・Matthew Bourne's Nutcracker!・

Match 26 & 27 2004, Japan Tour Report Vol.2

・・・By Natsumu・・・


 今までのグレーが基調の色使いから、一気に光に満ちた美しい世界へ。白いネグリジェのままのクララを除く、フローズンレークでの子供たちの服装はとってもキュート。
 白という色の統一はありますが、一人ひとり良く見ると帽子やマフラーなどの小物までデザインが違っていて、なかなか凝っています。
 特に女の子は今までの寒そうな衣装ではなく、襟や裾に白いファーがついていてとても暖かそうで、ちょっとゴージャス。クララの夢の中では皆いいお洋服を着て楽しそうに笑っているのですね。
 そんな子供達のコスチュームの中で、私のお気に入りアイテムは何と言っても帽子です。シンプルなものもありますが、おとぎの国風なものもあり、デザイナーの趣味の良さと遊び心を感じさせられるのです。

 さて、舞台の上では雪だま(もちろん普通サイズ。笑)が行き来しています。子供たちは雪合戦をしていると私たちに分かる頃、そのかわいい子供たちが出てきました。しかも、スケート靴を履いてこちらに滑ってきます。

 どうやら我々はスケートリンクに居たらしいとここで初めて分かるのですが、ちょっとした動作とアイテムで、あっという間にその場面を私たちに分からせてしまうマシュー。相変わらず上手いです。

 楽しそうに氷の上を滑る子供たち。谷古宇さんも生き生き踊っています。そののびのび感に、僭越ながら何だか日本人としてホッとしてしまいました(笑)

 さて、見るからにゴージャスなシュガーが登場します。白のワンピースを着た女の子の中で、一人だけピンクのワンピース、しかもラメ入り。きらきら、きらきら輝いています。でもそのピンク色は以前見たより少し抑えられているような・・・フローズンだけに結晶に覆われているのか、ちょっと白っぽく感じます。

 ミカのシュガーは相変わらずパっとした華やかさはありませんが、安定した踊りをしています。演技力も相変わらず好調で、言いたいことは全部こっちに伝わってくるという感じ。ですが、ここで意外な発見がありました。それは、シュガーとプリンセス・シュガーの変化の無さ!これは注目点ではないでしょうか。

 サラーンのシュガーの場合、孤児院では女の子、フローズン・ランドではピンクのドレスの美しさもあり、登場から嫌がおうでも、目が惹きつけられてしまう「大人の女」の「魅力」を感じさせるプリンセス・シュガーでしたが、ミカのシュガーは孤児院もフローズン・ランドも「同じ年齢の女の子」で「間違いなく同一人物」でした。
 これはとっても大きな違いです。また、サラーンのシュガーはフリッツが弟に見えますが、ミカだとフリッツと年子かシュガーが妹に見えるのです。

 どっちが良い、悪いと言っているのでもなく、どっちが正確な解釈かと考える必要もないと思うのですが、とにかくシュガーの設定が微妙に違ってきている事が、非常に面白く感じられました。
 そして、シュガーとプリンセス・シュガーの年齢の一致は、孤児院とフローズン・ランド、スイート・ランドがフラットである事を明確化させ、それにより物語の印象、解釈も微妙に変わってきているのです。面白い!

 さて、話題の大きな雪たまぶつけてくるみ割りをゲット!がシュガー的には無事終わり(笑)あっという間にくるみ割りは心変わり。
 これを言ってはミカに失礼ですが、見るからに美しく、彼女が言い寄れば男の子は誰でも好きになっちゃうのでは?というサラーンのシュガーが彼をゲットする為に「雪たまショック」行動に出たというよりも、きれいな衣装を着た普通の女の子、ミカのシュガーが彼をゲットする為に「雪たまショック」作戦に出たという方が、物語の展開に説得力があります(笑)。

 相変わらずの姑ぶりなプリンス・ボンボン、リー・スマイクルズ。雪が降ってきて口を大きく開けて食べようとするシーン。どこの国の子供も同じ事をする(笑)と、万国共通の行動に笑いを覚える人は多いようですね。会場からも笑いが起こっていました。

 ユアンの雪食べ行動がムキになっていてどっかイッてるフリッツを見事に現していたのに対し、リーのフリッツは舌長っ!ってそれだけかい、感想は?!と言われそうですが、いやはや、本当に印象な舌でした。

 サドラーズではこのシーンにも、キングとクイーンが登場していましたが、今回それはカット。考えてみれば、両親にくるみ割りを紹介するシーンがスイーティー・ランドであるのですから、登場の必要はなく、物語もシンプルになりすっきりしたと思います。

 それにしても、改めて上手いと思わされたのは子供たちのスケートシーン。その昔、「シンデレラ」の初演、1幕目最後のコールド。大人数で舞台をバタバタ出たり入ったりしているように見え、まだコールドの扱いが慣れなくて困っているのかしら?と素人の私ですら感じたマシューの姿は今やどこにもなく、とても楽しいシーンに仕上がっています。
 ああ、楽しいっ!とその色使いと動き、音楽との絶妙なバランスに幸せを感じてしまうほどに。来日してくれて良かったと、何故かこのシーンで改めてしみじみしてしまいました。

 お約束の女の子のワンピースの裾がひらひらと手動でかわいく揺れる、を堪能し、あっという間に1幕目が終了。
 終わった途端「楽しい!面白い!」と言った『くるみ割り人形』初体験の友人2人の感想に、思わず余裕の笑みを浮かべ、休憩に突入しました。


・・・この続きは、来週更新致します。・・・
☆冒頭の写真は、Sadler's Wellsのポスターを撮影したものです(撮影・Natsumu)☆


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