AMP " SWAN LAKE " in Broadway report On 3rd November 1998 〜Vol.11〜


 ここにいる自分以外の人間は、全て黒鳥の共犯者なのかもしれない。
そう怯える王子に、それを肯定するかのようにプリンセスとそのエスコートは無言の脅しをかけてきます。
そして、再び黒鳥と王妃が登場。王子の精神状態はますます悪化し、その場に立っていられない程に。
そんな王子にとどめを刺すように皆は彼を取り囲み、あざ笑いはじめました。
これは王子の幻覚なのか、それとも黒鳥の企みなのか。
 と、その時、いっきにその場の雰囲気は一変し、照明が明るくなり、女性達の群舞が始りました。

舞台左前に立てひざをして横たわる黒鳥。というより、アダム。
ここで再び話しの流れから現実に戻され、目は彼にくぎ付け。その長い体を観察しながら、もう少し顔が見えたらいいのにと更に欲張ってしまいます。
するとその時ビデオ版とは違う動きを始めました。近寄る王妃のドレスに黒鳥が少し触れたのです。
以前よりも二人の間柄を強調させる為なのでしょう。再び定位置に戻った黒鳥にまたこちらも視線を戻すと、あっという間に次のダンスへなだれ込みました。
そう、あのテンポの早い大好きな場面です!

パーカッションの刻む音の上に軽快なメロディーがのり、黒鳥とエスコート達が舞台奥から前方へリズムにのって登場してきます。
左腕を額の辺りに持ち上げ、シャープな動きでこちらにやってくる黒鳥。もう目は彼にくぎ付けです。
動きが早いシーンだけにビデオでもエスコート達は音に遅れがちですが、いうまでもなくアダムはきれいにのっています。素早い動きながらもきれいに延びる四肢。一人だけ違う時間の流れで踊っているようです。
音にのり、リズムにのり、のびのびと踊る彼の姿に、もうキャーっっとしか言いようがありませんっっっ!!!

女性陣との掛けあいが始っても、目は当然アダムから動かず、固唾を呑んで見守る私。そして、あのタップのようなステップを踏むシーンがやってきました。
ああっ!!!もう、かっこ良すぎる〜っっっっっ!!!彼の華麗な動きに息をするのも忘れ、食い入る私。
明るい場所で見たらさぞかし変でしょう。まさしくフリーズ状態で目だけは爛々と輝かせて黒鳥と王妃を見守ります。
二人で手を繋ぎ、アダムが上体を反らす所でもまた再び、いいなぁ・・・とぼおっとなり、あ、でもここまで来たらもうそろそろ終わってしまうと一度に色々考えて頭の中は正にカオス。

私がうっとりしている間に舞台の上は忙しく、二人の為にテーブルのセッティングをしていました。
一つ一つのテーブルに黒鳥が片足をかけ、その上を王妃がサポートされながら飛び越えていくというシーンです。
ここまで踊り続けてきて、最後の最後でこのシーンというのは、さぞかし体力的に大変なのだろうと思いつつも、でも華麗に決めてね!と期待に胸が踊ります。

セッティングが整った所で王妃と黒鳥は舞台右のテーブルからその動きを始めました。ビデオと同じ動きです。ところが、そのテーブルについている人達は違ってました。
各テーブルについた一人づついるエスコート達は、盛り上げるようにテーブルを両手でドラムロールのように叩いています。そして、報道官は両手、両ひざ、両足などを使って複雑なリズムを生みだそうと疾駆八苦していました。
これが、なかなか笑えるのです。ただでさえ早いテンポに叩きにくいリズムを距離のある体の部分を使って生みだそうとしているので、どうしてもテンポに乗り遅れるのです!やめればいいのに・・・と悪いのですがちょっと思ってしまいました。

そんな周囲とは関係なく、黒鳥と王妃は次々にテーブルをクリアー。笑顔で舞台中央に躍り出します。
最後は黒鳥が王妃の足下に跪き、ドレスの裾に抱きつきフィニッシュ。会場から大きな拍手が巻き起こりました。
心の中では、リプレイした〜いっっっ!と思いつつ、私も大きな拍手をします。まあ、何度リプレイした所で、私の目にはアダムしか入って来ないんですけど。

そんな沸き上がる会場をよそに、舞台はどんどん進んでいきます。包容しあい、じらしあいを楽しむ黒鳥と王妃。
そこに、様子がすっかり変わってしまった王子登場。口づけしている王妃と黒鳥を引き離します。その瞬間一度母親を威嚇し、黒鳥に振り返り、何故?どうして?と黒鳥にはすがるように両手で黒鳥の顔にそっとふれました。
ここも私のチェックポイントです。この時の王子の表情が可哀想で好きなのです!そんなかわいそうな王子を黒鳥は容赦なく突き飛ばします。

今度は王妃が黒鳥に近寄り、次に王子をしかりつけるように彼の元に歩み寄っていきました。そして、王子の頬を平手打ち。
その瞬間の周囲の表情もまた私のチェックポイントです。思わず自分が打たれたかのように痛そうに自分の頬を手で押さえるエスコートなんかも居て、なかなか面白いのです。
三角関係のもつれとも、派手な親子喧嘩とも見えるこのシーン。ここから事態は急展開を見せます。ぶたれた瞬間に自分のポケットから王子が拳銃を抜きだしました。
ビデオを見た者にとってはいつもの展開です。拳銃を手に近寄るなと周囲に訴えます。その中、黒鳥だけが果敢に王子の説得に出ます。そこに報道官の企みを知っている元ガールフレンドが飛びだし、王子を守るべく彼に抱きつきました。
その時、報道官の拳銃が王子に向かって発砲。パン、パンという大きな音が会場に響きました。

その瞬間、私の隣に居た女性(恐らくアメリカ人)が飛び上がって悲鳴をあげんばかりに驚いたのです!!!その隣に座っていた私は舞台の展開にではなく、その女性の反応にびっくり!!!もう、心臓が飛び出そうな程バクバクいっています。
何事が起こったのかとこっちの方が悲鳴を上げたいぐらいです。
アダムの一つ一つの動きにトキトキ、ドキドキと忙しくして少々疲れ気味だった私の心臓に、大きな衝撃が走った瞬間でした。


☆上の写真は、AMP「SWAN LAKE」公演中のニールサイモン劇場です(著者撮影)☆


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