【登 山 日】 1996.8.18(日)〜20(火) 【メンバー】 千日町ハイキング同好会(芳村嘉一郎、芳村和子、馬部文男、馬部文子、安川武彦、安川智恵子、西勝美、西捷子、若槻寿一、若槻清由哲 8月18日(日)晴 5:30 出発。 水上ICが近づくと、待望の谷川連峰が姿を現した。残念ながら中腹から上は雲の帽子を冠っている。 17:00ジャスト。家を出てから11時間半かかって水上温泉近くの「くるみ村」のペンションに到着。夕食後、町営の「湯テルメ・谷川」の露天風呂に浸かっての帰り道、見上げると満天の星がまたたいて明日の好天を約束してくれた。 8月19日(月)快晴 ペンションの前から仰ぐマナイタグラが朝日に輝いている。雲一つない、これ以上は望めぬ晴天。心ははやるが朝食はなんと8時!このあたりが山小屋と違うところで自分の思い通りには行かない。急いで朝食を済ませ、出発。土合駅を右に見てロープ駅に着くと、既にいくつかある駐車場がロープ駅に近い方から満車になっている。駅には行列が出来ていたが思ったより短く、10分も待つと8人乗りのゴンドラに乗ることができた。さすが世界一の高速を誇るだけに、600mの標高差をわずか10分で1321mの天神平へ。 この快晴の間に展望を楽しんでおこうと、リフトを利用して天神峠まで登る。足下にはもうフジバカマが満開だった。 天神峠には5年ほど前に、出張のついでにスーツ姿で来たことがある。その時よりさらに整備が進み、少し小高い天神山に立派な展望台や展望板が設けられていた。まずは観光客に混じって360度の大展望を恣にする。 ![]() リフト終点駅付近からの谷川岳 リフト終点駅からクマササの中の滑りやすい道をいったん下る。下りきったコルからロープ山頂駅に回遊する人達も含めて、長蛇の列が続く。コルからはロープ駅から山腹をトラバースしてきた道と一緒になる。ミヤマナラやブナの木の下に木道が続く。しばらく緩い登りがあって熊穴沢避難小屋。周囲にキジを打った跡があり、長居は無用と休憩なしで出発。クマザサの中の道は次第に勾配を増し、やがて樹林帯を抜け出すと短いクサリの付いた大きな岩がある。第一見晴らしだが、これから辿るルートがずっと見え、肩の広場に立つ大指導標も遠望された。左手にマナイタクラの稜線、右手には西黒尾根と広闊な展望が一時に拡がる。真っ青な空から眩しい光線が容赦なく降り注ぐが、空気が乾燥しているし、右の西黒沢から冷風が吹き上げてきたりして、耐えられない暑さではない。 勾配はさらに強まり、露出した黒い岩が靴で磨かれてツルツルして、結構、歩き辛い。グングン高度を上げ砂礫帯に出る。傾斜がゆるまり、どこでも登れる感じで、ところどころに小さいピンクや白色の花(名前不詳)の咲く草地も混じる。踏み跡が入り乱れているので、ガスの時などは迷い易そうな所だ。私たちは右 寄りに登ったので大指導標(塔?)横で肩の広場に出て、肩の小屋を下に見るようになった。この辺りは美しい広い草地で、シシウド、ハクサンフウロ、ウスユキソウ、コウリンカ、オトギリソウ、シモツケソウ、ヒメシャジン、シオガマなどが咲き乱れていた。150m歩くと双耳峰の一つ・トマの耳頂上だった。しかし、あまりに人が多く腰を下ろす場所もないので、もう一つの頂上・オキの耳まで行くことにする。 ![]() 肩の広場にて(大指導標と小屋の屋根が見える) いったん少し下り、緩く登ると頂上の岩の上に着く。ここでお湯を沸かし、ラーメンやパンやの思い思いのランチタイム。満腹した後は、まだまだ遠目の利く大展望に山岳同定を楽しむ。まず北東に燧ヶ岳と至仏山、東から南東に日光白根、その手前に武尊山、その右に大きく裾野を引く赤城山、武尊と赤城の間に皇海山、ちょうど赤城の方角に今辿ってきた天神尾根、眼下に水上の町らしい屋根が光っている。真南に榛名山、南西のマナイタグラの向こうに浅間山。オジカ沢の頭、万太郎山、仙ノ倉山はほぼ重なって見え、その右に見えるのは苗場山?。北の茂倉岳、一ノ倉岳の右には巻機山、越後三山、平ヶ岳も見えている筈だが、く分からない。気象条件の良くないといわれるこの山で、こんな見事な眺望に恵まれた幸せに全員が満ち足りた思いで、ゆっくりと流れる至福の時を過ごした。 ![]() トマの耳にて(後ろはオキの耳) トマの耳の人影がめっきり減り、天神尾根を下る列が蟻のように見える。私たちも立ち去りがたい頂上を後にする。トマの耳で記念写真を撮り、下山路の西黒尾根に入る。殆どの人は天神尾根往復後、ロープで下山するようで、こちらを下るパーティは長い間隔を空けて三々五々にという感じ。14時を回って腰を上げた私たちは、どうやらこのルートでは殿(しんがり)らしい。ザレ場の急なジグザグの下りから、露岩にクサリを付けた所を通る。この辺りは、オニシオガマや、イワギキョウ、トリカブトなど赤や紫の花が多く目に付く。見上げる頂上は、オキとトマが並んで犬の耳のようだ。氷河の跡といわれる大きな一枚岩の横を通る。全員を上に登らせて写真を撮る。ここからは急傾斜のザレ場、露岩の急坂の連続、かなり下まで見通しが利くので「次はあの草付きの平地まで頑張ろう」と見当を付けて下る。 右手、西黒沢を隔てて天神平のロープ駅は、いくら歩いてもいつも同じ高さにあるような気がする。午後も遅くなって、やや薄雲が出てきたが、まだまだ遠くの山々が見える。マチガ沢は下部に大きな雪渓が残っている。 さらにザレや露岩の所を下り、1.3Kの所を1時間20分かかって、巌剛新道との分岐であるラクダのコルに着く。土合口(ロープ駅前バス停)まで1時間50分の道標がある。ようやく天神山と同じ高度まで下った所だ。左のマチガ沢には大きな雪渓が残り、その向こう東尾根のシンセンの岩峰は見上げる高さになった。ここからラクダのコブにあたるガレ沢の頭まで少し登る。次のコブへの下りが一寸シブく、3カ所鎖がある。此の辺り(1500M?)が森林限界で、二つ目のコブを過ぎると広葉樹林帯に入り、景色は全く見えなくなる。この山では針葉樹が殆ど見られず、ブナやミズナラ、コナラなどの広葉樹が多い。他はハウチワカエデなど。クマザサが途切れると下草にギボウシ、ヤマホトトギス、ハリブキなどが見られる。ススキやフジバカマなど秋の花も見るようになり、ニッコウキスゲも一本だけ見つけた。道の勾配は弱まらず、少し平坦な所があるかと思うとすぐ、木の根や岩の露 出した急坂という繰り返し。足が疲れて来たのか、踏み外したり、滑ったりの人も出てくる。かなりうんざりする頃、前を行くパーティに追いつく。ムシカリやヤマアジサイの花の色に慰められながら、やや薄暗くなった道を行くと、パッと視界が開けて送電線鉄塔の立つ小広場にでた。ここから最後の急坂を下って、一ノ倉沢出合へ伸びている車道に飛び出した。天候に恵まれ、素晴らしい展望と花に満ち足りた思いの山旅だった。 【コースタイム】 9:25 天神平着 12:30 トマの耳(1963M) 9:35〜 9:50 展望台(1502M) 12:45〜13:50 オキの耳(1977M) 10:25 熊穴沢避難小屋 14:00〜14:10 トマの耳 11:00〜11:30 第一見晴らし 15:30 ガレ沢の頭(1516M) 12:20 肩ノ広場 17:30 駐車場 |