ニューヨーク旅行記〜MoMA編〜 



<11/2・午後>

 魚を売る露天商のおばさん達と人ごみの間をかいくぐり、地下鉄の 入り口に辿りつきます。
地下鉄は言うまでもなく地下にホームがあるので、階段を降りていくことになる のですが、どうもこう、さびしげな雰囲気が漂っています。 しかも、この入り口の上には、複数の線が表示されている・・・
 これだけ複数の路線が集まっているという事は、乗りたい線に辿りつくまでに 結構かかるのかもしれない。と、少し嫌な予感がしてきます。

 階段を降りて目指す路線の表示を頼りに移動。 すると、結構暗いホームが現れました。どうも今は使われていない ような静けさです。
「ねえ。もぐら人って知ってる?」
早くここを通り抜けたいと早足で歩きながら、何かしゃべらないと余計に 怖い気がして、友人に質問。
「知らない。何なの?それは」
「もぐら人っていうのは・・・」
暗いホームを歩きながら、必死で明かりを求めてほとんど駆け足状態にも かかわらず、「もぐら人」の説明を始める私。

 「もぐら人」というのは、地下鉄に住むホームレスをさします。保護施設であるシェルターに行かず、道に住まず、地下鉄の線路ぞいに住む人達。それがもぐら人なのです。
 そんなところに人が住める訳がないと思うのですが、実はかなりの人がニューヨークの地下鉄には住んでいるらしいのです。その実態を探るべく、1990年代(だったと思います)ある大学生が彼らをインタビューし、一冊の本を出版しました。 その本によると、シェルターも地下鉄も殺人事件が絶えず、同じぐらい 危ないとの事。でも自由がある地下鉄の方がいいという事でもぐら人になる人が後をたたないとか。というわけで、私達が今暗闇だと思っているところにも、人が沢山いるかもしれない・・・

 なんて話しを暗い地下鉄のホームを歩きながらすると、
「ただでさえ怖いんだから、もう、そんな話ししないで!」
と怒られてしまいました。
「だって、思い出しちゃったんだもん」
お化け屋敷で怪談をするような愚行をしたにもかかわらず、バチはあたらず無事目的のホームに到着。良かった〜と胸をなでおろします。

 地下鉄に乗りこみ、目指すはMoMA(ニューヨーク近代美術館)。改札を出ると、再び見なれた高層ビルの立ち並ぶ街が広がっています。まるで地下鉄がアジアとアメリカの秘密の抜け穴のように感じられます。

 車の行き交う道の横にはプレッツェルを売るスタンドが所々にあり、 歩道を行きかう人々は皆足早です。地図を頼りに進んでいくと、ありました。
余りにもビルの中に紛れているので見落としてしまいそうですが、 MoMAです。ロゴの入った旗が掛かっていなければ、見落としてしまいそうな ほど、さり気無い建物です。

 早速中に入り、チケットブースへ。この時はジャクソン・ポロックの回顧展を特別展示でやっていました。
ドロッピングアートのポロック。美術の教科書で見て以来、印象には残っていますが わざわざここで見たいとは思わない・・・という訳で、常設展だけのチケットを購 入。
 入り口を入ると正面には庭があり、そこに彫刻が展示されています。その庭が 見える位置にはカフェがあります。そして中央に展示室に続くエスカレーター がありました。日の光りが入る、明るいミュージアムです。

 二人とも美術館の中は自由行動という事にして、待ち合わせ場所と時間を決めてからわかれます。
私はまずエスカレーターを使って上の展示室に。早速ポロックの回顧展の入り口が 現れます。かなりの面積を使っているようで、そう、回顧展というよりは「大回顧 展」という感じ。そのせいで、常設展示の数が減っているようです。
 数年前上野の「MoMA展」で見た絵が余り無いというところが、私の推測を 裏付けているようで・・・まあ、展示品は入れ替わっていくのでしょうから一概には 言えないのですが、とにかく、その時のMoMAはポロックを中心に動いているという雰囲気でした。

 印象派、近・現代の作品を一通り見て、あっという間に一周してしまいます。 博物館などと比べると、思ったより広くないのと、ポラックの回顧展にかなりのス ペースを割いているからなのでしょう。結構あっけなく鑑賞が終わってしまいました。

 約束の時間より早いのですが、することもないのでとりあえず待ち合わせのカフェに行くと、同じく早々に見終わってしまった友達を発見。
せっかくなので何か食べてゆっくりして行こうという事になり、セルフサービスのカ フェカウンターにトレーを持って進みます。ティラミスをシェアすることにして、ドリンクを一つづつ選んで彫刻の見える窓際の席に着きました。  案外あっさり見終わったと話しながら食べたティラミスは、
「結構いける!」
「NYってはずれが少ない」
そうなのです。美術館のカフェでこれなら合格点です。

 休憩の後ミュージアムショップに移動。書籍類が充実している店内には 買い物に来ている人でにぎわっていました。 プレゼントをここで購入していく人も多いのでしょう。
我々は一通り見た後、次の目的地、友達がその友達から買物を頼まれたシャネルに向けて出発しました。


・上の写真はMoMAの写真が無いため、紅葉の美しいセントラルパークです。(著者撮影)


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