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憂慮すべき天皇陛下の「生前退位」のご意向表明 −皇室がどうあるべきかは、陛下ご自身がお決めになる問題ではない−

 7月14日のNHKニュースは次のように報じていました。
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「生前退位」のご意向 国民的な議論につながるか
7月14日 5時11分 NHK

「生前退位」のご意向 国民的な議論につながるか

 天皇陛下が数年内に天皇の位を皇太子さまに譲る「生前退位」の意向を宮内庁の関係者に示され天皇陛下自身が広く内外にお気持ちを表わす方向で調整が進められていることが分かりました。今後、
皇室典範の改正なども含めた国民的な議論につながっていくものとみられます。

 天皇陛下は82歳と高齢となった今も、数多くの公務を続けていますが、宮内庁の関係者によりますと、「
憲法に定められた象徴としての務めを十分に果たせる者が天皇の位にあるべきだ」と考え、今後、大きく公務を減らすなどしてまで、天皇の位にとどまることは望まれていないということです。そうしたなか、数年内に天皇の位を皇太子さまに譲る「生前退位」の意向を宮内庁の関係者に示され、皇后さまをはじめ、皇太子さまや秋篠宮さまも受け入れられているということです。

 これを受けて、天皇陛下自身が広く内外にお気持ちを表わす方向で調整が進められていて、関係者の1人は「天皇陛下は象徴としての立場から、直接的な表現は避けられるかもしれないが、ご自身のお気持ちがにじみ出たものになるだろう」と話しています。
天皇の退位について、皇室制度を定めた「皇室典範」には規定がなく、天皇陛下の意向は
皇室典範の改正なども含めた国民的な議論につながっていくものとみられます。
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 皇室がどうあるべきか、皇位の継承はどうあるべきかは、政治の問題です。陛下ご自身がお決めになる問題ではありません。すべては憲法や、皇室典範をはじめとする法律に基づいて決定されなければなりません。陛下ご自身は、憲法や法律の改定について
発議したり意見を述べることは出来ません。それは主権在民、民主主義に反します。天皇ご自身は政治に関与することは出来ないのです。例えご自身に関することであってもです。昭和天皇は厳格にそれを守られました。

 大正時代の末期に大正天皇がご病気で公務を務められなくなった時は、
昭和天皇が摂政を務められました。
 今の皇室典範でも摂政は可能であり、陛下が公務をつとめることが困難であれば、
摂政を置くというのが、法律の定めるところだと思います。

 天皇は公務員ではありません。特別公務員でもありません。強いて言えば終身の名誉ある特別の地位なのです。「辞職」と言う制度はないのです。ヨーロッパの王室とはあらゆる面で本質的に異なるのであり、真似をする必要は無いし、またしてはいけないのです。

 万が一それに依ることが不可能な重大な問題がある時は、民主主義のルールを逸脱することなく事を運ばなければなりません。民主主義のルールとは、
すべての経緯が事前に国民の前にオープンになり、国民の多数意見(新聞社の多数意見でも、有識者の多数意見でもありません)に従ってすべてが決定されると言うことです。

 皇室に関することとは言え、天皇が直接国民に提案するとか、宮内庁の官僚に指示するというようなことはあってはならないことです。
 宮内庁の関係者や、皇族(息子二人)に
周到に根回しをした後で、突然、決定事項のように国民の前に報じられること自体が論外と言わなければなりません(報じる者の問題でもあります)。

 5年前にも陛下は同じような手法で、ご自身の葬儀・埋葬に関して
土葬から火葬に変更しました(F82 皇室(天皇の葬儀)がどうあるべきかと言うことは、天皇陛下御自身が決めることなのか 参照)が、この時もあらかじめ周囲と諮った上で、決定事項として国民に明らかにしました(ちなみに欧州の国王は皆火葬ではなく土葬です)。
 前回に続いて、皇室のあり方に関わる重大事項を、密室で陛下のご意思で、宮内庁関係者と皇族(息子二人)に諮ったのみで、
既定路線のごとく国民に報じられた今回の事態は、主権在民、民主主義の観点から、重大な問題をはらんでいると考えられます。

 そもそも、陛下は宗教である神道と一体不可分の関係であると言う一面も考えれば、陛下のご一存ですべてを決定して良いはずがありません。
 最近の陛下は、お年を重ねるにしたがって、恐いものが無くなったかのように、皇室の庭園開放とか、次々に一部の国民受けすることを、実行に移されていますが憂慮に耐えません。

平成28年7月14日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ