間宮兄弟

だって間宮兄弟を見てごらんよ。
いまだに一緒に遊んでるじゃん。

　何年か前の夏の夜、神宮球場に野球を観に行きました。僕の前の席にいたサラリーマン風の男二人づれの楽しさが後ろにいる僕にも伝わります。ビール片手に、一球一打にお互いが感想を言い合い、野球を知っているだけではなく、そのウィットあふれる雰囲気に僕はうらやましくなりました。 「この二人は、試合のあとも語りあうのかな、女の子に気を使わない男同士の友達っていいな」と思いました。僕は一人っ子なので、子供の頃友達が自分の家に遊びに来てもいずれは帰ってしまうことに寂しさを感じていました。 「兄弟っていいな、ずっと一緒に遊べるし、話が出来るな」と単純に思っていました。年を重ねていくうちに、兄弟はそんな甘いモノじゃないことも知りました。でも、こうして野球を楽しむ男友達を見ていると、趣味が同じでライフスタイルも共有出来る関係ってストレス無いな、こういう人間関係を提案したいなと思って脚本にしようかなと考えたこともありました。 　それから何年かたち、こうして「間宮兄弟」という格好の原作に出会うとは思ってもみませんでした。 「間宮兄弟」には金も名誉も恋人もありませんが、誠実にきちんと、しかし楽しく暮らしています。そして誰でもが心にある理想の暖かさや、思いやりが描けると思いました。どうぞ、日頃のストレスから一時解放され「間宮兄弟」の生活を御覧になって下さい。

●　原作：江國　香織　●

　日々をシェアする人のいる喜びが、丁寧にえがかれた映画でした。

人生を共有してきた人のいる心強さも。画面の色合いと細部に心惹かれました。

そうそう、そうなのよ、と何度も思った。

「反省会」の場面がとくに好きでした。

ゆずれないことはゆずれない、という姿勢をあたりまえとして暮らすこの兄弟には、

たしかに美学（の、ようなもの）があるのです。

軽やかだけれど滋味豊富な映画を、観せてもらいました。