禁足の森へ

春日大社の東側にある春日山原始林は、841年に狩猟と伐採が禁止されて以来、春日大社の神奈備として守られてきた。明治になって国の所有となり、奈良公園に編入された後、原生的状態を維持している貴重な照葉樹林は、1955年に「春日山原始林」として、国の特別天然記念物に指定された。春日大社の社殿周辺から、御蓋山、春日山にかけては一体の聖域とされ、その景観は、自然に対する原始的な信仰が発生して以来の日本人の伝統的な自然観と深く結びついて、春日山原始林は、日本独特の神道思想との関連において、自然と社殿が一体となって形成されてきた大社の文化的景観を構成する資産として認められ、1998年に「古都奈良の文化財」として世界遺産に登録された。
古伝によれば、大社第一殿に御祀りの武甕槌命(たけみかづちのみこと)は、茨城県の鹿島神宮から、白鹿に乗り、最初に御蓋山浮雲峰に降臨され、まもなく西麓の現在地に還祀されたと伝えられている。御鎮座された11月9日の御例祭に年一回だけ神職のみが入山を許される、御蓋山「本宮神社(ほんぐうじんじゃ)」に参拝することになる。

続く