その1

暴力団を利用したばっかりに
熊本県 団体職員 O・S(男性)
●連帯保証人
  これから述べることは、私が知人の紹介で暴力団と知らずに債権取立てを依頼し、逆にその暴力団からたかられ、恐怖に陥り、暴力団の真の姿と恐ろしさを目のあたりにした状況と、これに対してとった行動であります。
  事の起こりは10年位前にさかのぼります。知人の自営業A氏から、「事業資金500万円をB金融機関から借りるので、この債務の連帯保証人になってくれ」と頼まれ、A氏の親戚C氏とこれを引受けました。
  ところが、返済期限を過ぎてもA氏が返さないので、金融機関から私達連帯保証人に返済要求があり、C氏と等分してA氏の債務金額を返しました。それで、私が返済した金は当然A氏に対し求償の権利がありますので、再三A氏に返してくれるよう頼みましたが、どうしても返してくれません。
  それである日、知人のD氏を訪ねた時にこのことを話したところ、D氏が、「私が知った人が中に入ればすぐ解決するから頼んであげる。」と言うので、渡りに舟と思い気やすく取立てを頼んでもらいました。
  勿論、その人物が暴力団であるなど知る由もありません。その人物は、あとで暴力団I会系のEという暴力団であることが分ったのです。
  EはA氏に対して、早速、私が負担した金額に金利分を加算して300万円返済とし、50回分割で払うよう話をつけてくれました。
  この時までは暴力団とは知らず、本当に力になってもらいありがたい人だと思い、早速E氏の自宅を訪ねて、現金30万円と菓子折を謝礼としてE氏に渡しました。これは、私の考えで常識として充分の礼と思ったのです。Eも黙って受け取りました。そうして盆暮にも贈物までしたのでした。

●暴力団から年賀状が
  ところが、その年が明けてEから年賀状が届いたのですが、それは暴力団I会名入りのもので、その時はじめてEが暴力団であることを知りびっくりしてしまいました。
  それで私はEからは遠ざかり、A氏からは遅れながらも返済はされるし何事もなく過ごしていたのです。そうして6年近くの歳月が経ち、A氏からの支払いが残り3回位になった頃の平成6年5月半ば、夜8時頃のことでした。
  突然、Eから私方近くの路上に呼び出しがかかり、何事かと出向きますとEがベンツで乗りつけてきて、これまでとは打って変った態度で、
  「Aの返済はどうなっとるか。お前はあの時またお礼すると言うたろうが。俺達の世界は成功額の半分がお礼の相場だ。お前のは150万円だが100万円に負けとく。あと70万円を月末までに払え。」等とえらい剣幕で要求しました。
  この時私は、暴力団はこのように豹変するのかと恐怖のあまり、何の反論もできずに「ハイ」と返事をしてしまいました。
  ところが、私にとって70万円は大金で、直ぐに用立てできる筈もありません。困り果てて、またD氏を訪ね、この実情を話してD氏からEに支払いを負けてもらうよう頼んでもらいました。しかし、Eは全く聞き入れません。「一円でも負けられへん。借金してでも月末に耳を揃えて持ってこい。」と大声で怒鳴るのでした。
  それで私は、金策の宛もないし払わなければ仕返しされると考えると恐ろしいし、言いなりに払っても別の要求をしてくるように思えるし、どうしてよいか分らず悩みました。もちろん、月末がきましたが払えません。
  業を煮やしたEは、私の自宅や職場にも時間構わず強く要求の電話をしてくるようになったのです。
  「今から金融を連れまわす。借りてでも払わんならば俺にも考えがあるぞ。どうなってもよいか。」
などと言うし、私は家や職場に押しかけられては怖いし、それからは家を出て仕事も休みがちで、知り合いを泊り歩いたりして恐怖の毎日を送り、ノイローゼのようになりました。

●暴力追放協議会
  ところが私の窮状を見た仕事先の人が、暴力追放協議会に相談に行くよう教えてくれました。
  それで早速同協議会を訪ね、相談委員に詳しく状況を話しましたところ、私をたしなめられ、「Eの要求は不当要求というもの。お互いで解決するとなればEの言いなりになるよりほかない。それは許されることではないし、暴力団に資金援助することになり暴力団を助長することになる。この際、勇気を出して恐れずに法的対応することだ。」と色々親切なアドバイスを受け、警察への連絡などすぐに措置をとっていただきました。
  早速、警察からEに対し、「謝礼名目でお金を要求したり、そのための電話や面会を要求してはならない」という暴力団対策法による中止命令を発出していただきました。あれほどひどかったEの要求は、ぱったり止まりました。
  お陰で私は、多額の被害を免れ生き返った気持ちになり、その後は安穏な日を送っております。
  本当に勇気を出して相談してよかったと痛感しています。