I146
少子化を加速した少子化対策(子育て支援)
I146-3 6月5日
I146-4 6月6日
6月5日と6日の読売新聞はそれぞれ「少子化対策の効果薄く」と言うタイトルの特集記事と「社会全体で子育てを支えたい」と言うタイトルの社説で、それぞれ次の様に報じていました。(茶色字は記事 黒字は安藤の意見)
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[スキャナー]出生数70万人割れ、少子化対策の効果薄く…雇用安定・働き方改善がカギに
2025/06/05 05:00 読売
2024年の人口動態統計(概数)で、出生数が初めて70万人を割り込み、1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す「合計特殊出生率」も過去最低の1・15となった。出生数は2年前に80万人を下回ったばかり。現金給付や教育無償化など、様々な対策を打ち出しながら事態を食い止められない国や自治体には、焦りが広がった。(社会部 増田知基、金沢支局 古渡彩乃)
未婚や晩婚 傾向強く
「厳しい現状」
玩具メーカー・ピープルで奨励されている「子連れ出勤」(3日、東京都中央区で)=松本祐典撮影(写真省略)
「ここが踏ん張りどころという気持ちで政策を続けていきたい」。東京都の小池百合子知事は4日、険しい表情でそう語った。
都は少子化対策を最重要課題と掲げ、18歳以下への月5000円支給や保育料無償化など、国に先駆けた施策を次々と打ち出してきた。それでも出生率は2年連続で1を下回り、0・96。都幹部は、「様々な施策を打っているが、厳しい現状だ」と頭を抱えた。
記事は未婚と晩婚を真っ先に挙げているのに、都知事にその対策は何も無く、挙げられているのは「子育て支援」のみと言う現状で、「踏ん張りどころ」とか「政策を続けていきたい」とは、小池都知事は反省ゼロで、一体何を考えて居るのでしょうか。彼女に知事としての三期12年で評価に値する部分があるのでしょうか。
「様々な施策」には“様々”どころか共通点があります。それはほとんどが共働きの母親に対する子育て支援だったと言うことです。それが何の役にも立たないどころか、少子化を加速してきたのです。今、必要なのは謙虚に反省し、何の役にも立たなかった少子化対策は直ちに中止することです。
都の幹部は、幹部公務員としては“視野”が狭すぎます。(頭を抱えているのでは無く)辞表を出すべきです。公務員の“劣化”も少子化対策破綻の一因です。
前年からの下落幅が0・11ポイントと全国最大になった石川県。仕事と子育ての両立に力を入れる企業をPRする事業などに取り組んできたが、子ども政策課の担当者は「結果を受けとめ、他の自治体の例も参考に取り組んでいく」と語った。
「1.57ショック」以来「子育て支援」が始まって36年、加速する少子化。「子育て支援(共働きの拡大)」こそが少子化の元凶だと言うことにあと何年したら気が付くのでしょうか。「結果を受け止め」には何の意味もありません。「他の自治体の例も参考に」では、視野が狭すぎます。「何も考えていない」と言っているに等しいです。
東京流出
今回、婚姻数は増加に転じて約48万組となったものの、60万組近かったコロナ禍前の2019年からの急な落ち込みを取り戻すには至っていない。
【グラフ】婚姻数の推移
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女性の平均初婚年齢は前年より0・1歳上昇。第1子出生時の母親の年齢(31・0歳)は1975年(25・7歳)から5歳近く上がった。こうした傾向の背景として指摘されるのが、地方から東京などへの若い女性の流出だ。総務省の統計によると、出生率が特に落ち込んだ東北地方では昨年、20~30歳代前半の女性の転出超過数が同年代の男性を上回る自治体が目立った。一方、都会では、非正規で働いたり、仕事が忙しかったりといった理由で結婚を考えられない若い世代も多い。
結婚をしない(出来ない)理由を調べることは大事ですが、何か調査をした形跡はありません。単なる憶測で良いはずがありません。
ニッセイ基礎研究所の天野馨南子・人口動態シニアリサーチャーは、「地方は、女性に選んでもらえるような働き口を増やす取り組みが必要だ。都会の自治体は、雇用を安定させるなどして、若い男女が結婚や出産を考えられる施策に力を入れてほしい」と訴える。
少子化問題は「国家の問題」であり、国内の問題ではありません。つまり国全体で人口が維持され効率的な経済が実現していれば、人口密度が全国均一である必要はありません。“地方が、東京は云々”は話しのすり替えであり、少子化“便乗”です。地方の衰退問題は大企業の工場が中国などの海外に移転した影響も少なくありません。少子化とは切り離して、別問題として議論すべきです。
子連れ出勤
こうした中、働き方の改善で「成果」を上げる企業も出てきた。
東京都中央区の玩具メーカー「ピープル」では、社員が子どもと一緒に出社し、社内で遊ばせながら仕事する「子連れ出勤」を奨励している。約45人いる社員のうち、2019年に子育て中だったのは9人だったが、今年は17人に増えた。
京都大の柴田悠教授(社会学)が諸外国のデータを基に実施した試算によると、児童手当の拡充で出生率は0・1ポイントほど上がるのに対し、正規雇用の男性が働く時間を1日2時間減らせば、0・35ポイント上昇するという。
男性の労働時間を1日2時間減らせば、何らかのデメリットは考えられます。こう言う詳細な条件が明らかにされない中で正確な議論・結論にならなりません。細かい事で諸外国を参考にする意味はありません。
長時間労働の是正は、23年に閣議決定された「こども未来戦略」でも、「育児・家事に充てる時間を十分に確保することにつながる」とされた。柴田教授は「法定労働時間の短縮なども議論し、働き方を変える国策を充実させるべきだ」と指摘した。
社会保障 維持に懸念
政府は、加速する少子化を「国の根幹にかかわる『静かな有事』」(石破首相)と位置づけている。国の想定を大幅に上回るペースで少子化は進んでおり、将来的な社会保障制度の維持への影響が懸念される。
林官房長官は4日の記者会見で、出生数が過去最少となった要因について「経済的な不安定さや、仕事と子育ての両立の難しさなど、様々な要因が複雑に絡み合っている」と分析した上で、「少子化に歯止めがかかっていない」と危機感を示した。
今になっても「大変だ!、大変だ!」と騒ぐだけです。「経済的な不安定さや、仕事と子育ての両立の難しさなど、様々な要因が複雑に絡み合っている」では、何も分析していないし、危機感も感じられません。
2023年1月に岸田前政権は「次元の異なる少子化対策」を打ち出し、昨年10月分から児童手当の所得制限を撤廃し、支給期間を高校生の年代までに延長した。第3子以降の支給額も月3万円に倍増させた。
小銭のバラ撒きのどこが“異次元”なのでしょうか。岸田は異次元の愚か者、悪党です。
国立社会保障・人口問題研究所が23年4月に公表した将来推計によると、標準的な見通しとされる「中位推計」では、24年の合計特殊出生率は、新型コロナウイルスの影響が薄れて増加に転じ、1・27になると見込んでいたが、実際は23年の1・20から1・15に落ち込んだ。
出生率の低下は、将来の年金や医療などの支え手が減ることに直結する。
厚生労働省は、過去30年と同様の実質ゼロ成長の経済が続いた場合、基礎年金(国民年金)の将来の給付水準は現在より3割下がると推計しているが、これは「中位推計」の出生率に基づき、70年に出生率が1・36まで回復することを前提としたものだ。少子化がさらに進んだ「低位推計」では、70年の出生率は1・13と見込んでおり、同じ実質ゼロ成長の場合でも、基礎年金の給付水準は4割近く下がる。
細かい計算は論点がぼける。人口減少が国家・国民全体に計り知れない広範囲に、致命的な損害をもたらす事は国民は分かっています。
中央大の松浦司教授(人口経済学)は「若年層は減り続けており、人口減少は止まらない。人口減少を前提とした政策の見直しが必要だ」と指摘している。(政治部 原新)
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1989年の1.57ショック以来36年が経過し、その間一貫して続けられてきた「子育て支援(その母親支援)」を中心とする「少子化対策」が、何の成果も効果も上げる事無く今日に至ったことに対し、反省も見直しも無く、国家存亡の危機の今、目先の事に論点をはぐらかし、本質の問題を放置し、対症療法をアピールするだけの「人口減少を前提とした」政策を主張する大学教授の存在など、わが国の政界・社会は正常の範囲を逸脱しています。
「人口減少を前提とした政策の見直し」の前に、長年にわたる「少子化対策」にもかかわらず、「少子化」が改善しなかったどころか、「却って加速した」原因を明らかにし、その誤りの責任の所在を明らかにして、今後同じ過りの繰り返しを防ぐことが重要です。それなくして正しい「見直し」は出来ません。「人口減少を前提」は責任放棄、敗北宣言です。こう言う無責任な人間が大学教授を務めていることが大問題なのです。
読売新聞は、6月5日の「スキャナー」という特集記事では、大きく「少子化対策 効果が薄く」と報じ、翌日6月6日の社説では「社会全体で子育てを支えたい」と言うタイトルで論じていました。
ここで注目するのは、2つの記事が言っていることの方向が正反対だという事です。5日の特集記事では少子化対策(そのほとんどが子育て支援)は「少子化対策の効果薄く」と明言しています。
しかるに翌日の社説では「社会全体で子育てを支えたい」とは、驚きを禁じ得ません。
統計資料を見れば明白ですが、少子化の原因は未婚の増加です。
なぜ、結婚が減った(未婚が増えた)のでしょうか、それは結婚のメリットが減った(未婚のデメリットが減った)からです。
男女(夫婦、父母)の役割分担社会では、結婚のメリットは大きいものです。社会人となり親離れした独身の男性は食事も洗濯も自分でしなければなりませんが、結婚すれば妻がしてくれます。自分は仕事に専念できます。
同様に独身の女性は仕事を続けて生活費を自分で稼がなければなりませんが、結婚すればそれは夫がしてくれます。自分は家事・育児に専念することができます。
男女双方にとって結婚(役割分担)は大きなメリットがある(反対に結婚しなければ男も女も生きていくのが大変な)社会だと言えます。
その独身者援助のために コンビニやレンタルクリーニングなどが普及し未婚者には助けとなりました。
ところが男女平等思想が強調される社会を迎え、女も外に出て働け、男も家事・育児をしろという役割分担否定社会が主張され、役割分担否定を前提とする社会に変貌していきました。
役割分担否定社会では、男女平等が重視され役割分担否定と共に、「男らしさ」、「女らしさ」も否定される社会となり、お見合いの風習も廃れて、結婚しない(出来ない)男女が増え、少子化問題が発生しました。
その当時も少子化対策として未婚・晩婚対策が提案されましたが、「結婚する、しないは、本人の自由だ、結婚の奨励は『産めよ、増やせよ』の復活だ」と言う反対意見が出て、押しつぶされてしまいました。
(これとは別の問題として、かつては中卒・高卒の若年労働者は人手不足の中で「金の卵」ともてはやされ、独身者が自家用車を買えるほどに経済的に恵まれていましたが、外国人労働者の入国、国内工場の海外移転の増加により労働環境が急激に悪化してしまいました。これも未婚の増加の一大原因となりました)
それらの結果、未婚・晩婚対策は見送られ、実施される「少子化対策」のほとんどが、子育て支援(その為の共働きの母親支援)となり、役割分担否定はますます強固になり、未婚の増加と少子化が加速することになりました。
仮に子育ての負担が少子化の原因だとしても、結婚して子供を持たない・作らないという選択肢もあるのですから、子育て負担は未婚の増加の説明にはなりません。少子化と子育ての負担を結びつけ、子育ての負担を少子化の原因とするのは“便乗”以外の何者でもありません。
戦争の敗北や地震などの巨大災害、疫病の大流行などが何もない環境で、30年以上の長きにわたって、結婚が減少し、出生が減少し続けるという事が、いかに異常な病める社会なのか、読売新聞は考えて居るのでしょうか。
男女(夫婦・父母)の役割分担否定→未婚の増加→少子化→(便乗)→偽りの少子化対策(子育て支援)→役割分担否定の進行→更なる未婚の増加→更なる少子化→(便乗)→となり、役割分担否定と未婚の増加と少子化は密接な関係があります。
男女(夫婦・父母)の役割分担否定社会により未婚が増加し、それにより少子化問題が出現し、それに対する偽りの少子化対策(便乗詐欺)により、役割分担否定社会が更に拡大した、と言う流れになります。
この悪循環が36年の長きにわたり繰り返されて、今日の合計特殊出生率過去最低の1.15に至ったのです。
では少子化の発端である「男女(夫婦・父母)の役割分担否定社会」はなぜ生じたのでしょうか。
(参考)
I62 少子化問題、女性問題を語る東大女性教授(白波瀬佐和子氏、本田由紀氏)の
レベルへの疑問-男女雇用機会均等法以降未婚が増加-
役割分担否定社会はなぜ発生したか
それは役割分担社会で良い位置(ポジション)を得られない一部の女性の強い意思であり、その一部の意見が多数意見を封じて、まかり通ってしまうという、民主主義とは相容れない日本の社会に問題があるのです。
本来役割分担を選ぶか否定(拒否)するかは、夫婦、父母個人の生き方の問題であり、社会が一方を指定してその方向に導き、強制するものではありません。しかるに役割分担を否定する女性達は、自分の生き方として否定するに止まらず、社会から役割分担を一掃(他人に対しても役割分担という生き方を許さない)と言う暴走に走ったのです。
なぜそこまでするのかと言えば、自分が役割分担を望んでも良い結果を得られないと知っているからです。その為に社会から「役割分担」を消滅させたいのです。
それは共働きの優遇と、その結果としての専業主婦の冷遇と言う形を取りました。本来(時代遅れの)社会主義国でもない限りは、子供の養育費はその父母が負担すべきものですが、共働きでは共働きをするために必須の託児所や保育園費用などの負担がかかることを、“少子化”と結びつけるなどして公費の負担を実現しました。しかし、共働きは無償の奉仕労働では無く、労働の対価を得ているのですから、貧困家庭でもない限りは養育費の公費負担は理屈に合わない“共働き優遇”です。
このような理屈に合わない共働き優遇が「少子化対策」に名を借りて(便乗して)急激に拡大して「女も外に出て働け(働かないと損だ)」社会が拡がって行きました。
役割分担社会で良いポジションを占められない女性の中でも“筆記試験の偏差値(以下単に偏差値と表記します)の高い”女性は特に強く役割分担社会の根絶を願望します。彼女にとっては、男に負けない偏差値こそ男女平等の証しであり、偏差値が総てなのです。
偏差値は能力の有無を証明するものとみられがちですが、偏差値は能力総てを表示するものではありません。偏差値は主に➀「理解力と記憶力」を表す数値に過ぎません。しかし、社会に於いて必要とされるのはそれだけではありません。上位に位置する者に必要とされるのは、それらの能力だけで無く、➁「思考力、判断力、説明(説得)力等」の、➀「理解力と記憶力」以外のものが求められます。
そしてそれらの能力は➀「理解力と記憶力」の様に、“偏差値”で把握することが出来ません。
それでは男性の場合はどうなのでしょうか。➀「理解力と記憶力」に関しては、女性と同様に筆記試験の偏差値で把握できますが、➁「思考力、判断力、説明(説得)力等」については、偏差値で把握できないのは女性の場合と同じです。
ただし、大きな違いは➀と➁の関係に関してです。
➀分野で優れた男性は、➁思考力、判断力、説明(説得)力等に於いても優れているのが一般的なのです(もちろん例外もあります)。これに対して➀に優れた女性が➁に於いても優れているとは言えず総じて➁では(男性に比べて)劣るのです。
これは例えばノーベル賞の受賞者数に於いて、男女間で顕著な差があり、また、女性の受賞者は平和賞、文学賞がほとんどで、それ以外の物理・科学・医学などの理系分野に於いては極端に少ないという現象に表れています。
社会生活に於いては、まず➀の能力が求められ、多くの場合はそれで十分と言えますが、職場での地位が上位になるにつれて、➀だけでなく、➁が重視されてきます。
これらの➁の能力は男性は多くの場合➀理解力と記憶力に比例して備わっているのが普通で、その点については男女間で明白な相違があります。
この点は役割分担社会の可否に関して、重要な要素となります。
この点を無視して「役割分担」を否定して少子化対策に進めば、それは「誤った少子化対策」に繫がり、「少子化対策が少子化を加速」する事になりかねません。
今まさにそれが日本の現状です。
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社説 出生数過去最低 社会全体で子育てを支えたい
2025/06/06 05:00 読売
◆若者の意識をどう変えていくか◆
政府や自治体が様々な対策を講じても、少子化は加速する一方だ。
様々では有りません。少子化対策はそのほとんどが、政府や自治体による共働きの母親に対する「子育て支援」です。
希望する人が結婚できて、子供を産みたいと思えるようにするには、社会全体で出産や子育てを支援していくことが不可欠だ。若者の意識も変えていきたい。
「1.57ショック」以来36年、政府や自治体がしてきた「少子化対策」のほとんどは「出産や子育て支援」でした。そんな事も知らないのでしょうか。若者の「意識」をどの様に変えるのですか。考えるのはこれからですか?
政府が2024年の人口動態統計を発表した。日本人の出生数は68万6061人となり、1899年に統計を取り始めて以来、初めて70万人を割った。
1人の女性が生涯に産む子供の数を示す合計特殊出生率も、過去最低だった2023年の1・20を下回って1・15となった。
◆わずか8年で3割減る
出生数は、第2次ベビーブームの1971年~74年に年200万人を超えていたが、徐々に減少し、2016年に初めて100万人を切った。その後、わずか8年で3割も減ったことになる。
第2次ベビーブームの1971年~74年に「子育て支援」はありましたか?
また、婚姻件数は、戦後最少だった23年の47万4741組に次いで少ない、48万5063組にとどまった。
政府は23年に策定した「こども未来戦略」で、児童手当の所得制限をなくし、支給期間についても中学生から高校生年代までに延長した。育児休業中の会社員らへの給付金については、休業前の手取りと同額となるよう引き上げた。
子育てにかかる経済的な負担を軽減する狙いは理解できるが、給付に偏った措置ばかりでは、少子化の流れを食い止められまい。
読売は「子育て支援(給付)」の単なる「理解者」だったのですか。「主張」し、「支持」してきた「張本人」では無かったのですか。
長年「給付に偏った措置ばかり」を主張・支持してき当人が、「・・・少子化の流れを食い止められまい」とは何なのでしょうか。
(以下略)
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令和7年6月12日 ご意見・ご感想は こちらへ トップへ戻る 目次へ