2013年の山旅 (1月〜6月)


天理・竜王山

【登山日】2013年1月6日  【メンバー】岩本幸子、芳村嘉一郎、芳村和子
【コースタイム】長岳寺11:15…不動石仏11:55…田竜王社12:25…竜王山頂12:37〜12:57…山の辺の道14:00…長岳寺14:15


今年も幸ちゃんと3人で天理の「お節会」でお雑煮を頂いたあと竜王山へ向かう。落ち葉に埋もれた階段道をゆっくりと登るうちに次第に汗ばんできる。一時、雪でも舞いそうな暗い空だったが、中間点のお不動さんの石仏に着く頃には青空から陽射しが帰ってきた。長岳寺奥の院への分岐を過ぎ、最後の階段道の登りでは丸太に付着した氷が解け始めていた。田竜王社に手を合わせて舗装路を少し歩いて、階段道を登ると南城跡の山頂にでる。山頂は私たちを入れて30人近く、初めて見るほどの人の多さで賑やかだった。今日もあまり展望は良くなく、金剛・葛城の山並みも生駒を背にした矢田丘陵も少し霞んでいる。日当たりの良い所で、コーヒーを飲みながら景色を眺めているうちに汗が冷えて来て少し寒くなったので下山する。
 帰りは藤井竜王社から柳本古墳群への道を下る。急な階段道から岩交じりのゴロゴロ道になって古墳群に出た。この辺りには円墳、横穴墳を合わせて600基近くの古墳が確認されているというが、その数の多さには驚く。やがて左に沢を見るようになると舗装路に変わり、なだらかな下り道が延々と続いた末に、堰堤を二つほど見て「山の辺の道」へ出た。櫛山古墳の上に竜王山が頭を出している。幸ちゃんとは久しぶりの山歩きだったが、竜王山は13年ぶり、前の「竜」の年に一緒に来て以来だったそうだ。ちょうど登り始めから3時間で駐車場に帰った。上り下りとも休憩なしで頂上滞在20分、やや気忙しかったが、お天気に恵まれて楽しい山行だった。


六甲山(東お多福山〜最高峰〜蛇谷北山)

【登山日】2013年1月12日  【メンバー】丸屋博義、丸屋三輪子、芳村嘉一郎、芳村和子
【コースタイム】東お多福山登山口バス停 09:25 …東お多福山10:10〜10:20 …土樋割峠10:35…黒岩谷出合10:40…一軒茶屋11:45〜11:57…六甲最高峰12:03〜12:45…石宝殿13:05〜13:20…蛇谷北山13:40〜13:45…土樋割峠14:20…東お多福山登山口バス停14:45
 
5年ぶりの 六甲山へ登る。阪急バスお多福山登山口で下車、舗装林道を東へ歩く。バスで来たのは初めてだが、最高峰への最短コースとしてよく利用されているようだ。蛇谷の浅瀬を渡り、ひとしきり急坂を登って平坦な道になるとユートピア芦屋の住宅横に来る。霜柱の見える抉れた道の急登になり、勾配が緩むと低い笹原の中を歩いて東お多福山の頂上に着いた。曇り空だが、まずまずの展望で西宮港の向こうに大阪湾が光っていた。
 急坂を下ると土樋割峠にでた。直進すると蛇谷北山だが後回しにして、六甲最高峰に向かう。黒岩谷と出会うところで本庄橋の方から登ってきた人に「面白いルートがある」と教えられて東谷との間の尾根(西尾根?)に取り付く。始めから急登が続き大きな岩の横を通ったり、痩せ尾根を上下したり、斑ロープが付いている急坂を登ったりと、実に変化に富んだ楽しい道だった。緑の松と白い岩が散在していてアルペン的な感じもする。ときどき展望が開け、間もなく右手の蛇谷北山が目の高さになった。ぐんぐん高度を稼いでいることが分かる。林を抜け深いクマザサの中を上下して小広場に出ると、すぐ先が一軒茶屋で前の広場に大勢の人が休んでいた。最高峰三角点で記念写真を撮った後、無線中継所の前でお弁当を食べた。真っ青な青空になり、風もなく暖かい山頂だった。
 帰りは東六甲縦走路に入り、新しい石の鳥居が立つ鳥居茶屋前でドライブウエイを離れ、右に折れて登ると広場があり観音像が立っている。これまで見慣れた「石の宝殿」とは別の場所のような感じだ。「北山コース」と書かれた丸数字の入った標識が立つ広場の西端から南に下る。コル状のところから登り返して笹原の中を行くと、右手に北山の標識があった。蛇谷北山は二度目だが、前に来たのは1988年3月のことで殆ど記憶に残っていない。特徴のない頂きだが、干支の年のためか何人かの登山者に出会った。尾根は緩い下りになり展望の開ける所に出た。黒岩谷の下流で砂防ダムの工事が行われているのが見える。ジグザグの下りが続き、最後はなだらかな下りで土樋割割峠に降りつく。     曲がりくねった幅広い林道を下り、朝のバス停で芦屋へのバスを待つ。久しぶりの六甲で随所で新しい貌を見て、今昔の感一入だった。



二上山

【登山日】2013年1月29日 
【コースタイム】ふたかみパーク当麻 09:20…国見の丘 09:30~09:35…444mP 10:02 … 眺め坂 10:15~10:20…大津皇子墓10:05…雄岳10:10…雌岳11:35~12:15(昼食)…岩屋峠12:30…裕泉寺12:50…ふたかみパーク当麻13:24


昨日までの寒さも一服。道の駅・ふたかみパーク当麻に近づくと二上山には雪もなさそうなので、アイゼンは車の中に置いて行く。「二上山ふるさと公園」を抜けると、猪除けの柵の上に長い石段が続いている。かなりの急勾配で456段あるので、歩き始めから僅か10分で息が切れる。登りきると「国見の丘」展望台で、トレーニング姿で屈伸運動する人や、何度も石段を登り降りする人に出会った。右手から林の中を緩く下って、コルから急登で最初のピークに出る。ベンチがあり、すぐ目の前に並ぶ雄岳と雌岳を見上げる展望が拡がる。空は青みを増し、日差しが暖かいのでジャケットを脱ぐ。木の階段道を下り、再び登り返すと4等三角点の埋まる444mピークを通過する。暗い林の中で無展望である。やや登りになり、次の見晴らしのいいところには「眺め坂」の表示がある。すぐ左下に鳶塚が見え、大和平野が一望された。山腹を捲く道を行き、再び登りになると出合坂の標識がある。左に見える雌岳が目の高さになる頃、木の幹に張られたテープ標識で右の雄岳へ向かう。せっかく稼いだ高度が惜しいくらいくだって登り返すと、林の中でいつもの二上神社からの道に合流した。左に行くと大津皇子墓所の石垣が見え、少しの登りで微かに雪が残ってる墓所の前に出る。
  雄岳頂上の神社に参拝、休まずに雌岳を目指す。馬の背に降りる途中で、先ほどのテープを直進すると合流する小さな岩場を通る。去年なかった新しい捲き道が岩の横に付けられていた。馬の背でトイレを借りて雌岳へ向かう。頂上手前で右の休憩舎に寄り道して登った頂上広場の日時計周辺は、この時間には珍しく貸切状態だった。暖かい日差しを受けて昼食の準備を始める頃から、ぽつぽつ人影がみえたが、それでもいつもに比べると閑散としている。ゆっくりと食事を済ませて、岩屋峠に下る。ツバキの花が満開で、むせるような匂いを放っていた。峠からの下り道も凍結したところもなく、途中にやや湿った箇所はあったが難なく裕泉寺着く。大池にはたくさんの水鳥が群れていた。人に慣れていて、私たちを見ると集まってきた。中でも大きな二羽は嘴で岸辺をつついたり、「オクレッ」と聞こえるような鳴き声を上げる。しばらく遊んで池の反対側にくると、鳥たちが見送りに飛んできてくれた。ゆっくりと二上山を楽しめた陽だまりハイキングだった。



    

二上山

【登山日】 2013年2月8日
【コースタイム】道の駅「ふたかみパーク当麻」09:40…裕泉寺下10:06…二上覗き10:26…道の駅ルートに合流10:37 …馬の背上露岩11:05 …雌岳11:20〜11:30…雄岳11:50…大津皇子墓所11:55…二上神社分岐12:00…いっぷく坂12:20~12:30…古墳分岐12:40…鳥谷口古墳12:53~12:58…道の駅13:15

今日はちょっと変わったルートを登る予定で雌岳の方に歩く。先程まで晴れていたのに曇り空に変わり、風が冷たい。大池を過ぎて裕泉寺へ登る途中で、ちらちら小雪が舞いだした。山門の手前50mほどの地点に右の山腹に取り付く道がある。昨夜の雪が疎らに残る落ち葉の急坂を登る。少し分かり難い林の中を行くと小尾根上の道に出会い、少し登ると行く手に面白そうな岩場が現れた。「二上覗き」である。左下に捲き道が作られているが、岩は乾いていて適度なステップがあり楽しく登れた。最後の岩を越えると、捲き道と合流してしっかりした道が続いている。岩の上からの展望は見事で、胸のすくような見晴らし台だった。数分で道の駅からのルートに合流した。出合坂からは雄岳への分岐を直進する。雌岳に下る途中の露岩から見ると、金剛、葛城の山頂部が白い。馬の背から雌岳へ登る道が雪で白く染まっている。こちらの方角はまだ黒い雲が多い。馬の背に下ると白く雪が残り、凍結して滑りやすい石畳の道を次のグループに追われるように雌岳に登る。
 快晴になり、西側は河内平野から六甲、北摂の山並みまで見渡せたが、風が音を立てて吹き過ぎて寒さを感じる。昼食はお預けにして雄岳に向かう。残雪の白さと赤い椿、青い空のコントラストが美しい。 雄岳山頂の神社と大津皇子墓所に参拝して、先週登ってきた分岐から道の駅ルートへ下る。いっぷく坂で、最後の展望を楽しむ。竜門山群を背にして大和平野に浮かぶ畝傍山が美しい。遠くに白く台高北部の山々も見えた。つづら折れの急坂を下り、林に入るとすぐに「古墳」への分岐がある。最初は落ち葉に埋もれるような細い道だが、次第にはっきりした山道になる。幾つか竹林を抜けて細い流れに沿って下る。沢側に石が並べられたり、古い木の橋が架かっていたり、沢を堰き止めるように高く石を積み上げてあったりする所を通過する。この道は昔から山仕事に使われていたようだ。二度、流れを渡ると静かな沼の横を通り、分岐から10分少しで明るい広場にでた。 ここは鳥谷口古墳の上で、登山口の竹の幹に「二上山←」の文字があった。大池の鴨クンたちにお別れして道の駅に帰った。ちょっとしたバリエーションルートで新しい思い出を作れて、楽しい3時間半の山歩きだった。



金剛山(郵便道)

【登山日】 2013年2月11日
【メンバー】丸屋博義 丸屋三輪子 芳村嘉一郎、芳村和子 

【コースタイム】高天彦神社 08:55…水越峠分岐 10:46…葛木神社11:00〜11:10…国見城址(昼食)11:25~12:05…仁王杉12:28~12:35…一の鳥居12:40…天高彦神社14:30

丸さんの車に乗せて貰って高天に着くと、祝日に加えて明日から雨の予報のせいか、駐車場から溢れた車が道路に列を作っている。その中に加えて貰い、身支度をして出発。気温は低いが風がないので、高天滝まで歩くうちにぽかぽかと身体が温まってきた。最初の急登を終えて、消防署の位置連絡標識「いー3」から左に曲がってしばらく平坦な捲き道になる。春ならそろそろイカリソウが見え始める所だ。次に右に曲がる道の先に崩壊場所があって、標識は左の山腹に上がる道を指している。久しぶりに下の道に入ってみると、崩壊場所にはザイルが張ってあり、急なハシゴ道も整備されて楽に歩けるようになっていた。休まずにゆっくり登り続ける。この辺りから何度か下山してくる人に出会うが、登りで後から追われることもなく、疎らに残る雪景色を楽しみながら高度を上げる。去年の冬はもっと下から付けたアイゼンの出番が、500段の階段登りが始まってもなかなかない。水場を過ぎると部分的に凍結している場所はあるが、かえって爪を引っかけたりする危険もあるので注意しながら登る。ゆっくりと上り詰めてダイトレ(水越峠分岐)にでた。一の鳥居に来ると大阪側からの登山者で急に賑やかになった。 仁王杉から葛木神社への急な登りも全く雪がなく、拍子外れだ。神社の石段を登って参拝。転法輪寺に参拝し、行者堂の前の牛王像を見に行く。牛の背中に金剛山の由緒が刻まれていることを、前の立札で始めて知った。春には白い花を飾るニリンソウも今は白い雪に覆われている。社務所前や登山回数版前のベンチも人で埋まっている。国見城址は言わずもがなだったが、運よく空いたベンチで熱い湯を沸かす。先程から曇り空に変わり、じっとしていると足先から冷えてきて指先もかじかんできたので、食事もそこそこにザックを背にする。帰りは郵便道への入り口でアイゼンを付けた。アイゼンが利くほどの雪がない500段の下りは、登りよりも長く感じた。外すのも面倒でしばらくそのまま付けて歩く。崩落個所を避けて林の中の道を下ったが、以前に比べるとずいぶん良くなって歩きやすい。しかし、せっかく楽しみにしていた雪もなく、登り下りとも途中で一度も休まず、丸さんご夫妻には申し訳なく思っている。


二上山

【登山日】 2013年3月19日 
【コースタイム】道の駅「ふたかみパーク当麻」09:00…祐泉寺09:30〜09:35…岩屋峠09:53…雌岳10:10~10:20…雄岳10:43…眺め坂11:15〜11:20…鳶塚11:36…ふるさと公園12:00…道の駅12:10


明日は春分。めっきり春めいて暖かくなった快晴の朝。思い立って二上山へ出かける。歩き始めて30分で祐泉寺に着き、美しい庭園を抜けて本堂にお詣りする。昨日の雨でジメジメした個所もある谷沿いの道を登ると、じんわりと汗ばんできた。案外楽に岩屋峠に着き、休まずにそのまま登り続ける。真っ青な空の下、河内平野を見下ろしながら登っていくと、咲き残ったサザンカの花に集うメジロたちの歌声が、賑やかに春を謳歌しているようだ。今日の雌岳は貸切状態だった。10分ほど休んで歩き始めた頃、馬の背の方から女性が一人、登ってきた。雌岳山頂はアセビの花盛り。中には鮮やかなピンクの花も咲いていた。先月は雪で滑りやすかった道を馬の背に下り、雄岳に登り返す。
 手前の小さい岩場から道の駅への道、大津皇子墓から少し下ったやはり道の駅に下る道、どちらの分岐にもあった手書きの道標はなくなっていた。道の駅への道と合流して枯葉の上にツバキの散り敷いた道を下る。今日は初めての道を鳶塚へ向かう。しばらくは落ち葉に埋もれるような分かり難い道を下る。コルに下るとはっきりした踏み跡が現われ、大きな岩の横を抜けると、間もなく鳶塚(268m)の頂上。頭上に雄岳が見えた。ここからの道はかなり急で、昨日の雨に湿った落ち葉で滑らないように気を付けながら下る。傾斜が緩まると道は左右に分かれる、道の駅の方、右へ行く。壊れた小屋の横を通り、車の音が聞こえるようになると最後の急坂を下って「ふるさと公園」の北端に飛び出した。太鼓橋のかかる池に噴水があがり、紅白のウメと黄色のサンシュユの花の上に浮かぶ二上山に見送られて、素晴らしいフィナーレだった。


葛城山

【登山日】 2013年4月16日
【メンバー】丸屋博義、丸屋三輪子、芳村嘉一郎、芳村和子
【コースタイム】水分橋上駐車地点 08:30…中間点ベンチ09:30〜09:40…山頂(昼食)10:40〜11:25…ツツジ園…自然観察路…キャンプ場 13:20…駐車地点15:00

今年も春の妖精・カタクリに会いたくて、花の時期を狙って大和葛城山に登る。家まで迎えに来てくれた丸さんの車に乗せて貰い、水分橋へ。舗装の急坂でカンカン照りの畑地を抜けて植林帯に入ると、ひんやりした山の空気が汗ばみ始めた身体に心地よく感じられる。谷を右に見下ろしながらしばらく植林帯を行き、スミレやヤマルリソウが咲く草地に入ると細くなった流れを渡り、丸太や石の段を登る。このコース唯一の鎖場を過ぎて沢を渡り返し、しばらく右岸の道を登ると水場に着く。一息入れて冷たい水で喉を潤した。歩き始めて1時間で中間点のベンチに着いた。ここからも急な丸木道が続くが、来る度に整備が進み楽に歩けるようになっている。右手に金剛山が見える開けた伐採地を過ぎて、傾斜が緩み道が大きく左にカーブする処からショウジョウバカマの花が見え始めた。T字路を右に折れ涸れ谷に沿って登る道は、美しい植林の中にショウジョウバカマが群生している。花を見ながら登っていくと、谷上部では新しい砂防堰堤が作られていた。天狗谷右手斜面のカタクリの保護地は、まだ葉が出たばかり。ロープウィイからの道に合流して山頂へ。
 天気は最高なのだが、残念ながら黄砂のためか視界が極端に悪く、眼下の大和三山もボンヤリ霞んでいる。山頂南東側斜面のカヤの中から顔をのぞかせたカタクリを三輪子さんが見つけた。ツツジ園は来月予想される賑わいがウソのような静かさ。青空にコブシの白い花が鮮やかに映えて、辺りに芳香を放っていた。分岐からロープ駅の方へ下る。右に婿洗い池への道を分ける十字路を左へ自然観察路に入ると、道の両側にカタクリの花が現われた。道が右へ大きくカーブする最低鞍部まで下って引き返し、途中右に折れてダイトレへの道を上がる。しばらく上った所に、私たちの一番好きなカタクリの場所がある。今年もすぐ近くで見ることができ、しかもびっしりと並んで咲いていた。今年も開花時期に巡り合えて本当に良かった。 キャンプ場の上に帰りコーヒータイム。3時間近くも頂上部で遊んで、ようやく腰を上げる。帰りもショウジョウバカマの花と戯れながらのんびり下り、青崩集落の美しいアケビの花に見送られて15時、車に帰る。好天の下、いろいろな花に出会えて今日も楽しい山行だった。


竜王山

【登山日】 2013年5月5日 
【コースタイム】長岳寺08:10…奥ノ院経由…頂上09:40…北城址…下山口11:00…長岳寺12:00 


珍しく長岳寺駐車場にはすでに10台の車が先着していた。 「頂上は混雑しているやろな」と話し合いながら楼門を潜り、参道のツツジのトンネルを抜けて行く。境内を出て、青々した若葉の柿畑の中の急坂を登る。足元には可愛い黄色や紫の野の花が群れ咲き、山道に入る手前には筍がいくつも並んで頭を覗かせていた。真新しい排水溝ができて、お地蔵さんが少し動いておられる。ジメジメした場所や露出した岩盤、木の階段道など同じような所を何度か通過して、まだらロープの張ってある急坂を登る。お不動さんと石箱仏の並ぶ処にひっそりとチゴユリが咲いていた。再び急な木段道を登って、しばらく杉の植林の中の平坦な尾根道を歩く。山頂まで0.8kmの地点から奥ノ院にお詣りしようと山腹の道に入る。古墳の横を通る辺りからは何年か前の台風で荒れて倒木もあり、道も以前とは変わったところに付けられていた。奥ノ院には建物はなく肉厚の石のお不動さんが立っておられる。鎌倉時代のこのお不動さんは、他の怖い顔のお不動さんと違って、若々しく優しい顔をしておられる。すぐ柳本古墳群から登って来る道と出会う。ここから山頂までは1km。途中に何ヶ所かある急な階段道を登りきると、奥ノ院分岐から直進してきた道と合流して舗装林道に出る。
 意外にも頂上には人影がなく、まったくの貸切状態だった。長岳寺駐車場の車の数が嘘のような静かさだ。空は晴れているが靄がかかったようで遠目が効かず、僅かにすぐ近くの畝傍山や箸墓などを見下ろすだけだ。変わり番コにアスレチック風遊具に登って遊び、単独行の男性が登ってきたのを汐に下る。久しぶりに北城址に行く。天理ダムに続く舗装林道を何度か曲がりながら降りて、馬池を過ぎ左の山手に入る。林の中に土居や虎口の遺構を見ながら登り、最後に壊れかけた木の段が残る短い急坂を上って北城址にでた。 ここは南城址にも増して訪れる人も少なく、いつ来ても人に出会ったことがない。昔はワラビがいっぱい採れたのだが、今はその楽しみも少なくなった。ぐるりと歩き回っただけですぐに引き返した。帰りは馬池から「散策路」に入る。ピークを二つ越える木の階段道が続く道だが、殆ど歩かれていないようで階段の木に苔が生えたり、土が崩れて掘れたりしている個所もあった。途中の展望所は柵が壊れて危ないほど荒れている。短いが結構いいトレーニングになる急な道を上下して、トイレのある下山口に出る。いつもの道をどんどん下るうちに、何人もの人が登って来るのに出会う。やはり人気のある山だと思うと、なぜだかホッとする。ツツジが見頃の長岳寺境内はカメラを持った大勢の人で賑わっていた。正午、満車の駐車場に帰り、満山溢れるばかりの緑の中だった今日の山歩きを終える。



武奈ヶ岳

【登山日】 2013年5月17日
【メンバー】丸屋博義、丸屋三輪子、芳村嘉一郎、芳村和子
【コースタイム】坊村・明王院 09:10…846mピーク 10:30〜10:40…冬道分岐 10:50…合流点小広場11:20~11:30…御殿山 11:45…ワサビ峠 11:50…1125mピーク 12:00…武奈ヶ岳 12:30~13:05…明王院16:


丸さんが毎日お宅から眺めて待望していた比良山系最高峰へ登る。長い間遠のいていて実に1981年夏に子供たちと登って以来32年ぶりになる。しかも西側からは初めてで楽しみだ。坊村の地主神社前へ駐車。すぐ横に登山口道標があり、奥の深谷コース、白滝山コース、白谷コースなどの分岐になっている。ポストに登山届を入れて、左に見える赤い三宝橋を渡る。修験道の古刹・葛川明王院を見て護法堂横から登山道に入ると、いきなり急登が始まる。薄暗い杉林の中を短いジグザグを繰り返しながら、ひたすら登る。日陰で涼しいので助かるが、かなりの勾配である。しばらく緩んだ傾斜が再び急になって、登りきると846mピークらしい尾根上の小さな台地に出た。しばらく休んで水分を補給する。冬道との分岐で右の山腹に付けられた道に入る。ざれた急斜面で谷に落ち込んでいる捲き道をしばらく行くと別の支尾根に突き当り、広い涸れ沢状のところを登る。右の支尾根に取り付いて再び林の中の急登になり、ジグザグに登りきると西側が大きく開け、京都北山らしい山々の連なりが望めた。冬道との合流点である。
 傾斜は少し緩んだが相変わらず登りが続く。最後の急坂を登りきると御殿山1097mで、小さなピークながら行く手の北に武奈ヶ岳、南に思いのほか近く蓬莱山など360度の展望が広がった。岩交じりの標高差100mの急な下りが終わるとワサビ峠で、展望の良い西南稜道になる。灌木帯の中のザレ道を最初のピーク(1,115m)へ登り返すと四方遮るもののない見晴し台で、振り返ると蓬莱山から打見山に続くグリーンのスキーゲレンデが拡がり、打見山のゴンドラ駅もくっきり見えた。さらに左には堂満岳が琵琶湖の上にひょっこり顔を見せていた。真っ青な空の下、第二ピークへ向かう。足元は低い笹原とツツジなどの低灌木で、ところどころでピンクのイワカガミの群落に出会う。小さなケルンのある第二ピークから第三ピーク(1,180m)へ登る途中では小さな岩場を通過する。切り立った岩陰に小さな遭難碑があった。ここから少し登ると肩ノ分岐で、東側のイブルキノコバやコヤマノ岳からの道が合流する。
 殆ど水平な稜線の道を100mほど歩くと、武奈ヶ岳(1214.4m)の頂上である。大きな山頂標識柱の横に三角点、その先に6体の石仏が並んでいる。山頂北側の一角に腰を下して豪華な展望を楽しみながら昼食をとった。北には北東稜の釣瓶岳から蛇谷ヶ峰(901.7m)に続く山並み、その上に滋賀・福井県境の三十三間山、赤坂山、三国山など野坂山地の山々、遠く白く雪を被っているのは加越国境の山々か。北東には緑の中に点在するガレや岩が特徴的なリトル比良の岩阿舎利山、その右に琵琶湖にポツンと浮かぶ竹生島、その向こうには伊吹山が見える。東には釈迦ヶ岳、ヤケオ山の左に琵琶湖が拡がり、沖ノ島が横たわっていた。南東には、すぐ近くにコヤマノ岳、その右には打見、蓬莱山など南比良の山々…懐かしい山々を眺めていると、様々な過去の山行が断片的によみがえってくる。「あと何年登れるかな」と自分の年齢を考えて、少し感傷的になった気分を振り払って下山にかかる。御殿山への登り返しは思ったより楽だった。カンカン照りの稜線歩きから解放された涼しい木陰の登りに、かえってホッとしたほどだ。冬道との合流点から登って来た夏道を忠実に辿る。登りにはさほど思わなかったが、支尾根から涸れ沢に降りるまでが少しきつかった。腰を下してしばらく休み、コーヒーを沸かす。ここからもゆっくり時間をかけて下り、明王院に手を合わせ赤い三宝橋を渡り、今日の山行を終えた。少し厳しい登降はあったが、天候と展望と良い仲間に恵まれたお蔭で、それほど辛い思いもせずに歩けて「まだしばらくは山歩きができる」と自信がついた。


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