・ Play Without Words Report ・

:Photo by Ms Yayoi:

・National Theatre・

By 弥生 さん

-At Lyttelton Theatre In LONDON 2003,December -


 Play Without Words(以下PWW)、12月26日ソワレ、27日マチネ&ソワレ、30日ソワレ、31日ソワレ、の5回を観て来ました。

 私の中でPWWは、大好きなマシュー作品Top2の一つ。(もう一つはThe Car Man)一年ちょっと前2002年9月の初演時の公演を観て以来、ずっと思い続けてきました。その時いかに私がハマったかは、前回のレポートを読んで下さった方はお分かりになるとは思いますが、それ以来私は、舞台そのものを観られないことも辛かったのですが、一番辛かったのは音楽が聴けなかったこと。6月に、作曲者テリー・デイヴィスさんのオフィシャルサイトで、サンプル6曲(それも一部)が聴けることを発見してからは、その曲のシーンを思い出しながらその短いサンプル6曲を聴いてばかりいました。なので、今回の公演に合わせてCDが発売されたことは、本当にうれしかったのです。

 ストーリーや、作品そのものについての感想等、前回のレポートで既に書いていることは省いて、前回との相違点、今回改めて発見したことだけを書かせていただきます。

 初めに、残念だったことを二つ。
まず、渡英前から一つ気がかりだったのが劇場。前回と同じ、ナショナルシアターの、リトルトン・シアター。ですが、前回の時は、(前回のレポートで書きましたが、)劇場内をダイナミックに改造し、6角形の小さな舞台の3辺を客席が囲む形で、最前列に座ると膝から舞台までが30センチほど、舞台の高さも30センチくらいで、足を舞台に載せて見ているお客さんもいたほどで、手を伸ばせばダンサーが届く距離でした。例えばSWAN LAKEのようなショー的な大規模作品と対極にある、まるで映画のワンシーンを再現しているような、小規模なPWWという作品には、こういう小さな劇場が合ったのです。

 しかし、今回は、通常の劇場の状態に戻っているということだったので、果たしてどうかしら、と思っていました。やはり劇場にはがっかりでした。前回のような、舞台と客席の一体感、見せものではない、生身の人間の世界を見ているという感じ、を体験することはできず、舞台と客席の間に溝を感じました。その溝は、笑い声に表れていました。前回に比べて、お客さんの笑いの回数もボリュームも激減してました。前回は、喜劇場並の笑いでしたので。

 今回の中では、31日ソワレの反応はいい方でした(ニューイヤーズイブ、ということで気分も高揚していたのでしょうか?)。あるご婦人、笑い過ぎて笑いがとまらなくなってようで、みんなの笑い声が一段落して静まりかえった中、彼女の「ハーハッハ」と笑う声が聞こえたので、客席の皆さん、その声に受けちゃって、それに反応してまた客席中から笑い声が起こった、ということがありました。
PWWは来日するらしいですが、会場は小さいところであることを祈っています。

 次に、音楽。ジャズミュージシャンの演奏が、素人の私の耳でわかるほどよくありませんでした。26日の公演で、あまりの落差に驚き、メンバー変わったんだな、とわかりました。前回は、演奏に関しても100点満点の大満足、さすがジャズミュージシャンの生の演奏っていいものねえ・・・と感動したものです。プログラムでミュージシャンの名前を見たら、6人中3人が変わっていました。それだけでこうも違うのか、と驚きです。演奏がよくない上に、前回は会場が小さかったおかげで、ほとんど生のままの音で聴けたのですが、今回は会場が大きいために、スピーカーを通してボリュームアップした音だったので、生演奏感が薄れていました。

 以上二つが残念だったことです。

 さて、今回の公演、アンソニー役のうちの1人が、ウィルくんの代わりにサム・アーチャーくんになった以外は、すべて初演時のキャストと同じことがわかっていました。初演時の全キャストが素晴らしかったので、うれしいことです。サム・アーチャーは、2001年のカーマンのアメリカツアーで初めてAMPに加わったダンサー(リチャード・ウィンザーも一緒ですね。)の一人で、写真と、ある番組であった練習風景の映像を見たことがあるだけで、ちゃんと演技を見るのは初めて。見てびっくり、めがねをかけた横顔がウィルくんそっくり。外すと全然違いましたが。ウィルくんよりも幼い印象のアンソニーでしたね。腰の位置が高く足が細いので、体型も少年のようでした。特に、メイドのシェイラといいことをした後、デレデレのイカれた表情で登場し、シェイラとまたいちゃつくシーンで見せる、シェイラに微笑む笑顔のかわいらしいこと。気取った青年の表情はどこへやら、お姉さんに甘える可愛い僕、って感じでした。

 彼は、前回ウィルくんが演じていた部分をそのまま担当していました。ただ、一番最初の、シングルソファにうずくまってハッと何かに気付いて宙を見つめるシーンだけは、ユアンが担当していました。

 さて、PWW、続く「くるみ割り」(アホで間抜けな馬鹿息子フリッツを演じる)、そして更にSpitfire、と3作品で三枚目ぶりを披露し、「影のある美青年」というイメージは虚像だったと知らしめてくれ、それ以来というもの、「モ三枚目ダンサーモユアン」と枕言葉付きで呼ばせていただいているダンサー、ユアン・ワードロップ。またさらに三枚目に磨きをかけていらっしゃいました。最初の、新居に婚約者グレンダがやって来るシーン〜ジャズバーでのダンスシーン、なんて、別に笑うシーンじゃないのに、3人のアンソニーの中でユアン一人だけが、いつものあの、「困ったような含み笑い」の表情をして、自ら三枚目を演じています。なので、ジャズクラブのシーンなんて、別に笑うところじゃないのに、彼の顔を見ると噴出してしまって大変でした。

 ウブなアンソニーくんを誘惑する、キュートでセクシーな小悪魔、メイドのシェイラを演じる、ヴァレンティナ・フォーメンティと、ベリンダ・リー・チャップマン。2人の役割分担が顕著になっていました。ヴァレンティナの方はとにかく、したたか。頭がよく賢そうです。一方のベリンダ演じるシェイラは、頭の悪い、単純な女の子。このベリンダの馬鹿女っぷりの演技、必見です。あまりのおバカぶりに、微笑ましいとさえ思ってしまいました。ベリンダ、可愛かったです。なので、ヴァレンティナの方は、計画的で、自らの魅力をわかった上でのしたたかな誘惑、って感じで、ベリンダの方は、悪巧みで誘惑するというよりは、アンソニーのことが単純に好きで誘惑してる感じでした。

 それにしてもこの2人は本当に魅力的。美しくキュートでセクシー。ソーホーのシーン、2人で膝丈のトレンチコートにベレー帽をかぶって(ベリンダは全身赤、ヴァレンティナは黒)登場し、らせん階段の手摺際で踊るシーンが大好きです。美しい脚を見せつけ、手すりに片膝をかけたりして。2人の魅力全開。

 私が楽しみにしていたあのシーン、そう、2幕の最初、紫のダンスのシーン!これ、「紫のダンス」じゃなくなっていました。ジャケットと帽子が、紫ではなく、黒白になっていたのです。あの、おバカなダンスは変わってなくてほっとしましたが。ユアン、相変わらずノリノリ。アラン・ヴィンセントはもっとノリノリ。彼が一番弾けてました。ほんと、まさしく「自分を捨てて」踊ってました。いやでも、ユアンやアランの場合は「捨てる」必要はないか。地の自分だから(笑)。

 召使とスペイトの2役を演じるエディー・ニクソンですが、スペイト役の彼、一昨年よりも一段とセクシーでいい男になっていました。召使の時はぴったり撫で付けている髪を、スペイトの時はラフに崩すのですが、それがとても似合っていて。

 前回以上に演技と表情で私を笑わせてくれたのはスコット。いちゃつくアンソニー&グレンダを邪魔するために、わざとらしくドリンク差し入れたり、レコードプレイヤーの蓋をバタン!と閉めたりする時の表情、そして、「お着替え」のシーンの彼の表情が最高。洋服を欠けるワゴン台を引っ張りながら登場する時の表情、手つき、最後にユアンのパンツを脱がせて、それを両手の親指と人差し指でつまんでもって観客を見る時の表情、どれも傑作です。彼に脱がされるユアンの表情も相変わらず可笑しいので、「お着替え」のシーン、今回はこのペアばかり見てました。(もう一方のペアは、リチャード&エディー)

ハ 以上、私が今回改めて(初めて)感じた感想です。

 やはり、会場と演奏、という二つの面がマイナスだった為、総合して初演時の公演の方が断然よかった、というのが正直な感想です。

 帰国後、毎日CDを聴ける幸福に浸ってます。そして夏の来日が楽しみです。小さい会場であることを祈ってます。そして映像化も期待したいところです。

:Photo by Ms Yayoi:


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