その2

工事に対する因縁
茨城県 会社員 S・K(男性)
●工事現場で
  忌わしい出来事は、昨年6月にさかのぼります。私が勤務するA社は、B社・C社とM市内の道路工事を実施することになり着工していたのです。この時私は、現場責任者の立場にありました。
  予期せぬ出来事が私の身に降りかかったのは、この現場でのことです。通常どおり工事を進めていたところ、突然、30歳位の暴力団員風の男1名が私に歩み寄ってきて、「あんたが社長か。社長でなければ社長に会いたい。」と切り出してきたのです。この時私は、一種の不安を感じ取りましたが、とりあえず用件を尋ねたところ、「工事に対する因縁付」であった訳です。
  こんなことから私は、不安な気持ちを押さえつつ冷静に対応しようと心がけ、相手の身分と本音を確認したところ、その相手は、
  「俺は住吉会のI組事務所の者だ。本来ならば工事を始める前に挨拶にくるものだ。挨拶もなく渋滞は起こすしほこりも出すので車の洗車代も馬鹿にならない。本来なら毎月協力費をもらうんだが今回は一回だけでいい。3社いるんだから1社あたり10万円でいい。これ位が相場だ。」と申し立ててきました。つまり、協力費名目の金銭の要求だったのです。
  この時私は、相手が暴力団であることから不安と恐怖を抱きましたが、「今だからこそ冷静に対処しよう」と心に誓い、相手に対して、「私は現場責任者でありますがA社の一社員で、要求に対しての回答はできません。社長と交渉しても金は出さないと思います。」と返答したところ、相手は、「分かった。それでは直接本社に行く。」と捨て台詞を残して現場を後にしたのです。

●本社に連絡
  この直後私は、事実関係を本社に連絡するとともに、B社・C社の責任者と接触して同じ様に金銭要求があった事実を確認し、本社に追加報告も致しました。この結果、本社からの指示は、「相手が暴力団員で不当な要求である。M警察署に連絡を取ったのですぐにM署に行き相談せよ」というものでした。
  警察に相談した結果、数日後にM警察署から相手の暴力団員に対して、「協力費名目で金銭の要求をしてはならない。また、そのための面会や電話をかけてはいけない」という内容の『中止命令』を出していただきました。当然、B社・C社に対しても同様の措置を講じていただいた訳です。結果は、相手の暴力団からの報復等は皆無で、無事工事も終了することが出来たのです。
  私は、現在もA社で仕事を続けていますが、ともかく「警察に相談して本当に良かった。個人の判断で泣き寝入りしないで良かった。社内の意思統一の勝利である」という気持ちで一杯です。B社・C社の方々も口を揃えて、私と我がA社の迅速・的確な対処方法に感銘しています。
  前述のとおり、暴力団員からの不当な要求に対して最良の結果となった背景等についてですが、
○  私のA社が、県の暴追センターに関連する協議会の加盟事業所であったことから、センターから配布された各種暴力団排除資料が整備されていたこと。
○  暴力団員からの不当な要求に対しては、断固反対する旨『社内の意思統一』がされていて、警察に相談しやすい環境にあった。
ということです。私個人としても、
○  暴力団員の要求にひるまず、勇気を出して冷静に判断対処出来た。
と思っています。
  最後になりますが、我々市民は、暴力団の各種違法行為に対しては勇気を出して、悩まず、警察や暴追センターに早期に相談することが重要であるということを認識実行することが何よりも大切な事ではないでしょうか。