I84
出生数90万人割れの事態に、「少子化対策の無残な失敗」の言い訳に終始する読売新聞の記事
 
 12月25日の読売新聞は、「少子化対策の制度生かせず、出生数90万人割れ」という見出しで、次のように報じていました

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1.
[スキャナー]少子化対策の制度生かせず、出生数90万人割れ
2019/12/25 07:12 読売

 2019年の出生数が初の「90万人割れ」の見通しとなった。待機児童対策など政府は
育児と仕事の両立支援策を進めてはいるが、少子化に歯止めがかかっていないのが現状だ。働き盛りでもある子育て世代は、責任ある仕事を担う中で、育休取得や定時退社に踏み切れない人も多いとみられる。制度を整えるだけでなく、社会全体で「子育てしやすい環境」を作ることが重要となる。(生活部 矢子奈穂、社会部 杉浦まり)

2.
■両立

   

 「子どもは
もう一人ほしいけれど、色々考えるとためらってしまう……。夫婦でもそんな話をします」。東京都内の女性(38)は、こう打ち明ける。

 保育士として働く女性は、5年前に結婚し、今年10月に長女を出産した。「職場は人手不足。子どもの病気で仕事を休めば、他の職員に負担がいく。休暇制度はあるが
取りづらい」。勤続15年を超え、後輩を指導する立場でもある。仕事と育児の両立へのプレッシャーは大きい。

 
は土木業で勤務が不規則なうえに、収入は不安定という。「共働きしながら子どもを2人以上育てることに、楽しいイメージがあまりわかない」と話す。

3.
 政府は2004年、総合的な少子化対策の指針として「少子化社会対策大綱」を策定した。待機児童ゼロを目標に18〜20年度の3年間で
約32万人分の保育の受け皿確保を掲げる。今年10月には幼児教育・保育の無償化も実現した。

 ただ、日本では保育サービスや児童手当などを合わせた
「家族関係社会支出」国内総生産(GDP)に占める割合は1・31%(2015年度)。出生率が高い英国スウェーデンなどは3%超(13年度)に達する。日本政府は今後、さらに対策の充実を目指す。

4.
 ■育休・有休

 子育て支援に詳しい
大日向雅美・恵泉女学園大学長は「国は子育て支援の充実を図り、制度や政策は整いつつある。ただ、社会の中で当たり前にはなっておらず、制度があっても気持ちよく使えない」と指摘する。

 厚生労働省によると18年度の
育休取得率は女性全体では82・2%に上るが、従業員30〜99人の企業では76・3%に落ちる。さらに男性は全体でも6・16%という低さだ。年次有給休暇については国は20年に取得率70%を目指すが、昨年は52・4%にとどまっている。

 こうした中、働き盛りの子育て世代を支えるため、部下の
育児を応援し、業績アップも目指す上司「イクボス」の推進や、急病の子どもに対応できる「病児シッター」の利用支援に乗り出す企業も出てきている。

 ■結婚ためらう

 また、日本では女性が家事や育児を担うという
意識が根強い。宮城県内に住む英会話塾講師の女性(28)は「キャリアを中断してまで、結婚や出産には魅力を感じない。子どもは好きだけれど、24時間世話をすることは耐えられない。子どもを幸せにできるほど金銭的な余裕もない」と明かす。

 大日向学長は「働き続けたい女性は増えているが、
家事や育児の負担は大きいというイメージが強く、結婚をためらう人も多い。子どものうちから、夫婦は互いに尊重し、人生を協力し合って生きるパートナーであるという教育が重要だ」と話している。

5.
 非正規雇用の拡大で、正社員同士の夫婦だけでなく、夫婦のどちらか、または両方が
アルバイトやパートといった家庭も目立つ。内閣府の少子化克服戦略会議で座長を務めた松田茂樹・中京大教授(社会学)は「非正規雇用であっても遠慮なく育児休業がとれる職場環境の整備や、専業主婦・主夫も利用しやすい一時預かりサービスの充実など、社会全体で結婚、出産、子育てを支える仕組みづくりが必要だ」と指摘する。

6.
女性人口減で拍車 25〜39歳

 2000年 1320万人→今年7月 970万人

 将来人口を推計している
国立社会保障・人口問題研究所(社人研)では、2019年の出生数の減少について、「想定の範囲内」としている。

 日本人の出生数は、1947年に約268万人となり、団塊の世代を形成した。70年代の第2次ベビーブームで再び200万人に達したが、
その後は減少に転じている。

 2000年前後には、団塊ジュニア世代による第3次ベビーブームの到来が予想されていた。しかし、実際には
未婚率の上昇、晩婚・晩産化、バブル崩壊後の就職氷河期の影響など、様々な要因が絡み合って、少子化の流れに歯止めはかからなかった。

7.
 現在、婚姻数そのものが減少傾向にあり、00年の約80万件から、昨年は60万件を割り込んだ。

 さらに出生数には、子どもを産む中心世代である
25〜39歳の女性人口が大きく影響する。00年に約1320万人だった25〜39歳の女性人口は、今年7月時点で約970万人となり、社人研の推計では、40年に810万人程度まで減少する。その頃の出生数は62万〜83万人まで減る見通しだ。

 仮に女性1人が産む子どもの数が変わらなかったとしても、
女性の数が減り続けている現状では、出生数全体の減少も避けられない。社人研の担当者は、「出生数がここ数年のうちに90万人を割ることは、想定されていたことだ。冷静に受け止め、数十年先を見据えて、少子化対策に地道に取り組むしかない」と指摘している。(社会保障部 野口博文)
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1.
 この2人の記者は自分とその仲間のことばかり考えているのでしょうか。
“育児と仕事の両立”・・・。何回、何十年同じ台詞を聞かされてきたことでしょうか。
 
制度を生かせないと言うのはどういう意味でしょうか。制度環境に合っていないとすれば、それは制度が間違っていると言う事ではないでしょうか。環境(国民の意識・生活実態)制度に合わせるべきだと言うのは、本末転倒です。
 例えば、
男性(父親)の育児休暇制度はその最たるもので、育児休暇制度を維持するために、むりやり休暇を取らせることが横行しています。政策(制度)決定の過程に重大な欠陥があると言う証左です。

2.
 
ある夫婦の事例が紹介されていますが、この夫婦(女性)はどのようにして、記者(新聞社)に依って選ばれたのでしょうか。同じような年齢・職業の女性は、何万人、何十万人といると思いますが、考えは様々だと思います。この女性の意見が全女性を代表する意見であるとか、典型的な意見であると言う特別の根拠がなければ、只の一人の意見に過ぎません。
 
たった一人の意見を根拠に議論を進めるのは根拠に乏しい議論と言うべきであり、この記事は読む人にこの人の意見が多数意見であるとの誤解を与えます。

 
夫婦一組あたりの出生数が減っていることは事実ですが、それが少子化の主たる原因ではありません。少子化の原因は結婚しない(出来ない)男女の増加です。(参照 I83 国家の非常事態を招来した、少子化対策の無残な失敗と責任を負うべき「国立社会保障・人口問題研究所」の人達)
 2人の記者が言う、「『子育てしやすい環境』を作ることが重要」、言い換えれば「現在の
子育てしにくい環境が少子化の原因」という主張には、何の根拠もありません。彼女達には、少子化という現象とその原因を、基礎的データを元にして、考察・検討する意思も能力も無いのかとあきれるばかりです。

 「制度を生かせず」と言っているのは、休暇制度のことなのでしょうか。
休暇が取れれば子供が増えると思っているのでしょうか。今が完璧とは言えなくても、一般的には20年、30年前に比べれば、格段に取りやすくなっている筈です。それでも少子化が進行・加速していると言うことは、休暇の取りやすさ云々は、少子化の進行とは関係ないと言うことです。
 
土木業にしたって同じ事が言えると思います。満点ではないにしても、昔に比べれば、着実に労働環境は改善しているはずです。ところが少子化は加速しているのです。
 もっと休暇を取りたいと言うのはもっともだとしても、そういう
自分の希望や意見を少子化に結びつけて訴えるというのは大きな誤りです。

3.
 32万人分の保育の受け皿確保と、幼児教育・保育の無償化に言及していますが、
大量の保育施設を造り、しかも無償化すると言うことは、時代遅れの「社会主義」の実現にはなっても少子化対策にはなりません。

 
英国スウェーデンを引き合いに出していますが、こういう思考回路が、今日まで何の効果も無い施策を少子化対策として、ダラダラと続けさせる元凶となったのではないでしょうか。
 彼ら(彼女ら)の考えることは、まず日本より
出生率が高い国(ただし先進国に限る)をピックアップします。次にその国と日本を比較して、日本が見劣りするデータを探し、多数ある同種のデータの中から、自分が都合が良いと思った項目をピックアップして、その項目を満たす(この例で言えば「家族関係社会支出」が国内総生産(GDP)に占める割合を3%にする)ことを少子化対策としての政策目標とするのです。

 これは極めて簡単な方法です。誰にでも出来そうです。しかし、それは
“環境が制度を生かせない”結果になりがちで、その場合は巨費を投じた少子化対策は空振りに終わる結果になります。そうなると彼女達は「環境を改善しろ」と主張するでしょう。それは、彼女達の主張に合わせて環境を変えろというのと同じではないでしょうか。長年それを続けてきた結果が、少子化対策の破綻、歯止めのかからない人口の減少です。

4.
 大日向雅美・恵泉女学園大学長は国の子育て支援の充実を論じ、「
有給休暇制度があっても気持ちよく使えない」と訴えていますが、それでも10年前、20年前と比べれば、取得率は上がっているはずです。それにも拘わらず、少子化が加速していると言うことは、休暇の取得は少子化とは関係ないと言う事にしかなりません。目的は少子化にブレーキを掛けることであって、休暇の取得促進ではありません。

 
大日学長は目的を見失っているか、はき違えていませんか。子育て支援は少子化対策にはならないと言うことが、まだ分からないのでしょうか。こういう女性が、大学学長の地位にあると言うことが、根本的で一番大きな問題なのです。ここにメスを入れることが必要・不可欠です。

 宮城県内に住む
英会話塾講師の女性(28)の例が紹介されていますが、この人の意見は結婚しない(出来ない)女性の代表的・典型的意見とは言えません。世の中にはこのような“例外的”な人がいることは否めませんが、このような人達が多数で、少子化の原因になっているとはとても考えられません。この1人の意見を根拠に議論を展開することは妥当とは言えません。

 このような
誤りを排除するためにも、未婚の男女を対象にした、大規模・継続的で慎重(通り一遍の質問では、なかなか本音は聞けません)な意識調査が必要不可欠です。

 更に大日向学長は「子どものうちから、
夫婦は互いに尊重し・・・」と言っていますが、この人は少子化問題に便乗して、別のことを主張しているのではないでしょうか。

5.
 
松田茂樹・中京大教授(社会学)の言うことは、総花的で論旨にまとまりがなく、少子化を改善する意思・意欲が疑われます。実際に少子化を改善するための発言とは思えません。こんな人が内閣府の少子化克服戦略会議の座長を務めているから、何の役にも立たない少子化対策で時間と費用を浪費するのです。

6.
 国立社会保障・人口問題研究所は、2019年の出生数の減少について、
「想定の範囲内」と言っていますが、想定していたのであれば、何らかの有効な対策を提案、実施したのでしょうか。想定していながら、何の有効な手も打たなかったのであれば、怠慢の誹りは免れません。

 また、少子化の原因として、「
未婚率の上昇、晩婚・晩産化」を挙げていますが、記事の最初の見出しで言っている、「待機児童対策」「育児と仕事の両立」支援策「子育てしやすい環境」は、いずれも含まれていません。何故でしょうか。彼(彼女)等らが言っていることは整理されておらず、考え方として説得力がありません。

 それでは彼らはなぜ、説得力に乏しい説明しか出来ないのでしょうか。
 彼等は
本当の原因を知っているのです。それにも関わらず、それを知らぬ振りして、この期に及んでも今までの主張を繰り返して、本当の原因には口を噤み、影響の少ない原因を挙げてごまかしているのです。

 彼等は長年その
誤った原因分析、少子化対策の熱心な提唱者・支持者であり、今になってその誤りを認めることは、自身の地位、職業に致命的な打撃となることを恐れているのです。
 彼等が死守しようとしているのは、男女の
分業(補完)・夫婦の役割分担を否定する男女共同参画社会の実現・維持であり、少子化の克服ではないのです。

 彼は偽りの少子化対策のために日本の人口がいかに減少しようと、またその為に子供達、孫達の世代がいかに困難・苦難に直面しようと、彼らは意に介することはない人達なのです。

7.
 「婚姻数そのものが減少傾向」とか、
「女性の数が減り続けている」と言っていますが、
何のためにこういう
指摘をするのでしょうか。まるで女性人口が減少したことが、少子化の原因とでも言いたいようですが、女性だけが減ったわけではありません。少子化の進行により、女性も男性も人口が減ったのです。男女の別はありません。紛らわしいことを言ってごまかすようなことを言うべきではありません。
 少子化の原因が
除去されなければ、悪循環が続き、人口減少は加速されるし、逆に除去されれば好循環が始まり、人口増加の継続が期待できると言うのは当たり前のことです。

 出産適齢期の女性の数が減り続けるのは、今までの少子化対策
(子育て支援)が全くの誤りであったからに他なりません。そしてそれは少子化の原因が未婚の増加である事を早期に認識し、未婚が増加した原因を調べ、適切な対策を講じていれば、決して避けられないことではなかったはずです。

 それにも拘わらず、誤りを
指摘されるの回避することだけを考えて、「冷静であるべき」と主張し、議論回避することだけを考えて、「・・・しかない」と言うのは、卑劣・無責任の塊のような記事と言わざるを得ません。

令和元年12月29日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ