ニューヨーク旅行記〜チャイナタウン編〜 



<11/2・昼>

 チャイナタウン。映画やマンガから受ける印象では、結構治安が悪そうで、NYにぽっかりと出来た異空間。一体どんな所なのか。案外想像よりも普通の街なのでしょうか。でもまあ、吉田秋生のマンガ、BANANA FISHのような事はないだろうと当たり前の事を思いながら、セントラルパーク近くから、キャナルストリート行きのバスに乗り込みます。

 今日は月曜日。平日のお昼前という事で、車内は結構すいています。
二人並んで腰をかけ、バスに揺られる事数十分。何とはなしに車内ウォッチングを始 めると、20代ぐらいの、ちょっと目をひく男性を発見。短めのダークブラウンの髪に面長の顔。読んでる新聞はイタリア語です。そうか、イタリア系なのね、この人。色々な国から人が集まるこの街では、何語の新聞でも手に入るのかもしれないとぼんやりと考え紙面を眺めます。
まあ、この街にはリトル・イタリーがあるぐらいですから、イタリア語は結構メ ジャーなのかもしれません。

 行けども行けどもなかなか着かないキャナルストリート。道路の混雑もあり余計に時間がかかっているのですが、思ったよりも離れています。

 まだかなぁと思って揺られていると、友達が下りると教えてくれ、遂に到着。 バスの乗降口の階段をおります。すると、そこはもう違う国になっていました。

 教えてくれた住所を目指してチャイナタウンに足を踏み入れます。さきほどまではNYに居たはずなのに、今居るところはどう見てもアジア。香港に行ったことはないのですが、広さはともかく、おそらくこんな感じなのでしょう。
 所狭しと掲げられた色とりどりの派手な看板には漢字が踊っています。 そして、日本の観光地でも良く見かけるような、プラスチック製などの安っぽい置物 がずらっと並んでいるお土産屋さんが軒を連ねているのです。もちろん棚は自由の女神だらけでした。

 飛び交う中国語、忙しく歩き回る人達。そして、迷子になりそうな路地。そして何とも言えない緊張感というか、危険な空気。
かなり度胸があると思っている私の友達ですら、ここで写真を撮って歩くのはやめて おいたほうがいいと言い出したことからも分かるように、こう、空気が違うのです。

 ニューススタンドにある新聞はもちろん中国語が主流。雑誌も中国語のものがたくさん並んでいます。路地に椅子を出して座っているおばあさん、そして鮮魚を売る屋台。ここだけはもう、本当に中国です。
中国人にとって生活に必要なものは全てここで手に入るんだろうと思うと同時に、 チャイナタウンに生まれ、中国語だけで生活をし、一生を終えるアメリカ人もいるかもしれないと思いました。

 とにかく、ここで迷子になるのだけは避けたいと、必死で先を行く友達についていきます。
住所と地図を頼りに進み、大通りから遂に狭い路地へ。ビルの谷間なので影になって いる道をおっかなびっくり進みます。地元の人達にしたら何をそんなに怖がっている の?と思われるのでしょうが、初めてのチャイナタウンは私にとって結構緊張の連続です。

 何だかしらないけど、とにかく怖いとおっかなびっくり路地を進みますそれにしても、なぜこう看板だらけなのでしょうか。 辺りを見まわすと、なぜかさっきから床屋さんばかりが目につきます。バーバーでは なく、「床屋さん」という雰囲気の店が、かたまってあるのです。
こんなところに中華料理屋が本当にあるの?と少々不安になりながら角を曲がると、今度は飲食店が数軒並んでいる道に出ました。脇さんに教えてもらった、「Joe's Shanhai」に漸く辿りつきます。

 店の窓には雑誌で紹介されたという切りぬきが貼られ、店内は平日にもかかわらず 混雑しています。揃いのTシャツを着ているスタッフに迎えられ、テーブルに案内さ れました。
辺りを見まわすと、いかにもアメリカ人のビジネスランチ風から、アジア系のグルー プまでとにかく雑多です。
 渡されたメニューを見て、絶対に食べないといけないと、ここに来る人全員が思っているであろうカニ入り小龍包とスパイシーチキン、そしてヌードルを頼みます。

 流石は人気メニューだけあって、アッと今に蒸篭が運ばれてきました。注目の小龍包です。あつあつの証拠に湯気が立っています。早速一つをお皿に運び、一口かじりつきます。すると・・・
「ああっ!!!」
想像を遥かに超えた量のスープが飛び出し、お箸を握った右手、そして右手首周辺を 通って袖口まで、一気にスープだらけになってしまいました。
白いブラウスの袖が、黄色というか、カニのミソ色に染まっています・・・ しかも、これが痒いのです。
「か、悲しすぎる・・・洗面所で洗ってくるね」
という訳で、料理を後にトイレに移動。しかし、この小龍包。無事に食べようと 思うのなら、半そでをお薦めします。とは言うものの、私がドジなだけだという気も するのですが。

 すっかりびしょびしょになったにもかかわらず、いまいち汚れがとれなかったブラウスの袖を折り返して、再びテーブルへ。戻るともう他の料理が揃っていました。
思ったよりも太い麺。時間がたってしまったのか、もとからそういうものなのか、 スープもあまりないような。味も独特でちょっと苦手です。
スープ爆弾で玉砕・・・何だかすっかり疲れてしまい、結局麺は残してしまいまし た。

 オーダーをちょっと失敗してしまったようだと話しながら支払いを済ませ外に 出ます。爆発事件さえなければ、あつあつのおいしい小龍包を楽しめたのにと がっかりして、来た道を戻ります。
 何げなくのぞいた眼鏡屋さんのショーウィンドゥ。 さっき通った時には気づかなかったと観察すると、そこには・・・
「何これっ!!」
「き、気持ちわるいっ!!!」
手首から上だけの手が眼球を握り締めていて、そこから血がでているという ホラーというか、スプラッタな置物が飾られています。
「・・・悪趣味」
「何を思ってこんな物を飾っているの?」

 うーん。恐るべしチャイナタウン!どうも我々とは感覚が違うようで。こんな物を置 いている お店で眼鏡を作る人なんているんだろうかと首を傾げながら地下鉄に向かいました。


・上の写真は、チャイナタウンです。(著者撮影)


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