女教師小説
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捕らわれた女教師


月曜日の朝の職員会議は、普段より早く始まる。
全校教員への連絡の他に、週単位のカリキュラム進行の報告など
週の初めに、会議の席上で確認しなければならない事は多かった。

「では次に、三年の学年主任からの連絡を・・・・」

会議を進行する教頭先生の声は
職員室の一番後ろの机からでもハッキリと聞き取れるのに
その内容は、私の頭の中をすり抜けていってしまう。
寝起きのようなぼんやりとした感覚が、あの時から続いていたの。


週末の放課後、女子更衣室で手錠で自由を奪われたまま
校内保安員の男に抱かれた事は・・・そう、覚えている。
でも、何をされたのか、どのように辱められたのか
詳細に思い出そうとしても、頭の中に霧がかかったように
記憶ははっきりとしなかった。

ひょっとしたら、心が傷付かないように
無意識に、忌まわしい記憶を封じているのかしら??
でも、あの事は・・・あの時抱いた感情ははっきりと今も心に残っている。


今朝も私は、迎えに来た誠くんの車に乗せられていた。
休日から続く、ぼんやりとした気だるさがまだ残っていたので
車内で会話が弾む事はなかったけれど
車内の雰囲気は、私をリラックスさせていた。

そして、言葉が途切れて、誠くんが私の顔を見つめると
あの時感じたような、安らいだ気持ちが湧き起こってきたの。

あの男に私を抱かせた張本人・・・本当なら憎むべき相手なのに
どうして、こんなに気持ちが安らぐの??
「・・・・ご主人様」
まるで恋人に抱かれる時のような、心からの安心感と一緒に
あの時呟いた言葉が、私の頭の中に蘇っていた・・・。

「じゃあ、紀子先生・・・昼休みに、女子更衣室で待ってますね」

「・・・えっ??」
我に返って聞きなおそうとした時には、誠くんは車から出て
私に後姿を見せていた。
その言葉の意味する物に、心が高揚するのを感じて恥じながらも
私は一人車内で、言い表せない寂しさを感じていた・・・。


「えー、それでは最後に、皆さんに残念なお知らせがあります・・・」

今朝の出来事をぼんやりと思い返していた私の耳に、教頭先生の声が届く。
無意識に顔を上げて、職員室の前を見ると
その後ろから、見覚えのある、背の高い初老の男性が現れた。

「長年、我が校の校内保安員を勤めて下さっていた、国崎さんが
  今学期終了から、姉妹校へ転任される事に・・・・」

「えっ?!」
ショックを受けた私の口から、驚きの言葉が零れてしまっていた。
向いに座る先輩の女先生がそれ気付いて、チラリと私に非難の視線を向ける。

どういう事なの・・・まさか、私との事が公に?!

「転任」と言う言葉を聞いても
私はすぐに、陵辱的な情事の相手が職場から消えてくれる
この都合のいい偶然を、素直に信じる事は出来なかった。
前に立つ二人の雰囲気が、校内不祥事を感じさせない和やかなものであっても
内心は穏やかではいられない。

「では、国崎さんからご挨拶があります・・・・」

教頭先生に代わって、彼が前に進み出て転任の挨拶を始めても
まるで嵐が過ぎ去るのを待つように、私は顔も上げずに
職員室の一番後ろの席でじっと首をすくめていた。

不祥事の発覚を恐れて、彼自身が転任の希望を出したの??
それとも・・・ううん、そんな事はないわ。
一生徒が教員の人事にまで関われるなんて・・・。
でも、今までの大胆さや今朝の誠くんの落ち着いた態度を考えると
それだって絵空事とは言えないんじゃない?
お金を使えばなんでも出来るって、言ってたじゃない。
普通なら考え付かないような事が、次々に思い浮かぶ・・・。
周囲に怪しまれずに関係を続けようと、私と距離を置こうとしてるの?
ひょっとしたら、あの時の情事が校長に知られていて
学校が彼に穏便な懲罰を・・・・。


「・・・田辺先生」
「ぁ、はい!」

突然かけられた声に、不安を思い巡らせていた私は現実世界へ引き戻された。
新人らしく居住まいを正して、声の主に顔を上げる。

「・・・ぁ!」
思わず私の口から零れた驚きの声を気にしないで
は言葉を続けた。

「短い間でしたけれど、お世話になりました」
軽く頭を下げた彼につられて、私も会釈を返す。
「これからも、経験を積んで頑張って下さいね」

あの男・・・保安員の彼は、きっと職員室の一人一人に声をかけていたのだろう。
最後に、一番新人の私にもお別れの挨拶をしに来たのだった。
周囲の先生方も和やかに、丁寧に頭を下げる彼を見ている。

「残り僅かの勤務ですが・・・よろしくお願いしますね」

その時だったの。
その瞳に気付いたのは・・・。

彼の言葉の最後の部分・・・その一瞬、彼が見せた冷たい瞳に
私は言い表せない恐怖を感じて、身体を強張らせる。

その瞳は、決して睨んだり、威圧したりはしていなかった。
だけど、視線が重なった瞬間
心を鷲掴みにされたような気持ちになった。
温厚な表情の中で、全てを見透かそうとする冷ややかな瞳・・・。
それは、誠くんが時折見せる瞳と同じ色をしていた。

「ぁ・・・・は・・・い」

乾いた喉から、それだけ搾り出すと
私は精神を総動員して、彼の刺すような視線から逃れた。

私の耳に、彼が職員室の前へ移動していく足音が聞こえる。
そして、教頭先生の声が会議の終了を告げて
職員室は、ざわめきに包まれる。
私も職員室を出て行く先生方に混じって
クラスの副担任として教室へ向かわなければならなかったのに
すぐには席を立てなかった。

全身に汗が絡み付いているのが分かる。
心臓の鼓動も速く脈打っている。
そして・・・何故なの?・・・信じられないけれど、私・・・。

それに気付いた私は、ホームルームで使うプリントと一緒に
不必要な私物の入ったハンドバックも抱えて
職員室を駆けるように飛び出していた。



ホームルームの予鈴が鳴っている。
あと5分しかないわ・・・でも、着替えはすぐに終わるから。

職員用の女子トイレの個室の中で、私は下着を引き下ろして
用を足す格好で便座の蓋の上に座っていた。
片足ずつパンティーストッキングとショーツを脱ぎ取っていく。
不快な感触はなくなったけれど
手にした下着には恥ずかしい跡がしっかりと残されていた。

少しだけど・・・職員室で失禁するなんて・・・。

薄いピンクのショーツに広がった小水で濡れた染みを見て
恥ずかしさに頬が赤くなっていくのがわかる。
だって、それは、ただの漏れじゃなかったから・・・。
あの男の瞳に射すくめられた時、零れてしまったものだから。

まだ中学生の頃に、遊園地のホラーハウスで
恐怖から零してしまった事があったけど・・・。

それと同じものだったら、まだ納得出来る。
彼の目に、得体の知れない恐怖を感じたのだから。
そうよ、そうあって欲しい・・・恐怖ですくんでしまっただけなら・・・。
でも・・・きっと、それは違う。
ホラーハウスで失禁してしまった経験とは違うものなんだわ。
でなきゃ・・・・。

「・・・・っぁ!」

小水をトイレットペーパーで拭おうと、股間に押し当てた途端
全身に、甘い疼きが走ったの・・・!


「・・・はぅ・・・ふぅぅ・・・」
その甘い刺激が頭の先へ突き抜けてから、私は大きく息を吐き出した。

実は、失禁の染みに混じって、小水とは明らかに違う
滑り気のある別のシミもショーツに付いていたのだけど・・・認めたくなかったの。
でも身体は、そんな理性の見て見ぬ振りを許してはくれなかった。
もう何度も経験させられて、覚えてしまった甘い官能の兆候が
小波のように私の身体を揺り動かしている・・・。

・・・どうして、こんな風になってしまうの??
あの男が与えた一瞬の恐怖が、失禁だけじゃなくて
女の性を目覚めさせるなんて・・・。

思いもよらない自分の身体の反応に当惑しながらも
私には、その理由に心当たりがあった。

そうよ・・・そうだわ、彼の瞳を見た時
私、思い出していたのよ。
今朝まで、霧の中でぼんやりとしていたあの忌まわしい記憶が
はっきりと蘇っていたのを・・・。

それは突然の事だった。
彼の瞳を見つめた時、私の頭の中には畏怖と一緒に鮮明なビジョンが溢れ出したの。
両手を拘束されて・・・後ろ向きに犯される女・・・。
そして、彼の指は秘部だけでなく、お尻までも辱めて・・・。
なのに、彼女は・・・お尻の穴を指で弄られながら何度も、何度も・・・!

そのビジョンは、まるで安っぽいアダルトビデオのようなシーンだった。
はしたなくお尻を突き出して、ペニスの挿入をねだる両手を縛られた女・・・。
そして、野太いペニスが奥まで突き入れられた時
彼女の口から歓喜の声が零れ出る。
獣のような声・・・牝犬が上げる悲鳴・・・女である事を感受した本能の喘ぎ!

判ってる・・・判ってるの。
それが、どこかで見たアダルトビデオの記憶じゃない事は・・・。

アダルトビデオの女優のように、ハスキーな官能の声を上げ
腰をくねらせ続けてる・・・私。
一旦鮮明に蘇ってしまった陵辱の記憶は、振り払おうとしても
私の頭の中を支配して、すぐに身体までも蝕んでいく・・・。

気が付くと、身体全体が熱い疼きで満たされて、じっとしていられない。
そして、股間に押し当てていた手は
無意識にその疼きを癒そうと蠢いていた。
何度も、何度も、理性が思い止まらせようとしても
私の指は、あの時の男のペニスのように
発情した女の部分を弄ってしまう・・・!
ああ・・・どうしてこんなに気持ちがいいの!?
トイレットペーパーのザラ付いた感触が
敏感になった陰唇を擦って声が出そうよ!
個室の中いっぱいに響くくらいの声・・・あの時
熱にうなされるように上げ続けた
悦びの声が、喉の奥からもう零れ出そうなの!


ぁあ、あの時と同じ・・・ただ違うのは・・・・。

その時再び、私は職員室で見たあの男の瞳を思い起こしていた。
そう、違うのは・・・彼がこの場にいない事・・・。
官能の疼きに必死に耐える私を責めながら、無慈悲に見つめる彼の瞳が・・・。

それに気付いた私の無意識が、じりじりと両膝を広げていく・・・。
まるで目の前の誰かに見せ付けるように、愛液で濡れた秘部を露にする。

そうよ・・・見られていたわ・・・あの冷たい瞳で
私が発情していく様を・・・犯されている事も忘れて、教師である事も忘れて
溢れ出す性欲を貪欲に貪った姿を・・・彼に・・・彼の瞳に曝してたのよ!


逃れられない・・・この忌まわしい記憶から、あの冷たい瞳から・・・。
そして、その陵辱の刺激が強ければ強いほど
身体の中に潜むメスの本能が疼き出す!

・・・助けて、助けてよ。誠くん!
あなたが先生をこんな風にしてしまったのよ!!

あなたのせいで、先生は・・・だから・・・
今すぐ、来て! 抱いて欲しい!

オナニーで果てる前に、先生のここにっ・・・して! 入れて!
あの男の瞳を思い浮かべながらイクのは嫌なの!!
また、彼に辱められるなんて・・・
ぁぁあ! でも、凄く感じてしまうわ!
彼に見つめられてると思うだけで
こんなに・・・こんなに感じるの!
・・・本当は・・・本当はね、見られたい・・・
あの冷たい瞳紀子が果てる様を
じっと、見つめていて欲しい!!

誠くん・・・っ! 許して!!
紀子、イクわ・・・イクっ!
また、彼に・・・イカされちゃうぅ!!

「はぁ・・・ぅぅっ! くぅぁぁン!!」



わずかに残っていた理性が、反射的に溢れ出る歓喜の声を喉元で押さえ込む。
個室に響いた声が、やがて荒い息遣いに変わっていく・・・。

全身が揺れるような絶頂の余韻を振りほどいて
愛液でグチョグチョになったトイレットペーパーの残骸を
新しい紙で拭いながら、腕時計を見ると
分針は、まだホームルーム開始の時間まで進んでいなかった。

たった数分のオナニーで、果ててしまうなんて・・・。

重苦しい自己嫌悪が圧し掛かってきたけれど
私は気持ちを奮い立たせて、から教師へ戻る為に
発情の跡をしっかり拭い取った下半身に
ハンドバックから出した真新しい下着を身に着ける。

あと1分しか・・・・。

個室を出て、洗面台の鏡に向かって服装の乱れを整えると
私は駆け出すように、女子トイレから飛び出した。

「田辺先生・・・!」
「・・・!?」

背中から浴びせられたその声に、私は駆ける足を凍りつかせた。

「トイレに閉じ篭ってたら、ホームルームに遅れますよ・・・」
「・・・・・!」

振り返った私の背筋に、冷たい汗が滴り落ちる。
笑みを浮かべながら、彼は私を一瞥して背を向けた。
一瞬だけ重なった視線の先に、あの冷たい瞳が光っていた。

「ホームルームより大事な事が、トイレにあったのなら仕方ないですけどね」

彼は口元を緩めると、背を向けて職員室へと歩き去った。
「・・・・・」
彼の姿が消えて、ホームルーム開始のチャイムが廊下に鳴り響いても
私は何かに縛られたまま、その場に立ち尽くしていた。




<捕らわれた女教師・終>

<次章「マゾヒストの資質」>


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