AMP " SWAN LAKE " in Broadway report On 3rd November 1998 〜Vol.8〜


 怒ったエスコートを全く気にせずというよりも、見せつけ怒るのを楽しみながらナポリ王女の靴を脱がせる黒鳥。
高だかと持ち上げられた彼女の足の手触りを楽しみ、ゆっくりと片方ずつ足に口づけるようにしながら靴を脱がせて、余裕たっぷりに床に落としていきます。そんな彼を満足げに見る王女。

ああ、何て色っぽいシーンなのでしょう。大人ねぇとほぅっと思わずため息をついてしまいます。あんな風にアダムに靴を脱がせて欲しい!とは思いませんが、あの大人の色気にはくらくら来てしまいます。
どうも、ビデオの頃より彼は大人の色気がぐっと増したような感じです。

 黒鳥が王女のテーブルから離れ、王女はテーブルの上に立ち、有名なメロディーが流れてきました。
そのトランペットの音に合わせて踊り出す王女。そんな彼女に下りろと怒るエスコート。その仕草がオーバーアクションで、かなり子供っぽく感じられます。
 床を指さし、じたんだを踏みながら下りろ、下りろと言うのです。何度も床をドンドンと踏みならして、指で床を指さし、まるで癇癪をおこしているかのようです。

 ここまでオーバーにする必要があるのかしら?と再び疑問が沸いてきます。そんな彼に王女はストゥールを頭からバサっとかけてしまいます。そこで会場からは笑いが・・・
確かにこうする方が分かりやすいかもしれないけれども、こんなコミカルな場面ではなかったのにと、再び一抹のさみしさが沸いてきました。

 その後はいつもの通りで、振り付けの大幅変更もなく、その様子を黒鳥は王妃の居たテーブルの上に煙草をくゆらせながら座って見守り、報道官と話しあっています。
 王女と黒鳥の動きを忙しく見比べながら、次のチェックポイントを待ちます。私が好きな、王女の投げキッスに黒鳥が答えるシーンです。自分でもチェックが細かいなぁと苦笑しつつ、あの好きなシーンを待ちます。
 そして、王女が黒鳥をしっかり見つめて投げキッスを送りました。それに黒鳥は煙草を持った手を動かして答えます。ああっ!何てさまになっているのかしらっっっっっ!!!!!

一人キャーキャーはしゃいでいるうちに、舞台はどんどん進み、ラストスパートをかけています。リフトされ、テーブルの上に再びのぼり、自由奔放に踊る王女。
すると、何故か黒鳥がテーブルから下りて歩きはじめたのです。何処に行くのかしらと思っていると、彼はすたすたとエスコートの方に向かっています。
そして、曲が終わると同時に、最後まで怒っているエスコートの顔に思いっきり煙草の煙を吹きかけました。それにエスコートは怒る事なく、すごすごと引き下がっていきます。
 その途端に会場からはまたもや笑いが。と同時に私はまた悲しみの湖に突き落とされていくのでした。

 そこまでしなくったっていいじゃないっっ!十分エスコートは黒鳥を恐れているというのに、こんな事をわざわざする必要はどこにもないはずです。それに、周囲の事なんか全く関係ないねという黒鳥のクールさがいいのに、これでは台なしじゃないのっ!!!!!
あのスマートでクールな黒鳥を返してっっっっっっ!と、「雨に唄えば」でシド・チャリシーがジーン・ケリーにしたようなこの煙草の煙を吹きかけるシーンに、思わず激怒してしまいました。

 その怒りも次のダンスが始ると同時にあっとい間に消え去り(立ち直りは早い)、今は再び登場の王子と黒鳥に目はくぎ付けです。
チャルダシュの音楽が始り、黒鳥と王子はお互いを視野のおさめたまま、互いに別のパートナーの手を取りました。

 あの緊迫したダンスのはじまりです。

 


☆上の写真は、AMP「SWAN LAKE」公演中のニールサイモン劇場です(著者撮影)☆


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