・ Report By Ms.Kanegon・

1st&3rd September 2004


 去年の夏に続いて今年の夏もロンドンでミュージカルに出演のアダム。
「Singin, in the Rain」9月1日のソワレと3日のマチネをサドラーズ・ウェルズで見てきました。

 劇場の中に入ってまず驚いたのは、あちらにもこちらにも日本人のお客さんが! 去年のロイヤルフェスティバルホールでの「On Your Toes」の比ではないくらいです。アダム人気を再確認いたしました。
 両公演とも客層は子供から年配の方までまんべんなくいたようですが、ボリューム的には年配の方が多かったように思います。

 さて、舞台「Singin, in the Rain」ですが、ストーリーや登場人物の設定は多少違う部分もありますが、ほぼ映画と同じ。しかし、当然のことながら映画のそれとはだいぶ雰囲気が違っていたように思います。
 誰もが知っている超有名作品で、アメリカン・ミュージカルの王道中の王道であるこの作品をアダムはどう振付するのかな〜と思っていましたが、何というか、全体的にすごくバレエっぽい振付になってたように思います。ピルエットが多用されていたし。

「ブロードウェイ・メロディ」でドンとキャシーが二人で踊るシーンでは、キャシー役のJosefina Gabrielleがトゥ・シューズを履いて出てきたときにはちょっとびっくり。(映画の方でもこの場面はちょっとバレエっぽいですけど)
 彼女はプロのダンサーですからもちろんバレエも踊れるのでしょうが、バレリーナではないわけで、正直「う〜ん、どうなんだ?」と思ってしまいましたが、アダムがすごく丁寧に(慎重に?)パートナーを努めていたのが印象的でした。

 主人公のドンは、ボードビルの売れない芸人からハリウッドの映画スターに登りつめた人物で、ジーン・ケリーは映画の中でかなり脂っこくに演じていたように思うのですが、アダムのドンは爽やか〜でした。
 ジーン・ケリーのような「俺様はスターだ」的なバタ臭いノリをもっと出してもよかったんじゃないかなとも思いましたが。
アダムってきっと本当に素朴でいい人なんだろうな〜って思っちゃいました。そういう人柄がにじみ出ちゃってる。ファンとしては良くも悪くも(?)そういうところに引きつけられちゃったりするんですよね。

 がしかし、「ありゃりゃ」となったのが劇中に出てくる無声映画の映像です。 実際に撮影された映像を舞台上に写していたのですが、舞台は18世紀(?)フランス。アダムはピラピラしたロココ調の衣装に身を包んで登場(確かああいうカッコ、アダムは嫌いだったはず…)その映画の中のアダムが、ハッキリ言ってかっこよくな〜い!ソバージュ風のロン毛のズラも似合ってないし(似合う人はあまりいないと思いますが)アングルが良くないせいかちっともアダムがかっこよく見えない!

 ま、笑いどころ満載のおもしろおかしいシーンだったからわざとかっこ悪く撮ったのかもしれないけど、ファンとしてはちょっと不本意。
 それにしてもアダムってば、こういったコメディタッチの演技はもうお手の物といったかんじですね。このシーン、お客さんは大爆笑。私も思いっきり大笑いさせてもらいました。

 私は普段あまりミュージカルは見るほうではないので、歌のことはよくわからなかったりするのですが、アダムの歌は「On Your Toes」の時よりさらに良くなってたんじゃないかなと思いました。
 正直、アダムが歌う時って、ちゃんと声が出てるかとか、音程ハズさないかとか聞く方のこちらがなんだか緊張しちゃう、みたいなところがあったんですが、「On Your Toes」の時よりはだいぶ落ち着いて聞くことができました(笑)
 でも、肝心の「Singin, in the Rain」の歌はちょっとハラハラっとしちゃいましたけど(音程、ちょっとあやしかった…特に出だし)

 コズモ役のSimon Coulthardは、映画の方のドナルド・オコナーの芸達者ぶりとくらべてしまうとちょっと物足りなさを感じてしまいました。ただドタバタしてる感じに見えてしまって。
 映画でのドナルド・オコナーのあの体をはったエンターテイナーぶりはすごいインパクトですからね。表向きの主役はジーン・ケリーでも、本当の主役は彼だなと思ったくらいですから。

 キャシー役のJosefina Gabrielleは(失礼ですが)美人なんだけどちょっとフケ顔。女優を夢見る若い女の子がサクセスをつかんでいくシンデレラ・ストーリーでもあるわけだけど、ややもするとアダムより年上に見えかねないところがちょっとつらかったかも…。

 そして何よりも印象的だったのがリナ役のRonni Anconaです。
映画でリナ役を演じていたジーン・ヘイゲンもインパクトが強くて、あのへんちくりんさが素敵だったけど、Ronni のリナもすごくよかった!あのすっとんきょうなキンキン声でしゃべると客席は大爆笑。彼女はとにかくお客さんに大ウケでした。 あと、映画にはない彼女が歌うシーンもあって、素では歌が上手な女優さんである彼女がわざとへたくそ風に歌うのがすごくかわいかった。
「On Your Toes」でもオイシイところをヴェラ役のサラにもってかれ気味だったアダム。今回はリナ役のRonni Anconaにまたしてももってかれ気味!?。

 そしてそして一番の見せ場である雨の中で歌うシーンです。びしょぬれになって歌い踊るアダムにお客さんは拍手喝采でした!
 特に、最後にアパートの二階からおばさんにバケツの水をぶっかけられるシーンは大ウケ。上からは雨が降ってくるし、足元は水浸しですべりやすいし、そんな状況の舞台で踊るのは本当に大変だったと思いますが、アダムは見事に魅せてくれました!なのですが…私には少〜し物足りない気もしてしまいした。
 演出がちょっと控えめかなと。もちろん映画のイメージからあまり逸脱してしまってはいけないと思いますが、何と言っても有名なこのシーン、もう少し派手にやっちゃってもよかったんじゃないかなと。よくわかりませんが、やっぱり著作権等の制約があったりするんでしょうか?

 あれっと思ったのが、「ブロードウェイ・メロディ」でダンサー達が踊るシーン。酒場で下着っぽい衣装を着たストリッパー風の女の子達がアダムとからんで踊って…ってどこかで見たような…。
 何だか「On Your Toes」と似てる!?と思ったらそうなんです、パンフレットを見ればなんと演出、音楽監督、照明、音響とスタッフが「OYT」と同じだったんです。
 キャストでもSimon Coulthardは去年のロイヤルフェスティバルホールでの「OYT」のシドニーコーン役だったし、フィル・ドーラン二世役のグレッグ・ピチャリー、アヌーシュカ役のジュリエット・ゴウなど「OYT」と同じキャストが。
 考えてみれば「Singin, in the Rain」も「On Your Toes」も時代背景が近いし、主人公がボードビル出身っていうのも共通してたりするんですね〜。

 この場面、アダムはいかにも芸人風なハデハデチェックのスーツにまんまるロイドメガネが以外にも似合っていて、すごくアメリカンしていました。
アダムってメガネ似合うな〜なんて思っちゃいました。(スイマセン、どうでもいいことで…)

 全体的には、映画とはまたひと味違ったヨーロピアンテイストな「Singin, in the Rain」だったように思います。
アダム個人のダンスをガツンと見せる場面が特にあったわけではなく、作品全体のトーンを楽しむ感じでした。お客さんも毎回ノリがよく、すごく楽しんでいたように思います。笑いと拍手の絶えない楽しい公演でした。

 だけどつい、もっともっとアダムが踊る姿を見たい!と思ってしまう私であります。きっと来年の「危険な関係」ではまた全然違う魅力を見せてくれるのでしょう。あと数ヶ月でまたアダムに会えるのね〜と思うとうれしいかぎり。早くも来年が待ち遠しくなってきました。


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