AMP " SWAN LAKE " in Broadway report On 3rd November 1998 〜Vol.2〜


辺りはすっかり静まり返り、空の月とその明かりに照らされた白い木の枝がより一層静寂を演出しています。

夜の公園に現れた王子はお決まりの「えさを与えないで下さい」と書かれた看板付きの白いベンチに腰掛けます。
ビデオではごみ箱の紙切れに走り書きした遺書を、これまたごみ箱にへばりついていたガムで街灯の柱に貼り付けるという展開になっていましたが、今回はガムをびよーんと取るところはなく、簡単に柱に貼り付けていました。
遠くからじゃ分かりにくい演出だったのかしら?と考えながら、いよいよ白鳥だ!と考え、一層舞台を食い入るように見つめます。

遺書を書き、いよいよ王子の入水未遂です。ここで劇的な音楽と同時にアダム登場!もう、絶妙のタイミングで王子の前に現れました!!!
あの夢にまで見た(本当?)シーンが今目の前で繰り広げられています!出てきた途端思った事は、大きい!!!!という事。ビデオの時よりもより包容力が増しているようです。体格的にも一層しっかりした感じ。
そして、アダムとスコットの動きは、もう何百回と舞台を踏んでいるのにもかかわらず新鮮で、今白鳥と王子が出あったという緊迫感を出しています。王子が白鳥に出あった驚きが、見ている側に伝わってくるのです。
そして、その様子は驚きから徐々に喜びに変わっていきます。

群舞の白鳥が次々に登場してきました。アダムもそうですが、白鳥たちも余り音がしません。そこに再びアダムが大きく翼を広げて登場。もちろん足音もなくしなやかに。
そして白鳥たちの中心にアダムが立ち、皆で王子に威嚇しつつ誘い込むかのような翼の動きをします。その中にあって、アダムの白鳥はひときはスケールが大きく、その存在感は群を抜いています。その様子に魅せられていく王子。またたく間に白鳥たちは立ち去り、アダム扮する白鳥が一人残ります。
そして、私のホームページの扉絵にも使わせてもらっている、有名なポーズ。ああっっっ!このシーン!!!!!アダム〜ッッッッッ!などと心の中で思いっきり叫んでいるうちに、あっさりとアダムが退場。ああ・・・何てスピーディーなんでしょう。

そして再び白鳥たちが登場。先ほどまでアダム、アダムだったのにもかかわらず、すぐに変化に順応して、今度はあの白鳥がいい、こっちがきれい。こっちがハンサムなどとチェックを入れてしまいます。
そこに王子が再び登場。ビデオでの王子は、白鳥たちが物珍しくて近づいて行くかのように見えますが、舞台の王子は違います。とにかく彼の「あの」白鳥をひたすら探しているのです。彼にはもう、「彼の白鳥」しか見えていないのです。だから夢中で探しているあまり、無防備に野生の白鳥たちに近寄り、つつかれそうになるのです。
今や王子はすっかり「彼の白鳥」のとりこなのです。そんな彼に腹を立てる白鳥。そしてうずくまり怯える王子。そこにアダムの白鳥が再度登場しました!

うずくまる王子に白鳥はそっと近寄り、やさしくその翼で彼に触れます。そして瞬く間に舞台のうえは二人の愛で満ちてきました。
今まで、王子が白鳥に夢中になるのは分かるのですが、何故白鳥があそこまで王子を守ろうとするのかが分かるけど、ちょっと分からない的な所が残っていました。ところが、今この二人の姿を生で舞台の上で見ていて、私は多いに納得しました。
この王子の瞳。このきらきらと光り、純粋な喜びに満ちた目で見つめられ、追いかけられては誰でも参ってしまいます!白鳥はこの目、この姿、このピュアな心にまいってしまったのね!!!!!!!っと一人大きく頷き、ドキドキしながら舞台の二人を見守ります。

舞台の二人の姿、動きからはますます愛情が満ちあふれ、「私がサラだったら複雑な気分になっちゃう」という光景が繰り広げられていました(笑)
見つめあう二人の目は互いを真っすぐ見つめています。そして、白鳥の翼が王子の肩に置かれ、王子が白鳥の足に触れるシーンでは、見ているこちらがドキドキして、ゾクっときました。(私がおかしいのかっ?!)

続く二人のデュオは息もぴったりで互いがまるで空気の存在のよう。群舞の白鳥はますます鳥らしく動き、そして舞台の照明が深い青に変わりました。彼の白鳥を見失った王子が白鳥たちの間を歩いてきます。そして、ハープの音が鳴り始めました。
王子は舞台の中央に後ろ向きに立ち、白鳥たちは後ろでに組んだ手を一斉に解きます。その幻想的な美しさといったら!本当にきれいな場面です。
そして。その幻想的な美しい夜の静けさの中にアダムが登場。もう、出来過ぎです!

私もアダムにあんな風に振り向かれたい!とは言いませんが(ちょっと言うかも)その王子を振り向く姿に胸がときめいてしまいました。
白鳥を探して空をぼうっと見上げている王子の後ろでアダム扮する白鳥が、美しいヴァイオリンの旋律に合わせてしなやかに踊っています。そして、白鳥は王子にもたれ掛かるように近付き、彼に自分の存在を知らせました。そのもたれかかり方がまたこちらをドキッとさせます。そして・・・彼に気づいて王子が振り向き、軽やかな弦の音が始りました。
その時の王子のうれしそうな事といったら!もうこれは役柄だけの喜びではないわね、スコット!などと心の中で思わず呼びかけてしまいました。

王子の喜びの舞いは続き、白鳥もそれに合わせてしなやかに踊っています。そして、白鳥は王子の手に頬擦りし、次に王子の胸に顔をこすりつけました。それに合わせてこっちもまたドキドキ。ビデオ以上に二人の間柄が濃厚になっているのです!
王子にもたれかかって顔を寄せ、王子を抱え、王子によりかかる白鳥。この二人の間にはもう、完全に恋愛関係が成り立っているとしか思えない雰囲気が漂っています。
そして、王子が白鳥の首にしがみつくように腕をまわし、白鳥が抱き上げるシーンでは、王子の孤独とピュアな心がこちらの胸をきゅんとさせ、白鳥のみならず我々の心にまで彼を守ってあげなくちゃという気持ちを沸き立たせました。

王子を下ろし、白鳥が再び彼の元を去ります。その瞬間に、思わずほうっとため息が出てしまいました。ああ、なんていいのでしょう!!!!このせつなさがたまりませんっ!

そして、舞台は余韻を残さず、さっさと笑いの渦に突入していきました。そう、四羽のひな白鳥の踊りが始ったのです!


☆上の写真は、AMP「SWAN LAKE」公演中のニールサイモン劇場です(著者撮影)☆


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