AMP " SWAN LAKE " in Broadway report On 5th November 1998 vol.3


 ああ、心臓に悪かったとウィルともども一休みという感じで(勝手に一体感を抱い ている)安心してスペインの踊りを堪能。そして、イタリアのプリンセスに場面は移ります。

 聞きなれた音楽とともに、黒鳥がプリンセスの靴を脱がせるという、名場面が始り ます。それを見守りながら
「ビデオではエスコート側だったのにね、ウィル君。出世したよね〜。お姉 さんはうれしいわっ」
と勝手に目をうるうる(でも気持ちだけ)。余裕で女性にアプローチというより、一生懸命大人の男に見えるように修行中の若者が頑張っているという風に見える・・・
けれどそこは目を瞑って、とにかくウィリアムが成長したと感慨深く見守る私。

 一人浸っているうちに、どんどん舞台は進み、いよいよ追いこみです。自由奔放に テーブルの上で踊るプリンセスにエスコートが怒って下りろと言っています。そこに黒鳥が登場し、エスコートにタバコの煙を顔に吹きかけるという場面が展開されました。
 ところが、このエスコートがウィルより大きい!しかも体格がいいっ!ウィリアム、そんな人にけんかを吹っかけたら、君の身が危ないからよしなさいっ!!相手が悪いっ!!ああ、もうそんなに勢い良く煙を吹きかけて・・・

 ところが、メイクのおかげで日ごろの2倍ぐらいの大きさに見えるウィルの目が怖 かったのか(それは、絶対に無い・・・)物語の進行上仕方がないからなのか( そうに決まっている)、彼は勝手に引き下がる!!なぜだっ?!君なら絶対に勝て る!私が保証して差し上げましょう!一撃でウィルひな黒鳥なんて、赤子の手を捻る ように簡単に倒せそうじゃないかっ!!はぁ、はぁ、はぁ・・・
と一人派手な突っ込み劇を頭の中で展開する中、もう一人の冷静な(?)私が、うーん説得力が無いわね〜。ウィル坊ったら、まだまだ子供ねとつぶやいていました。でも、かわいいから許しちゃいましょう!(大甘)

 続くシーンは、王子と黒鳥がそれぞれを意識しながら別々の相手と踊る、大人の駆け引きを感じさせるダンスです。アダム&スコットの間には、何ともいえない危険な香りのする緊張感が漂っていましたが、ウィル&スコット組では、一触即発のけんか寸前なる緊張感が!!やっぱり野生の白鳥は野生の黒鳥だったっ?!今日は本当に新鮮味にあふれています(笑)

 黒鳥と女王とのダンスが始り、すっかり保護者気分の私はまたリフトの不安が頭を よぎりはじめます。女王を肩にかついで舞台を歩くあのリフト。大丈夫かしら。 と言っても、彼は彼なりにちゃんとリフトしているので、勝手にこっちが気を揉んで るだけなのですが・・・恋する乙女と化した女王と黒鳥のダンス。
 女王の胸をぎゅっと鷲掴み、はしゃぐ女王を追いかけながら楽しくダンスするというこのシーン。女王をおとすのなんか簡単さっという自信に満ちた黒鳥の独壇場のシーンですが、ウィル君は一生懸命踊っています!!けなげだっ!ウィル坊!! でも、何かが違うぞ。ちょっと女王に弄ばれ気味なんだけど、気のせい?

 そして今日も王子と女王が入れ替わるシーンでどっと笑いが・・・悲しい・・・・
照明が落とされ、ヴァイオリンの悲しげな音が響きます。その中、切羽詰った王子 とそれをいたぶるように弄ぶ黒鳥。アダムの「いたぶる」は心理的いたぶりですが、何せウィル黒鳥は野生ですから、これがなかなか痛い感じで・・・
「ス、スコット、危ないっ!!つつかれるっ!!!」
でも本当に鳥の雰囲気は良く出ています。

 この頃には、私の中には今までの「王子を弄ぶ憎らしい悪魔的魅力を持った、でも私も虜になってみたい黒鳥像」とはまた別の「野生だから人間の思い通りにならない、でもそれ故触れてみたい、思い通りにしてみたい黒鳥像」が出来あがってきました。

 うーん。ウィリアムはさぞかしどうこの役にアプローチするのか悩んだのでしょう ね。何せあのアダムの白鳥&黒鳥が有名すぎるというのがまた、その難しさに拍車をかけていると思います。でも自分なりの白鳥&黒鳥をちゃんと作りあげたのね、ウィリアム!偉いっ!でも、テンポが速くなって皆で同じステップを踏むシーン。ちょっと周りに埋もれてたわっ、と突っ込みを入れておきましょう。女王様の華麗なるテーブル越えは見事クリアーしていました!

 瞬く間に王子が退場、ロボトミー手術を施され彼の寝室へ。相変わらず風変わりな展開です。何せ王子が母親の女王をピストルで撃とうとし、即刻ロボトミー手術なのですから(笑)。

 さて、いよいよ大詰めです。夢の中でうなされている王子が横たわるベッドの下か ら、白鳥達が這い出てきてます。美しくも恐ろしいシーンです。怯える王子、攻撃的な白鳥。そこにウィルの白鳥がベッドと枕の間から這い出てきます。
 ウィルの白鳥は両手を広げてもそう大きくは見えませんが、必死に助けようとしているという雰囲気は伝わってきます。 すがる王子、助けようとする白鳥。でもアダムの白鳥と違い、二人の間に恋愛にも似た愛はそれほど感じられない・・・
 王子を無償の愛で包むという包容力を感じるには、白鳥が若い。そう、友情が一番近いのでしょうか。私にはウィル演じる白鳥が必死に親友を助けようとしているように見えました。
 そんな二人の前に立ちはだかる白鳥達。相手がウィリアムだと、白鳥たちがいつにも増して、とっても意地悪に見えちゃいます。

 次第に弱ってくる王子。そして、また私の頭に不安がよぎります・・・スコットのリフト。ウィリアムがあの大きなスコットを今からリフトするのです。ウィリアムよりスコットの身を案じてしまいます。スコット大丈夫かしら。
 でもまあ、今度はしがみつく王子を両手で抱きしめるので、前より安定しているは ず、と思いなおします。でも、問題はその後にありました。

 無事白鳥の首にしがみつくように抱きつく王子を抱え終え、ウィル良く頑張ったと心で褒めた後、それはやって来ました。白鳥に抱えられた王子が、他の白鳥の攻撃を受けてずるずると床に落ちてしまうというシーン。
   ウィルに抱えられたスコットが床に落ちていきます。昨日観たアダム白鳥は、敵である白鳥達を牽制しながらも、スコットが無事着地したかを気遣っていたのですが、今日のウィリアム白鳥は違いました。
「ひ、ひどいウィル。スコット落ちっぱなし!落としっぱなし!確認もしてあげない !!!ちゃんと気遣ってあげなさいよっ!!!愛が足りない!愛が!!!」
と急にスコットファンの私は心の中で抗議の嵐。これ、これなんだわっ。スコットの あの一言は(笑)いや、でも今のウィルはいっぱいいっぱいに違いない・・・人の事なんか、かまっちゃいられない・・・

 徐々に追い詰められる白鳥は、じりじりとベッドに追いやられていきます。そして、遂に白鳥達が彼をつつき始めます。白鳥がかわいそうっ!と泣いてしまうところですが、今はもうこれでウィリアム演じる白鳥を見納めになる私が、かわいそうっ!!!!ああ、いよいよエンディングです。終わってしまうっ!!

 白鳥が消え、王子が目に涙をいっぱいに浮かべて上を仰ぎ見ます。スコット、泣かないで!これであなたの王子が見納めだと思うと、私も泣いてしまう。うわーん、私がかわいそうっ!!!

 絶望の末、息絶えた王子を抱える女王が舞台では泣いています。一方、私は見納めになるスコットを出きるだけ目に焼き付けておこうと必死に目で追いますが、この舞台が終わってしまうというその事のショックがひときは大きくて、何だか目がうるんで来てしまいます。そして、ウィル白鳥が幼少の王子を抱えて現れました。
 ああっ!本当に、本当に終わってしまうのね・・・それが悲しくて、心が号泣してしまいました。

 大きな拍手の中、カーテンコールが始まります。次第に拍手が大きくなる中、スコットが挨拶。出きる限り大きな拍手を送ります。そして、ウィリアムが登場。歓声があがります。ウィルにも大きな拍手を送り、今度舞台での彼に会う時には、またもっと成長しているのだろうと期待が膨らみます。

 今夜もHIVの患者の為の募金の案内があり、舞台を終えたばかりの白鳥が会場に小さなバケツを持って現れます。
あーあ。終わってしまいました。充実した喪失感といいましょうか。きっと、何度観 ても観終わったときには同じ状態に陥るのでしょう。充実した寂しさが私の体を満たしていました。

   汗で目のまわりの黒いメークが流れかけた、間近で見ると怖い、でもチャーミング に微笑んでくれる白鳥のポットに今日も1ドル寄付します。
ああ、この白鳥達も今日で見納めです。3日間、通った劇場とも今日でお別れ。 一歩一歩名残惜しく階段を降りて行きます。
 あっという間の3日間。またいつの日か、AMPのSwanをこの目で見たい。絶対に見よう。そう思いながら、胸にアダムのポスターをしっかり抱き締めるように抱えて、劇場を後にしました。


☆上の写真は、AMP「SWAN LAKE」公演中のニールサイモン劇場です(著者撮影)☆


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