ニューヨーク旅行記
〜ニールサイモン劇場編〜 



<10/31・午後>

 子供の頃から、怖い怖いと聞かされていたNYの地下鉄に乗るべく、駅に向かいます。

 少しドキドキしながら地下鉄への階段を降りて行きます。
地下鉄とバスで使える回数カードをチケットブースのおばさんから購入。 そのまま改札に向かいます。

 ここの改札はちょっと変わっていて、動物園などの出口によくある回転扉のようなもの。腹部のみのターンスタイルではなく、全身すっぽり入る円形鉄柵回転扉です。
 まず友人が入り、上手く改札内へ。次は私と勇んで回転中の扉に挑みます。 しかし、回転を続けていた扉に少し躊躇してしまった小心者の私は、一つ空けて次の 扉のスペースに入ってしまいました。
友達が使った扉の次のスペースに居ればちゃんと改札内に入れたのに、 一つ開けてしまったが為に私は中途半端に回転扉に閉じ込められてしまったのです!

 困った!!!改札そのものに閉じ込められてしまった!!な、情けない・・・ というより、ピンチです!どーしよう、どーしようっ!!と慌てていると、 そこに運良く係員がやってきて、鍵束を出して助けてくれました。
やれやれ何をやってるんだかと思ったに違いないのですが、文句を言うことなく、何 事も無かったように立ち去って行きました。

 助け出された後、すぐに入れてもらえたから良かったものの、人気のない駅だったら、しばらく閉じ込められたままになっていたかもしれないと考え、改めて背筋が 寒くなってしまいました。
 今度から、絶対気をつけなくては!と思ったのですが、以後ここ以外の駅で、この形の扉に会ったことはありませんでした。

 無事入れてもらえたので、早速ホームに降り立ちます。
基本的にはどこの国でも地下鉄は同じで、それなりに古く、閉鎖的で、暗いせいか 乗客は皆疲れて見えます。列車の中央車両には、必ず一人ポリスが乗っているので、その車両を目指して我々は 乗り込みました。

 時差ボケで恐らくいつもよりは動きが鈍いだろうという思いと、悪名高いNYの地下鉄に、少し緊張して乗り込み、思わず周囲を目立たないように見まわします。
 まず目に入ったのは、窓ガラスの傷の多さ。落書きが落とされてしまう車両に変わったせいか、絶対に消えないように窓ガラスにひっかき傷のような落書きがされています。
次に目に入ったのは、あちこちに止まり木のように立てられたつかまり棒。
そしてポリスのブースがありました。中は見えませんが、人が入っているらしき大き さです。

ゴーッという音を立てて進む地下鉄に、夜はやっぱり怖くて乗れない・・・と感じま す。

ニールサイモン劇場の最寄駅で降り、再び地上へ。
ブロードウェイの一角なので、さぞかしにぎやかなのかと思いきや、拍子抜けするほ ど地味な路地に出ました。
「どっちに進めばいいの?」
とまたしても、初めての場所なので仕方がないのですが、どっちに進めばいいのか分 からなくなる二人。しかし、ここがブロードウェイ?ただのオフィスビル街の狭い道のような・・・劇場があると言われてもピンと来ない雰囲気です。

 でも最寄駅で降りたからには、この周辺に劇場は絶対にあるはず。 という訳で、地図を取り出し現在地を確認します。
ここで便利なのがNYの番地です。もうここだけは、この街だけは、自他ともに認める 方向音痴の私でも迷うことはありません。全ての建物の入り口に、しっかりと番地が 書かれているのです。しかも、数字の通りに並んでいるので、住所さえ分かれば絶対 にたどり着くという、素晴らしい街なのです。

 恐らく、こちらだろうという方向に進み、横断歩道の前で信号が変わるのを待ちます。ふと見上げると・・・
「ここだっ!!」
"SWAN LAKE"の看板が見えています!それだけで、もうドキドキしてきました。 信号が変わり、道を横切り劇場に更に近づいて行きます。
見ると、壁には終幕でベッドの上にSWANたちがのぼって、白鳥と王子を威嚇する 有名なシーンの大きな写真が! そして、劇場の壁には更に色々なシーンを撮った写真が飾られています。

 もう、今すぐに見たい!とうずうずしながら、劇場の入り口のチケットブースに向かいます。そこには既に短い列が出来ていて、チケットを受け取りに来た人、買いに来た人が静かに待っていました。
私たちも最後尾につきます。すると・・・
「あっ。今、4羽の白鳥だ・・・」
チケットブースのある狭いロビーのすぐ横にある扉の向こうから、4羽の白鳥の音楽 が聞こえてきたのです!今日はマチネがある日だったのです!!
「つ、辛い・・・・」
今すぐこの扉を突破して、中に入りたいっ!!この扉1枚隔てたところで、AMPの舞台がっ!!!今日の白鳥はアダム?王子はスコット? もう、もう、もうっ!!!みた〜いっ!!!!
 蛇の生殺しとはこのことで、もう、体中きゅーっっとなりながら、聞き耳を立てます。中からは、4羽のシーンだけに、笑い声が聞こえてきました。
「つ、辛い・・・」
AMPが目的でNYまで来た私たちには、まさしく拷問のようなこのスチュエーション・ ・・ 扉一枚がこの時ほど悔しく思えたことはありませんでした。 でも、どうしようもありません。ここは、我慢、我慢です。

 観られない悲しみによろけつつ、気を取り直してロビーの観察を開始。すると、アダ ム白鳥の美しいポスターが・・・
「あっ!」
これは絶対に買って帰らなければ。更に、アダム黒鳥のクールなポスターが・・・ これも買って帰らなければ!NYから家まで、折れないように持って 帰る方法を考え出さねばっ!!

 劇場の中で今、実際に舞台が進行しているという現実に私がもがき苦しんでいるうちに、列は短くなり、次は私たちというところまで来ました。
私たちの前のおじさんは、一人でチケットを買いに来ています。
「いつでもいいから、アダムの日、3枚!」
おおっ!とその分かりやすい買い方に、心の中で歓声をあげます。 やっぱりここでもアダムは人気なのねと、ちょっぴり幸せに。 私もその買い方、したいです!!その買い方、最高! とおじさんと握手したいぐらい。でも、私はウィリアムのも見たいのと 更に心の中でつぶやきます。

 漸くまわってきた我々の番。しかし・・・
「当日でないと予約チケットはひきかえられません」
という答え。という事で、見たいのに見られない拷問を味わいにだけ、ここに来たという結果になってしまいました。

 手ぶらで帰るのも何だからと、仕方なく劇場周辺の写真を撮って帰ることに。 ま、でもどんな所でやっているか分かっただけでもいいやと 気を取り直して劇場を後にしました。


・上の写真は、ニールサイモン劇場です。(著者撮影)


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