WRC栄光の3連覇
第5章〜撤退〜
えェ〜っ!
92年WRCシーズン終了後の12月、本社役員室で悲鳴に近い驚きの声が響いた。当時スバルは業績が不振で各分野で予算の見直しが迫られていた。なかでも大幅な経費を必要とするWRCの活動には疑問抱く役員が多く「WRCからの撤退」を進言されていたのだ。「WRCではいまだに1勝も出来ず、実際に優勝出来るというめどもついていないじゃないか!」・・・・・・・
「勝てるのか?」長い沈黙の中、こう切り出したのは経営トップの社長であった。経営再建の状況下で巨額の予算を必要とするWRCの活動を継続することの経営判断はありえないが、ある一つの思いがあった。数日前・・「社長、海外のディラーから来季のWRCに関してFAXが届いています」WRCは、特に欧州で人気が高く、WRCでの成績がクルマの販売に直結されるため、スバルのWRC活動をサポートしてくれているのだ。そして社員達も「今月のラリーXを読んだか?」「93年はスバルが優勝争いに加わる」と書いてあったよ。「レガシィがWRCで優勝すれば俺達の誇りだ」!この頃、WRCの活動が社員達の間で注目を集めていたのだ。みんながWRCでスバルの優勝を期待しているのである。「大幅な赤字を抱え、社員も自身を失えかけている、そんな時こそ皆が一丸となって自信と誇りを持てるものが必要ではないのか」との思いであった。続いてトップはこう話した「我が社にとってはWRC活動は重荷になっている」「経営の常識で言えば直ちに撤退だろう」だが「社員にとってスバルがWRCで走ることは大きな喜びであり誇りでもある」そのためには「WRCで勝たなければならない!」来シーズン「WRCで優勝が出来る自信はあるのか!」ハイ!あります「この3年間の蓄積が必ず優勝に結びつくと信じています。」「マシーンは他車と同等に仕上がっています、後は勝利のみ」です。そうか、優勝する自信があるんだな・・・、「経営判断としてはありえないことだが・・・・」ヨシッ!分かった!「私が責任を持とう」「来季は必ず優勝するように」と、経営トップのこの一言で来シーズンWRC参戦の続行が決定したのだ。
さらにチームには強力なスポンサーが付いた「555」のブランドで知られるタバコ会社「BAT」がスバルのメインスポンサーになったのだ。これにより資金面でもトップチームと対等に戦えるようになった。ドライバーには92年のスウェディシュ・ラリーでスバルのWRC最高位である2位に入った、91年英国ラリー選手権チャンピオンのコリン・マクレ―にWRC通算10勝ベテランのアリ・バタネンを新たに起用した。必勝の体制を整えたSWRT「スバル・ワールドラリー・チーム」は93年のシーズンに突入して行く。