・ Play Without Words Report ・

By 弥生さん

-At Lyttelton Theatre In LONDON 2002,Summer -


 8月の末、1週間ロンドンに滞在し、31日(土)のマチネ以外の全ての公演(7公演)を見る予定でチケットを予約してました。
土曜日のマチネ以外、というのは、その日、15:00からサッカー(プレミアリー グ)を観戦する予定だったのです。 ところが・・・またしてもこの作品にハマってしまい、結局はサッカー観戦を捨て、 結局8公演見てきました。

 全8公演、最前列で見ましたが、ここ、Lyttelton Theatreは、舞台と客席の配置を改造したばかりだそうですが、舞台の客席側が、台形になってるというか、平べったい六角形の半分、みたいになっていて、その3つの辺に対して、3方向に客席が囲ってます。
 そして、座ってびっくり!自分の膝から舞台までの距離が30センチほどで、しかも舞台の高さも30センチくらいの低さ。 足を舞台に載せて見てるお客さんもいたぐらいで、ダンサーたちは手を伸ばせば届く 距離で、大感激でした。 ほくろや産毛まですべて見える距離で、舞台がとても小さいおかげで端まで広く使う ので、自分の真ん前の至近距離に来ることもあり、ドキドキでした。 これで、18ポンドなんて、ほんとに安いと思います。
ちなみに、ジャズ演奏者たちは、舞台右後方で演奏してました。なので、客席と舞台 がこれほど接近できたのです。

 キャスティングは以下の通りです。毎回変わることはありません。
つまり、お休みの ダンサーとかはいませんし、ご覧の通り、公演の中で二役以上こなすダンサーもいま す。

Anthony・・・Will Kemp, Ewan Wardrop, Richard Winsor

Glenda, his Fiancee・・・Saranne Curtin, Michela Meazza, Emily Piercy

Prentice, his manservant・・・Scott Ambler, Steve Kirkham, Eddie Nixon

Sheila, his housemaid ・・・Belinda Lee Chapman, Valentina Formenti

Speight, an old friend ・・・ Eddie Nixon, Ewan Wardrop, Alan Vincent

 最初に、私がこの作品を観て最も衝撃的(感動的)だったことを3点述べさせて下さ い。それは、

(1)ダンサー(アクター)の演技力、ユーモラスな表情と体の動き
(2)音楽が素晴らしい
(3)Ewan Wardrop

(1)ですが、ダンサーたちはこの公演の為に、喜劇系の劇団とかコメディアン養成所か 何かで修行を積んだのでは、と思ってしまうほどでした。 (スコットやスティーブには必要ないですが・・・)
とにかく、表情だけではなく、体の動きまでも、ユーモラスでコミカルなんです(シ リアスなシーン以外では)。これはもうダンサーの域を超えてると思いました。
マシューのシナリオ+彼らの演技力が加わり、とにかく笑えるシーンが多く、観客も 私も声を出して幾度も笑いましたし、 あまりの可笑しさに、爆笑に加えて拍手まで自然に起こる時もありました。

(2)音楽ですが、聴いてみるまでは不安がありました。カーマンの素晴らしい音楽を編 曲によって作り出したテリー・デイビスさん。 彼のセンスが大好きで尊敬している私なのですが、今度は全くのオリジナル曲、しか もジャズ。 最近のマシューの作品はクラシックが多いし、自分もクラシックが好きだし、果たし てどうなることだろう、思ってたんです。
 ところが!音楽がもう素敵で素敵で。ジャズが、これほどまでもドラマティックにな るなんて。シーン毎の雰囲気をすごくよく表してます。 いい曲ばかりで、早くも私はCD欲しい!病にかかってます。当面は無理なので、こ の素晴らしい音楽を忘れたくないので、 記憶があるうちに、各曲のメロディーラインの数々をメモしてるところです。先週か ら私の頭の中はこれらの音楽が流れっ放しです。 テリー・デイビスさんは、マシューの表したいことを最大限理解して表現してくれま す。 音楽が、単なるBGMではなく、何かを物語り、ダンサーのムーヴメントと溶け合っ て一体になってます。

(3)今回一番衝撃的だったのは、Ewan Wardrop。 私は、彼のルカとアンジェロしか見たことがありませんが、今までの私の彼に対する 感想は、 美青年系でどこか表情が暗い、短調系ダンサー。ルカもアンジェロもどちらもこなす けど、 役を演じている時も、どこか「Ewan Wardrop」というダンサー本人の印 象が強く、役が負けてるような印象で、 特別に思い入れを抱いたことのないダンサーでした。(私の過去のレポートを読んで いただければ、彼に対する感想がとても淡白なのがわかると思います。(笑))

そんな彼が、今回なんと、私の目を釘付けにしてしまいました。 Ewanって、こんなお笑いのセンスがあったの?と(笑)。顔の表情、体の動き、とに かくユーモラスな動きが可笑しくて可笑しくて、笑いっ放しです。 彼はこの作品で、4つの役を演じます。もちろん、一回の公演で。 「一見スマートだけど、実は脆くて弱くてかわいい、Anthony」 「粗野で危険な香りのただよう男、Speigt」 「引越し祝いの可笑しな来客の中の、なよなよしたゲイカップルの一人」 「コメディーダンサー(?)」

 Speight役は、カーマンでいうと、ルカに近い役ですが、もっと汚れた悪の役。険し い眼差しの彼はルカの時よりも、全然いい男です。
そして、Anthony役の彼は、髪を流れるようなゆるやかなウエーブに伸ばして7:3 分けにし、眼鏡をかけ、まるで少女漫画に出てくるようなスマートな美青年。 素敵です。そしてその姿のままで、ユーモラスな動きや表情も表現し、さらに、ゲイ のカップル役では、なよなよした浮き足歩きや可笑しなダンスを披露し、 2幕の初めに6人で踊る、紫の上着と帽子に、白ぶちのトンボの眼鏡のようなサング ラスをつけての、お馬鹿で笑えるダンサーは、 観客大爆笑なのですが、彼もすごいノリノリ。口も笑ってて、もう、自分を捨ててま すね、これは(笑)。他のダンサーも。 とにかく表情がいいんです。可笑しな表情を楽しそうにやってて。ユアンのような美 青年の3枚目姿っていいですよね。

 こんな、4つの全く異なったタイプの役を演じる彼を、たった100分の公演中に一 度に見られるなんて、おいしすぎます。 おそらく、今回の公演では彼が最もおいしい配役では、と思います。Anthony役と Speight役、の両面を見られるのは、たまらないものがあります。 それに加えて、彼のユーモラスな表情と体の動きに、彼ってこんな一面もあったの ね、と驚き、すっかり心を奪われてしまったのです。

2年前、初めてカーマンを観た時の私は、ウィルくんの成長ぶり、アンジェロ役での 演技力、ルカ役のいい男ぶりに衝撃を受けたものですが、 今回の衝撃は、Ewanでした。その、お笑いセンスと表現力に。以上3点が特に衝 撃的だったことです。

 セットと衣装(やヘアメイク)の素晴らしさは私が言うまでもありません! 毎度のことですが、今回も各新聞記事で絶賛されてるので、記事を読んでいただいた 方がよくわかると思います。 舞台は、舞台後方には、いかにもロンドン高級住宅街の建物が中心に向かって傾いて そびえ立ち、その後方にはビッグベン、 手前には広告、赤電話ボックスなどがあり、60年代チェルシーへタイムスリップし たようです。 舞台手前は、中央に、曲線と直線の2列の階段が上部でつながっていて、その階段の 下に、一畳ほどの部屋(壁は無し)のような部分がある、という装置が置いてあり、 その装置そのものが、公演中に何度もぐるぐる回って向きを変え、場面転換します。 ダンサーがのったままで。 その、四角い部屋は、あるときは玄関に、あるときは地下鉄の車両に、ある時はソー ホーのストリップ劇場になります。 この、ぐるぐる回る装置での場面転換には、驚きでした。 衣装も毎度のことですが、とにかくセンスが良くて、垢抜けていて、特にGlend aの衣装はため息ものでした。Anthonyのスーツもスマートで上品で素敵です。 一方、Speightの衣装は、クラスと悪を表現する、安っぽいシャツやコートで、とて も対照的でした。

ストーリーです。

(1幕)
階段の上で背をもたれて座ってるアラン・ビンセントにライトが当たり、彼のトラン ペットの独奏。 終わると、下のシングルソファにうずくまっていたAnthony(Ewan)がハっと 何かに気づいたように遠くを見つめ、そこから音楽の演奏が始まり、 全出演者が舞台に現れ、入り乱れてそれぞれの動きをします。各キャラクターの性格 を現していて、いわば役紹介の為のエピローグ、のよう。

60年代ロンドン。裕福で上品な身なりの独身青年、Anthonyは、高級住宅街 チェルシーの新居に引っ越したばかり。 フィアンセのGlendaも裕福な家庭の娘らしく、ディオール等の高価なドレスや 宝石に包まれ、ゴージャスで美しく、プライドも高い女性。 二人は恋人同士だが、彼の気の弱さと彼女のプライドの高さのせいか、なかなか一線 を越えられない。 彼は、Prenticeという名の召使を雇う。Prenticeは、Sheila という、若くて魅力的なメイドを連れてきた。 彼らは、町のカフェで同席して、何も頼まない彼女にお茶を奢ったことで知り合った ようだ。

Sheilaを見た瞬間、Anthonyは、その魅力に息をのんで驚く。 彼女には、恐らくGlendaにはない、健康美や軽やかさのようなものがあり、 Anthonyは彼女を、女性として意識してしまい、妄想まで抱いたりする。 二人の、お互いを意識しあうぎこちない日々が続いていた。 新居移転祝いパーティーの日。おかしな(あやしげな?)来客たちがやってくる。漫 才コンビ風のあやしいカップル、なよなよしたゲイのカップル、キメキメのカップ ル、 イケてない女性。彼らが、パーティーの息苦しさにため息をついていたところへ、黒 の揃いに蝶ネクタイ、という、ちょっと頑張りすぎのAnthonyが登場。

ホストとして意気込んでるが、どこかカラ回り。そこへ、昔の友人という設定の、粗 野で奔放で性的魅力のある男、Speightが、派手に登場。 彼は、Prenticeと密かに知り合いで、Prenticeの企みで招待された ようだ。来客たちはアップテンポのダンスナンバーでダンスに興じて楽しんでいる。 Anthonyも頑張って派手に踊って見せるが、どこかイケてなく、皆の反応も冷たい。

 

そんな中、目隠しゲームが始まり、Anthonyが自ら名乗り出て、Speightに目隠しさ れてしまい、手探り状態の彼を冷たく見放した来客は帰り、 Glendaも、強引にSpeightにキスをされた上、Anthonyのそんな情けない姿に呆然と し、帰ってゆく。 そして、Prenticeが、Glendaが新居祝いに持って来た観葉植物を外へ放り投げ猫が ミャーと鳴いて、一幕終わり。

(2幕)
Scott演じるPrenticeの部屋。テレビ棚の側面には、マッチョ男性の裸の写真がたく さん貼られている(彼はゲイという設定)。テレビのチャンネルを変えた瞬間、 舞台に紫のスポットライトがあたり、紫の上着と帽子、白縁サングラスの男女6人が 登場、お馬鹿なダンスショーを披露。(これが最高!) Glendaがやってきてベルを鳴らすが、Scott演じるPrenticeは彼はいないと言って追 い返してしまう。

場所は変わってソーホー。地下鉄に乗って人が集まってくる。男たちは、ストリップ ショーに身を乗り出す。 とある怪しげなバー。3人のSpeightが、黙り続ける2人のPrenticeを脅している。 駆け引きが続き、最後には麻薬らしい包みを手に入れる。 急に雷が鳴り、激しい雨。低音のパーカッションの効いた5拍子の緊迫感ある音楽。 傘をさし町を歩く3人のGlendaに、3人のSpeightがそれぞれ言い寄り、誘惑する。 緊迫した駆け引きが続くが雷雨という天候のせいか、Anthonyにはない男らしさや強 引さに飲まれたのか、彼女は辺りを気にしながらもSpeightに付いていく。 Anthony家の台所。下着に、AnthonyのVネックセーターを着ただけの、艶かしい姿の Sheila。Scott演じるPrenticeが目で合図をしてニヤッと笑って出て行 く。 水を飲みに来たAnthonyが彼女に気づき、二人は恐る恐る少しずつ体を触れ 合ってゆき、最後には、恐れを捨てたAnthonyがSheilaに吸い付き、 急ぎ足で二人は消えてゆく。音楽は暗く激しくおどろおどろした曲に変わり、町の安 宿(一枚の安っぽいマットレスが表現)で抱き合うGlendaとSpeight。 (麻薬の代価は、Glendaを誘惑することだったのだ。) 一人残され眠りから目覚めたGlendaは、その、薄汚い宿の部屋にゾッとし、現実に戻 され、足早に去っていく。 Anthony家。満足気でニヤニヤした2人のSheilaがAnthonyの眼鏡をかけて登場。 その後を、イっちゃってる表情の2人のAnthony(WillとRichard)が彼女の後を 追ってフラフラついて来る。 そこでまたイチャツキ始めたが、気づくと、Prenticeたちが立っていた。急に平静を 装う彼ら。 Scott演じるPrenticeが、Sheilaに、「よくやった」という目の合図を送る。 決定的に弱みを握ったPrenticeたちは、ふんぞり返り、Anthonyを無視、怒っ たAnthonyたちと取っ組みあったりしての喧嘩になるが、最後には、 3人のAnthonyたちは階段下に隠れて怯え、Prenticeたちが階段の上で、どうだ!と 威張っている。立場の逆転した彼ら。 一人では何もできない弱いAnthony。Prenticeのご機嫌をとって靴を拭いたり、飲み たいお酒も、Prenticeが注いでくれるのを待つだけ。 そこへGlendaがやってくる。怯えて座り込んで反応をしないAnthonyに手を差し伸べ ようとしたが、 Sheilaがやってきて、彼女にすっかりなついてしまったAnthony。勝ち誇った表情の Sheila。 そして、最初のプロローグと似たようなシチュエーションと音楽だけど、少しずつ彼 らの動きが違ってる(Prenticeが偉そうだったり)、というエピローグがあります。 そして今度は、WillのAnthonyがハッと何かに気づいたように遠くを見上げて明かり が消え、終わり。

こんな感じです。

 印象的だったシーンをいくつか述べさせてください。

この作品で、二役以上こなすダンサーたち(Ewan、Steve、Eddie)は、ズボンと靴は着替えず(時間がないから?)、上着と、髪型、眼鏡、そして表情で、役を演じ分けてます。

 プロローグの2〜3分ほどの間にも、Anthony役のEwanが、後半でSpeightを演じるという早業をします。
舞台装置の裏に走って隠れた隙に、部屋着の上衣を脱いで、タンクトップになり、 上部が太い黒縁の眼鏡(Anthonyが必ずつけるもの)を外し、7:3に整ってた髪を 乱して、いかにも悪、といった別人の表情で再登場します。お見事!です。 (真ん中から右よりの座席に座ると、裏で彼が大急ぎで眼鏡と上着を脱ぎ、一生懸命 髪を乱してる姿が見えます。)

 Anthonyが、フィアンセのGlendaを初めて部屋に招きいれ、Glendaたちが揃っ て登場するシーン。 腰掛て部屋の様子を満足げに眺め、優雅なメロディーに合わせて3人揃って動くので すが、彼女たちの美しいこと!
 緩やかなウエーブの髪をゴージャスにアップにまとめ、アイラインの効いたしっかりメイク、いかにも高級そうできらめく生地のノースリーブとスカート、 そして、折れそうなほど細いハイヒールパンプス。長手袋、ゴールド系の生地のバッ グ、品のよい高級品に身を包んだ彼女たち自身も、美人でスタイルがよく、 肌も綺麗で、ゴージャス!マシューの振り付けも身のこなしも優雅で、これまた優雅 な音楽に合っていて、見ていてため息が漏れます。 60年代の美しい女優さんのようでした。

 笑えたのが、EwanとWill演じるAnthonyと、二人のメイドの、妄想 シーン。穏やかな音楽の中、 Ewanが風呂上りに腰にバスタオルだけの姿で、Belinda Lee Chapman演じるSheilaと出くわし、お互い意識して気まずい雰囲気になり、 一方、ソファに座るWillが、目の前でわざとナプキンを落として腰をくねらせて それを拾う、Valentina演じるSheilaの腰つきを、眼鏡の上から凝視 してます。と、突然、舞台は真っ赤な照明に染まり、音楽も変わり、二人(4人)の妄想を表現します。
 男たちは膝まづいて、Willくんはナプキンを口に加え、SMの世界のようです。と、 また突然照明も音楽も元に戻り、 4人は何もなかったかのように平静に振る舞うんです。大爆笑が起こってました。 特にEwanの、腰バスタオルに眼鏡、という、あやしい姿で、膝をついてのけぞっ て、Sheilaを見上げる姿は、漫画の一コマのようでした。 (私、あんまり漫画は詳しくないのですが、「コミカルな美男美女」系の漫画、桜沢 エリカさんなんかの世界を思い出してしまいました。)

 ジャズクラブや、引っ越し祝いパーティーで披露される、男女ペア(ゲイもあり)でのダンス、すごく粋で、且つ、ユーモラスな動き。見ているだけで心地よい、何ともいえない気分になります。

 Alan演じるSpeight(彼のみが、最初から最後までSpeightを演じる)のソロは、Lucaを彷彿とさせ、しかも何倍もパワーアップした感じです。 ほんと、彼はこういう役がハマリ役。 暗くなった夜の町を、速くて激しいリズムのナンバーにのせ、ジャケットを翻し、舞 台中を大暴れします。
 階段を滑り降りてきたり、回転ジャンプしたり、ビール瓶を地下への階段で投げ入れて割ったり(瓶の割れる効果音がすごく効いてます)、トランペットを吹いたり(ここは吹く真似のみ)、粗野な男を十分に表現してます。 最後には椅子を蹴飛ばし、物が壊れる音で終わりました。

 そしてさらに、彼がパーティーに登場するシーンは、黒鳥を思い出してしまいまし た。急に音楽が変わって派手に登場するし、奔放な招かれざる客で。 こっちの方がより粗野で悪ですけど。

 明るいAnthonyの部屋。ピアノののんびりした平和なメロディーが流れる中、パンツ と靴下のみのAnthony(Richard)と、 スーツ姿のAnthony(Ewan)が左手を腰にあて、登場。二人並んで立ってます。この 時のEwanの表情が笑えます。含み笑いしてるような、困ったような顔で。
 そこへ、一人ずつ召使がついて、着替えをします。この、着替えの一つ一つの動きを 音に合わせてすごい大げさにしていて、観客は大爆笑のしっ放し。 Richardは少しずつスーツ姿へ、Ewanはスーツを脱がされ、部屋着の上着(短いガウ ン型の前合わせのもの)を着て、 最後に、Scottが、Ewanの後ろからパンツを音楽にあわせてバッと下ろして、ま たまた大爆笑でした。

 1幕で一番好きだったシーンは、パーティーの来客たちの登場シーン。Steveは変な かつらを被って、吉本に誰か似てる人いたな、という姿で、 動きもかなりあやしげ。その相方は、EmilyPiecyですが、彼女も毛先カールの黒髪の かつらに、でっかい色眼鏡、動きも変なオバサン。
 一番好きだったのが、ゲイのカップル。EddieとEwanが演じますが、少しなよなよし た内股の浮き足歩きをし、紺ブレに付いた胸章を大事そーに、 うっとりしながら指でなぞるんです(大受け)。Eddieの方は、ハンサムボーイ役の Richardが気に入って、ベタベタまとわりついてました(笑)。

 それから、パーティーの前、召使とメイドたちがパーティーの準備をするシーンで は、 マシューのインタビュー番組で少しだけ映像が流れた、「Town&Country」のワン シーンで流れていた曲を使っていました。
ここでなぜか、観客から笑い声が起こりました。この曲って何か意味があるのでしょ うか?

 2幕では、最初に紫の衣装のダンサーたちのお馬鹿なダンスショー。 これは本当に最高でした。全員白縁のでっかいサングラスをかけてるので目は見えな いのですが、もう、口だけで、馬鹿な表情をしてるのがわかるんです。
1分くらいで、すぐ終わってしまうのが惜しくて、いつも、目をバッチリ見開いて、 大笑いしながら見てました。 こういう笑えるシーンを作り出せるマシューはすごいし、それを演じられるダンサー たちのユーモア心もすごい!

 そして、最も印象的だったのが、雷雨のシーン。 音楽がいいんです。この作品の中で一番好きな曲です。5拍子なのですが、テンポよ く、低音のパーカッションがドンドコ響いて、ピアノのメロディーがあって、 緊迫感があって、聴いてるだけで何ともいえない気分になります。
 シーンの方も、下の階級の、粗野だけど危険な香り漂う性的魅力のある男が、上の階 級の、高級品でがっちり身を固めた美しくプライドの高い女性を誘惑して落とす、 という、見ていてちょっとゾクゾクしてしまうようなものなので、なおさらかもしれ ません。 雷雨の効果音もよかったです。雷雨という非日常的天候が、Glendaの理性が壊れる手 助けをしてます。 (カーマンでは、風がぴたりとやんだ真夏の蒸し暑い夜、という天候でしたが。)

 この後の、二人の絡みのシーンで、Alanが、Saranneのストッキングを、ガーターベルトから外して脱がすのですが、 (このシーン、女性は何と、白いミニのスリップにガーターベルト&ストッキング、 という姿で出てきます。) その動きが、SWANLAKEの、黒鳥が、ナポリの女王の靴を脱がす時の動きに似ていて思 い出してしまいました。

 特に印象的だったシーンはこんな感じです。全体的に言えることは・・・

この作品では、Willくんは、Anthonyの中の、ちょっと無理して頑張っちゃってる 部分、スマートに決めてみてるけどどこかイケてない部分、 権力はあるけど実は弱く、脆く、大人になりきれていないような幼い一面、を表す役 だけを担当します。
 カーマンのときは、ルカとアンジェロという、二面性を見られましたが、今回は一面 性しか見れないのは残念かも。 でも、そういう、かわいいWillくんが見られることは貴重かもしれませんね。 そして、彼の演技力はすごいです。Sheilaの後をフラフラ歩いてくる時のいっ ちゃてる目、この表情だけで観客大爆笑でした。

 この作品を演じるには、ものすごい理解力と演技力が必要なので、熟練したダンサー だけを使った、とマシューは語っています。
その中で、ただ一人若手のRichardは、演技の方ではかなり頑張ったんだろう なあ、と思います。 しかも、Will、Ewam、という主役級ダンサーと同じ役をこなしてるんですか ら。本当にこれからが楽しみなダンサーですね。

 スコットは、はまり役です。私、この作品にインスピレーションを与えたという映画「召使」を見た時、召使役の俳優さんを、スコットに似てるなあ、と思ったこともあり、ダブってしまうほどです。

今回、特に真近で見られて、驚嘆してしまったのは、女性ダンサーたちの美しさ。Glenda役の3名はもちろん、 Sheila役の二人も、魅惑的だし、顔はもちろん、肌とか脚も全て綺麗です。 そして彼女たちは、折れそうなほど細いハイヒールパンプスを履いてますが、すべ て、普通の靴を使ってるそうです。 客席が近いので、アクターはリアルでないといけないからだと。(今までの作品で少 しは手を加えたものだったそうです。)

 なつむさんのHPに紹介された各紙の中では、Independent誌の記事は辛口でした が、ロンドンで買ったWhat’s Onという雑誌、ON STAGEという新聞での評価は、SWANLAKE以降失っていたものがある、とか、シンデレラとカーマンにはがっかりしたが今回はすばらしい、などかなり絶賛する記事でした。 昔の、小規模だったAMPに戻った印象があるようですね。

 くるみ割りの公演を控えているこの時期に、短時間で少人数での舞台、ということ で、そんなすごい作品ではなく、軽い気持ちで見て帰ってこれるだろう、 なんて思ってた私が馬鹿でした。
 もう、どっぷりハマッてしまって、今、見れない日々が辛い!まずはCDだけでも発 売して欲しい!ビデオも!でもビデオは無理かなあ・・・、 なんて思いは募るばかりの日々です。
何よりも、今後また、再演されることを祈るばかりです。こんなすばらしい作品、 一ヶ月だけで終わるなんてもったいない。 Spitfireのように、何度も再演されれば!なんて思って。(でも、Spitfireは、衣装も装置も要らないからできるだけかも・・・・・・)

 さて、このレポートの中の写真は、劇場に展示してあるパネルに、写真が載せてったものを撮影してきたものです。写真を更に私が写真に撮りました。誰かわからないくらいの変身振りの人もいますので、(左から)名前を書きます。

上から、

On seduction・・・劇場に展示していたパネルです。写真は全てこのパネルを撮影 したものです。

Anthony&Sheila・・・Valentina,Will

Glenda・・・Michela, Emily, Saranne

Prentice&Sheila・・・Valentina, Eddie, Belinda, Alan, Scott

Housewarming・・・(イケてない女役)Valentina,(ハンサムボーイ)Richard,(あやしいオバさん)Emily,(ゲイの)Eddie,
       (Richardの彼女)Michela,(変な人)Steve,(Eddieの彼氏)Ewan,(Glenda役)Saranne

Dance1・・・(変な人)Steve,(ゲイのカップル)Eddie&Ewan,(イケ てない女)Valentina,(Speight役)Alan

Dance2・・・(ゲイのカップル)Eddie&Ewan,(イケてない女( Valentina,(Speight役)Alan

Anthony&Prentice・・・Will, Steve

です。

 AlanVincentが手前に写っているダンスシーンの写真がありますが、このポーズの時の彼がすっごく素敵なんです。 Valentinaさんの体を、ゆーっくりと反らせてご覧のように、ダウンさせる のですが、 その時の彼女を見る目や表情がすごい自信に満ちていて楽しそうで、この時はもう、 アランに釘付け。
 でも、その後方で同じポーズを彼氏役のEddieに対してやっているEwan(こちらは笑 える)も見たい!もう、どうしたらいいの?と、またしても目のやり場に悩む私。 アラン、一段といい男になってました。髪をより黒っぽく染めて、目が異常に自信に 満ちていて。美人のVickyが惚れるのも納得、なんて思いました。

 また、この作品、煙草が頻繁に登場し、しかも実際に火をつけて吸いながらダンサー たちが動くので、リアルだし、 白いモヤモヤが漂う空気が雰囲気があって効果的な演出をしていました。
特に、3組のAnthonyとGlendaが2人ずつ気だるい大人の雰囲気でからみ合うシーン でのそれは、大人のムードを醸し出しています。 (灰が塊でポタポタ落ちるので、高価な衣装が焦げないかとか心配してしまいました が。)
 Ewanは、ゲイ役の時パイプをくわえますが、そのパイプも火をつけながらプカプカ 吸ってましたし、 Willくんの、ラストシーンの直前一瞬暗くなる幕間に、後ろ向きになって煙草をく わえ、背中を丸めて大急ぎで一生懸命ライターの火をカチカチつけてる後姿、ちょっ ぴりセクシーでした。 (私、舞台で複数のダンサーが煙草を吸いながら動いてる、というのが好きみたいで す。マッツ・エク版「カルメン」の、ハバネラのメロディーの時、  男性ダンサーたちが舞台でいっせいに葉巻に火をつけて吸い始め、モクモクした中 を動いてるのも好きです。)

 最後に。31日のロンドン滞在最後の日に、Waterloo駅で素のウィルくんにばっ たり出くわした、という出来事がありました。
マチネの公演が終わってから、劇場の周辺の川沿いを散歩したりして時間を潰し ていた18:00頃。買いたいものがあって、何でもお店がそろっているWaterloo駅に行ったのです。そうしたら、 駅の、東側面の一番北よりの、石階段のあるところの入り口の、その階段のところで 前から向かってくる青年が何とWillくんでした。 リュックを背負い、スーパーの小さい袋をもって、神妙な顔して早足で過ぎていきま した。びっくり! ごく普通の青年でした。
 その玄関は、Jubileeライン以外の地下鉄乗り場からNTへ 向かうと通る玄関なので、マチネの後どこかへ行って、夜公演のために地下鉄でやってきたところだったんですね。開演から一時間半前のことでした。


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