C82
「保守」、「リベラル」と、わかりやすくはっきり色分けされるアメリカの司法、国民に何も明らかにされない日本の司法 −司法は「法の番人」であり、「正義の味方」ではない−

 9月27日のNHKテレビニュースは、「トランプ大統領 連邦最高裁判事に保守派 バレット氏を指名」と言うタイトルで、次の様に報じていました。
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トランプ大統領 連邦最高裁判事に保守派 バレット氏を指名
2020年9月27日 7時35分 NHK


 アメリカ大統領選挙が1か月余りあとに迫るなか、トランプ大統領は、今月亡くなった連邦最高裁判所の
リベラル派ギンズバーグ判事の後任に、保守派の判事を指名しました。対立候補の野党・民主党のバイデン氏は、大統領選挙の結果を踏まえて次の大統領が指名すべきだと主張していて、議会で承認されるかが焦点になります。

 トランプ大統領は26日午後、日本時間の27日朝、ホワイトハウスで会見し、
リベラル派ギンズバーグ判事の後任として、保守派で、高等裁判所にあたる連邦控訴裁判所の判事を務める女性のエイミー・バレット氏を指名すると発表しました。

 トランプ大統領は「比類のない業績とすばらしい知性を備えた女性だ」と述べ、バレット氏をたたえました。

 会見に同席したバレット氏は、トランプ大統領に謝意を示したうえで「議会上院で承認されれば、全力でこの仕事の責任を果たす」と決意を述べました。

 バレット氏は48歳。7人の子どもがいる敬けんなカトリックで、
人工妊娠中絶銃規制に批判的な立場の保守派の判事として知られます。

 バレット氏が議会上院で承認されれば、
アメリカ社会を二分する問題で最終的な司法判断を下す連邦最高裁判所の判事9人のうち6人を保守派が占めることになります。

(以下略)
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 アメリカの司法は、
誰がどのような基準「保守派」、「リベラル派」と認定したのか不明ですが、はっきり色分けされていることにまず驚きます。

 と言うのは、
わが国では、最高裁の判事について、このような情報が皆無だからです。日本の最高裁には判事は全部で15人いますが、このような色分けがされたことがありません。なぜでしょうか、色分けが不可能なほど全員均一なのでしょうか。それとも本人達マスメディア隠しているのでしょうか。

 C73「最高裁判事指名のニュース、 −“知らせない権利”を行使し、選考の経緯や人物像を何も伝えない日本のマスコミ−」でも書きましたが、日本のマスコミは最高裁判事の
思想的・政治的な立場・傾向について何も報じません。日本の判事には読者・視聴者(国民)に伝えるべき情報が何も無いのでしょうか。それとも国民は知る必要が無いと思っているのでしょうか。

 
国民が重大な関心を寄せていると考えられる最高裁の判決が出ても、国民がどう評価するかについて報じられることはまずありません。判決について世論調査が実施されることもありません。論評が出るとしても、それは弁護士大学の教授など業界関係者の論評だけで、国民は完全につんぼ桟敷に置かれています。これが日本の司法の実態です。

 すべての判事が“
公平、中立的(何を基準にするかは別にして)”、均一である事はある意味で理想かもしれませんが、理想は必ずしも現実ではありません。現実を理想化して本当の現実から目を背ける(直視しない)こと、つまり多くの判事達は“公平”でも、“中立的”でもないにも拘わらず、そのように装うことはそれだけで欺瞞です。欺瞞判事にもマスメディアにもふさわしくありません。
 仮に
判事達が中立的でないアメリカの現実は問題だとしても、その現実を隠さず、偽装しないアメリカの方が、判事達の現実の姿を国民に一切知らせない日本より遙かにマシというものです。

 アメリカの論争を見ていると、司法と現実政治が同じ土俵で争っていて独立していないように見えますが、これが現実政治です。
司法が国民から距離を置き、“超然”としているのは健全な姿ではありません。

 記事の中に
「アメリカ社会を二分する問題で最終的な司法判断を下す連邦最高裁判所の判事 」と言う部分がありますが、最高裁の判事がアメリカでは大統領の指名と議会の承認で、日本では内閣の任命と言う、いずれも政治家の判断により、選挙に依らずに就任している以上、判事達が特権的な地位にあると考えるべきではなく、一公務員過大な役割を担わせ、過大な期待をすべきではないと思います。

 司法はあくまで
議会制民主政治の枠内で機能すると共に、「法の番人」に徹すべきであり、決して「正義の味方」たらんとしてはならないと思います。

令和2年10月1日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ