女優の二冠を授けました。この年のカンヌは例年になく大物監督の最新作が出揃い「審査員全員の希望を反映するには賞の数が足りないが、最終的に選び出した作品には大変満足している」と審査委員長を務めたデイヴィッド・リンチをして言わしめるほどの激戦。にもかかわらず、唯一この作品だけが主要二部門を制覇するという快挙を成し遂げたことは、映画の完成度の高さはもちろん、そこから溢れ出す幸福感に抗いがたい魅力があったことの結果であることは間違いありません。

人生は、前にしか進まない―。未来にこそ存在する自分の場所

 暴漢に襲われ過去のすべての記憶をなくした男は、やがて彼を取り囲む人々の支えにより、奇跡的に人生を再生させます。しかしそれを促したのは決して奇跡的な出来事ではなく、人間のありふれた営みが彼の人生をそこに導いたのです。再生はやがて希望の果実となり、逆に彼のまわりの人々の人生を美しく彩っていくことになります。今ここにある現実、そして未来にこそ大いなる関心を抱いたからこそ誕生した映画が『過去のない男』なのです。

至福のラストシーンへと導く恋ものがたり

 今回の映画の重要なもうひとつのモチーフとなるが、イルマとの間に生まれる恋物語。記憶のない、まっさらな男にとって恋愛的な感情は新鮮で、表現されるその思いと行動は、ストレートすぎるほど。一方イルマにとっても初めての恋。大人同士の恋愛とは思えぬ、ういういしさと瑞々しさは映画の原動力となっていきます。

カウリスマキ作品の集大成にして最高傑作!

 監督は『浮き雲』『真夜中の虹』『レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ』など独自の世界観が圧倒的な共感を呼んでいるアキ・カウリスマキ。今回の作品では、現実に立ち向かってゆく強さや前向きな気持ちに裏付けされたカウリスマキ映画特有の楽観主義と、現実と夢のあわいの中でおきたかのような天井の物語がスクリーンを満たします。
 主演は『マッチ工場の少女』『浮き雲』『白い花びら』などでも主演を務め、限りなく無表情に近いがゆえに生まれ出る豊かな表情により、文字通りカウリスマキ映画の’顔’となったカティ・オウティネン。今から15年以上も前から、カウリスマキ作品に出演し続けている彼女の今回のカンヌ映画祭主演女優賞受賞に、多くのファンが涙したに違いありません。一方、彼女に一目惚れしてしまう’過去のない男’に扮したマルック・ペルトラも『浮き雲』『白い花びら』に続く出演となり、カウリスマキ組の新勢力として、今後のコンビネーションが注目。また終盤には日本で人気急上昇中のクレイジーケンバンドの楽曲「ハワイの夜」が映画史に残るであろう名シーンに登場します。

もうひとりの主演女優犬ハンニバルも登場

 本名はタハティ。95年12月5日生まれで、カウリスマキ映画に出演した祖母ライカ(『ラヴィ・ド・ボエーム』)、母ピートゥ(『白い花びら』)の血をひく名犬。タハティとはフィンランド語で’星’の意。ハンニバルはもちろん’食人鬼’の意。


<キャスト>

マルッキ・ペルトラ/カティ・オウティネン/ユハニ・ニエミラ
カイヤ・パカリネン/サカリ・クオスマネン/アンニッキ・タハティ

<スタッフ>

製作・監督・脚本:アキ・カウリスマキ

撮影:ティモ・サリミネン

録音:ユウコ・ルッメ/テロ・マルンベリ

編集:ティモ・リンナサロ

衣装:オウティ・ハルユパタナ

美術:マルック・ペティレ/ユッカ・サルミ

照明:オル・ヴァリア/カッレ・ペンッティラ

助監督・メイク:ナジャ・デルコス

製作会社:スプートニク

共同製作:パンドラフィルム/ピラミッド・プロダクション

2002年/フィンランド映画/カラー/35mm

ドルビーデジタル/上映時間1時間37分

提供:TBS+トライエム+博報堂+ユーロスペース

配給:ユーロスペース


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