邇邇芸命(ニニギノミコト)
天照大御神は「邇邇芸命」に、「日本の國は、わが子わが孫、その子その孫の、次々にお治めになる國であります。ミコトよ、行ってお治めなさい。おだいじに、天皇の御位は、天地のつづくかぎり、いつまでも栄えませうぞ。」と仰せになりました。そうして、御鏡に御玉と、御剣をおそえになって、ミコトにお渡しになりながら、「この鏡は、わが御魂として、だいじにお祀りなさい。」と仰せになりました。「邇邇芸命」はつつしんでお受けになりました。大勢の神様が、お供をなさることになりました。いよいよお立ちという時、先発の者が、急いで帰って来て、「下界へ行く途中に、恐ろしい男が、道をふさいで立っております。背も高くございますが、鼻が恐ろしく高く、目は、鏡のようでございます。その上、体から光を出して、天の地も、明るいほどでございます。」と申しました。
天照大御神は、このことをお聞きになって、「それは何者であろうか、天のうずめ、尋ねてまいれ。」と、おいつけになりました。「天宇受売命」は、しっかりした、しかもおもしろいお方でありました。行ってごらんになると、なるほど相手は恐いそうな男です。「天宇受売命」は、わざと、おどけたようすをして、お笑いになりました。すると、その恐ろしい男が言いました。「お前はだれだ。どうして、そんなに笑うのか。」「恐れ多くも、皇孫ニニギノミコトのお通りになる道を、ふさいで立っているあなたこそ、だれです。」と、「天宇受売命」は、お問い返しになりました。相手は、急にようすをかえて、「いや、私は皇孫がおいでになると承って、ここへお迎えに出ている者です。私が御案内いたします。私の名は、猿田彦と申します。」と言いました。
「天宇受売命」は、帰ってこの事を申し上げました。「邇邇芸命」は、天照大御神に、おいとまごいをなさって、大空の雲をかき分けながら、勇ましくおくだりになりました。猿田彦神が、先に立って、御案内申し上げました。「邇邇芸命」は日向の高千穂の峯におくだりになりました。そうして、天照大御神のお言葉どおりに、日本の國をお治めになりました。
後記
天孫降臨にお供した五柱の神
☆天児屋命(あまのこやねのみこと)中臣連らの祖先
☆布刀玉命(ふとたまのみこと)忌部首らの祖先
☆天宇受売命(あめのうずめのみこと)猿女君らの祖先
☆伊斯許理度売命(いしこりどめのみこと)鏡作連らの祖先
☆玉祖命(たまのおやのみこと)玉祖命らの祖先
☆霧島神宮(鹿児島姶良郡霧島町田口)
天孫降臨伝承地の一つ高千穂峰の山腹に鎮座。
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