◆◇◆ On Your Toes Report ◆◇◆

… 2003 Summer …

このレポートは皆さまから寄せられたものです。
公演日順ではなく、頂いた最新のレポートが一番上になっています。


★なおこさん★
 8月16日、19日、21日の3日間行ってきました。いずれもすばらしく、そしてとっても楽しい舞台でした。キャストが一定で、それぞれが安定しているためか、そんなにこの日はこれ!という感想がないので、3日分まとめます。

 まず席に着いて驚いたのは、観客の年齢層の高さ。半分以上がかなりご高齢の方でした。古いミュージカルのリバイバルなせいでしょうか?? なんといっても元ロイヤルのプリンシパルのアダム、サラそしてイレク・ムハメドフが出るとあれば、バレエ・ファンも思わず足を運んでしまうのでしょうね。

細かなストーリーは先にご投稿の「じゅんさん」のすばらしいレポートにお譲りするとして。。
 アダムが登場した時の第一印象は、「痩せた???」 頬がこけているし、細い!! 私が行く前2週間ぐらいはロンドンはとても暑い日が続いたようですので、バテてるのかしら。。?などと余計なことを考えたりなぞし。。
 本題に戻りますと、アダムは最初の登場から結構歌ってくれます。アダムの話し声はちょっと高めで鼻声っぽい感じがするのですが、歌声ではもっと透明感が出るような。。高音から低音まで狂うことなく、とても良かったです。

 アダムのダンスはもちろん素敵ですが、アダムのコミカルな演技がまたなんともかわいいです。
 初めてヴェラに会うシーン、ロシア人のふりをしてインタビュアーに「ダー」、「ダー」と答えるところ、そして極めつけは、劇中劇「ゼノビアの王女」の奴隷役。ヘタクソに踊るアダムはかなり笑えます。最後の「ワン・モア・タァ〜イム!」もね!

 私は実物サラを観るのは初めてだったのですが、本当に演技が上手でした。ロシア語訛りのセリフ回しが最高! 個人的にはアダムを差し置きサラが一番良かったと思います。ムハメドフにはもっと活躍の場をあげたかった気もしますが、彼も上手に笑いをとっていました。

 ペギー役キャサリン・エバンスさんもとってもすばらしかったです。中でも、「You Took Advantage of Me」は聴かせてくれます。

 その他のキャスティングの中には、SWAN LAKE日本公演に参加していた人がいました。私が認識できたのは、リチャード・クルト(執事役でした)とORIADA(劇中劇の「蛾の少女」とナポリ王女役でした)の二人です。
 二人ともロシア・バレエ団のメンバー役、リチャード・クルトは相変わらずのスキンヘッドで、バレエ団の群舞の中心でした。他にもBourne作品ファンならご存知かもしれませんが、Natcrakerや Play without words他にも多数出ているEwan Wardropなどなど。人脈って大切なんですね。

 スタンディング・オベーションをしている人もちらっといましたし、帰り際に人々の会話に聞き耳を立ててたところ、極めて好評のようでした。

 それにしても3日間も行って、一度も出待ちの出来ない私ってかなりの小心者。。です。どなたか今度一人で観ている日本人の女性を見かけたら、お声をかけて下さいね〜(笑)!

 12月はアダムが再びロイヤルの舞台に立つようですし、NutcrackerとPlay without wordsが同時期に公演なのですか?? これはもう再びロンドンへ行くしかない??


★じゅんさん★
・Notice!・
ストーリーの内容を読みたくない方は読まないでください。
舞台の一部始終が知りたい人は、必読です!これから見に行くけど、英語に自信がない人も必読です!!

・・・第一幕・・・

 時は1936年。ロシアバレエ団がNYにやってきます。バレエ団の花形プリマ、ヴェラ・バラノワは同じくバレエ団の花形、コンスタンティン・モリシンと恋人同士。しかしこのコンスタンティンが他の女性と浮気をする所を、新聞記者にパパラッチされてしまいます。

 ステージに最初に出てくるのはヴェラ役のサラ・ウィルドー。ハイヒールで黒いゴージャスなレオタードがとてもセクシー。  この舞台はセットがよく出来ています。上からバレエのレッスン用バーが降りてくるのはなかなか良いアイデア。
 そしてその15年前の1921年。有名な興業ファミリーのドラン一家が劇場でタップのショーを行っています。
 その一家の1人息子、フィル・ドラン・ジュニア( この物語の主役で、以下ジュニア)はショーの目玉。最後にはズボンを下げて観客の笑いを取ります。ここで一家が歌う " Two A Day For Keith " はとても軽快なタップに乗った楽しい歌でした。

 舞台が終わり楽屋。突然母親のリリーがジュニアは学校に行くべきだと言い出します。父親は猛反対。ジュニアも突然の話に戸惑います。しかし、ここでジュニアのガールフレンドが登場。それが少し下品なショーダンサー(?) だった事から父親は「ドラン一家の誇りはどうしたんだ!」と激怒。ヤケになって、ジュニアに学校に行くがいい、と吐き捨てます。「15年後にはしみったれた音楽教師になっていることだろうよ!」

 そして15年後。ジュニアは学校で音楽教授になっています。ここでいよいよアダム登場!!
 ダサい眼鏡に1930年代らしいダボッとしたスーツを身に付け、髪はキッチリとなで付けた、冴えない教師といういでたちですが、やっぱりそれでもアダムはカッコイイ!!(笑)
 ここでジュニアが生徒達に質問をし、生徒達がそれに答えますが、これが歌になっています。

" Question & Answers ( The Three B's ) "
「音楽会の3大B は ? 」「バッハ、ベートーベン、ブラームス!」など、かなりふざけた内容(笑)しかしここで始めて聞くアダムの歌声は、ハッキリとして明朗。高めのバリトンで、予想外の素晴らしさでした。アダムのアメリカ英語のセリフまわしもとても上手いです。

 生徒の1人。シドニー・コーンが書いたジャズバレエ曲「10番街の殺人」にジュニアは感銘を受け、これを完成させるようにいいます。
そしてもう1人の生徒。フランキー・フレインの曲にジュニアが「もう少し」と答えた事から、フランキーは怒って出ていってしまいます。実はジュニアもフランキーも、お互いに秘めた想いを抱いているのですが…。

 生徒達が帰った後、待ち構えていたようにジュニアは靴をタップシューズに履き替え、「10番街の殺人」の曲に合わせてタップを踊りはじめます。音楽教師になった今も、ジュニアはダンスに対する愛を抱いているよう。
 ダサイ眼鏡を外して踊り始める所は、思わず息を詰めるほどのカッコ良さ。アダムの長い手足を生かしたダイナミックなタップは圧巻です。

 そこにフランキーが先ほどの失礼を詫びに戻ってきます。戻って来たフランキーにタップを見られてビックリする様が面白いです。
「わあっ! ミス・フレイン、一体なにしに戻って来たんだい!」
「さっきの事をお詫びに…。それよりミスター・ドラン、あなた素晴らしいダンサーですわ! 」
「ミス・フレイン、これはシークレットだ」( ここがクラーク・ケントのようで観客大笑い)
「もしかしてミスター・ドラン、あなたはあの有名なドラン一家ではないの!? 」
バレてしまったジュニアは、誤魔化すように「10番街の殺人」の話をします。 この曲に必要なのは素晴らしい振りつけ家とバレエ団だというジュニアに、フラン キーは、ロシアバレエ団の資金提供者である叔母のペギー・ポーターフィールドを紹介するから、もう一度自分の曲を聞くようにジュニアに申し出ます。

 喜んで承諾するジュニアにフランキーが歌って聞かせたのは愛の告白とも言える歌 "It's Got To Be Love "。この曲は、かなりヘンテコな歌詞で、この歌詞でも観客からは笑いが。ジュニアもフランキーに次いで歌い、ロマンティックなデュエットになります。フランキーはもう一度ダンスを見せて、といい、二人で踊り始めます。これを生徒たちに見られ、ダンサーだという事とフランキーと恋人同士になった事は大バレ。生徒たちの喝采で、この曲は大勢での合唱とタップでの見せ場となります。

 そしてセットは変わってセットはロシアバレエ団のプリマ、ヴェラ・バラノワの寝室。恋人のコンスタンティンの浮気の記事を見たヴェラはヒステリーに駆られています。(サラの演じるヴェラは、いつもヒステリックで気取った、男好きの女性。サラのロシア訛りの英語はとても上手い。というか、サラはこの高飛車なプリマ役が上手過ぎ! 喋るだけで観客の大笑いを取っていました。Son Of Bitch !! Bastard !!! などの言葉の連発で、ロイヤルの頃のサラのイメージは全く無し!)

 そこに、ジュニアのジャズバレエのアイデアを携えてペギーがやってきます。もうすぐここに音楽教授がやってくる、とペギーがいうと、ヴェラは復讐の為に彼を 恋人にする事を思いつきます。

「男!? まあ、今日は彼にとってラッキーな日よ。彼は私の恋人になれるわ。そう、 彼は私の復讐になるの。ああ、見物だわ、あのコンスタンティンが嫉妬に駆られて私達を殺すと大暴れする様が目に浮かぶわ! でもペギー、その人、不細工じゃないでしょうね」( 観客大笑い)
 そしてバレエ団の支配人、セルゲイ・アレクサンドロビッチがやってきます。ペギーの提案にセルゲイは猛反発。そこにコンスタンティンもやってきて、怒り狂うヴェラと罵り合い。この二人のやりとり、最高です。ムハメドフの飄々とした演技も楽しいです。ムハメドフはロシア訛りの英語に関してはもちろん文句無し。
 ヴェラとコンスタンティン、ペギーとセルゲイでの大口論の中やってきたジュニアはビクついた様子。ペギーはヴェラとジュニアに、二人でこの企画について話し合ってくれ、と言い残し、この争いを静めようとコンスタンティンとセルゲイと共に出ていきます。そしてヴェラのジュニアへの誘惑が始まります。

「まあ、なんてハンサムな方? もっと近くにお座りなさいな。何か好きなバレエ作品はあるかしら?」
「もちろん。白鳥の湖です」(アダムのこの答えに観客は含み笑い。意味は分かりま すよね?笑)
そしてヴェラはジュニアに「バレエではこうやるのよ。私についてきて、」と言って、無理矢理ジュニアに彼女と踊らせます。ここは見せ場の一つ。といっても、お笑いの、です(笑)
 一番笑ったのは「Where are you〜 ? 」の所でしょうか。ジュニアのサポートの手がなかなか出ないから、片足を上げたヴェラが倒れそうになるのです(笑)
 ヴェラはジュニアに自分をリフトさせ、「初心者としては悪くないわ」といい、どんどんジュニアを虜にしていきます。最後にはヴェラの誘惑に負けたジュニアは、彼女と過ちを犯してしまいます。
 ここは本当に面白いシーンです。サラ、ブラボーです。そしてアダムのぎこちない( ふりの) リフトは大爆笑。

 そして数日後、最近なかなか会う機会が無いジュニアにフランキーは不安を抱いています。不安な気持ちをシドニー・コーンに話している所に、ジュニアが能天気に登場。
「見てよ、このステップ! 来週僕はロシアバレエの舞台に出るんだ! コールド・バレ エさ!」
と言って、へっぴりごしのステップを二人に見せます。( ここのアダムのヘタッピーなステップにも大笑いです)
 最近ちっとも会えないのにロシアバレエにのめり込むジュニアにフランキーは「理解出来ないわ!」フランキーをなんとかなだめようと、ジュニアは二人で遠くに旅行に行こうと提案します。
 パリなんかどうだろう ? というジュニアにフランキーは「いいえ…」と言って、 " There's A Small Hotel " を歌います。ここも二人でのロマンティックなデュエット。しかしどこからともなく旅行鞄が出て来たり、セーラー服のダンサー達が出てきて楽しいダンスが始まります。

 幕は変わって、再びバーが上から降りてきます。場所はロシアバレエ団の「ラ・プリンセス・ゼノビア・バレエ」のリハーサル現場。セルゲイの元に、ペギーが大慌ての様子でやってきます。
 なんとこのバレエの奴隷役の一人が怪我で出られなくなったというのです。あせる二人の元に、今日の舞台の招待を受けたジュニアとフランキーが興奮した様子 で挨拶にやってきます。お招きの感謝をするジュニア。
「来週僕もこの舞台に出るなんてエキサイティングです!」
そこへペギーは「来週じゃないわ、ジュニア! 今日出るのよ!! 」と、怪我をした奴 隷役の代わりにジュニアを無理矢理舞台に出す事にしてしまいます。ジュニアは不安ながらも出る決心を…。
 そこへインタビュアーが来て、ジュニアにインタビューをしようとします。戸惑ったジュニアはロシア人のフリをしてインタビューに答えようとしますが、話の内容はメチャクチャ。なんとか切り上げて逃げますが、ロシア人のフリをしてアダムが「ダー」「ダー」( ロシア語でイエス) 言うのが可笑しいのです!!

 そしていよいよ「プリンセス・ゼノビア・バレエ」の開幕です…!!衣装は「火の鳥」のような、「海賊」のような、オリエンタルなムード。プリンセス・ゼノビアを演じるヴェラと、プリンセスが匿う男のコンスタンティンのデュエットは、マジメに演じれば素晴らしいのですが、ヴェラがさりげなくコンスタンティンを蹴ったり首を締めたりするのでもう可笑しくて会場は笑い声。
 しかも二人が演じるワザとらしいまでのバレエマイムの演技が余計に笑いに拍車をかけます。

 元ロイヤルのプリンシパル二人がこんなバレエをおちょくるような演技を…というのでも、余計にウケるのかもしれませんがも本当に可笑しいです。
 プリンセスは3人の求婚者に悩まされています。しかし何の財産も持たないこの男との恋を、王が認めるはずがありません。そこでプリンセスはこの男に奴隷の小屋の鍵を手渡し、奴隷を手土産にして求婚しに来るようにいいます。その奴隷の1人がジュニアというわけです。

 そしていよいよ求婚の場面。1人、2人、3人と、数々の財宝を手に求婚に現れますが、プリンセスは受け入れません。そこへプリンセスの愛する男がダイナミックに登場。ここはムハメドフ得意のジャンプや回転ワザの見せ場。観客も歓声です。そしていよいよ、男が連れてきた4人の奴隷たちの登場!!
 奴隷たちは体を青く塗っているのですが、1人、2人、3人とマントを脱いでそして4人目の奴隷のジュニアがマントを外すと…。
 なんとジュニアは、顔は青く塗っているのに、体を青く塗るのを忘れているのです!!顔だけ青いジュニアのマヌケな出で立ちに観客は大爆笑!!! 他のキャストが驚いてジュニアに目配せしますが、ジュニアは自分が笑われているのに気付かず、ニコニコと間抜けヅラで笑っています。

   そして4人の奴隷たちの踊りが始まりますが、ステップの今一つ掴めていないジュニアはどうしても1人遅れて妙なステップになっています。しかし途中で自分が体に青い塗料を塗り忘れた事に気付き、慌てて舞台から逃げ出そうとしますが、止められてしまいます。今更戻るな! と。
 そしてジュニアはヘタクソなステップの上にサポートする女性ダンサーも取り違えてしまったり、とにかくここのアダムの演技には、涙が出るほど笑わせられます。そしてあまりのジュニアのハチャメチャな踊りに、ジュニアはとうとう舞台から追い出されてしまいますが、舞台のクライマックスで大盛り上がりの所に、舞台裏から落ちてロープにぶら下った状態のジュニアがターザンのように舞台に出て来てしまいます。しかもズボンが脱げて、バレエのサポートパンツ( あの大きな前バリ、バックはTバックのあのパンツです! ) 一丁の姿のままで、舞台の真ん中、一番前まで倒れ込んできてまいます。

 もうここでどれ程会場が爆笑の渦だった事でしょう!!! ワーッハッハ、どころか 「ギャーッハッハ!!! 」です!
アダム、そこまでやっていいの!? でも可笑しい〜!!一生懸命ずり下がったズボンを履こうとしながらカーテンコールでまたもずり下がるパンツ…。
 主役の2人がカーテンコールで出てくる所もマヌケなジュニアはサポートパンツのまま出てきてしまい、舞台はハチャメチャに終わってしまいます。

 ここで爆笑の渦に巻かれながら第一幕の終わりです。皆さん、笑いが止まらないままの休憩でした…。(笑)

・・・第二幕・・・

 場所はジュニアの教室。ヴェラ、コンスタンティン、セルゲイ、ペギーに、シドニー・コーンとジュニアが「十番街の殺人」を演奏して聞かせています。
 しかしやはりセルゲイは猛反対。どころか、ジュニアの「プリンセス・ゼノビア・バレエ」での失敗を持ち出して罵ります。

 しかしペギーは
「あのおかげでバレエ団はとても良い批評を受けたのよ! ロシアバレエ団にもユーモアのセンスがあった! とね! 今までにない注目を浴びているわ! ボックスオフィスに行って、チケットの売り上げを見てきて御覧なさいな!!!」
しかしバレエは芸術だと唱えるセルゲイは聞く耳を持ちません。コンスタンティンも猛反対。ジュニアをコケにして、ヴェラとまた喧嘩です。
 そしてセルゲイはじゃあここの生徒たちと自分のバレエ団のダンサー達を引き合わせて、この新しいジャズバレエが受け入れられるか試してみようと提案します。

 皆が去って、ジュニアはペギーと二人になります。ジュニアはペギーに、ヴェラとフランキー2人に同時に向いてしまった自分の気持ちを打ち明けます。
 そしてペギーはジュニアに歌って聞かせます " The Heart Is Quicker Than The Eye"。ここはジュニアとペギーのデュエット。二人でタンゴを踊ってみせたり、とてもコミカル。でもカッコイイです。

 そこへフランキーが登場。フランキーはジュニアとランチを取る約束をしていたのですが、他にロシアバレエ団の面々もいると知って戸惑います。そして2人の前にヴェラが登場。ジュニアといるフランキーをヴェラは舐めるように見て「こんにちは」と挑戦的に言います。
 そして戸惑うジュニアをひと睨みして出ていきます。ジュニアは慌ててヴェラに駆け寄りますが、二股を掛けていたジュニアにヴェラはパンチをお見舞いします。 そしてフランキーもジュニアの心が自分の物ではないと傷つき、歌います。" Glad To Be Unhappy " これは切ないソロです。フランキー役のアナ・ジェーン・ケイシーさんの声が光ります。
「傷つく事も、敬愛する人の為なら光栄なの。私は両親のいない子羊のように不幸だけど、だけどとても嬉しいのよ」

 さていよいよ生徒たちとダンサー達を引き合わせます。セルゲイはまだ猛反対ですが、そんなセルゲイにペギーは今まで自分がどれ程ロシアバレエ団に投資して来たか、と脅します。
 2人がまた口論になっているところに、ジュニアが「もう入ってもいいですか? 」と皆を引き連れてやってきます。生徒たちとダンサー達が同じ教室に揃いました。

 シドニー・コーンは、自分が作った " Quiet Night " という曲を歌って、皆に聞かせます。その美しい歌にダンサー達も感銘を受け、生徒たちと一緒に合唱し始めます。その美しいハーモニーに、セルゲイの心も溶けていきます。
 セルゲイは今度のロシアパレエ団の演目は「十番街の殺人」に決定だ! と宣言します。ここの部分はあまりにも簡単に決まっていいの !? と思ってしまいますが、まあそういうお話です(笑)

 そしてジュニアとフランキーの心も溶け、2人は手を握ってお互いの気持ちを確信し抱き合います。そして皆が和解したところで、今度は一緒に踊ろう! という事になります。
" On Your Toes " フランキーが歌うタイトルナンバーにのって、ジュニアの生徒達がタップを、ダンサー達がバレエを踊ります。タップとパレエの見事な調和が感動的です!
 ここは拍手も凄い見せ場です。タップとバレエがこんなに見事にミックスされるとは。そして見事なアダムの振りつけにも拍手です。

 そして「十番街の殺人」のリハーサル。ヴェラとコンスタンティンが練習をしていますが、ジャズを全く知らないコンスタンティンはステップを上手く取れずに外してばかり。
 ジュニアはコンスタンティンはビートを外していると注意しますが、コンスタンティンは「私は生まれてこの方、1度もビートを外した事などない! 」と言い張ります。ここも、名ダンサームハメドフが言うからこその笑いがあります。
 とうとうジュニアとコンスタンティンは取っ組み合いの喧嘩になります。この喧嘩も観客に大ウケでした! とにかくアダムとムハメドフ、上手過ぎるんです。(笑)
 そしてとうとうセルゲイが2人を止めようと持ち出した砂袋が、コンスタンティンの頭に命中。コンスタンティンは倒れてしまいます。そこへヴェラが駆け寄り、「私の愛しい人!!! 」と泣き叫びます。

 騒ぎを聞きつけた警官が出てきてしまい、皆でアタフタと言い訳します。そしてジュニアは、新しいジャズバレエのリハーサルをしていただけです、と、見事なステップを警官に見せて納得させてしまいます。ここのアダムの華麗なダンスも、なかなかの見所!
 ジュニアの見事なダンスに驚いたセルゲイは、ジャズバレエのステップが出来ないコンスタンティンに代わってジュニアを主役に抜擢すると言います!! そしてジュニアに「ジュニアビッチ・ドランスキー」というロシア名前を与えます(笑) ここも観客爆笑です。
 そしてヴェラがコンスタンティンの容態について「大丈夫。彼は踊れるわ。( 叩かれたのは)ただの頭ですもの」というセリフにも爆笑でした。

 さて、いよいよロシアバレエ団の新しい演目、ジャズバレエ「十番街の殺人」の開幕になりました。ジュニアに主役を奪われたコンスタンティンは深い恨みを抱いて、ジュニアを殺し屋に殺させようと依頼します。
 劇中では、ジュニア演じる男が、愛するストリッパーを殺されてしまい、絶望して銃で自らの頭を打ちぬいて終わります。その銃を打ちぬく所でジュニアを撃てば、誰にも気付かれない、というのです。殺し屋達は承諾します。
 それを偶然聞きつけてしまったフランキーは大慌て。なんとかしようと駆け出します。ステージ裏ではペギーとセルゲイがなにやら良いムード。ペギーがここで歌う " YouTook Advantage Of Me " は、ペギー役のキャスリン・エヴァンスさんの素晴らしい歌に大喝采でした。

 さあ、いよいよ開幕。
舞台は赤で装飾されたスタイリッシュなストリップ・クラブ。大胆な赤い衣装のダンサー達が踊ります。
 そしてヴェラ演じるストリッパーが、セクシーな白い衣装でストリッパーステージに登場。札束を客から受け取り胸に入れるなどのセクシーな踊り。しかし調子に乗った客が支配人の銃弾に打たれるなど、このクラブはとても如何わしいのです。  バレエといってもこれはジャズ・バレエ。ダンサーはサラを含め、皆ポワントではなくハイヒールです。

 そしていよいよアダム登場…! フランク・シナトラのような帽子を被り、黒いスーツをスマートに着こなしてゆったりと階段から降りてきます。
 タバコを吹かしてステージ上のストリッパーサラに手を差し伸べ、2人でセクシーに踊り出します。アダム( ジュニア)演じるこの男は、ストリッパーとしてではなく、この女性を愛しているのでしょうか ?

 ロマンティックに踊る2人の中を割いて、支配人がストリッパーと踊りたければ金を出せ、と手を差し出しますが、男は無視します。きっと彼女を金で買いたくないのでしょうか?
 そこに警官達が乱入。一斉捜査をしてクラブを掻き回します。一旦男は消え、警官達とダンサーたちが大騒ぎ。警官たちも赤い衣装です。この赤い衣装の中にアダムの黒い衣装とサラの白い衣装が際立ちます。

 騒ぎが収まったところで、ストリッパーサラが帰り支度をして青い衣装で登場。そしてアダム演じる男が、スーツの上着を脱いで、黒いタンクトップ、そしてサスペンダーを肩から外した超セクシーな井出達で登場。
 クラブの皆が引き上げて去って行き、ストリッパーはステージに疲れたように突っ伏します。そしてテーブルに1人座っていた男が、始まった官能的な曲に合わせて踊り出します。彼はストリッパーに近付き、彼女に誘いかけます。
 ここでのアダムのキレのある踊り、回転、とてもセクシー過ぎ。長い手足がとてもダイナミックに見せています。ストレンジャーにも勝るかも!?

 彼はストリッパー・ステージに乗り、突っ伏すストリッパーの前で踊って見せます。気付いたストリッパーに手を出し、二人は踊り出します。踊りは段々官能的でスリリングになっていきます。そして激しいリフトの連発。
 複雑で激しい、そして絡み合うようなリフトで、ともすればサラのハイヒールがアダムの頭を蹴ってしまいそうなのにそうならず、とにかく緊張感、官能、踊りは激しくなり、思わず息を詰めて見てしまいます…!!
 2人の踊りが激しくクライマックスを向かえようという所にもクラブの支配人が男を打とうと銃を持って登場!気付いたストリッパーが男を庇って銃弾に打たれてしまいます…!!!!
 男の腕の中から力を失って倒れこむストリッパー。男は震えながらそんな彼女を見つめています。そして彼女の胸に顔を埋め、ブルブルと拳を震わせます。ここんとこ、なんとなく白鳥第4幕を思い浮かべる私…。いかんですね(笑)
 そして怒りに狂った男は、支配人に向き直り、怒りに燃えて彼に掴みかかります。この怒りの表情、最高に凄かったです!

 支配人ともみ合いながら銃を奪い取った男は支配人に怒りの銃弾を打ち込み、殺します。そして再び横たわるストリッパーに駆け寄り、彼女を抱き起こそうとします。しかし彼女の体は力なく腕から滑りぬけます。
 それでも彼は彼女を起こし、抱え挙げて踊ろうとします。ここはまさに「ロミオとジュリエット」の墓場のシーンそのもの!?しかしやはり動かない彼女に絶望し、彼は力なく突っ伏します…。

 暫くしてフラフラと置きあがった彼の前に、ストリッパーの幻影が現れます。しかも1人ではなく、どこからともなく5人も…。幻影達に翻弄されて彼は狂ったように頭を抱えます。
 しかしやがて幻影も消え、再びストリッパーに駆け寄った彼はストリッパーがやはり死んでいるのだという事実に絶望します。そして激しく絶望の踊りを踊るジュニアに、クラブのオカマ役が紙切れを持って登場。彼は、フランキーから「最後のシーンで銃を打ったら殺される」という忠告を持ってきたのです…!!!

 予定外のキャストの登場に戸惑いながらもジュニアは訝しげに紙切れを読みます。その驚愕の内容にジュニアは慌てます。焦って舞台から出ようとしますが、止められてしまいます。もう後戻りは出来ないのです。
 ジュニアはヤケになって、仕方なく最後の場面を踊り始めます。激しく、そして銃を掴んで自分の頭に銃を向ける演技をしようとしますが、殺し屋の銃に気付いてそこで演技を中断し、オーケストラに今の場面を「アゲイン、アゲイン!!! 」と言って演奏させます。最後まで踊りきれば殺されてしまうのです…!!
 そしてまた踊りだし、銃弾をとって自分の頭に…。でもまた殺し屋の銃弾が向きます。そしてジュニアは再び「アゲイン、アゲイン…!!!! 」と、同じ所を踊り出します、もう彼はヘトヘトです。そしてまた銃弾を自分の頭に。同時に殺し屋の銃弾も…。

 ジュニアはこうなったらヤケだ、と言わんばかりにタンクトップを脱ぎながら「ワン・モア・タ〜イム!!!!! 」と踊り出します。(観客爆笑)
 と、ここでやっと殺し屋達が警官達に捕らえられ、ジュニアは「イエス!! 」と、 やっと最後の場面を演じ、舞台が幕を閉じます…!

 このまま本当のカーテンコールに流れ込み、舞台は大喝采で終わりました。
手錠を掛けられたコンスタンティンが情けない顔で登場し、また笑いが起きます。 アダム達主役の登場では勿論大拍手でした。アダムも嬉しそう。そしてサラの笑顔がキュート。とてもさっきまで気取ったプリマを演じていたとは思えない! 彼女の演技、本当に最高でした。そしてアダムの仕事ぶりには本当に嬉しい驚きでした。

 振り付けも素晴らしいし( 音楽的クライマックスの見せかたが良いんですよ! )、声もダンスも文句なし!!!更なる挑戦を続ける彼のファンで本当に良かったと思いました!


★まりこさん★

 8月の15日〜19日までロンドンへ行き、2回ほど“On your toes”を見てきまし た。ほとんど“On your toes”の予備知識なしで見ましたが、とても楽しい舞台で言葉が分からなくても充分楽しめました。
 また、アダム・クーパーが楽しそうに、タップをしたり、歌ったり、お芝居したりと、あらたな彼の一面をみたような気がします。サラ・ウィルドーのロシア人バレリーナもとても笑わせてくれるし、イレク・ムハメイドフはまるでセルフパロディのようでとても可笑しかったです。
 美術もなかなか洒落ていて、場面展開がスムースですし、音楽が生演奏で迫力がありました。是非また機会があったら見たい演目でした。


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