AMP " SWAN LAKE " in Broadway report On 3rd November 1998 〜Vol.6〜


 音に合わせて持っている乗馬用の鞭を左手の平に打ち付け、ハンガリーの王女のテーブルに移動する黒鳥。
記憶している通りにアダムが動き、パシッという鋭い音をさせて彼女が座っているテーブルに鞭を叩き付けました。

慌ててその場を離れる男と、素早く入れ替わる黒鳥。白いマフラーを壁の方に投げ捨て、スコッチ(推測)のグラスに手を延ばします。
 ああ、もうビデオの通りだわっと当たり前の事に感動してしまいます。今私の瞳を少女漫画的に描いたなら、星がとんでうるうる、もしくはキラキラなんだわきっとと一人浸ってしまいます。もちろん手は両手を胸の辺りで握り締めてという構図でしょう!

 ああ、今度はハンガリーの王女が最後のグラスを奪い取ったわと思っていると、その星が目から飛びだすような笑いが起こりました。
大袈裟に口の回りを舐めてからグッとスコッチを飲み干す彼女に会場は大爆笑。
そ、そんなにおかしいのか、君たちっっっ!!!ああ、ここは大人の雰囲気で渋く決まる所だったのではないのかぁっっっっと今度は逆の意味で目がうるうるして来てしまいました。

 そんな私にはお構い無く(当たり前)アダムは舞台中央に移動。彼を避けるように他の客人達は壁際に散ってしまいます。
そして、切ないヴァイオリンの音がする中、黒鳥がふと気が付いた風を装ってハンガリーの王女の方に振り向きました。
ああ、私もこんな風に振り向かれたいっと、先ほどのうるうるから少し復活。再び舞台は大人の雰囲気が戻ってきました。そう、そうこなくっちゃとこれから始るダンスに胸が高鳴ります。

 黒鳥が王女の顔を引き寄せるように首の辺りに手を回し、唇を重ねるような仕草をします。それを上手くはぐらかすようにする王女と、ふりだけで相手の反応を見て楽しんでいる黒鳥。そんな大人の駆け引きが舞台の上で展開されています。
ああ、何ていいのかしら。このシーン、この音楽!とうっとり。
しかしリフトの所で、何だか二人のタイミングが非常に微妙にですが、ずれている感じがします。ずれているというか、どこかしっくり来ない感じを受けました。疲れているのか、音楽のテンポが悪いのか、今日は調子が悪いのか。大丈夫かしらと少し不安になってきました。
しかし舞台は止まる事なく進行していきます。王女が黒鳥を引き寄せ、彼のお尻の辺りをパシッと叩くと再び会場からは大きな笑いが起こりました。ああ、またアメリカ人が笑っている・・・

 そして、黒鳥が右足部分に王女をリフトし、王女がその上で足を上げるというシーンでは、より安定感のなさが私には見えてしまいました。
形にはなっていますが、そのポーズが少し不安定なのです。今日が調子悪いのか、ビデオではきれいに決まり過ぎていたのか・・・同じアダム・クーパーとサラ・バロンなのに・・・と少しがっかりしました。
 そこにまた追い打ちを欠けるような事が起こりました。ビデオでは、黒鳥に支えられて大きくのけ反った王女の胸に黒鳥が顔を近付けるというシーンが、舞台では王女の胸を見て、王女と顔を見あわせてというコミカルなものに変えられていたのです。
好きなシーンなのに、振り付けが変わってしまった・・・とショックを受けている私に会場の爆笑が襲いかかりました。
どっと笑いが起こったのです。そんなにおかしいか、アメリカ人っっっ!

 ああ、私のイメージする黒鳥がどんどん崩れていく・・・と完全に心までうるうる状態になる中、黒鳥は相手を変え、今度はドイツの姫君と楽しくダンス。
ここからは振り付けの変更もなく、次々に相手を変えてる黒鳥。ああ、やっと本来の調子がこちらにも出てきました。近づく王子を追い払うように一つ大きく跳ぶと音楽のテンポが変わり、急に活気づいてきます。舞台を所狭しを駆け抜けるアダム。

さあ、次はあの3回転よっっ!と今までの落ち込みは何処かに消し去りどきどきしてきました。


☆上の写真は、AMP「SWAN LAKE」公演中のニールサイモン劇場です(著者撮影)☆


HOMEに戻る
AMP " SWAN LAKE " in Broadwayインデックスに戻る