・ Play Without Words Report ・

・National Theatre・

By 月うさぎ さん

-At Lyttelton Theatre In LONDON 2002,Summer -


 Play Without Words、8月27日と30日の2回、観てきました。

 配役は2回ともプログラムどおりでした。どの役も2人〜3人で演じるのですが、主はやはりアンソニーはウイル、グレンダはサラーン、プレンティスはスコットです。
 コンバートシーズンということで、ステージ、席がいつもと違うアレンジをされているようで、観客のすぐ前、ほんとうに足元で演じられました。

 27日は前から3番目の真ん中よりやや右よりの席、30日は4番目のかなり左側の席だったのですが、ほんとうに目の前にウイルやスコットがいるんです。
 ウイルの首筋を汗が流れて行く様子、スーツの細かいチェック模様さえ見えて、感動でした。ウイルは正真正銘の美形ですね。スコットはほんとうにステキです。大人の魅力が溢れてました。それにしても、王子様のころと変わりませんね〜、老けません。
 ユアンはカーマンでアンジェロ役を見たのですが、なんてマッチョなアンジェロなんだろうと、違和感がありましたが、スーツを着るとやはり細身でなかなか美男なんですね。眼鏡をかけると一瞬ウイルとよく似ています。
 リチャードは背が一番高くてカッコイイのですが、やはり子供っぽくて、学生のようでした。女性陣はサラーヌをはじめみなさん美しいです。王子様のガールフレンド、エミリーがでていたのは嬉しかったです。

 さて、物語ですが、アランのスペイトの高らかに吹き鳴らすトランペットで始まります。薄茶の細かいチェックのスーツで黒ぶち眼鏡をかけて、エリートビジネスマンというような感じのアンソニーがソファに丸くなって眠っています。
目覚めたアンソニーはチェルシーに家を購入します。と同時に召使いプレンティスとメイドのシェイラを雇い入れます。
プレンティスはベストを着ていかにも召使いという服装、シェイラはスカーフを被ったコート姿、小振りのスーツケースを持ってあらわれますが、雇われた後はノースリーブ、ミニのタイトの黒いワンピースです。

 彼らの日常風景がさりげなく演じられたあと、フィアンセのグレンダが、二人の新居となるその家を見にやってきます。グレンダは、シャレードのオードリー・ヘップバーンのイメージ、髪はアップで、ジバンシー風の毛皮の衿に丈の短いジャケット、膝丈のぴっちりしたタイトスカートです。
アンソニーはグレンダに雇い人の二人を紹介しますが、プレンティスはどことなく不愉快そうに見えます。またグレンダもあからさまに二人を見下した態度です。

 家を買ったお祝いでしょうか、パーティーが開かれます。始めにやって来たグレンダは、家具の埃を指でなぞり、わざとバッグを落して拾わせたりと、自分が主人であると、強調するような態度をとってかれらの反感をかいます。友人たちもやって来て、黒いタキシードのアンソニーが現れます。(タキシードのウイルを見られるなんて、もうそれだけでも幸せです。)
更になぜかそこへアンソニーの古い友達で、見るからにならずもののスペイトが現れます。驚くアンソニーですが、おぼっちゃまの彼は、スペイトを追い返すことはできません。良い子は不良に勝てない、という公式を思い出します。

この場面ではウイル、スコット、サラーン、メイドの一人(私には二人とも始めて見た人でした)スペイト以外は全員アンソニーの友人であらわれます。
ジェスチャークイズなどしながら時は過ぎ、パーティーもたけなわ、スペイトが目 隠し鬼を提案し、アンソニーに目隠しをします。アンソニーが手探りでだれか捕まえようと彷徨っているそばで、スペイトはグレンダを誘惑、いやがる彼女に むりやりキスをします。(ほんと、アランはこんな役が似合いますね)

 これは英国流ユーモアなのか、プレンティスの差し金なのか、よくわからないのですが、ここで友人たちは目隠しをされてあちこち手探りしているアンソニーを置いて帰ってしまいます。グレンダもまた、アンソニーには見えていないとはいえ、彼のすぐそばで他の男にキスをされてしまったショックと後ろめたさに逃げるように帰るのですが、彼女の後ろからプレンティスが、グレンダが持ってきたお祝いの観葉植物の鉢を放り投げます。
プレンティスのグレンダへの憎悪はかなりのもののように見えます。グレンダの居なくなった後に残されたアンソニーが捕まえたのはメイドのシェイラでした。

 何日か後でしょうか。プレンティスが一人、自室でテレビを観ています。テレビの横にはマッチョな男のグラビアが何枚も貼ってあり、彼はさらに新しい写真を加えます。そこへベルが鳴り、多分グレンダだろうと、彼は無視しますが、しつこく 鳴るので出てみると、やはりグレンダでした。アンソニーはいない、と追い返すプレンティス。グレンダは帰るしかありません。

 夜の酒場でプレンティスがスペイトと会っています。プレティスがスペイトにかなりの金を渡しますが、どうも彼らの関係も普通の友人同士や、仕事を頼んだ、頼まれたという関係ではないようです。明らかにスペイトが優位に立って、プレンティスをいたぶっているようにさえ見えます。

 グレンダを付け回すスペイト。訪ねても、電話しても、プレンティスによってことごとく邪魔をされアンソニーと連絡が取れないグレンダは、寂しさのあまり、ついスペイトの誘惑に乗ってしまい、一夜をともにしてしまいます。アンソニーのほうもまた、メイド、シェイラの誘惑に負けてしまいます。

 翌朝、二人の関係に気づいたプレンティスは急に主人を主人と思わないような態度に変わります。アンソニーにグラスの酒をかけ、読んでいる新聞を奪ったり、洗濯物を投げつけます。怒ったアンソニーとプレンティスは家中を駆け回り争います。
3人のアンソニーと3人のプレンティスが家中を走り回る様は、めまぐるしく、運動会のようです。自分は主人だ、という気持ちで頑張ってみても、知恵でも腕力ではプレンティスが上です。
3人のアンソニーは追い詰められ疲れきって、ついには抵抗する気力もありません。 ユアン、アンソニーはプレンティスの靴磨きまでして、召使の機嫌をとる始末です。

 そこへグレンダが訪ねてきて、アンソニーに駆け寄りますが、アンソニーの心はもうグレンダを離れています。(ここでは、ウイル、スコット以外は消えています)
近づいてきたシェイラにすがりつくアンソニーを見てグレンダは傷つきます。 見るとスペイトとプレンティスがかたを組んで立っています。グレンダにも彼らがぐるだったことがやっとわかりました。泣きながら去るグレンダ。さて最終章です。

 ソファに丸くなって眠っているアンソニー、このポーズは登場したときと同じです が、状況はまるで違います。他の登場人物たちが全員かれを見つめています。 その中で眠るアンソニー、が、突然、音楽が高鳴るとともにかっと目を見開き体を起 こします。悪夢の中で醒めたように。

 とまあ、一応こんな感じですが、記憶も確かではありませんので、間違いが多々あるかと思いますが大筋はあっていると思いますのでお許しください。

 ところで、三人のアンソニーと三人のプレンティスが入り混じって追いつ追われつする場面ですが、ウイルとスティーブ、ユアンとエディー、リチャードとスコットという組み分けがされています。
私は何故ウイルとスコットじゃないんだろう?と少し不満でした。 でもそのわけもわかりました。 ウイルとスコットでは、あまりにも絵になりすぎだからだろうと思います。 疲れ果て、座り込んだリチャードの髪を、スコットが後ろから撫でてやる場面がある のですが、それは
「いいか、おとうさんに二度と逆らうんじゃないぞ」
とでもいうように見えます。 でも、もしもウイルだったら、そうは見えないでしょう。スコットとウイルの間に欲 望の入り混じった緊張感が漂ったはずです。
 なぜか、ウイルには苛められ役が似合うところがあるような気がします。可愛い顔 で、時々垣間見える気の強さが征服欲を刺激するのでしょうか。

 ストーリーの中には、面白い振り付けが随所に盛り込まれているのですが、なかでも一番は、これです。 ステージに下着一枚のリチャード、アンソニーがでてきて正面を向いて立ちます。そ の横にユアン、アンソニーがバッチリきまったスーツ姿で立ちます。 スティーブ、プレンティスがリチャードに服を着せてゆき、ユアンにはスコット、プ レンティスが服を脱がして行きます。多分、朝と夜ということなのでしょう。
お互いつかず離れず、なんとも軽妙な振り付けで行われるのですが、男が男の服を脱 がすのと、着せて行くのではどちらがセクシーか?とつい考えてしまいました(笑)。
 この場合、リチャードはやはり子供っぽくて他人に服を着せてもらってもさほど違和感がありません。ユアンとスコットではスコットの表情の怪しさもあいまって、大人同士の微妙なテレが見え、笑えるものがありました。でもここでもユアンじゃなくウイルだったら、と考えてしまいました。ユアンにはウイルの一種の妖しさのようなものがないです。スコットに服を脱がされるのがウイルだったらなぁ・・・
私には、この組み合わせを、やはり意図的に避けたとしか思えません(笑)。

 さて2回目では、余裕もでき、1回目では気づかなかったことにいろいろ気づきまし た。そして、一つの、もしかしたら、それは妄想というべきものかもしれないものに発展してゆきました。

 プレンティスはグレンダを見た瞬間から彼女を嫌っているようです。意地悪をされたから嫌い、というわけではないのですね。
スペイトのグレンダへの仕打ちもあまりにも残酷です。 何一つ個人的恨みもないのに、金のためとはいえ、一片の同情もありません。 そしてプレンティスへのいたぶるような態度、いかにもわけありです。 昔、ちょっとね、とでもいうような。 そして、金持ちでエリートで、無邪気なアンソニーには屈折したサデスティックな感 情を抱いているように見えます。

 そして、メイドのシェイラですが、最後のシーン、みんなでアンソニーを見つめる シーンで、彼女は、コート姿でスカーフを被り、スーツケースをもっている、つまり始めに現れた姿なのです。これってどいいうことでしょう?
邪魔なグレンダがいなくなったのだから、彼女は女主人にもなれる立場なはずです。 これって、メイドも家を出てゆく、つまり、プレンティスとそういう約束だった、ま たは体よく追い出されるということじゃないでしょうか??? (考えてみると、メイドを連れてきたのはプレンティスだったような気がします。)
 とすると、家に残るのは、アンソニーとプレンティスだけ、とうことになりますね。そうか!これこそプレティスの望みだたのか!と思わず私は膝を叩いてしまいました。そうですよね、でなければ、大金を払ってこんな画策する必要はありませんものね。いやなら辞めて別な働き口を見つければいいんですから。マシューったらニクイわ!そしてこれからの二人きりの生活を、もちろんウイルとスコットで想像すると、ドキドキしてしまいました。

 それと、ジェスチャークイズ(だと思う)ですが、二回目見たときは、彼らの仕種が可笑しいのか、あらわそうとしているものがそもそも可笑しいのか、大うけで大笑いだったのですが、二回目は誰も笑いませんでした。 それがなんとも不思議でした。


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