ニューヨーク旅行記
〜メトロポリタン・ミュージアム編・4〜 



<11/3・午後>

   美術品の海は広く、果てしない・・・という訳で、有りもしない勘を頼りに階段を上り、通路を抜け、お決まりの様に自分が今何処を歩いているのか分からず、しかしお決まりだけに大して気にもせず歩いて行くと(本当は悩むべきなのかもしれませんが)、いきなり吹き抜けを見下ろす通路に遭遇。のぞき込むと家紋かと思われる旗と馬に乗った甲冑の一部隊がありました。

   おお、こんな物まであるのかと、驚いているうちに楽器エリアに突入。本当はエジプトに向かってるのであって、決して楽器を目指していた訳ではないのですが、大学では音楽専攻だった私ですし、一応見ておかねばと、未だ自分のこの博物館における位置関係に不安を抱きつつ見てまわります。
 今では考えられないほど装飾過多なピアノ・フォルテ、正倉院展でお目にかかるような琵琶、果てはシャーマンのガラガラまで!さすがアメリカ。広くざくっと集めています。

   でも、いつも思ってしまうのですが、こうしてショーケースに入れられてしまった楽器というのは、楽器の命にとってはどうなのでしょうか。音がどんどん悪くなっていっているのは間違いないでしょう。
 とは言え、他では見られないような珍しい楽器をざっとですが鑑賞できるというのは博物館ならでは。一応の満足を感じ、今度こそエジプトと、真剣に地図を見ます。

 思ったよりはましだったようで、現在地はエジプトエリアのほぼ上。まれに見る快挙!という事で、そのまま下りてエジプトエリアに漸く接近。いよいよです。

 最初に現れたのはベルネブの墓。いきなり墓の入口が登場。組まれた石、テレビで見たことのあるエジプトの墓と同じ様式で作られた入口。先程までと雰囲気ががらりと変わります。いかにも、エジプトです。ちょっと、ミステリアスで、そして古代ロマンを感じさせる展示の始まりです。

 まずはエジプト美術の展示室が現れます。王の彫像、スフィンクス、石像、木棺、石棺、そして、臓器が収められていた人の顔が蓋になっている壷。それらが所狭しと並んでいます。狭い通路の左右がガラスのショーケースになっていて、そこに臓器を入れていたと思われる壷がずらりと並んでいる。古代エジプト特有の、あの目を持つ人の顔が蓋となってずらりと並んでいる。更にその部屋には人が居ない・・・とくると、ちょっと入るのに躊躇してしまいます。

 美術品と思えばすばらしくアーティスティックなのですが、使用目的を考えてみると、死者の臓器が入っていた壷と棺。うーん、これが日本のように、人がいっぱい居れば何という事はないのですが、私一人でこの奥に入っていくのは、やっぱりちょっと勇気がいる。この通路の狭さも、非常にこう、何かくるものが・・・
 海外の博物館や美術館は混雑に出会う事が少なくてとってもいいのですが、ここではその混雑が懐かしいというか、あって欲しい!ちょっと今、肝試し入っています。

 とはいうものの、展示品は実に芸術的。そして、驚くほど色が鮮やかに残っているものが多いのです。素晴らしい。素晴らしいと言えば、一際私の目をひいた彫刻がありました。『供物を運ぶ女性像』です。木製の彫刻で、女性が頭の上に供物の入ったカゴをのせているのですが、111cmもある大きな作品であるにもかかわらず、非常に色鮮やかに、そしてどこも欠ける事なく、美しく残っているのです。
 前1990年に作られたと推定されているという事は、この彫刻は4000年近くの年を経てここに存在している事になります。信じられない!本当に、感動です。不思議です。すらりとした彼女の姿と、美しい衣装にしばらく足を止めて見入ってしまいました。乾燥したかの地で彼女は長い年月眠っていたのでしょう。古代エジプト人の高い技術に改めて感心させられました。

 古代の芸術に感動し、更に進んでいくと、いきなり広い空間に出ました。薄ぐらい部屋を抜けて辿り着いた先。それはデンドゥールの神殿だった。 というぐらいのインパクトを持って、自然光の差し込む高い天井の広い展示室の奥に、「神殿」が鎮座ましましていました。大きい。でも、思っていたよりも小さいかもしれない。
 と、あれこれ考えているうちに、あああ。頭の中で大貫妙子の「♪メトロ・ポリタンミュージアム」が聞こえて来た。来た来た来たっ!!子供の頃見た『NHKみんなの歌』で、この歌の映像に神殿が出てたのよねぇ。そう。当時、自分が将来、本当にNYでこの神殿を見る日が来ようとはかけらも思ってなかったのよ。と、ちょっと感慨に浸ってみる私。

 この空間では、今まで余り見かけなかったギャラリーが結構くつろいで居ます。何だ、皆ここに居てたのねというぐらい。あちこち腰掛け放題という造りもあいまって、和やか〜な雰囲気が漂っています。部屋の奥、一段高くなったところにある神殿。その周りにはお堀のように水がはられています。その掘りを守るように置かれた石像。そして、大きくとられた窓からは光が差し込んでいて、本当に気持ちのいい空間です。

 とりあえず、神殿まで行ってみよう。という事で、てくてくと歩いて行きます。それにしても、こんな物をエジプトから持ってきてしまうなんて。今更ですが、恐るべしアメリカ。そして、かわいそうなエジプト。ちゃんと合意で持って来てるのかしらと、思いっきり疑ってしまいましたが、すみません。これはエジプトから寄贈されたものでした。
 それにしても、近くで見ると絵に描いたような代物です。というか、柱や壁には本当に絵が刻み込まれているのですが(笑)実際にエジプトに行くと、きっと驚きの連続なのでしょうね。展示品としては非常に大きな建造物の前に、しばし佇み見上げていました。

 さあ、再び行動開始です。歩いてみると結構広いこの「和みの広場」(いつものように、勝手に命名)を抜け、次の目的地ティファニーのエリアに向かいました。


・上の写真はメトロポリタン・ミュージアムの「和みの広場」(笑)です。(著者撮影)


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