H135
“かかりつけ医”って、一体何だろう。誰もが抱く当然の疑問にも、横を向いて前向きにならないNHK −目をつぶって見ていないふりをする他のメデイア−

 5月16日のNHKテレビニュースは、「定義あいまい“かかりつけ” ワクチン接種予約で困惑 兵庫」と言うタイトルで、次の様に報じていました。
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定義あいまい“かかりつけ” ワクチン接種予約で困惑 兵庫
2021年5月16日 16時19分  NHK

 新型コロナウイルスの
ワクチンの接種の予約は兵庫県内では「かかりつけ」の医療機関でも受け付けが始まっています。しかし、「かかりつけ」の定義があいまいなため、医療機関に予約を受け付けてもらえないケースも出ています。

 尼崎市では、新型コロナウイルスのワクチンの接種を希望する65歳以上の高齢者には、
「かかりつけ」の医療機関が接種を行っていれば、まずはそこで予約するよう呼びかけています。

 しかし「かかりつけ」の
定義があいまいなため、高齢者は「かかりつけ」だと考えていても最後の受診日から一定期間経過していることなどで医療機関側が「かかりつけ」にはあたらないと判断して、予約を受け付けないケースがあることがわかりました。

 こうした状況に尼崎市は
新規の人も受け付けている医療機関を同意が得られしだい、公表する方向で検討を進めています。

 尼崎市の榎並隆喜担当課長は、「市民や医療機関に対して、
情報提供が十分ではなく責任を感じている。これからも『かかりつけ』の表現を変えるつもりはないが、改善は進めたい」と話しています。

想定外の事態も
 尼崎市では今月10日から65歳以上の高齢者およそ13万人を対象に新型コロナウイルスワクチンの接種の予約の受け付けが始まっています。

 希望する人には「かかりつけ」の医療機関が接種をしている場合には受診した際に予約するよう呼びかけ、一方
「かかりつけ」がない人や、定期的に医療機関を受診していない人は、集団接種を受けてもらうことにしています。

 しかし、高齢者が
「かかりつけ」だと思っていても医療機関がそう思っていないケースや、市の境に住むなどして「かかりつけ」が隣接する自治体にあるケースなど市が想定していなかった事態も生じています。

「かかりつけ」日本医師会の定義
 日本医師会では、「かかりつけ医」は
「なんでも相談できるうえ、最新の医療情報を熟知して、必要なときには専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師」と定義しています。

 しかし受診の
頻度回数、最後に受診してからの期間などの定めはなく、どういう場合に「かかりつけ」にあたるのか明確な基準はないとしています。

予約を断られた女性は
 ワクチンの個別接種を希望した尼崎市の78歳の女性は自分では「かかりつけ」と考えた
医療機関に予約を拒まれ、戸惑うことになりました。

 女性は尼崎市が設定している集団接種の会場が遠かったことから近所の医療機関で個別接種を受けることを希望しました。
市は
個別接種の場合は「かかりつけ」にまずは相談するよう呼びかけています。

 女性はこの1年間、2か月に1回くらいのペースで、受診していた近くの医院が「かかりつけ」にあたると考えましたが、そこは最近になって閉院していました。このため、2年ほど前まで月1回程度、通っていた別の医院が、「かかりつけ」に近いのではと考えて、今月10日、問い合わせをしました。
しかし、この医院の担当者から「あなたは、
かかりつけの患者ではないので対応できない」と予約を拒まれたということです。

 ほかにあてがなく
困っていたところ、親族から「新規の人でも予約ができる医院がある」という話を聞き、一度も訪れたことがない医院でしたが、問い合わせてみると、予約できたということです。

 女性は「『かかりつけ』と言われると
どのくらいの頻度で利用する医療機関ならよいのか分からない。受け入れ側の事情もあると思うが、高齢者はただでさえ不安なので、自分がどの医療機関でワクチン接種ができるのか事前に知らせてほしいと思う」と話していました。
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 記事にあるとおり、「かかりつけ(医)」と言う言葉についは、
日本医師会には一般的な定義はあっても基準がなく、また法律用語でもなく法律上の定義も無いようですが、そもそも「かかりつけ医」とは、誰もが“俗語”と認識している言葉であり、それを行政の場に持ち込む方が、不見識、あるいは“他意ある”ものと警戒すべきなのです。
 それにも拘わらずわが国の
医療政策の重要な部分を伝えるニュースの中で、その言葉が当然のように、“いわゆる”も付けずに使用され続けているのは不可解(いかがわしい)なことです。

 H76「医師会の医師会による、開業医のための“かかりつけ医”への受診強制−(患者の自己決定権尊重の真逆を行く厚生労働省の診療報酬改定 基本方針)」でも論じましたが、患者の
大病院での受診を制限する一連の医療政策の根幹が、この「かかりつけ医」の重視です。しかるにその「かかりつけ医」の定義が何も示されずにいることには、国民の多くが疑問に思っているはずですが、マスコミは一度もその点に触れたことがありません。避けています。直接この点に言及した報道は、私の知る限り今回のNHKのニュースが初めてです(但しNHKも“触れて”いるだけで、掘り下げる姿勢は見られません)。

 定義が無い、示せないのは「かかりつけ医の重視」に
正当な理由・根拠が無く、無理に定義を提示しても、法律・政策論議に耐えないものだからであると思います。日本の医療政策は“日本医師会”に牛耳られ、振り回されていてそれほどデタラメなものなのです。

 これは、改めて驚くべき事態であり、この事実を長年見て見ぬふりをして、目をつぶって
“かかりつけ医”の身勝手を容認してきた、厚労省医大教授等の学者マスコミ関係者の罪は重いと言えます。

 患者にとってかかりつけ医に該当するかどうかで、ワクチン接種が受けられる場合と出来ない場合があると言うことは、
なじみ客一見の客かで対応が異なる個人商店と同じで、医師法で「正当な理由がなくして診療を拒んではならない」とされている医師の立場から考えて、許される対応と言えるでしょうか。
 特に今回の様な国家の非常事態で、
公金を使って公共事業として行われるワクチン接種が、医師にとって「馴染み客か、一見の客か」選別される行為は到底許されるべきではありません。
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 一方、5月25日のNHKテレビニュースは、「政府 ワクチン接種を加速へ 新たな財政支援策を決定」と言うタイトルで、次の様に報じていました。
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政府 ワクチン接種を加速へ 新たな財政支援策を決定
2021年5月25日 19時15分 NHK

 新型コロナウイルスのワクチン接種を
加速させるため、政府は、診療所で一定の回数以上、接種を行った場合は国が支払う接種費用を上乗せするなどの新たな財政支援策を決定しました。
 また、
不足が指摘されている担い手の確保に向けて、救急救命士や臨床検査技師による接種の検討を進めることになりました。

 菅総理大臣は25日朝、総理大臣官邸で、田村厚生労働大臣や河野規制改革担当大臣らと会談し、7月末までに高齢者に対する新型コロナウイルスワクチンの接種を完了させるため、医療機関への新たな財政支援や、不足が指摘される担い手の確保策を決定しました。

 具体的には、診療所ごとの
接種回数を底上げするため、7月末までに1週間に100回以上の接種を4週間以上行った場合は2000円150回以上の場合は3000円を、それぞれ国が支払う接種費用に上乗せするとしています。

 また、診療所を含めて接種を行う医療機関を増やすため、
1日に50回以上のまとまった規模の接種を行った場合、1日当たり10万円を医療機関に交付し、こうした接種を7月末までに一定の日数以上行えば、医師には1時間当たり7550円看護師などには2760円を医療機関に交付するとしています。



 さらに
担い手を確保するため、医師や看護師による接種に加え、特例で、救急救命士や臨床検査技師による接種も認められないか検討を進めるほか、予診や接種後の経過観察などで、薬剤師や診療放射線技師の協力も得ていくとしています。

 一方、政府は水際対策の一環として、インド、スリランカ、ネパール、パキスタン、バングラデシュ、モルディブの6か国からの入国者について、今月28日の午前0時から、国が確保する宿泊施設にとどめる措置を6日間から10日間に延長することを決めました。

新たな財政支援策 1回の接種で
最大7200円に増額



 今回決まった新たな財政支援策で、診療所での接種に対して国が支払う費用は、
1回の接種で最大7200円に増額されます。
具体的には、


◇7月末までに1週間に100回以上の接種を4週間以上行った場合は2000円、
◇150回以上の場合は3000円をそれぞれ上乗せします。

国が支払う接種費用は現在、平日の診療時間内で2070円となっており、
▼2000円が上乗せされた場合は4070円、
▼3000円が上乗せされた場合は5070円となります。

 また、平日の夜間など診療時間外に接種した場合は、現在2800円、休日は4200円となっているため、同様に上乗せ分を含めると、診療時間外は4800円か5800円、休日は6200円か7200円となります。
河野規制改革相「オンラインや電話で接種予診 検討を」
河野規制改革担当大臣は、閣議のあとの記者会見で「オンライン診療は、特例で解禁されており、今でも可能だ。もう一度、それを周知するための通知を厚生労働省からなるべく早く出すようにしたい。ワクチン接種の予診についてはオンラインや電話で対応してもらいやすくなると思う。各自治体でしっかり検討していただきたい」と述べました。

官房長官「臨床検査技師や救急救命士も打ち手として」

 加藤官房長官は、閣議のあとの記者会見で「高齢者への7月末までの接種に向けて、
自治体からは打ち手が不足しているという声があり、そうした声も踏まえて、歯科医師のほか、今回、臨床検査技師や救急救命士を打ち手として協力していただく状況を作っていく」と述べました。

 そして、臨床検査技師の免許取得者はおよそ20万人で、このうち、およそ6万6000人が医療機関に勤務しているほか、救急救命士の免許取得者はおよそ6万4000人で、このうち、およそ4万人が消防職員として勤務していると説明しました。

 そのうえで、「すべてがワクチン接種に従事できるわけではないが、必要な検査体制や救急搬送体制に支障のない範囲で、関係団体とも相談しながら協力を呼びかけていきたい」と述べました。

 一方、
診療所での接種費用の上乗せについて「診療所などの接種に手を挙げているところは相当数あるが、いろいろな事情でちゅうちょされているところもあるのだと思う。まずはやってもらえる診療所の数を増やし、接種回数を増やしていく。この両方に対応することで、トータルとして1日当たりの接種回数を上げていきたい」と述べました。
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 現状では診療所
(かかりつけ医)はワクチンの接種に積極的ではありません。その為に、政府は診療所(かかりつけ医)に支払う、ワクチン接種料金を大幅に値上げして、かかりつけ医達の参加を取り付けようとしています。

 記事によれば単純に
一律の単価を引き上げるのでは無く、接種回数・頻度、休日の有無により、接種1件あたりの単価2,070円〜7,200円まで幅のある、民間企業顔負けの、刺激的な料金体系を設定しています。

 これは
喜ぶべき事でしょうか、嘆かわしいことでしょうか。
 平時ではあり得ないことが、非常時にはあって良いと言う考えもあるかもしれませんが、逆に
国家の非常時出動するかしないかは“金次第”というのは、非常に情けない姿だと思います。

 
良心的な医師にとっては、侮辱的と感じる人がいてもおかしくないと思います。打算的なかかりつけ医にとっては、やる気が起きたと言う事かもしれません。

 しかし、こういう話題は
海外(中国を含む)ニュースでは聞いたことが無いし、そもそもワクチンの不足はあっても、ワクチン接種者の不足が伝えられることすらありませんでした。
 この料金制度は海外に知られたら、日本の
ではあっても、決して誇りではないと思います。

 今回の一連の医師
(かかりつけ医)達の言動は、今まで表に出る機会が無かった、すべては「金次第」で、個人の損得勘定だけで動くという、日本のかかりつけ医師達(もちろんすべてがとは言いません)の一面が垣間見られた言って良いと思います。

 彼らが
かかりつけ医となったのは、金銭的欲求が第一であり、また組織の一員として活動することを望まず、小さくても一国一城の主として、好き勝手に振る舞うことが性に合っているからに他なりません(その点は、弁護士事務所と共通するものがあります)。

 純粋に
医療に貢献したいと考えているのであれば、勤務医の方がふさわしいと言えます。なぜなら、その方が医療に専念できるからです。小規模であっても診療所を経営するとなれば、看護師、事務員などの雇用・労務管理や、医療設備の維持管理、診療所の経営等、他の雑務に手間が掛かります。

 医療全体で考えても、
小規模診療所の乱立は非効率で医療水準も低く、好ましい医療制度とは言えません。

令和3年6月3日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ