〜プロローグ〜


―春― 新入部員が数人混じるテニスコートで和海は、いつものように 朝練をやっていた。朝練といっても、ペアで軽くラリーするだけであるが。
 学校は、8:30から始業なので7:30頃から30分ほど軽く汗を流し、 それから授業に参加するのだ。

 松垣和海、香星高校3年生。香星(こうせい)高校は市内の小高い丘の上にある 学校で、県内では多少名は知れているが、県外に行くと途端に無名になってしまう。 別に、これという特徴もないが学校だが、自由な校風やのんびりとした環境にある という事、そして結構実績のある教師がテニス部顧問だ、という理由で和海は この学校を選んだのだ。
 高校に入り、1年の時に団体戦で地区大会に出場している。 2年は故障で思うように結果を残せなかったため、多少自暴自棄になっていた。 しかし、その時新入生の奈美と出会い、落ち着きを取り戻しつつあった。そして、 少しづつ奈美にひかれていくのだった。

――朝練が終わり、テニス部員たちはあとかたずけをして、それぞれのクラスへ 散っていった。
 授業は、普通の生徒にとってとても退屈な時間であるが和海にとっては、それ以上に うっとうしいものだった。べつに、勉強についていけない訳でもない。かといって、 教師が嫌いなわけでもない。理由はただ一つ・・・それは・・・和海が好意を抱いている 年下の娘、吹田奈美に会えない・・・それが和海にとっては、耐え難い苦痛であった。
 そこで和海は、少しでも早く時間が過ぎてほしいがために、余裕のある教科は とことん寝まくるのだった。

「あ〜ぁ、うっとうしいったらこの上ねぇなぁ」
 あくびをしながら、そんなことを呟く和海。部活は、奈美に会える最高の時間だが 同時に、苦しい練習を2時間半も続けないといけない。
「な〜にバカ面してんだよ、間抜けな顔がより一層アホに見えるぜ」
 眠そうな和海に話しかけてきたのは、テニス部キャプテンにして同じ市内出身。 中1の時、合同練習の試合でたまたまダブルスのペアを組んだのをかわきりに、以来 市内の大会で顔を会わすたび憎まれ口をたたき合う仲になったのだ。
そしてこれまた偶然、同じ高校を受けて二人とも合格してのである。
「今日は隣の新堂高校との練習試合だぞ。さっさと準備しろ!!」
「わぁったよ。ったく〜、うっせ〜なぁ」
 ぶつくさ言いながら、教室を出ていく2人だった。


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