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消費税増税再延期、公約違反にも何ら責任を感じない安倍総理


 3月28日の産経新聞は、「消費税10%再延期へ 首相方針、5月正式表明」と言う見出しで、次のように報じていました。
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消費税10%再延期へ 首相方針、5月正式表明

2016年03月28日 産経新聞 東京朝刊 1面

 安倍晋三首相が平成29年4月に予定していた
消費税率10%への引き上げを見送る方針を固めたことが27日、分かった。世界経済が減速・不安定化する中で再増税すれば国内の景気が冷え込み、政権が最重要課題に掲げるデフレ脱却が困難になるとの判断からだ。5月18日に発表予定の28年1〜3月期の国内総生産(GDP)速報値などを見極めて最終判断し、同26、27日の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)の前後に正式に表明するとみられる。

 首相は
26年11月、消費税10%への増税を27年10月から29年4月に延期することを決めた上で衆院を解散。今夏の参院選でも野党は再増税の是非の争点化を狙っており、早期に決着させる意図があったとみられる。

 首相も出席する「国際金融経済分析会合」で、
ノーベル経済学賞受賞者から再増税の凍結を求める意見が相次いだことも判断の背景にある。首相は最近、周囲に「彼らが『延期した方がいい』と言っていることには重みがある」と語った。

 年明け以降、中国経済の失速や原油安で円高、株安が進んだ。国内景気はGDPの6割を占める個人消費が低迷し、政府は今月23日発表の月例経済報告で5カ月ぶりに景気判断を下方修正。こうしたこともあり、首相は税率10%への引き上げに「経済が失速しては
元も子もなくなる」と慎重な姿勢もにじませてきた。

 一方、10%引き上げと同時に導入される軽減税率制度では税率が8%と10%の2つになり、仕入れた商品を税率ごとに区分けし税額を計算する必要がある。多くの中小・零細企業では、来年4月までに準備作業が間に合わない見通しだ。一定期間の増税延期で、飲食料品を扱う小売業者や外食産業などの事業者の混乱を最小限にする狙いもある。
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 2年前の2014年11月19日には、安倍総理は下記のように断言していました。
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衆院解散表明 首相会見詳報

2014年11月19日 産経新聞 東京朝刊 総合・内政面

 今年4月から8%の消費税を国民に負担してもらっている。3%の引き上げを決断したあのときから、10%への引き上げを来年10月に予定通り行うべきか、ずっと考えてきた。

 消費税率の引き上げは、社会保障制度を次世代に引き渡し、子育て支援を充実させるために必要だ。だからこそ、民主党政権のときに、私たちは税制改革法案に賛成した。しかし、消費税率を引き上げることで景気が腰折れすれば、国民生活に大きな負担をかけ、その結果、税率を引き上げても税収が増えないことになっては
元も子もない。

 17日、7〜9月期の国内総生産(GDP)速報値が発表された。残念ながら、成長軌道には戻っていなかった。消費税率を引き上げるかどうか、
有識者や私の経済政策のブレーンから意見をうかがい、何度も議論を重ねてきた。それを総合的に勘案し、デフレから脱却し経済を成長させ、「アベノミクス」の成功を確かなものにするため、本日(18日)、消費税率10%への引き上げを、法定通り来年10月には行わず、18カ月、延期すべきだとの結論に至った。

 しかし、申し上げておきたいのは、「三本の矢」の経済政策は、確実に成果を挙げつつあることだ。経済政策において最も重要な指標は、雇用や賃金だ。政権発足以来、雇用は100万人以上増えた。有効求人倍率は22年ぶりの高水準だ。今春には、平均2%以上、給料がアップした。過去15年間で最高だ。

 企業の収益が増え雇用が拡大し、賃金が上昇して消費が拡大する。景気回復という経済の好循環が生まれようとしている。何よりも個人消費の動向を注視してきたが、17日発表のGDP速報値によれば、個人消費は4〜6月期に続き、1年前と比べ2%以上の減少となった。3%分の消費税率引き上げが個人消費を押し下げる重しとなっている。3%引き上げに続き、来年10月からさらに2%引き上げることは、個人消費を再び押し下げ、デフレ脱却が危うくなると判断した。

 政府が成長戦略を力強く実施する中、経済界も賃上げへと踏み込んでくれた。モノづくりを復活させて中小企業を元気にし、
女性が働きやすい環境をつくる。成長戦略をさらに力強く実施することで、所得が着実に上がっていく状況をつくり上げていく。地方経済にも景気回復の効果を十分に波及させていく。そうすれば消費税率引き上げに向けた環境を整えることができる。個人消費のテコ入れと地方経済を底上げする経済対策を実施する。次期通常国会には、必要となる補正予算を提出したい。

 財政再建について、社会保障・税一体改革関連法では、経済状況をみて消費税率引き上げの是非を判断するとされている。今回はこの景気判断条項に基づいて延期の判断をした。

 しかし、財政再建の旗を降ろすことは決してない。国際社会におけるわが国への信頼を確保しなければならず、社会保障を次世代に引き渡していく責任を果たしていく。

 来年10月の引き上げを18カ月延期し、その後、さらに延期するのではないか、という声がある。
再び延期することはないと断言する。平成29年4月の引き上げについては、景気判断条項を付すことなく、確実に実施する。「三本の矢」をさらに前に進め、必ずそうした経済状況をつくると決意している。

 2020(平成32)年度の財政健全化目標も、しっかりと堅持する。来夏までにその達成に向けた具体的な計画を策定し、経済再生と財政再建を同時に実現していく。実現するために来年度予算の編成にかかるとともに、関連法案の準備を進め、来年の通常国会に提出する。

 国民生活にとって重い決断をする以上、速やかに国民に信を問うべきだ。今週21日に衆院を解散する。消費税率の引き上げを18カ月延期すること、平成29年4月には確実に10%へ消費税率を引き上げることについて、そして、私たちが進めてきた経済政策、成長戦略をさらに前に進めていくべきかどうか、国民の判断を仰ぎたい。

 なぜ今週の解散なのか説明する。国民の判断を仰いだ上で来年度予算に遅滞をもたらさないギリギリのタイミングであると考えたからだ。現在、衆院では、自民、公明両党の連立与党は多くの議席をいただいている。選挙をしても議席を減らすだけだ、何を考えているんだ、という声があることも承知している。戦いとなれば、厳しい選挙になるのは覚悟の上だ。

 税制は国民生活に密接に関わっている。「代表なくして課税無し」。アメリカ独立戦争の大義だ。国民生活に大きな影響を与える税制で重大な決断をした上、私たちが進めている経済政策も賛否両論がある。どうしても国民の声を聴かなければならないと判断した。

 「信なくば立たず」。国民の信頼と協力がないと政治は成り立たない。今、「アベノミクス」に対して、失敗したという批判がある。しかし、ではどうすればよいのか、具体的なアイデアを一度も聞いたことがない。批判のための批判を繰り返し、立ち止まっている余裕は今の日本にはない。私たちの経済政策が間違っているのか、正しいのか。ほかに選択肢があるのか。この選挙戦を通じて明らかにしたい。

 思い返せば、政権が発足した当初、大胆な金融緩和政策に対しては反対論ばかりだった。法人税減税を含む成長戦略にもさまざまな批判をいただいた。しかし、強い経済を取り戻せというのが、2年前の衆院選で私たちに与えられた使命であり、国民の声だ。この間、雇用は改善し、賃金は上がり始めている。ようやく動き始めた経済の好循環の流れを止めてはならない。デフレから脱却し、経済を成長させ、国民生活を豊かにするには、困難な道であっても、この道しかない。国民の理解をいただき、進んでいく決意だ。

 −−消費税率引き上げを先送りしたら、財政再建に取り組む姿勢に疑問符が付けられ国民生活に影響が及ばないか。衆院選の勝敗ラインをどう考えるか

 「財政再建の旗を降ろすことは決してない。
29年4月に確実に消費税率を10%に引き上げる。2020年度の財政健全化目標も堅持する。それにより、国際的な信認の問題は発生しないと確信している。経済の再生なくして財政健全化はできない。デフレ脱却がなければ財政健全化は夢に終わってしまう。断固としてデフレ脱却に向けて進んでいく」

 「前回衆院選では、自公両党でたくさんの議席をいただいた。しかし、税制は議会制民主主義と言ってもよい。税制で大きな変更を行う以上、国民に信を問うべきだ。その上で、自公両党で過半数を維持できなければ、『三本の矢』の経済政策『アベノミクス』を進めていくことはできない。過半数を得られなければ『アベノミクス』は否定されたことになるので、私は退陣する」

 −−衆院解散には「大義がない」との批判がある。この時期に衆院解散で民意を問う理由は

 「申し上げておきたいことは、なぜ2年前の衆院選で民主党が大敗したか。それはマニフェスト(政権公約)に書いていない消費税率引き上げを、国民に信を問うことなく行ったからだ。平成29年4月に景気条項を外して確実に上げることは重大な変更となる。国民に信を問うのは当然であり、民主主義の王道といってもいい。その状況をつくるために、成長戦略をしっかり進め、景気を回復させて賃金を上昇させていかなければならない。こうした政策を進めていくためにも、国民の理解が必要だ。だからこそ衆院解散・総選挙をする必要がある」

 −−公明党は、消費税率引き上げ時に軽減税率を導入するよう主張している。29年4月から導入する考えは。その際の対象品目は

 「軽減税率の導入に向け、自公両党でしっかりと検討していく」

 −−29年4月の引き上げに当たり、個人消費などは現在、厳しい指標もある。選挙で問う場合、政権として引き上げができると信じられるよう、何を掲げるのか

 「第2次安倍政権の発足後、直ちにマイナス成長からプラス成長に転じた。まさに私たちが進めている経済政策の成果だ。今年、消費税率を引き上げたが、残念ながら個人消費を押し下げてしまった。しっかりと『三本の矢』の政策を進め、名目所得が上がり、実質賃金も上がっていく、そういう経済をつくることができると思っている。有効求人倍率や賃上げ率、倒産件数などで間違いなく、私たちの政策は成功している。ただ、消費税率引き上げによって押し下げられた個人消費は、再増税するとデフレ脱却が危うくなると判断した」

 −−今回の選挙を原発再稼働や憲法解釈変更によって行われる集団的自衛権の行使容認に向けた関連法案への信任ととらえるか

 「自民党は選挙においては常に、消費税率もそうだが、逃げることなく、しっかりと国民に示している。エネルギー政策、原発政策、あるいは安全保障政策などについても、党の公約にきっちりと書き込んで、堂々と選挙を戦っていきたい、有意義な論戦を行いたいと考えている」
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 安倍総理は2年前の平成26年11月19日に、平成29年4月の消費税再引き上げは再延期しないと
「断言する」と言いました。この決意表明は衆議院の解散と併せて表明されたもので、言わば選挙公約です。今回の再延期表明は明らかに公約違反です。
(参照 H72消費税増税延期、安倍総理の矛盾 −財政再建=増税ではない−

 この1年半の間に、予測できなかった大事件があったわけではありません。むしろ、この間円安や、予想外の原油価格の下落という追い風があったのです。
 それにもかかわらず経済が好転せず、消費税引き上げの環境が整わず選挙公約が果たせないのは明らかに公約違反です。
 それにもかかわらず、誤りを認めず何ら反省もせずに
「女性が働きやすい環境」、「成長戦略」、「地方経済」・・・と、バカの一つ覚えのごとく、同じことを繰り返して言っています。無責任極まりありません。

 最近自民党の溝手顕正参院議員会長や菅官房長官などが、しきりに
消費税増税延期のアドバルーンを上げたり、外国人のノーベル賞を受賞した経済学者などに「消費税引き上げ延期」を語らせたり、韓国人まがいの姑息で卑劣な情報操作をしてきたことはあきれてものが言えません。

 いくらノーベル賞学者が意見を述べたところで、政治家として公約を果たせなかったこと、断言したことを実行しなかったことの責任は重大です。中身のないアベノミクスはアベ・マジックであり、
人口減少の歯止め、技術革新、規制の緩和、公務員制度の改革など、経済成長に必要なことを何一つすること無く、日銀の金融政策だけで、経済成長が実現するはずはないのです。
 彼が唱える
「女性活躍」、「地方振興」、「賃上げ」、「物価上昇」はすべて、目先の表面的な現象しか見えない者がする、「官主導の規制新設が形を変えただけのものであり、市場経済における経済政策の邪道と言うべきだと思います。

平成28年3月29日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ