I72
28年間の少子化対策の破綻 −加速する人口減少の危機に直面して、なお効果の無い保育所作りを止めない政府・厚労省と、それを批判しないマスコミ− 

 12月22日のNHKのニュースと翌23日の読売新聞は、厚生労働省が発表した2017年の人口動態統計年間推計について次のように報じていました。
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出生数が過去最少 死亡者は戦後最多 人口減が加速
12月22日 15時38分  NHK




 1年間に生まれた子どもの数の「
出生数」は、ことし全国で94万人余りと、これまでで最も少なくなる見通しとなったことが厚生労働省の調査でわかりました。一方、死亡した人は戦後最多の134万人余りとなる見通しで、人口の減少がさらに加速していることが浮き彫りになりました。

 厚生労働省は毎年1月から10月までの数値を基に、その年に生まれる子どもの数、いわゆる出生数を推計しています。

 それによりますと、ことしの出生数は94万1000人と、初めて100万人を下回った去年よりさらに3万6000人少なくなり、明治32年に統計を取り始めて以降、最も少なくなる見通しです。

 一方、国内の死亡者数は134万4000人と去年より3万6000人多くなり、戦後では最多となる見通しです。出生数から死亡者数を差し引いた人口の減少数は40万3000人と、戦後初めて40万人を超える見通しです。

 日本の
人口が減少するのは11年連続で、そのペースがさらに加速していることが浮き彫りになりました。

 厚生労働省は「
保育所の整備など現在の子育て世帯への支援を強化するとともに、若者世代が将来安心して子どもを産めるよう就労支援などにも取り組み、少子化に歯止めをかけていきたい」としています。


病院からの声「第2子以降の出産が減少」

 東京 板橋区の総合病院では、年間1000人余りの出産を受け入れています。受け入れ数に大きな変化はありませんが、第2子、第3子を産む人が少なくなっているといいます。

 今月16日に2人目の子どもを出産した36歳の女性は「公園で遊ぶ子どもの声がうるさいと言われることもあるので、
子育てしやすい環境になってほしい」と話していました。

 板橋中央総合病院石田友彦副院長は「出産する女性の年齢が高くなっているうえ、2人以上産む人が少なくなっている。われわれ産婦人科医もできるかぎり努力しているが、
保育所の整備など社会全体で子どもの産みやすい環境を整えていくべきだ」と話しています。
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出生94万人 過去最低…17年推計 人口40万人減
2017年12月23日5時0分 読売



 厚生労働省は22日、2017年の人口動態統計年間推計を発表した。17年生まれの子どもの数(
出生数)は94万1000人となる見通しで、1899年の統計開始後、最少を更新することは確実だ。2017年中の死亡者数は前年比約3万6000人増の134万4000人と見込まれ、出生数から死亡者数を引いた自然減は初めて40万人を超える。

 出生数が100万人を割り込めば2年連続。前年の確定値97万6978人と今回の推計値を比べると、約3万6000人少ない。国立社会保障・人口問題研究所の石井太・人口動向研究部長は「
子育てにお金がかかりすぎると感じて、夫婦の理想的な子どもの数より予定数が少なくなっている」と指摘する。

 政府は15年、若者が希望通りに結婚し、望む数の子どもを持てた場合の「希望出生率」を1・8とする目標を掲げたが、
少子化の流れは変わっておらず、狙い通りにいっていないといえそうだ。安倍首相は看板政策「人づくり革命」で幼児教育・保育の無償化を充実させ、子育て世代の負担軽減を図りつつ、出生数の増加につなげたい考えだ。

 
婚姻件数も、前年比1万4000組60万7000組で戦後最少を記録した。離婚件数は同5000組減の21万2000組だった。

 人口の自然減は11年連続で、減少幅は2010年に10万人、11年に20万人、16年に30万人をそれぞれ超えた。17年は40万3000人になる見通しで、
人口減は加速している。
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 この人口問題は、平成元年(1989年)に
出生率が1.57を記録した、いわゆる「1.57ショック」をきっかけに、「少子化問題」として国家の喫緊の課題として認識されたもので、以後今日に至るまで30年近くにわたって、最重要課題の一つとして対策(少子化対策)が取られてきた問題です。

 そして、当初からその対策としては、
なぜか「保育所の増設が非常に重視され大きなウェイトを占めてきましたが、「少子化」はその後現在に至るまで、加速する一方で全く改善することはありませんでした。

 そして更に、改善が見られないにもかかわらず、少子化対策としての
「保育所の増設」の有効性効果検証されることは一度も無く、常に少子化対策として一層の保育所の増設が必要であると声高に主張され、問答無用で実施されてきました。
 これは大変不可解であり、保育所増設の主張は
他意あるものと考えるほかはありません。

 今回の二つの報道を見ると、どちらも「
人口減少が加速している」と報じています。出生数の点から見ても下降が加速しています。(I70 完全に破綻した厚労省の少子化対策 その原点は1994年の「エンゼルプラン」にある(その1) −未婚者増加の原因は男女共同参画社会−

男性未婚率の推移


女性未婚率の推移


  30年近く続けられてきた、
保育所の増設という少子化対策が何の効果もなかった(かえって少子化を促進した?)ことは明白です。
 人口統計を見れば、少子化(それによる人口減少)が結婚適齢期の男女の
未婚化・晩婚化の結果である事もまた明白です。
 そうであれば
既婚の子持ちの夫婦(あるいは母子家庭)に対して、保育所の増設教育の無償化で応えても、出生が増えるはずはないのです。なぜ未婚が増えた(結婚しない・出来ない若者が増えた)のか、未婚を減らすにはどうしたら良いのかが最優先課題である事は誰にでも分かるはずです。

 しかるに二つの報道はこの点に何も触れることがなく、また総理大臣厚労大臣はこの期に及んで尚、「
保育所の整備、教育の無償化出生数の増加を」など完全にピント外れの発言をしています。

 加速する人口減少の危機に直面して、なお
効果の無い保育所作りを止めない政府・厚労省と、それを批判せず、どのように選んだのか不明の役人病院関係者の、根拠のない個人的感想を並べてごまかすマスコミの有様は、悪質極まる狂気の沙汰としか言いようがありません。
 長年にわたり、効果が無いと知りながら、膨大な時間と莫大な費用をかけて
偽りの少子化対策(保育所の増設など)を推進してきた罪は、何もしない怠慢の罪より遙かに重くかつ重大です。

 今の日本に必要なのは、「
産みやすい環境」、「育てやすい環境」ではなく、それ以前の「結婚しやすい環境」だと思います。

平成29年12月27日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ