ニューヨーク旅行記
〜メトロポリタン・ミュージアム編・5〜 



<11/3・午後>

 更なる憩いの場を求めて・・・いた訳ではありませんが、美しいガーデン・コートと呼ばれる屋内庭園に無事到着。この空間は2階まで吹き抜けになっていて、セントラルパークも見え、非常に開放的でありながら、エレガントでまったりとした空気が流れています。というのは、そこに置かれた彫刻が醸し出す雰囲気がエレガントでまったりとしているからなのですが。

 まず目をひくのは、ティファニーの笛を吹く(ラッパでしょうか?)ギリシャ神話から抜け出してきたような少年のブロンズ像とそのバックにあるステンドグラス。非常に美しく、計算された空間です。
 少年とステンドグラスの間には美しいモザイクと花の飾りに彩られた柱があります。天井に程近い部分は水色のタイルが並び、その下に黄色と青のモザイクが天井と柱の間を繋ぐべく配置されています。その下に赤いダリアやポピーといった花が4つの柱一つづつに飾り付けられ、その緑の茎がすらりと伸びた下に白い柱が続くのです。そして、少年が立つ球体からは水が流れ出し、その先に広がる水の空間には植物が置かれています。背景にあるステンドグラスは、中央が藤と湖らしき水辺と山。そして左右には同じモチーフの蔦が描かれています。更に、高い天井から吊るされた同型の3つの灯。このランプシェードにも模様が刻まれています。静寂の中、一人佇む少年の像。
 非常に美しい。そう、時間があればしばらくこの空間に座って居たいほどに。もし自分の生活圏にこの空間があるのなら、休日にはここにきて、ゆっくり読書を楽しみ豊かな時を過ごしたい。そんな空間が演出されています。

 いいなぁ。贅沢だなぁと思いながら視線を他に向けると、今度は行きなりファイティング熊ちゃんが登場!
 えらく丸々と太った熊がこっちに向かって「おれは、いつでもパンチを繰り出せるぜっ!」と言わんばかりに両手をかまえて立っていました。そして彼の左右には仲間らしき熊が。「おらおら、どけどけっ!」と歩いている向かって右の熊。それとは対照的に、左の熊はお行儀よく両手を揃えてお座りしています。
 丸いフォームの熊ちゃんズ。首のたるみが何とも言えません。このティファニーと熊の組みあわせあたりがとってもアメリカンだわ〜と思いつつ、まだちゃんと見なければいけないと思わせるステンドグラスや彫刻が置かれているガーデン・コートをとりあえず後にして、ティファニーの展示室に向かいました。

   さて、ティファニー。ティファニーと言えば、5番街のお店が有名でプレゼントに皆が欲しがる指輪やネックレスがすぐに連想されますが、実は私の中では結構どうでもいいというか、今まで欲しいと思った物がないブランドなのです。
 という訳で、この展示品もまあ、取りあえず見ておこうぐらいの思いで見に来たのですが、入った途端認識が変わりました。というより、ここにあったものは、いわゆるティファニーとは別物でした。

   先程も見たステンドグラスはまあ、美しいなぁぐらいの物だったのですが、私を魅了したのは、ガラスの花瓶。とにかく、ため息が出るほど美しいのです。元からガラスには弱い私ですが、どうしたらこんなに美しいガラスが創れるのかと、ショーケースの中の作品にただただ見入ってしまいます。ダークなベースに白や青、緑や赤の色が生みだすマーブル模様。金色と玉虫色の生みだす不思議な輝き。柔かなグリーンに美しく入る紫。孔雀の羽をイメージした花瓶。この繊細な模様はどうやって出すのでしょうか。更に、乳白色のガラスに白く浮き出した植物と、黄緑色の長い葉が浮き出している花瓶。チューリップのような背の高いガラスの作品もあります。この花弁の柔らかさがまた非常に美しい。もう、ため息につぐ、ため息です。

   本当に見に来て良かったと一つ一つに目を見張ながら進んで行くと、今度はランプシェードが現れました。ステンドグラスの作品です。先程のものに比べると、しっかりとした色使いで緻密に組まれています。私自身は欲しいとは思いませんが、ティファニーのコレクターが世界に数多く居るというのは納得出来る作品群です。

   美しい、美しいと心の中で称賛する最後の仕上はジュエリーです。青いぶどうのモチーフのネックレス。そして、特筆すべきはトンボのジュエリー。その羽の細工の繊細な事。トンボの止まっている植物もあめ細工のような金と真珠で非常に繊細に表現されています。トンボの胴体部分の青がポイントになり、ひときは目を引く作品です。これぞ、職人技。素晴らしい!でも、やっぱり私が一番好きなのは宝飾品ではなく、先程の花瓶なのですが(笑)

 見ごたえがあったと感動して、ティファニーの展示質から再びガーデン・コートへ。ファイティング熊の前に立ち、写真を撮ってから庭園の四方を囲むステンド・グラスを見るべく歩き出しました。


・上の写真はメトロポリタン・ミュージアムの「ファイティング熊」(笑)です。(著者撮影)


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