AMP " SWAN LAKE " in Broadway report On 3rd November 1998 〜Vol.9〜


 女性と踊りながらもその目はパートナーではなく、互いをにらみ付けるように見ている王子と黒鳥。
そのからみあう視線に思わずぞくぞくっとしてしまいます。

相手から目が離せず、先ほどから黒鳥の行動に不信感と怒りを感じている王子の視線と、それに挑み、挑発している黒鳥の視線。
 お互いにそつなくダンスをこなしつつも、神経はダンスではなく相手に集中しているというのが手に取るように分かります。
時折互いの体が接近すると、その度にけんかがはじまりそうな雰囲気が濃厚になり、またダンスの流れによって引き離される。その間隔は音楽が進むにつれて縮まり、終わりに至る頃には一触即発の緊迫した空気に変化しました。

怒りを必死に押さえ込み、黒鳥をにらむ王子。その視線をにらみつけるように見上げる黒鳥。その黒鳥の腕には王子のガールフレンドがいます。
その彼女を音楽が終わると同時に黒鳥は興味がないとでもいうように勢いをつけて放りだします。
でもそこはやっぱりアダム。ちゃんと乱暴にならないように相手の事を気遣いながら、でもこのシーンにちゃんと合った動作に見えるようにしながら、勢いをつけて解き放ちました。(という様に、欲目かもしれないけど、私には見えました)
 なおもにらみつける王子にしっかりと目をすえながらもやり過ごすように黒鳥は王子の前を通って立ち去ります。

 あっという間に王女やエスコート達が姿を消し、王妃が自信に満ちた様子で登場しました。
そして、近寄ってきた黒鳥を前におもむろに手袋を脱ぎ捨てます。その彼女の手を黒鳥がにこやかにかつ、余裕を見せて取りました。
華やかな音楽が鳴り、軽やかに踊り始める二人。絶妙のタイミングで王妃をサポートしする黒鳥。今の彼にはマダムキラーという言葉がぴったりです。そんな彼に王妃のみならず、私までくらくら。

 そこでふとスコットの事を思いだし、彼の様子を確認します。思った通り、王子は楽しげに舞台の上を所狭しと踊る二人を、暗くなった壁際の椅子に座りながらにらみつけていました。絶好調で踊っている彼の母親とは対照的です。
 再び黒鳥と王妃に視線を戻すと、例の王妃の胸をぎゅっとわしづかみにするというシーンが近づいていました。
さあ、ここで王子は怒りの「のけぞり」をするのよっっ!と必死に3人を一度に見ようと丁度良い角度を探します。
ところが、何とここの振り付けが変わっていたのです。余りに刺激的と考えたのか、触られる王妃の評判が悪かったのか(笑)黒鳥は王妃を包み込むように背後からぎゅっと抱くのみにこのシーンは変更されていました。
でも、王子は相変わらずもう我慢出来ないという様子で一度のけぞった後立ち上がり、そして徐々に二人に近づいて行きました。

 王子が同じ部屋に居る事など全く気にしていない二人はおかまいなしに踊り続け、舞台右から左に向けてくるくるとターンしていきます。
そして、王子の立っている位置まで来たとき、素早く王子は王妃の変わりに黒鳥の前に入り込み、計算されつくした絶妙なタイミングで黒鳥の手を取りました。
再び私の心臓の鼓動も高鳴ってきました。いよいよ、あの二人のデュエットが始ります!


☆上の写真は、AMP「SWAN LAKE」公演中のニールサイモン劇場です(著者撮影)☆


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