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最高裁判事の任命にも、総理大臣のリーダーシップを −安倍総理、NHK経営委員の任命にリーダーシップを発揮−


 11月8日と10月26日の読売新聞は、「NHK人事案を可決、同意…『ねじれ』解消後初」、「『安倍カラー』愛読者・元家庭教師…NHK委員」と言う見出しで、次のように報じていました。
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NHK人事案を可決、同意…「ねじれ」解消後初   (2013年11月8日14時41分 読売新聞)

 衆参両院は8日の本会議で、NHK経営委員に小説家の百田尚樹氏らを起用する政府の国会同意人事案について、与党のほか野党の日本維新の会、みんなの党などの賛成多数で可決、同意した。

 NHK経営委員の人事案は5人。新任は百田氏のほか、元埼玉大教授の長谷川三千子氏、海陽中等教育学校長の中島尚正氏、日本たばこ産業(JT)顧問の本田勝彦氏。再任はJR九州会長の石原進氏。

 NHKの経営委員は全部で12人おり、9人以上の賛成で会長人事を決定できる。今回の新任委員の人事案は、来年1月24日に任期満了を迎える松本正之会長(元JR東海副会長)の後任人事をにらんだものとみられている。両院の採決では、民主党が新任4人の人事案について「安倍首相に近い」などと反対。共産党、社民党は5人全員に反対した。

 この日、与党などの賛成で可決された国会同意人事案は、NHK経営委員を含め12機関29人。7月の参院選で衆参の多数派が異なる「ねじれ」が解消された後、国会で同意人事が可決、成立するのは今回が初めて。

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「安倍カラー」愛読者・元家庭教師…NHK委員   (2013年10月26日08時36分 読売新聞)

 政府は25日、衆参両院の議院運営委員会理事会で、NHK経営委員に小説家の百田ひゃくた尚樹氏ら5人を起用する国会同意人事案を提示した。
安倍首相に近い人物が多く、来年1月24日に任期満了を迎える松本正之会長(元JR東海副会長)の交代を見据えた布石とみられている。

 この日の議運委理事会に提示されたのは12機関29人で、NHK経営委員は百田氏のほか、埼玉大名誉教授の長谷川三千子氏、JR九州会長の石原進氏、海陽中等教育学校長の中島尚正氏、日本たばこ産業(JT)顧問の本田勝彦氏だった。

 首相は、百田氏の小説「永遠の0」や「海賊とよばれた男」などを愛読しており、8月には月刊誌の企画で対談した。長谷川氏は百田氏とともに、昨年9月の自民党総裁選で首相を支援した民間有志の会の発起人に名を連ね、本田氏は学生時代、首相の家庭教師を務めた。菅官房長官は25日の記者会見で、人事案について「(首相)自らも信頼し、評価している方にお願いするのは当然」と述べた。

 NHK会長は経営委員会の委員12人のうち9人以上の賛成で任命される仕組み。今回提示された5人が国会で同意された場合、安倍政権下で任命された委員は10人となる。首相は国民への影響力が強いNHKの報道内容に関心が高いとされており、今後、首相の意向がカギを握る可能性がある。

 松本会長は続投を希望しているとされるが、政府・与党や財界の一部には慎重論がある。

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 今回のNHK人事は、今までになく総理大臣の意向が強く反映されているようです。自分の家庭教師だった人を任命するのは、多少違和感が残りますが、個人としてではなく、総理大臣として人事にリーダーシップを発揮するのは大変好ましいことだと思います。
他人の推薦や、官僚の作ったリストに基づいた形式的な人事権の行使は、職務怠慢と言えると思います。

 安倍総理は「NHKの報道内容に関心が高い」とのことですが、大変良いことです。NHKの反日・偏向が是正されることを期待します。
 そのせいかどうかは分かりませんが、最近のNHKの中国報道を見ると、天安門前の爆発事件、山西省の党本部前爆破事件ともに、ストレートに中国に遠慮せずに報道している印象を受けます。

 翻って最も地位の高い公務員である、
最高裁判事に対する人事権の行使に当たって、歴代の総理大臣は、リーダーシップを発揮し、託された権限(責任を伴う)を遺憾なく行使してきたと言えるでしょうか。

 最高裁判事の任命に当たっては、長きに渡って
最高裁長官が総理官邸を訪れ、後任の候補者として1名を推薦するという悪習(参照C34最高裁判事の任命)が続いてきました。これはとても個人としての推薦とは言えません。長官としてなのか、判事15人の総意なのかも不明ですが、憲法を逸脱する暴挙と言えます。推薦を受けた総理大臣としては、受け入れるか拒絶するかの選択肢しかなく、事実、過去において推薦された候補者が任命されなかったことがなく、実質的に憲法で定められた総理大臣の任命権を骨抜きにする慣行として機能してきました。これが今日の司法(裁判所以外も含む)の脱線・暴走につながったものと言えます。

 安倍総理は、今後最高裁判事の退官がいつになるのか分かりませんが、その時には、従来の悪習に漫然と従うことなく、自らに託されて責任の重さを痛感しつつ職務を全うしてもらいたいものだと思います。

(追記)
 もし今後、最高裁長官が従来通りの推薦行為をした場合は、憲法に違反する
著しい非行として裁判官弾劾裁判所に訴追請求して罷免すべきだと思います。さらに、この推薦行為が他の14人の判事達も関与しての組織ぐるみの行為であれば、他の14人も合わせて訴追請求・罷免の手続きを取るべきだと思います。

 また、最高裁判事の任命はアメリカでは重大人事として、その選定過程を含めて大きく報じられるのに対して、日本では結果が小さく報じられるだけで、背景や経過はほとんど報じられません
司法の独立が歪曲されて、司法が民主政治の枠外に置かれ、マスコミの情報遮断により国民がつんぼ桟敷に置かれ、水面下で日弁連などの特定人物のやりたい放題になっているのが実態です。

平成25年11月9日   ご意見ご感想は こちらへ   トップへ戻る    目次へ


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〈参考〉
最高裁裁判官はどのように任命されるか

 憲法では内閣が任命できるように読めるが、現実には大雑把に言えば内閣と最高裁の協議で決められ、今日では任命権が最高裁に移ったように見える。しかし、詳細に見てみると歴史がある。基本は「裁判官・弁護士・学識経験者」が「5・5・5」の比率で選ばれることになっていたが、現在は「7・4・4」の比率になっているといわれる。背景には最高裁事務総局の存在が大きいのだ。司法官僚の中枢として最高裁事務総局が下級裁判所の裁判官人事を含めて最高裁の裁判官の決定権も握っている。

 これは、自民党長期政権の下で出来上がった慣行であり、法定の仕組みではない。だから、政権交代により、一つの政党との了解によって成立していた仕組みは変更されるのではないかとも言われるが、逆に民主党政権も必ずしも永続的なものとはいえず、結局、根拠は「国民の理解」に求めるしかないだろうとされる。最高裁裁判官の国民審査というのがあるが、「×」をつける人は1980年の「14%」をピークに、現在は「6%」程度だとされる。60歳になって任命された裁判官が70歳定年の現行の仕組みで罷免されてもさして脅威ではない。しかし、自分の出身母体からの最高裁裁判官選出が脅かされるのではないかという効果はありそうだ。

 結果的に、現在の最高裁裁判官は「政府に対する推薦の形で、最高裁が事実上の人選を行う」慣行が成立し、「裁判官と学者を除けば、それぞれ日弁連・法務省・内閣法制局・外務省がそれぞれ自ら考えた候補を最高裁に推薦してくる」慣行に対し「最高裁もできる限りの配慮を払う」という傾向が年ごとに強まっている、というのが「最高裁裁判官の選び方」の実態なのだ。最高裁事務総局を中心とする司法官僚が作り上げた仕組みだ。

ジュリスト2010年5月1・15日号「最高裁裁判官の任命慣行の問題点」今関源成

[Jurist(ジュリスト)2010年 5/15号 [雑誌]]
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