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突然報じられた「キッズウィーク」は、教師による教師のための“教師ウィーク”である

 9月8日のNHKニュースは「『キッズウィーク』導入へ 来年度から 学校の休み柔軟に」と言うタイトルで、次のように報じていました。
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「キッズウィーク」導入へ 来年度から 学校の休み柔軟に
9月8日 14時09分 NHK

 政府は、8日の閣議で、地域の催しなどに合わせて、学校の夏休みなどの一部を別の時期に移す「キッズウィーク」の導入に向け、学校の休業日について定めた政令の改正を決定しました。

 政府は、地域の催しなどに合わせて、
夏休みなど学校の長期休暇の一部を別の時期に移す「キッズウィーク」を、来年度から導入する方針で、8日の閣議で、学校の休業日について定めた政令の改正を決定しました。

 この中では、大学を除く公立の学校の休業日について、夏季、冬季、学年末などに加え、「家庭や地域での体験的な学習活動のための休業日」が明記されたほか、休業日の設定にあたっては、「各地の
教育委員会が休業日の時期を適切に分散させて定める」としています。

 これを踏まえ、文部科学省は、来週、都道府県の教育委員会に通知を出し、子どもや学校、地域の実態を十分に配慮して休業日を設定することや、子どもと親が休暇をともに過ごせるよう、
親も学校の休業日に合わせて有給休暇を取得できる環境の整備に向け、経済団体とも連携することなどを求めることにしています。

 林文部科学大臣は、閣議のあとの記者会見で「子どもたちの豊かな学びを実現するためには、
保護者の有給休暇取得の促進、休業日における多様な活動機会の確保などの取り組みを合わせて推進することが不可欠だ。豊かな学びを実現できるよう取り組んでいく」と述べました。
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 多くの人にとって、「キッズウィーク」とは耳慣れない言葉で、初めて聞く言葉であった人も多いと思います。
 わたしは8月の末に、夏休みを短縮する動きが各地で相次いでいるとの報道に接して、これは
教師による教師のための「秋休み」創設に繋がると予感していましたが(G31学校の夏休みはなぜ短くなったのか 本当に生徒のためだろうか(夏休み短縮は教師のため))、こんなに早く予感が“的中”するとは思いもよりませんでした。

 この
夏休み短縮の動きと今回のキッズウィークとは、別のニュースとして報じられていますが、全く関係がないのでしょうか。偶然報道の時期が近接しただけなのでしょうか。夏休み短縮の理由自体が、不可解・不自然なものであっただけに、疑問が生じます。

 夏休みの短縮については、その理由は「
冷房設備が完備したため」、「災害で授業が出来なかった分を取り戻すため」などと説明されていました。キッズウィークと関連づけた報道は皆無(そもそもキッズウィークという言葉自体報じられることが皆無)でしたが、両者が無関係だとするとキッズウィークが実現すると、夏休みを更に短縮する必要があると言う事になるのでしょうか。

 それはまずあり得ないと思いますので、今年の
夏休み短縮の動きとキッズウィークの創設は裏で繋がった一連の動きだったと思います。報道はそれを隠しているのです。
 なぜそのような不透明な動き方をするのでしょうか。それは夏休み短縮の本当の動機、キッズウィーク創設の本当の
動機が極めて不純のものであり、公にされれば議論に耐えられないものであるからだと思います。だからこっそりと事を運ぼうとしているのです。そして、NHKはその動きを知っているだけでなく加担しているのだと思います。

 日本経済新聞は下記の記事で「キッズウィーク」を批判していました。
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問題が多いキッズウイーク
2017/7/23 2:30 日本経済新聞

 夏休みなど学校の長期休業の一部を別の時期に移し、親にも一緒に休暇を取るよう促す「キッズウイーク」の導入に向け、政府は官民による推進会議を設けて議論を始めた。まとまった休みを新たにつくることで、
消費や観光需要を喚起する狙いがある。

 働く人の休暇や家族がともに過ごす機会を、もっと増やすことには賛成だ。だが、
子どもの休みに合わせて親も休暇を取得できるとは限らない。政府が音頭を取って休みを増やそうとするよりも、個人が主体的に休みを取れるようにする環境整備が大事だ。

 キッズウイークは政府が来年度からの実施をめざしている。たとえば夏休みの最後の5日間を削って秋に移し、前後の土日と合わせ9連休にするなどの方法がある。具体的にどうするかは地域ごとに自治体や学校などが検討する。

 日本は年次有給休暇の取得率が50%を割り込んでおり、政府は2020年までに70%に引き上げる目標を掲げる。キッズウイークはその手立てのひとつになる。

 しかし、導入に向けた課題は多い。まず、教育への影響が懸念される。夏休みなどの一部をずらすことになれば、学校は授業や部活動のスケジュールの組み替えを迫られる。8月下旬から授業を再開する場合、
暑さで勉強の能率が上がらない心配もあるだろう。

 人手不足が深刻になっているだけに、その
地域の親が一斉に休暇を取れるのかという問題もある。子どものいない人にとっては、同僚が休む分、仕事のしわ寄せが来るのではないかという不公平感も出てこよう。

 こうした教育現場や企業、働く人たちの負担を考えると、政府主導で特定の時期にまとまった休みを新設するのは、
無理が多いといえる。

 重要なのは働き手が仕事の効率を上げ、生産性を高めて休みをもっと増やせるようにすることだ。個人が休暇を取りたいときにできるだけ取れる環境づくりを、企業自身が進めるべきだ。
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 この記事によればキッズウィークは
観光産業の振興を目的としていますが、観光産業のために子供のことを考えずに暑い夏の休みを減らし、勉学やスポーツに最適な秋に“秋休み”を創設せんとするのは動機が不純であると言えます。

 キッズウィークが出来たからと言って、教師以外の公務員・民間労働者にそれに合わせて地域別の連続休暇が出来るわけでもなく、また、複雑で重層的な
取引関係の存在を考えれば、地域ごとに異なる時期に、一斉に連続休暇などはまず不可能だと言って良いと思います。
 キッズウィークの実施は子供達だけでなく、その両親やその勤務先・同僚などに大きな悪影響が有り、すべての生徒、両親にとって歓迎出来るものとは到底言えません。

 キッズウィークが発表された趣旨どおりに実現するためには、
父母の同時休暇が不可欠で有り、前提と言っても良いと思います。しかるに、その前提が満たされておらず、近いうちに満たされるという確固とした見込みがないにもかかわらず、学校の休業だけが先行実施されるというのは、本来あり得ない話だと思います。文科省はをついているのです。

 このような現実の中で、問題なく
直ちに大歓迎できる人たちがいます。それはキッズウィークを実施する学校の教師とその家族です。この制度は教師達の希望、都合と、観光事業者の都合を最優先したものであると思います。その不純な動機を覆い隠すために、夏休み短縮の先行実施の理由についてをつき、キッズウィークのために今年の夏休みが短縮された事実を隠したのだと考えられます。キッズウィークの実態は“教師ウィーク”に他ならないのです。

 NHKの報道は重要な事実を隠しています。政府の決定を
リードした勢力について何も触れていません。また、日経は政府の決定を厳しく批判していますが、この決定を求めた勢力については触れていないのは、NHKと同様です。
 しかしそれ以上に非難されるべきは、
教師のための制度をあたかも生徒のためであるかのように言っている文科省であり、安倍政権そのものだと思います。

平成29年9月14日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ