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「This is 読売」の休刊

 読売新聞社発行の月刊オピニオン誌「This is 読売」が休刊(実質的な廃刊)することになりました。数年前に朝日新聞社の「月刊ASAHI」が廃刊になったことに続くものです。日刊新聞の分野で、900万、1000万部の巨大部数を誇る新聞社の雑誌が、創刊からわずかな期間で、相次いで廃刊に追い込まれたことになります。一方、日刊紙の部数では遙かに劣る産経新聞社の月刊誌「正論」は、昨年創刊25周年を迎えています。文芸春秋社の「諸君!」は今年創刊30周年を迎えました。

 同じ企業(新聞社)で発行する日刊紙と月刊誌でこれ程の差が生じるのはなぜでしょうか。読売新聞社、朝日新聞社の月刊誌は人気がないのに、日刊紙だけはなぜ売れているのでしょうか。それは販売形態が異なるからだと思います。

 月刊誌はほとんどが書店の店頭で売られています。書店の店頭(特に雑誌のコーナー)では、多くの人が立ち読みしていることからも判るように、読者(消費者)は雑誌(商品)を慎重に選択します。中身を見てから購入します。雑誌の種類も多種多様です。月刊誌の市場は自由競争の市場といえます。これに対して、日刊紙の場合はほとんどが月極の宅配で販売されており、キヨスク等(店頭)で新聞(商品)を買うことは全体のごく一部です。しかもキヨスクでは新聞の立ち読みはできません。新聞の月極の宅配の場合は、書店で月刊誌を選ぶのと異なり、他紙と比較・検討・選択する機会がほとんどありません。また、新聞の専売店は書店と違い、閉鎖的な流通制度なので、新しい新聞を発行して流通に乗せるためには新たに宅配網を作る必要があり、膨大な投資が必要になります。新聞業界への新規参入は容易ではありません。そのために新しい新聞が創刊されると言うことが、全くと言っていいほどないのです。日刊紙の市場は競争が制限された市場と言えます(参照 言論の自由を損なう新聞の宅配制度)。

 自由競争の市場で、読売新聞社、朝日新聞社の商品(月刊誌)は売れなくても、競争が制限されている日刊紙の市場では、全国を網羅した強力な宅配網と、強引なセールスマン(拡張員)を多数抱えていれば、人気のない新聞でも大部数を維持することができるのです。月刊誌と日刊紙の発行部数の乖離の原因はここにあるのです。

 読売新聞社、朝日新聞社の月刊誌が、自由競争の市場で廃刊に追い込まれたと言うことは、両社の主張が読者に支持されてはいないことを意味していると思います。読者に支持されていない新聞社の新聞が、大部数を維持していると言う異常事態をなくすことが、国民の多数意見を政治に反映させる上で、重要であると思います。

平成11年4月3日   ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る      目次へ