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「こども家庭庁」新設の最大の狙いは“幼保一元化”という“幼稚園潰し”だった。 −専業主婦(準専業主婦)への敵意(悪意)(その9)−

 12月21日のNHKのテレビニュースは、「『こども家庭庁』令和5年度に創設へ 基本方針を閣議決定」と言うタイトルで、次の様に報じていました。
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「こども家庭庁」令和5年度に創設へ 基本方針を閣議決定
2021年12月21日 10時40分 NHK

 子ども政策の司令塔となる新たな組織について、政府は、21日の閣議で、名称を
「こども家庭庁」とし、再来年度・令和5年度のできるかぎり早い時期に創設するなどとした基本方針を決定しました。

 それによりますと、子どもに関する政策の司令塔となる新たな組織の名称は
「こども家庭庁」としています。

 政府は当初、名称を
「こども庁」とする予定でしたが与党側から「子育てに対する家庭の役割を重視した名称にするのが望ましい」などといった意見が出されたことから名称を変更しました。

 そして「こども家庭庁」は、総理大臣直属の機関として
内閣府の外局に位置づけたうえで、各省庁への勧告権などを持つ担当大臣を置き、再来年度・令和5年度のできるかぎり早い時期に創設するとしています。

 また子どもが
施設の類型を問わずに共通の教育・保育を受けられるよう、こども家庭庁文部科学省が協議し、幼稚園や保育所の教育・保育内容の基準を策定するほか、文部科学省と重大ないじめの情報を共有し、対策を講じるなどとしています。

 政府は、基本方針を踏まえて必要な法案を策定し、年明けの通常国会に提出する方針です。
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 「こども家庭庁」は何をするのか、何のために新設されるのか、今ひとつはっきりしない印象がありましたが、「
施設の類型を問わず共通の教育・保育・・・、こども家庭庁と文部科学省が協議し、幼稚園や保育所の教育・保育内容の基準を策定」とあるところから、その目的が“認定こども園”以来の“幼保一元化”の再来であり、“縦割り排除”を口実にした“幼稚園潰し”が“こども庁”問題の背景(核心)である事が窺えます。

 幼稚園、保育園はいずれも「
義務教育・保育」ではなく任意であり、両者は目的も対象となる園児の家庭環境も年齢も異なるもので、両者の「教育・保育内容の基準」すべてを共通化するのは無理があり、その必要もありません。

 現実的に考えて見ても、
幼稚園側が保育園と何かを“共通”とする必要もメリットも何もなく、幼稚園側に何らかの変更・負担を伴う制度の改訂は、迷惑以外の何ものでもないと思います。

 
保育園側が部分的に幼稚園化したいのであれば、単純に保育園が幼稚園教育の一部を吸収すれば良いだけの話しです。幼稚園側に「保育園に足並みをそろえろ(レベルを下げろ)」というのは、全くの筋違いというものです。
 幼稚園から保育園へ、反対に保育園から幼稚園へと転出・入する人は極めて少数だと思いまので、
「共通」を意識しすぎる必要は無いはずです。

 それなのに一体なぜ双方にとって束縛となるだけの
“共通”にこだわるのでしょうか。無理な共通化は“縦割り”の弊害以上の“一本化”の弊害が生じます。誰が何のために“共通化”を無理押ししようとしているのでしょうか。

 それは「こども家庭庁」で指導権を握る見込みの
“保育園派”の人達が、幼稚園に対して“保育園としての業務(義務)”を課し、応じられない幼稚園を廃園に追い込むこと、つまり専業“幼稚園”を廃園に追い込むことによって、「幼保一元化」の実現を意図していると考えられます。

 このように考え、「こども庁」から「こども家庭庁」への名称変更について考えると、NHKの報道に単に
「与党側から」とあるだけで、与党の誰が、どの様な意見を述べたのか説明がないので調べてみたところ、下記の記事を見つけました。
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幼保一元化、実現せず 縦割り打破に不安―こども家庭庁
2021年12月22日09時31分 時事コム
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021122100950&g=pol

 子ども政策の司令塔
「こども家庭庁」創設の基本方針が決まった。縦割りを打破し、いじめ、虐待、不登校、貧困など多岐にわたる子どもの課題に一元的に対処するのが狙いだ。ただ、岸田文雄首相が取りまとめに向けて指導力を発揮した形跡はなく、縦割りの象徴とされる幼稚園と保育所一元化は今回も実現しなかった。

 「
子ども目線に立って縦割りを排した行政を進めていく」。木原誠二官房副長官は21日の記者会見でこども家庭庁の意義をこう強調した。

 
子ども政策は「たこつぼ」行政の典型だ。子どもの貧困対策は内閣府、犯罪保護は内閣官房、性的搾取は警察庁、虐待は厚生労働省が所管。内容の重なる「少子化社会対策大綱」「子供・若者育成支援推進大綱」「子供の貧困対策大綱」が別々に作成され、閣僚会議も別々に運営されてきた。

 基本方針はこれらの政策や大綱、会議をこども家庭庁で一元的に掌握し、専任の担当閣僚に他の閣僚への
勧告権限を与えると明記した。ばらばらな取り組みに一体性を持たせる。

 基本方針で
最大の焦点となったのが長年の懸案である幼保一元化だった。現在、幼稚園は文部科学省保育所は厚労省認定こども園は内閣府が所管する。4月に「子ども庁」の新設構想が持ち上がると、3府省が族議員を巻き込んで新たな受け皿の担い手をめぐる水面下の攻防を激化させた。

 結局、基本方針では
保育所認定こども園こども家庭庁に移し、幼稚園は「文科省の下でこれまで通り」とされた。幼稚園など3施設の教育・保育の基準はこども家庭庁と文科省が共同で作成することから、政府関係者は「実質的な一元化」と力説するが、新たな縦割りに発展する恐れは否定できない。

 こども家庭庁はもともと
菅義偉前首相肝煎りの政策。岸田首相は9月の党総裁選で公約に実現を記したものの、積極的に訴えたとは言いがたい。自民党内では「首相は関心がない」とささやく声もあり、当初想定された「こども庁」の名称は、家族重視の保守派の主張により「こども家庭庁」に変わった。

 政府は2023年度の創設を目指し、来年1月召集の通常国会に関連法案を提出する。しかし、野党からは早くも「(幼保を)
完全に一元化すべきだ」(日本維新の会の馬場伸幸共同代表)との声が上がる。子ども政策は国民の関心も高く、参院選を控えた国会論戦の大きなテーマの一つになりそうだ。
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 ここにはNHKのニュースが報じなかった事実・経緯が詳しく報じられています。
 
縦割り批判を前面に出していますが、「縦割り」を非として一律批判するなら、組織はすべて一本化(実際は不可能)か、「横割り(年齢別・地域別など)」とする事になりますが、それで良いのでしょうか。
 「こども家庭庁」内に部局が出来れば、それは縦割りです。庁内の部局は縦割りでは無いと言うなら、文科省内に「こども家庭庁」を作れば「縦割り」は解消することになります。それで良いのでしょうか。
 
 最大の焦点であった
“幼保一元化”とは、“専業幼稚園潰し”であり、それは“専業主婦潰し”に繋がります。
今の
縦割り批判は「多様性の否定」、「多様な生き方の否定」に繋がるものです。

 その攻防を隠したのは幼保一元化が国民の支持を得られないことを知っていて、その敗北を隠したかったのでしょうか。

 参照 I53 幼稚園潰しの執念(5歳児義務教育化に隠された意図)

令和3年12月28日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ