AMP " SWAN LAKE " in Broadway report On 3rd November 1998 〜Vol.5〜


客席が暗くなり、コンダクターが入ってきました。降り下ろされたタクトが底につくと同時に聞きなれた音楽がスタートします。
幕が開き、何かが始りそうなわくわくする音楽にのって、各国のプリンセス達がエスコートを伴って登場してきました。
もちろんプレスには例のサインを求める追っかけ2人組もいます。

基本的にはビデオと同じで、王女の入ってくる順番も同じようです。王女達の衣装が少し変更されている以外は元のままです。
 例のロールスロイスが、音も無くスムーズに入ってきました。(NHK-BSでの放送で知ったのですが、舞台に十分な奥行がないので、この車は縦真っ二つに切られているそうです)舞台で見ると案外小さく感じます。

全員の入場が済み、カーテンが解かれて舞台はあっと言う間にボールルームに早変わり。こちらもビデオ版とほとんどかわりません。
変わったものは、唯一壁から出ている大きな手が握り締めている松明の炎ぐらいでしょうか。以前より炎は大きく、風に吹かれているような形になり、更にオレンジ色にそまっていました。

招待客が歓談している所にファンファーレが鳴り、王妃と王子が登場。王妃は相変わらず派手なコートを纏っており、それを脱ぎ捨てるとシックな青紫のドレス姿になりました。
以前のあずき色のようなドレスより落ち着いた感じで、スパンコールがちりばめられている分、少し豪華になりました。

再びファンファーレが鳴り、ダンスが始ります。全員澄ました顔なのに、踊りはどこか変。いえ、どこかというより、はっきり変です。
ビデオ版より更におかしさを強調しているようで、これもまたアメリカバージョン故なのでしょうか。
いわゆる社交ダンスの流れで進むシーンですが、男女が互いに少し離れた状態で向かいあう時に、男性は腰をふりながら腰の横に添えた手の指を、こっちにおいでと誘うように動かすのです。
ここで会場からは笑いが起こりました。でも私にはおかしいというより、ちょと下品な感じで一抹の寂しさが・・・
アメリカでは分かりやすい演出と、こういう笑いが必要なのかしら。ちょっと違和感を覚えます。

そんな中、スコット扮する王子は真面目に踊り続け、律義に王女達のお相手をこなしていきます。その姿からは王子らしい気品と彼の素直さが現れています。
 あちこちから笑いが起こったダンスが終わり、再びファンファーレが鳴りました。さあ、いよいよです。いよいよアダムの黒鳥の登場です!

期待に胸がドキドキしてきました。目は舞台正面のバルコニーの手すりにくぎ付けになり、耳はしっかり出のタイミングをチェック。
ビデオを何度も繰り返して見たので、出てくるタイミングもしっかり覚えている私(笑)

思った通りの場所でアダムの足が見え、例の黒のスーツに白いマフラーをかけた彼が登場しました。遂にこの目で本物を見られたっっっ!と頭の中で叫び、体は硬直。食い入るように見つめてしまいます。
手すりの中央まで来たアダムは正面を向き、音楽のアクセントに合わせてバルコニーに下り立ちました。

その瞬間、
『あっっ!無精髭っぽいメークをしているっっっ!』
と気づき、次の瞬間、
『と、盗賊っぽいっっっっっ!』
と一人笑いに包まれ、
『思いっきり悪に見える・・・・』
とショックを覚えたのでした。どう見ても、怖さが増している・・・でも言い換えれば大人度が増したのです。きっと。

にこやかに他の人と歓談していて笑っていた王子は振り向きざまに黒鳥と目が合い、彼ににらみ付けられます。
そして瞬時に王子の顔が笑顔から素に戻り、そこで会場から爆笑が起こりました。そ、そんなに笑うシーンなのかしら???と疑問がわき起こります。

怖さを増したアダムはそのままずかずかと王妃に近寄り、彼女の手を取り、手の甲から肩まで一気に舐め上げました。
そこでまた会場は爆笑。まあ、ここの笑いは分かりますが、会場は爆笑です。アメリカ人はよく笑うなぁと思ってその笑いを聞きます。

 そして・・・オケボックスからは、私の好きなロシアの踊りの旋律が流れてきました。


☆上の写真は、AMP「SWAN LAKE」公演中のニールサイモン劇場です(著者撮影)☆


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