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◆2001年の心に残ったもの◆

 2001年を思い返した時、すぐに私の頭に浮かんできた、書き残しておきたかったものです。


★BOOK★

・<国内>恩田陸 「光の帝国 常野物語」・

 遅れ馳せながら、私にとって2001年が恩田元年でございました。 と言っても、文庫化されているものしかまだ読んでいないのですが、今のところ 一番好きなのはこの本です。
 彼女はかなりのストリーテイラーです。そして、「しまっておく」「虫干し」といった普通の言葉が彼女にかかると、魔法がかかったように意味を持ち、命を持つ言葉に変化します。常野一族の話しは、サリンジャーのグラース一家の話しのように、恐らくこれから彼女が書くものに度々登場して行くのだと思うので、それを探す楽しみもあります。
 尚、NHKドラマでやっていた「光の帝国」はこれが原作ですが、ほとんど別物です。

・<翻訳>ダレン・シャン「ダレンシャン」シリーズ・

 ハリー・ポッターの3作目とどっちにしようか悩んだのですが、2001年に出会った本という意味でダレンにしました。
 ハリーの3作目は1、2巻の複線が生きていて、驚きの連続!ローリングは凄い!と絶賛してしまいましたし、お気に入りのシリウス・ブラックなんていうキャラクターも登場してベストに選びたいのは山々だったのですが、これから長いシリーズになるので長〜い付き合いになるであろう「ダレンシャン」に出会った記念の年という意味で、やっぱりダレンになりました。(長い前置き)

 選んだ理由は、読み出したら止まらないという現象が全てを物語っているでしょう。これもハリーと同じくワーナーが映画化権を獲得しているらしいのですが、うーん。どうでしょう。映像化は難しいような。「シルク・ド・フリーク」(奇怪なサーカスと言っていますが、一種の見世物小屋)が話しのベースになってるだけに、子供も観られるものにするのは結構難しいと思います。大手出版社が手がけているので、結構スピーディーに翻訳が出ているので、2002年も楽しめそうです。

★MUSIC CD★

・スティング 「All This Time」・

 HMVの視聴コーナーで見つけ、「今までのベストをそのままではなく新しくアレンジしなおし、更にライブ盤にしている」というコメントを読み一曲聴いた後、レジに直行していました。

 スティングは前から好きなアーティスト、しかも私の好きな「Nothing Like the Sun」「The Dream of the Blue Turtles 」の頃のナンバーが多い上にアコースティックとくれば、もう迷うことなく買いです!そして、その渋さといったら。後にこのライブをNHKBSで放送してくれましたが、本当に大人の楽しみという感じで、トスカーナの影像も美しく、とても良かったです。

 彼のイタリアの家(といっても、お城)の庭に会場を作って、招待客だけを入れたプライベートライブだったのですが、なんとこの日は2001年9月11日でした。
 ライブの前にNYテロのニュースが入ってきて、かなりスティング自身ショックを受けてのスタートだったそうです。でも、彼特有のハスキーヴォイスと味のある歌声と脇を固めるプロのミュージシャン達の音は素晴らしく、永久保存盤と言うべきアルバムに仕上がっています。今年のベストで、しかも繰り返し聴いていくであろう一枚です。

・サントラ「ムーラン・ルージュ」・

 今年聴いたサントラでは「白猫黒猫」も甲乙つけがたかったのですが、やっぱり ムーラン・ルージュ」。このクオリティの高いサントラは、やはり今年の一番でしょ う。

 U2、デビッド・ボウイ、ファット・ボーイ・スリムといった豪華なメンバーに ニコール・キッドマンとユアン・マクレガーの歌。この歌がまた味があって良かった です。見事で斬新な編曲と多国籍な音。クラブミュージックからオーソドックスなラ ブソングまで、映画そのままに独特なテンションで構成されているのですが、何度聴 いても飽きないという不思議な一枚です。一言で言うなら、使い古されていますが It's so Cool!」でしょか。

 余談ですが、好きな人は多いみたいで「白猫黒猫」も「ムーランルージュ」も良くテレビのBGMで使われています。

★MOVIE★

・<邦画> 千と千尋の神隠し・

 まだ観ていない人に会うと、必ず劇場で観て!と薦めている映画です。宮崎作品で 一番好きな作品になりました。神様の船が着く時の美しさが、未だに目に焼き付いて います。

 日本人が忘れてしまった大切なことが、説教くさくなく描かれていて、鑑賞後観て良かったという充実感に満たされた作品です。この素晴らしい映画が日本の作品であることに、深い喜びを感じました。

・<洋画> リトル・ダンサー・

 やっぱり私にとって2001年はこれでしょう。劇場で2度観ましたが、2回観ても新鮮でした。

 ダンスシーンもさる事ながら、ジェイミー・ベル扮するビリーが母親の手紙 を読む時に見せた顔が忘れられません。これからが本当に楽しみな俳優です。楽しみ といえば、マイケル役のステュアー・ウェルズも気に入っていたのですが、彼は英国 軍に入隊してしまったそうです。このニュースには驚かされました。
 最後の最後にほ んの数分出演し、跳んだだけなのに強烈なインパクトを残したアダム・クーパーに、 改めて凄い存在感だと驚かされた作品でした。

★PLAY★

・フォッシー・

 2000年に既に一度ウェストエンドで観ているのですが、ブロードウェイ版が観たいと2度来日公演に通いました。9月11日のテロの後の公演です。

 日本公演の最終日、これで本国に帰れるという最後の舞台はいつまでも心に残る舞台となりました。全員がニューヨーカーであろう出演者達は日本でテロのニュースを聞き、それでも頑張って公演を続けたのです。
 最後の最後まで彼らは力強く歌い、踊り、力の限り舞台をつとめました。天才ボブ・フォッシーへのイマージュというこの作品。作品の素晴らしさは既に知っていましたが、ウェストエンドよりも、前日に見た同じ舞台よりも、最終日は一つ一つに彼らの魂がこもっていて感動の連続でした。

 公演前に劇場から渡された一枚の手紙には、彼らがテロの後辛い思いを胸に公演を続けた事、ぜひ盛大な拍手を贈って欲しいという事が書かれていました。でも、そう言われるまでもなく、我々は盛大な拍手で彼らの素晴らしさを賞賛していました。

 最後はスタンディングで会場中が盛りあがり、スタッフも勢ぞろいし、舞台上ではビッグハグしながら涙する人も居てこの日、この時会場は感動に包まれました。その場に居合わせた幸せに感謝しています。


<December>

BOOK・アブダラと空飛ぶ絨毯/BOOK・ダレンシャン3/MOVIE・シュレック

BOOK・快読シェイクスピア/BOOK・魔法使いハウルと火の悪魔/MOVIE・ハリーポッター


◆12月24日◆BOOK◆『アブダラと空飛ぶ絨毯』
ダイアナ・ウィン・ジョーンズ著 徳間書店 1600円(税抜き)◆

 「ハウルの動く城-2-」にシリーズ一作目で活躍したハウルが出てくるという情報を得て、絶対読まなきゃというミーハーな感覚で読み出したのですが、これが進まない・・・
 それはきっと「アラジンと魔法のランプ」&「魔法の絨毯」の焼き直しみたいだから。どうも前作が良かっただけに、二番煎じの辛さというか悪いところが目立って。それに、アブダラのやたらにバカっ丁寧な物言いがいらいらくるっ!そして、独創性に欠けるのです。
 まあ、最終的に再び本で出会いたい!と思っていたキャラクター達が出てきたので、よしとしましょう。でも、お薦めはいたしません。最後に、スタジオジブリによる「ハウル」の公開が2003年にのびたそうです。


◆12月21日◆BOOK◆
『ダレン・シャン 3・バンパイア・クリスマス』
ダレン・シャン著 小学館 1600円(税別)◆

 バンパイアものは沢山あれど、他と一線を画すダレンシャン。3巻目の「バンパイアクリスマス」は更にハートフルな趣でした。クレプスリーとはより信頼関係が深まり、エブラとは友情の絆が太くなり、更に今回ダレンは初恋までしてしまうのです。
そして、前作で謎になっていたバンパイア将軍の謎が解け、更にダレンの世界ではバ ンパイアとバンパニーズが居ることが分かりました。って、実在しているわけじゃな くあくまでも作者の創作なんだけど(笑)

 それにしても、あえて突っ込みを入れさせてもらうなら、巻を追うごとにクレプスリーが優しくて思慮深いバンパイアになってるんですけど。これだけ思慮深かったら、子供をバンパイアにしちゃうなんて事にはならなかったよねぇって、それじゃあ話しになんないんだけど。
でも明かに初巻からどんどんクレプスリーはかっこよく、愛されるキャラクターへ変貌を遂げてらっしゃいます。書いてるうちに、作者も愛着がも のすごく沸いてきたって事かしら。

 好意的な見方をすると、ダレンをきっかけにクレプスリーがどんどんいい影響を受けて変わってきているになるんでしょうけど、でもちょっと違うみたいだっていうのが、3巻では書かれているし・・・だって、彼は尊敬すべきバンパイアだというような事をバンパイア将軍が言ってるんだもん。

 とにかく、今回も読み出したら止まらず、1日読破コースでした。春発売予定の4巻目が楽しみです。


◆12月17日◆MOVIE◆シュレック◆

 実は余り期待していなかったのですが、予想外に面白かったのが「シュレック」で した。
ドリームワークスとはいえ、ただのCGアニメだとばかにしてはいけません。これがな かなかハートのある話しなのです。しかも、アンチ・ディズニー派には答えられない 、いや、笑いの止まらない作品です。

 随所にちりばめられたディズニーのパロディー。もう、最初から飛ばしてくれます。
 まずはディズニーの「美女と野獣」をおちょくる所からスタート。あっちはなぜ王子 が野獣にされてしまったのか、ステンドグラスの絵とナレーションで説明するところ から始りますが、こっちはオーソドックスな王子様がお姫様を助けるという絵本とナ レーションで始ります。でも、ここからが凄い。めでたし、めでたしという結末の ページをいきなり笑い飛ばしながら引きちぎり、トイレの紙に使ってすっきりさわや かにトイレから出てくるシュレック。
 続く画面はディズニーの世界とは無縁のもの。 シュレックが歩いた泥の中からキャストの名前が出て来たり、木の中の虫が文字にな ったり、シュレックの水浴びならぬ泥浴びが、泥よりももっと汚いものに見えたりと 、とにかく型破り。この緑色の怪物シュレックがこの映画のヒーローというのもまた 型破り。

 ヒーローが居るからには、もちろん悪役も登場します。シュレックの悪役はフォークアード卿。
 この御伽噺の登場人物達を捕らえてまわるファークアード卿は顔のみならず、チビなところもディズニーの会長そっくりだそうで、彼の住む城はディズニーランドのごとき場所。
入り口には大きな顔の被り物を被った門番がいて、誰も待っていないキューライン(順番待ち用通路)のポールとロープの前に立っています。御伽噺の世界から追い出された登場人物達を元の世界に戻すべく立ち上がったというより、自分の住まいに大勢押し寄せて来て困ったので話しをつけにきたシュレックと、勝手にお供になったドンキーが来た途端、バカみたいに誰も居ないキューラインをぐるぐるまわって城内へ逃げて行くのですが(空いているテーマパークのアトラクションに行った事のある人には実感してもらえると思いますが)この姿ってとってもバカバカしい。
だって直線距離にしたらすぐのところをロープをはってぐねぐねやって遠回りさせているだけなんだもん。それをバカにするかのようにロープとポールをなぎ倒して直進し、ターンスタイルもガンっと通り抜けるシュレック。入った途端インフォメーションデスクに向かうと、出てきたのは「イッツ・ア・スモール・ワールド」のパロディー。
 写真まで撮ってくれて薄ら寒い明るさをかもし出しながら、ファークアード卿ワールドは素晴らしい場所だと紹介する人形たち。そして一方的にバタンと扉が閉まってはいおしまい。
ここは作り笑いを貼りつけた、ろくでもない人工的な世界だと思いきり皮肉ってま す。

 どこまでもずるいファークアード卿に、御伽の国の登場人物達を元の世界に戻したいのなら、自分の妃にする予定の、竜の居る城に閉じ込められたフィオナ姫を連れ帰れと言われ、早速出発するシュレック。
 この人任せなお姫様救出劇もお約束外。 そして、辿りついた先に出てくる竜もキュートでお約束外!更にお城で王子様が来るのを待っていた逞しいフィオナ姫もお約束外!外見はかけ離れているのですが、観客にとってシュレックとフィオナは、とってもお似合いのカップルに見えてくるという、見た目の醜と美のカップリングというもの、お約束外!でも心はお互いに美しいのです。

 ディズニーのパロディーは更に続き、途中登場するロビンフットにくっついてく るタッグ牧師がブランコの上でアコーディオンを弾いているのは、「カントリーベアージャンボリー」。
何が何のパロディーなのか分かってしまう私も結構マニアかしらと思いつつ、あちこちで笑ってしまいます。恐らく私以上のマニアが見れば、もっとパロってるのでしょう。

 最後の最後、竜がばっくんといっちゃうのはジュラシックパークのTレックスしてて笑えるし、お話しの結末もディズニーでは絶対っ!!!に有り得ない展開でまたまた心がほっこりしてしまいます。

 とにかく、ディズニーに対するある種剥き出しのおちょくりがちりばめられているものの、見た目の印象と違い、とても心温まる、結構ロマンチックで見て良かった というお話しでした。
 美男美女が必ず幸せになるというディズニーのお話しに、ちょっぴり疑問を感じる方にはおすすめの作品です。そうそう。音楽も良かったです。


◆12月12日◆BOOK◆『快読シェイクスピア』
河合隼雄×松岡和子著 新潮文庫 400円(税抜き)◆

 題名だけはよーく知っているけど、ちゃんと戯曲を読んだ事はないものの筆頭が、私にとってはシェイクスピアです。気になる存在なのに、未だ接近を試みてないなぁと常に宿題をやりのこしている気分になっている中、書店で平積みされたこの文庫本を見つけました。
 「快読」というぐらいなのだから、絶対面白いに違いない。その単純な発想と400円という価格が私の背中を押し、この本を家につれて帰りました。

 さて、内容はと申しますと、翻訳家と心理療法家のシェークスピア談義でございま す。ジュリエットは14歳だった。ハムレットは30歳で太っていたなどなど。結構意外でしょ?このような設定を心理学から見るとどうなのか?!というような事が話題の中心なのですが、これが素晴らしく説得力のある設定なんだそうです。
真夏の夜の夢にしても、シェークスピアは良く「夢」というものが分かっていたと河合さんは誉めてらっしゃいます。読めば読むほど、原作を読んでみなくちゃと思わされると同時に、原作をほとんど知らなくても読めてしまうこの一冊。
 こう一貫してシェイクスピアは人間の精神状態を良く把握していると書かれてしまうと、シェイクスピアはその書簡が残っていない事からして実在していないだとか、フランシス・ベーコンあたりが 使っていたペンネームだったとか、複数の人間が生み出した架空の人物だった とか沢山ある諸説を一蹴にしてしまいたくなってしまいます。

 ヨーロッパの森は平らであるから真夏の夜の夢のような物語が成り立つ、 翻訳するときに英語では「Brother」とだけある事が多く兄なのか弟なのか翻訳する 時に困ってしまう、などあちこち頷くことだらけという事も含めて、興味深い本でし た。


◆12月6日◆BOOK◆『魔法使いハウルと火の悪魔―空中の城』
ダイアナ・ウィン・ジョーンズ著 徳間書店 1600円(税抜き)◆

 イギリスではとても有名な作家だそうですが、日本では来年ブレイクするかな?というダイアナ・ジョーンズ。なぜ来年ブレイクするかというと、2002年に「魔法使いハウルと火の悪魔」原作でスタジオジブリのアニメ映画「ハウル」が公開されるからです。

 3人姉妹の長女ソフィー・ハッターはしっかり者なのに「長女だから」といつも諦 めモードの女の子。父親が継母と姉妹を残して亡くなった後、一人残って継母と家業 の帽子屋を継ぎます。ところが、「荒地の魔女」が現れて、ティーンエイジャーのソ フィーを90歳のおばあさんにかえてしまうのです。というのが、事の起こり。
この 後家族に自分の変わり果てた姿を見せて心配させるぐらいなら家を出ようと思ったソ フィーが辿りついたのが、プレイボーイの悪名高い魔法使いハウルが住む空飛ぶ城。 とにかく、私はわがままなのに結構懐の深い美形の魔法使いハウルが気に入ってしま いました。
とにかくおしゃれで、めちゃくちゃなのに、いい奴なのです。そして他の 登場人物も皆愛すべき人たちばかり。ハウルの弟子マイケルもかわいいし、火の悪魔 カルシファーも愛すべきキャラクター。

 随所に有名な物語のパロディーを折り込みながら、受身な女性ではなく、自立した女 性が活躍するという独自の世界を展開していくダイアナの物語。ぜひジブリの作品が 発表される前にどうぞ。


◆12月1日◆MOVIE◆ハリー・ポッター 賢者の石◆

 鳴り物入りで日本に上陸した映画版ハリー・ポッター。流行ものには余り興味のない私ですが、原作ファンであるが為にいつになく騒ぎ立て、何と初日に観に行ってしまいました。
お昼に一度チケットを購入して帰り、夕方再度上映1時間前に並ぶという努力の末、見て参りました。

 さて、その感想はと申しますと、「カタログのような映画」で「私がもう一度劇場に足を運ぶことはない」というものでした。
キャスティングは、もうパーフェクトに近いと思います。想像していた通りのアクタ ーが見事に揃っています。奇跡的だとすら言ってもいいぐらいです。そして、次々に 実写で観たいと思っていた影像がスクリーンに登場するのも、とても心踊る光景です 。でも、何かが違う・・・
僭越ながら、この映画がなぜこうなったかを私めが考えてみたいと思います。

  まず、あの長い原作を2時間半という時間に押しこめようとしたのが無理だった。そ うなのです。原作に忠実に、忠実に影像化するのなら映画ではなく連続物のドラマに するべきです。映画にするなら、時間が許すかぎり原作のエピソードを網羅しようと するのではなく、もう少し焦点をしぼる、エピソードをもっと捨てる作業が必要だっ たと思います。
聞くところによると、この映画は箒の色まで原作者にお伺いをたてて 作られたそうですので、それが枷になってしまって映画作品としてのバランスを失っ たのではないでしょうか。

 次に、CGについて。時間がなかったのかもしれませんが、今の技術ならもう少し 上手く出来るはずです。特にクイディチの競技場は見るからにCGしていました。描 かれた絵の中にハリーが立っているように見えてしまうのです。スニッチはいい感じ だったのに。

 ところで、見せ場の一つクイディチですが、私にはとっても暴力的に見えてしまいま した。想像よりスピードがあったという事と関係しているのだと思うのですが、楽し いシーンというよりは猛スピードで画面の中を掛け抜けつつ激しくぶつかり合う・・ ・スターウォーズエピソード1のポットレースを連想したのは私だけでしょうか。

 次にキャスティングの中で一つだけ。ウィーズリー家の末っ子ロン。彼が、どうも こ う気になるのです。容姿はぴったりなのだと思うのですが、どうも末っ子に見えない 。これは重要な事だと思います。
ロンのキャラクターは末っ子特有の甘えん坊で、ぐずぐず、もたもた、結構不器用で 、子供らしくとってもピュアというものだと思うのですが、ロン役のルパート・グリ ントはロンを 演じるにはしっかりしすぎているような印象を受けました。意地悪な言い方をすれば 、彼の目、表情は結構計算しているように見えなくもない。
 一方ハリーとハーマイオニーはイメージ通りでした。それぞれのキャラクターにフィットしています。でも、演技力が試されるような脚本ではないので、彼らの実力のほどはいまいち分からないというのが正直な感想です。

 そして、気になったのは映画全体のカラーです。特に学校内ですが、ちょっと照明 が明るすぎるような・・・
不思議な空間を生み出すには、全てが明かになりすぎていると思いました。セピアカラーとまではいかなくても、もっと暗い方があらも目立たなかったと思います。

 最後に、驚くほど都合のいいお話しになってしまっているというのが、一番の欠点 ではないでしょうか。
別にこれは映画の脚本が特別そうだというのではなく、原作通りの展開なのですが、長い話しにちりばめられた「いつもハリーにとって良い方向に話しが進んでいく」展開が短い話しに挿入されていくと、とっても調子のいい話しに見えてしまったというのが私の正直な感想です。自分のペースで、ゆっくりと物語を読み、それなりの紆余曲折の末にいい結果がもたらされると、「ハリー、良かったねぇ」と素直に喜べるのですが、時間のない映画になると、結果がすぐ出てきてしまうので、とってもご都合主義に見えてしまいました。

 他にも「賢者の石」が結構ちゃちだった(笑)とか、マギー・スミス扮するマクゴ ナガル先生がテスト監督をしている時に猫に変身して見張っている意味はあるのか ただ単にCGを使いたかっただけなのか)とか(笑)、行き先がどんどん変わる気ま まな階段は宇宙ステーションのジョイント切り替えにしか見えなかった(笑)とか、チェスのシーンが「殺戮のチェスゲーム(Byダン・シモンズ)」を連想させたとか、 色々思うところはあるのですが、とにかく、これだけ人気のある物語を映画化するの は非常に難しく、プレッシャーも強く、どれだけ上手く作っても私のような人間にあ ーだこーだ言われてしまう宿命を持っているのだと思います。

 結論を言うと、どんな作品が出来上がったにせよ、原作を読んだ人間にはそれぞれ の「ハリー・ポッター像」があり、全ての人が満足するという事は言うまでもなく不 可能です。
その辛い状況の中で、皆が見てみたいと思っているシーンを次々に実現することに徹したというのは賢い選択だったと思います。しかし、この映画は魔法の話しであるのに、映画自体には魔法がかかっていない。もしこの映画に魔法がかかっていたのなら、確実にリピーターを確保出来、興行収益も予想通り歴史に残るほどに伸びたのではないでしょうか。

 とにかく、原作で一番短い話の「賢者の石」は駆け足で物語をざっとなめたような 作品になりました。今後、原作はますます長く、盛りだくさんになっていきます。そ れをどう料理していくのか。映画製作スタッフにとっては、頭の痛い日々が続くこと でしょう。
でも、やっぱり私は2作目の「秘密の部屋」も劇場に見に行ってしまうのだろうなぁ ・・・
でも、ロックハート役がケネス・ブラナーという噂を聞くと、今度はキャスティング も・・・いや、現時点では何も言うまい(笑)


<November>

BOOK・最悪のはじまり/MOVIE・ムーランルージュ

BOOK・西洋骨董洋菓子店3/BOOK・カモメに飛ぶことを教えた猫/MUSIC・アイーダ


◆11月25日◆BOOK◆『最悪のはじまり』レモニー・スニケット著 草思社 1300円(税抜き)◆

 アメリカではハリーポッターと並ぶ超人気シリーズ!という言葉にだまされて(お や、失礼)読んでみたのですが、「最悪のはじまり」は私にとっては最悪の「終わり」。シリーズ第一巻が私にはシリーズ完結編になってしまいました。

そうそう当たりばかりじゃないのが世の中というもの。でも、子供向けなのに結構内容は大人向けともとれたりして。
随所に出てくる「目のマーク」はどう考えても「フリーメイソン」だし。どうもこう 、私の波長とは合いませんでした。以上!


◆11月17日◆MOVIE◆ムーラン・ルージュ◆

 某テレビ局の全米映画Box Officeベスト10でこの映画の「Can can」を耳 にし、映像を見た瞬間に、これは絶対に買いだっ!と確信してサントラを入手すべく HMVに駆けこみました。

 これが、とにかく面白い!デヴィッド・ボウイ、U2、ファットボーイスリム、そし て主演のニコールとユアンの歌声。これぞ女優の歌というニコールの声はとってもキ ュート。その昔太りすぎのイギー・ポップと言われた映画「ベルベットゴールドマイ ン」で叫んでいたのとは別人の、ちゃんとヴォイストレーニングを受けた伸びのある ユアンの声もなかなか様になっています。そして、「Lady marmalade」がとっても かっこいいっ!
てな訳で、それからというもの、すっかりはまって秋の間ずっとサン トラを聴きつづけ、漸く迎えた映画の初日。当然の事ながら期待が高まります。

 思ったよりも入りの悪い劇場が暗くなり、始まった途端、アンティークなどこぞのオペラハウス風というより、ムーラン・ルージュの時代の劇場風赤い緞帳の前に、これまたクラシカルな指揮者が登場。そして、タクトを振り始めた途端出てきた音は、聞きなれた20世紀フォックスのテーマ。もう、この時点で、「やられたっ!!」としびれてしまいました。

 スクリーンの中の幕が開くと、そこはバズ・ラーマンワールド。彼のイメージでデフ ォルメされた独特の縮尺で形成されている街が広がっています。奥に見えるはモンマ ルトル。見方によってはモン・サンミッシェル風寺院にも見えなくもない小高い丘、 モンマルトル。そしてその象徴であるムーラン・ルージュの風車。
めまぐるしいカッ ト割りで我々は既にアブサンで酔った気分に突き落とされます。現に田舎から出てき たユアン・マクレガー演じる詩人は、早速ロートレックたちに出会ってアブサンの洗 礼を受け、世の中がちっかちかに輝いて見えるようになり、それを境に退廃の街にど っぷり漬かっていくのです。

 この時のアブサンのボトルのラベルに描かれた美女が宙を舞い、にっこりと飲んだ者に微笑みかけるという映像は、映画「赤い風車」や「太陽と月に背いて」なんかと比べると、もう比較出来ないほどにポップでライト、とーってもあっかる〜くて憂いなんて、かけらもございません。チープでゴージャスな影像が画面一杯に広がります。
この映画についていけるか、ついていけないか、楽しめるか楽しめないかはこの時点で決まるのかもしれません。

 そこから繰り広げられるのは、電飾の、音楽の、そして感情の嵐! いえ「私が好きなもの!Byバズ・ラーマン」な世界。
いやあ、ここまでどきっぱり と、潔くゴージャスをやってもらうと、もう、気持ちがいい!あんたは凄いよ、バズ !!普通の神経の持ち主じゃあ、もし大穴開けたらどうしよう・・・と怖くて作れな い類の映画だもんね。

 彼の作品の必要不可欠なエレメントは、派手なネオン、若いカップル、ダンスホール、座席の中央にある通路、派手な衣装に踊り、そして音楽だと私は思っているのですが、今回は前2作(「ダンシング・ヒーロー」と「ロミオ&ジュリエット」)より更にパワーアップしていました。

 ベースになっている物語は、オペラ「ラ・ボエーム」と「椿姫」をミックスしたよう なもの。でも観客はニコールの美しさ、ユアンの初々しさ、ピュアな恋愛物語と芸達 者な脇役、そしてバズの音楽と踊りへの愛情と独特の影像美に目を奪われて、そんな シンプルでありきたりなストーリーである事なんか忘れてしまうのです。

 次々に繰り出される音楽を聴き、オーソドックスなミュージカルの形式を見るたびに、「この人(監督)、本当にミュージカル好きなのね〜。うーん、マニア」と唸らされてしまいます。

 それにしても、この作品で改めて気づかされたのは、歌の力。クイーンの「The show must go on」がいいのは前から分かっていましたが、とにかく、エルトン・ジョンの「Your song」が素晴らしい!今までなぜあんなにも人気があるのか、いまいち理解しがたかったエルトン・ジョンの素晴らしさが、この度よーく分かりました。本人以外が歌うといい歌なんだ、これが。と書くとファンに殺されそうね。(笑)

 この映画で唯一の本格的ダンスシーンと言えるスティングのロクサーヌも凄みがあって印象的。そして、マドンナの「Like a virgin」が強烈。そしてそして、 エレファントルームの上で歌う、この映画の為に編曲されたユアンとニコールのデュ エットが秀逸なのです。「Elephant love medley」。この曲、ビートルズに始り、 キッス、フィル・コリンズ、U2、デビッド・ボウイなどを駆け巡りながら、映画「ボ ディーガード」でホイットニー・ヒューストンが歌ってヒットした「I will always love you」で終わるという、もう豪華絢爛無敵のラブソングなのです。
監督自ら各アーティストに使用許可を頼んで周った努力の結集です。もう、開けてびっくりバズのおもちゃ箱。撮影中はさぞかし楽しかった事でしょう。

 ただ残念だったのは、ムーランルージュのダンスホールシーン。もっとゆっくり、じ っくり見たい!と思ったのは私だけではないはず。あれだけ一人一人の踊り子に凝っ た衣装を着せ、エキストラも揃えたのにあっという間に終わってしまうのです。
一人一人の衣装をもっとゆっくり見たい!ひきで映して欲しい!と思ってしまうほど、カメラは寄っていました。だから、スカート、足、胸といった部分部分が大写しになり、あっという間にそのシーンは去っていくのです。
あれだけ揃えてこれだけしかスク リーンに残していないという、とっても贅沢な映画。まあ、それでも2時間10分 の映画なので、捨て所を知っている監督と編集がプロとして行った結果だったと思い ますが、映画とは別にメーキングオブかなにかで一度じっくりと見せてもらいたいシ ーンでした。DVD発売時には、ぜひぜひその場面を見せて欲しいものです。

 後、私と同じ時に映画を見た他のお客さんに一言。ニコールとユアンが初めてエレフ ァントの部屋に入るシーン。あれは笑いどころだと思うのだけど、なぜゆえあれほど 静まりかえっていたの?自国で軽いカルチャーショックというか、笑いの相違を感じ てしまいました。

 何はともあれ、ロマンチックな恋愛物が見た〜いっ!と思って入った人には、「な、何これ?!」という映画かもしれませんが(実際映画が始って少したつと出て行く人がいた。そして、寝てる人も居た)、バズの世界が好き〜っ!ミュージカル好き!派手なの好き〜っ!ゲイカルチャー好き〜っ!(そうそう。ドキュメントでやっていた故フレディー・マーキュリーのパーティーと、驚くほど似ていました。バズもカミングアウトしているそうです)のどれかに当てはまる人にはお薦めの、全部あてはまっちゃう人にはもう、こたえられない映画です。ぜひお試しあれ。


◆11月10日◆BOOK◆『西洋骨董洋菓子店3』よしなが ふみ著
新書館  520円(税抜き)◆

 待望の3巻目は、徐々に橘、小野、千影の過去が少しづつ明かになる・・・という事で、楽しめました。
 しっかし、小野の先生、ジャンはフランス人に見えな〜いっ。別にいいんだけど。彼女の描くフランスものでは全員がフランス人なので気にならないんだけど、日本人の中にフランス人が一人登場という設定になると気になるの〜っ 笑)比較、差異の問題ですな。
 そうそう。ちーちゃんとただならぬ関係にある(こう書くと思わせぶり)でこちゃんはかわいいです。女子アナの描き方も笑える〜。よしながさんの目って相変わらず面白いです。

 自分自身を大切に出来ない小野、何でも出来るがどこか欠落している部分があると自覚している橘、そして何も出来ない自分をかわいそうなぐらい知っている千影。 これから彼らがどう変化していくのか、しないのか。橘の失われた1ヶ月には何が あったのか。これからも目が離せません。
現在月曜日に放送中のドラマは11回シリーズで、結末は原作と全く違うものにするそうです。

 原作者のよしながさんと、ドラマのケーキを作っているパティシエの対談を読みたい人は、ここをクリック!これは要チェックです。

 ところで、この本の1、2巻を紹介したFeelingNoteで「一人のお客にこれだけ時間をさけるお店って暇?」と書きましたが、現在ドラマのアンティークは赤字経営だそうです。当たっちゃったわ〜っ。
 最後に。生クリームもチョコレートも苦手な私は、焼き菓子系の素朴なエイジのケーキがとってもおいしそうにみえるのでした。


◆11月9日◆BOOK◆
『カモメに飛ぶことを教えた猫』ルイス セプルベダ 著 白水社 1500円◆

 群れからはぐれてしまった身重のカモメが、とある港町のオスの黒猫ゾルバに自分 の卵を託して亡くなります。カモメが死ぬ前にとゾルバが交わした3つの約束。それ は、卵をかえすこと。食べないこと。そして、ヒナに飛ぶことを教えることでした。

この本はヨーロッパで大ベストセラーになりました。とにかく洒落たいい話しです。猫好きな人はより猫好きに、そうでない人も、猫ってもしかしたらとっても魅力的なのかもしれないと感じることでしょう。子供から大人まで幅広く楽しめる、勇気と優しさ、愛情を描いた一冊なのです。

 多くを語る必要はありません。とにかく読めば、この本がきっと好きになるはず。 ところどころに入る牧かほりさんのイラスト。その味のある絵が、この本を更に 素敵にしています。


◆11月2日◆MUSIC◆プラハ国立歌劇場 オペラ「アイーダ」@フェスティバルホール◆

 大掛かりなセット。会場に響き渡る合唱とオーケストラ。そして、甘い歌声。全てがゴージャス!という舞台を夢見てウィーン国立歌劇場のアイーダを予約したにもかかわらず、9月のテロの影響で旅行そのものが流れてしまった今、希望はホセ・クーラの出演するアイーダだけ!よくぞチケットを買っていた事だったわっ!!という訳で、ウィーンでオペラ4本予約完了時には、
「日本に帰ってきたらまたアイーダか。ウィーンと比較して、大した事ないわねっとか、ちょっとがっかりくるんだろうなぁ」
と一時嫌味な理由でテンションが下がっていたのですが、ウィーン旅行が夢と消えた 後、私は別人に生まれ変わってその日を迎えました。

 と、長い前置きはさておき、1998年のボローニャの引越し公演以来のホセ・クーラ(テナー)の歌を聴いてきました。
98年当時、「期待の新人!」で「ポスト3大テノール」で「ウィーンのマダムがメロ メロな甘いマスク」だったクーラ。彼の公演ではいつも黄色い歓声が付いてまわると 言われ(本当か?)一部ではいい気になっているとも言われていた(私の意見ではご ざいません)クーラは今、どうなっているのか?!というのが今回の一番の注目でし た。

 まあ、引越し公演だからねという諦めのもと、こざっぱりとしたセットを眺めながらのスタート。そして、当然のことながらすぐにラダメス役のクーラが登場。
髪を後ろで束ね、たっぷりとした布地を身に着けています。うーん。ちょっとというか、前に比べるとかなり恰幅が良くなったような・・・しかも、結構ふけた?(笑) と外観チェックをしている私に関係なく舞台は進行し、彼の声が会場に響き渡りまし た。

 残念ながら、ものすごく感動的!ではありませんが、ボリュームがあり、安定し ていていい声。体格が良くなった分、安定度が増したような。今日ここに来てよかっ たと安堵します。そう、今はどうだか知りませんが、かつて彼は結構ムラのある歌手 だったのです。
 音をはずす事もなく「清きアイーダ」が終わり、満足した観客から盛大な拍手と声援が起こりました。やっぱり一流といわれる歌手のいいところは、コンスタントに歌える事よね〜と満足げにうなずいてしまいます。

 失礼ながら、余り期待していなかったアイーダもアムネリスもそれなりの響きがあり、こっちも満足。
 アイーダは出ずっぱりなだけに体力のペース配分をしているらしく、無駄な動きはしない事に徹しています。そこが気になる人もいたかもしれませんが、最後の最後までとにかく歌声に疲れが全面には出てこなかったので、彼女なりに考えた演じ方は成功していました。
 アイーダとどっちが主役?というほど見せ場が多いアムネリスも、多少の揺らぎはあるものの、ちゃんと声は響いています。

 さて「清きアイーダ」の後一度引っ込んだ注目のクーラが再度登場。ここで、驚くべき事実が発覚!!先ほどはオールバックにして後ろで髪をくくっていたので目立たなかったのですが、髪をほどいて出てくると、
「あっ!分け目というか、てっぺんがっ!!!」
ぎょっとなったのは私だけでなく、隣の席に座った友達も同じだったようで、
「か、髪が、う、うすい・・・」
芸術とはまーったく関係ないところで、衝撃を受けてしまいました。
「いや、遠目だから」
「いや、遠目でこうなんだから、やっぱり見間違いじゃない・・・本物よ」
という会話を幕間に交わす私達。でも、歌を聴きにきたんだから!とこくこくとうなづきあいます。もちろん、顔はこらえきれない笑いを浮かべながら。

 ヴェルディの中でも人気の演目だけあって、どの曲も魅力的で、耳に馴染んだ曲ば かり。ところが、2幕目に馴染みのないものが出没!それはオペラにお約束のバレエ シーンでの出来事でした。
 奴隷達が踊るシーンがアイーダには必ず出てくるのですが、この舞台では未だかつて誰も観たこともないような踊りを披露してくれたのです。 それは、茶色いくるくるパーマの鬘をつけ、露出度の高いビキニのような格好をした 女性ダンサー2人でした。

 2人でアムネリスを挟んで左右同じ動きをするメインダンサーなのですが、この振付が、もう、凄いのですっ!!バレエのはずなのに、踊っているのはエアロビのような、コンテンポラリーのような、昔のハリウッド映画が想像するアフリカの原住民が輪になって踊ってそうな踊り・・・
 陽気に飛びはねたかと思うと、バターンっと凄まじく倒れては起きあがる。変なステップを踏み飛び跳ねてはまたバターンと音がするほど勢い良く倒れて起きあがる・・・しかも、かなり露出度が高いせいで、変なお色気路線のようにも見えるのです。飛び跳ねながらステップを踏むその姿は、「いちにっ、さんしっ」とお互いに掛け声をかけているようで、しかもその声は絶対にタイムボカーンシリーズのムージョ様風(あっ、歳がばれた?)なのです!

 その繰り返しを見ているうちに、私の笑いのつぼが、また、ぎゅーっと押され始めました。
お、おかしい・・・肩が震えて来ました。静かな客席で笑っちゃいけないと思うと、 余計におかしくなるのは常で、しかもそれに拍車をかける空想が頭の中を掛けぬけま す。
 それは、この人達の練習シーン。こうだっ!と鏡の前で駄目出しをする振付家。 その前で疑問を感じつつも真剣に練習に励む二人。言われるままに床に倒れこむと、 「違う、こうだっ!」と、バターンと痛いのを顧ず頭から床に突っ込む振付家!私た ち、まだまだなんだわっと思いながら言われるままに練習を繰り返す二人。い、いけ ない・・・肩が顔が、体が笑いの渦に突き落とされた〜、お腹痛〜いっ。と、劇場の中で一人お腹を抱えてこみ上げてくる笑いにもがきます。
 いけない、いけない。ここには歌を聴きにきたのよ!と軌道修正に励み再びオペラ鑑賞に戻ります。ところが、敵もしつこく、またバッタン踊りが始まってしまいました。おそるべし、オリジナルヘンテコダンサーズ!そして、ダンスが終わった途端、私に最後の留めが刺されました。客席の男性が、間髪を入れず
「ブラピッ!」
と叫んだのです。や、やめて〜私をこれ以上私を苦しめないで〜っ!

 とまあ、オペラに来てバレエで盛りあがるという、本来の目的から大幅にずれた状態に一時陥った私ですが、最終的にはホセ・クーラの歌声に包まれ、満足して家路についたのでした。(ダンスシーンに対する記述の多さからして本当に?という声がどこかから聞こえてくるような・・・)

 それにしても、次回ホセ・クーラの舞台を観る時、どれぐらい変わっちゃってるのか、とーっても楽しみ。いえ。心配・・・(笑)


<October>

BOOK・穴/PLAY・木下蔭真砂白浪/MOVIE・グッドナイト・ムーン

BOOK・西洋骨董洋菓子店1・2/MUSIC・ロビー・ラカトシュ・アンサンブル

BOOK・ダレン・シャン1・2/MOVIE・陰陽師


◆10月29日◆BOOK◆
『穴』ルイス サッカー著 ユースセレクション講談社 1600円◆

 中学生スタンリー・ウォールナッツは無実の罪でテキサスにある少年院に送ら れてしまいます。そこで彼ら待ちうけているのは、幅1.5m、深さ1.5mの穴掘り。毎日1つとにかく掘らなければ宿舎に戻れません。
 柵のないだだっぴろい荒野での作業は一見逃走可能なように見えますが、逃げようってったってそれは無理な話し。少年院は陸の孤島。徒歩ではとても逃げおおせる場所ではないのです。彼らには暑さと水との戦いが日々続くのです。というのが、この話しの導入です。

 基本的には児童文学のカテゴリーに入るのでしょうが、なかなか大人にも楽しめる一冊です。なぜに彼らは穴を掘らされるのか。恐ろしい女所長とは何者なのか。そして、彼らはどうなっていくのか?!と、なかなかミステリーの要素も含んだ友情の物語。

 単調な毎日。どうせ自分は運が悪いんだと諦めている日々。それを自分の力で打破する!話しだと言うと、大人こそ読むべきだと思えてきます。
疲れた時(穴掘りの話しだけにかえって疲れるという話しもあるけど)、元気が欲しい時、殺伐とした内容の本に飽きたときにはいい一冊かもしれません。でも、やっぱり結末なんかは児童書なんだけどね。
そうそう。カバーを取った本体に印刷されている、黄斑トカゲのイラストがとってもキュート。


◆10月20日◆PLAY◆京都南座 十月花形歌舞伎「木下蔭真砂白浪」◆

 招待券を頂いて、久々の南座、歌舞伎に行って参りました。生まれて初めての桟敷席、しかも花道と向かい合わせのとっても贅沢な席に座らせてもらうという幸運に恵まれた私。視界をさえぎるものは何もない!というのはとても快適で感動ものです。

 さて、今回の歌舞伎は毎年恒例の翫雀(仁木太郎)・扇雀(お峰)・橋之助(友市)・染五郎(猿之助)が主役の4人の会。ポスターでも同じように目立つようにしっかり4人が横一列に並ばれています。
でも、正直に言わせてもらえば、私的には橋之助、染五郎が見所です(笑)染五郎さ んの舞台は「阿修羅城の瞳」以来2度目、橋之助さんは初めてです。どんな風なのか しらと期待しているうちに、いよいよ幕が開きました。

 まず登場するのは女盗賊お峰こと扇雀さん。でも、でもね。「女盗賊」と解説に書いてないと、「女」に見えなかったのっ!!ごめんっ。でもお母さんの扇大臣にそっくりです。えっ?こう書くと、扇さんが女性に見えないって言ってるみたい?そんな事はございません。
 逆に翫雀さんはお父さんの鴈治郎さんそっくり。でも、マシュマロマンにも似ているのっ!!顔が白塗りなだけに、本当に、本当にマシュマロマンなのっ!!!
このご兄弟、お二人ともお馬さん役の方がさぞかし重たいだろう・・・と思ったのは 私だけではないはず。

 翫雀さんは芝居の中で高台から落ちていくというシーンでの宙乗りがあるのですが、これがとっても笑えました。落下を演出すべく背景の絵がくるくると動く前で宙を泳ぐ翫雀さん。絶好調で空中前転まで披露。
おおっと喜ぶ観客に気をよくされたのか、ぐるんぐるん回りに回って、そのシーンが終わる頃には本当に目がまわってしまったらしく、まっすぐ立っているのも、台詞を言うのも無理な状態に陥られました。客席のみならず、ご本人も染五郎さんも噴出すしまつ。いやあ、勢いというかはずみというのは怖いものです(笑)

 でも、今回絶好調で宙乗りをしたのは友市転じて大泥棒石川五右衛門の橋之助さんでした。もう、乗る乗る、飛ぶ飛ぶ、かぶくかぶく。もう、ポスターは4人平等だけど完全に橋之助の一人舞台!昔コクーンの主役を義兄の勘九郎さんに持っていかれた恨みをここで晴らしているかのような活躍振り。
 葛篭(つづら)から出てくるわ、くす玉蹴破ってでてくるわ、もう、絶好調に超までつけちゃいましょう。客席からも「ごゆっくりっ!」って掛け声かかってたしね。
橋之助さんちのお子さんたちは、「大人になって歌舞伎にでたら、空飛べるんだ」と 思ってるに違いないっ!それにしても、橋之助さん。見た目も声もお父さんの芝翫さんそっくりになって来ました。びっくりです。ここまで似てるなんて。でも、友市の時は「毛利元就」してたけど。
 その一方、お父さんの幸四郎さんにどう見ても似てるとは思えない染五郎坊ちゃま。本当にお坊ちゃま。見るからにお坊ちゃまらしい人の良さが出てしまってます。だからこんなに皆に好きなようにされちゃうのよっと言いたいぐらいに(笑)見せ場が一番すくない染坊ちゃまでした。

 ところで、最近の新しいことをしたいと思っている世代の歌舞伎のキーワードは 、宙乗り、火薬、回転(舞台も人も)、そしてアクションでしょうか。まあ、「歌舞 伎」というぐらいですから、昔からそうなのだと言われればそうなのですが。

 それにしても今回の出し物は本当にスペクタクル(笑)余り話しの筋とは関係ないのにアクロバットな立ちまわりがあったり、派手な舞台装置があったりと、猿之助さんところのスーパー歌舞伎よりもスーパーしてるのでは?という舞台でございました。
 しかし、最近大阪に出来た某テーマパークのショーアトラクションの派手な演出に 比べると、とっても手作り感があって、ほのぼのと楽しい! 宙乗りもワイヤーでつってるって分かるのなんて全く気にしてないし、舞台を回転さ せる時にも舞台端には荷物をどける(?)役の人がいそいそと動いているし、火薬もかわいらしく炸裂していました。葛篭にワイヤーつける時なんて、黒子が花道でチェーンをかけてて、もう、奇術団の雰囲気だったもんなぁ。思わず頭の中のBGMに「オリーブの首飾り」がかかっちゃったわ。

 歌舞伎が難しいものだと思っている方、一度劇場に足を運べばその認識は変わるはずです。私は歌あり生演奏あり、踊りあり、大仕掛けありの歌舞伎を、日本のオペラ&ミュージカルだと思っています。しかも、客席とのやりとりもある参加型の舞台なのです。そして、衣装といい、化粧といい、舞台美術といい、本当に派手なものは派手で目に楽しいし、日本人のデザインセンス、美意識を堪能できます。

 それにしても、何年か続いているこの企画。来年も皆が納得して続けてくださるのかしら。ねえ、橋之助さん。


◆10月18日◆MOVIE◆グッドナイト・ムーン◆

 日ごろハリウッド産家族愛ものはまず見ない私が、たまたまWOWOWで珍しく見てしまった一本です。

 弁護士(エド・ハリス)と同居しているガールフレンド(ジュリア・ロバーツ)、別れた妻(スーザン・サランドン)とその娘と息子の5人を中心に話しは進んでいきます。
大雑把に言えば、後妻になるジュリアと前妻のスーザン&子供たちの確執と和解の話 しです。最後にスーザンはガンで死んでいくのですが、映画では死ぬところまではや らなかったのが程の良さがあり良かったです。

 で、何が言いたいかと言うと、とにかく息子役のLiam Aikenがかわいいっ!感謝祭の学校の出し物での彼の名演技(とは言わないか)は最高!ターキーに扮して登場し、空を飛び鉄砲で打たれ、お皿に盛られるまでが、とーってもキュートっ!!!
スーザンが台詞で(ここがポイント)ジュリアの事を「口のでかい女」と言ったのに も笑えました。かなり本気で言ってたよね。やっぱり。

 劇場にまで見に行くほどではないですが、放送していたら見てみていいぐらいには面白い映画でした。 NYが舞台なだけに、ワールドトレードセンターが出て来たり、平和なセントラルパー クが出て来たりと、何だかしんみり、悲しくなってしまう場面もありますし、ストー リー的には普通の人なら恐らく泣ける、ウエット系な映画です。と書くと、私が普通 じゃないみたいですが(笑)

 最後に。スーザン・サランドンがそういう演技をしていたから余計にそうだったとは思うのですが、年齢も手伝って本当に古女房という雰囲気が漂い、夫が新しい女性を見つけたというのに、とても説得力がありました。
それとは対照的に、ジュリアは若さが輝いていて、本当に時の流れというのは残酷ですね。


◆10月11日◆BOOK◆ 『西洋骨董洋菓子店1・2』よしなが ふみ著
新書館 各520円(税抜き)◆

 現在フジテレビ系で月曜日9時から放送しているドラマの原作です。 日ごろドラマは全く見ない私ですが、原作者が気になってとりあえず見てみたドラマ の初回。見終わる頃にはすっかりはまって、原作を購入してしまいました。
 これが、面白い!おかしいっ!!ゲイが出てくる話は性に合わない、苦手という人は ちょっと楽しめないと思いますが、私のようにツボにはまってしまうと、自室でない と危なくて読むことが出来ないほど笑えます。

 ドラマとは違い、原作はいきなりまず、がつんとやってくれます。ドラマを見てから 原作を読むと、えっ?橘と小野って同じ高校出身で、しかもそういう過去があったの ?!と、頭の中がぐるぐるになる事請け合い。(でも、ドラマと原作は回を追う後と に乖離が激しくなっているので、ドラマの設定も小野がゲイとは限らないと思います )

 恥らいつつも恐ろしい魔性のゲイこと天才パティシエ小野(ドラマでは藤木直人なの で、原作とは全くキャラが違う)と、投げやりなように見えて実は負けず嫌いで案外 マメでまじめな橘(ドラマでは椎名桔平)オーナー。そこに見習パティシエのジャニ ーズ神田(ドラマではタッキーが演じている)と呼ばれた元天才ボクサー、神田エイ ジが加わり、仕上げに橘を「若」と呼ぶ全く使えないかわいい家政夫(ドラマでは阿 部寛が演じているので、かわいいとは言えないけど)ちーちゃんこと千影が登場。
こ の4人の男達が働く、実際に近所にあったら私は入り浸る事間違いない!(甘党では ないので、あくまでも目的は別・・・あはは)ケーキ屋が「アンティーク」なのです 。

 ドラマの展開はウェットで人情物になりがちですが、原作は「よしなが ふみ」らし く、もっと軽やかでウィットに富んでいます。きっとよしながさんは、毎週ドラマを 見てウケて笑っていると勝手に想像。
だって、本当によしながワールドには有り得な いウェットさなんだもん。まあ、一般受けするように脚本が書かれているのでしょう 。

 カラス口(推測)でしっかりと引かれたコマ割りは、マンガの文法に慣れていない人 でも迷う事なく読み進められます。次にどこに進めばいいのか、悩む心配はございま せん。彼女の特徴、長い台詞も一見面倒に見えますが、無駄がなく、くすぐりどころ を知っていてとにかく面白くすらすらと読めてしまいます。
  まあ、とにかく、最近私 がはまったものの一つです。11月10日に3巻が出るそうですが、とーっても待ち 遠しい!!興味を持たれた方はご一読を。そうそう。おいしいケーキがとっても食べ たくなっちゃいます。ぜったい作者本人食いしん坊だと思う!

最後に。ドラマを見ていていつも思うんだけど、こんなに一人のお客に時間をとって るケーキ屋って、経営苦しくないかい?(笑)まあ、ドラマだからね。


◆10月10日◆MUSIC◆ロビー・ラカトシュ・アンサンブル◆
2001年@大阪シンフォニーホール◆

 マンガのような巻きひげに、これでもかというような巨体。そして、長髪にマントのような衣装のロビー・ラカトシュは、その姿からは想像できない繊細な速弾きを得意とするヴァイオリニスト。彼と彼のアンサンブルはジプシー音楽&クラッシック&ポップス&ジャズの融合!というオリジナリティーあふれる音楽を聞かせてくれます。

 特筆すべきはご本人もさることながら、彼の脇を固める4人の男達。
第二ヴァイオリン/ラースロー・ボーニ、ピアノ/カールマーン・チェーキ、コントラ バス/オスカール・ネーメト、そしてギター&ツィンバロム/エルネスト・バンゴー。 このツィンバロムがもう、神業なのです。音はチェンバロと日本のお琴を合わせたよ うなもので、弦楽器でありながら打楽器、そしてメロディー楽器なのです。2本のバチで叩いていくのですが、これが素晴らしく表情豊か。
CDやテレビで既にどんな演奏なのかを熟知していたにも関わらず、実際コンサート で聴いてみると、エルネスト・バンゴーの天才ぶりに圧倒されるばかりでした。

 ラカトシュが主役か、彼が主役かというほどの活躍ぶり。また、ピアノもジャズピアニストなのでしょうか。かなりのつわ者。地味なおじさんな外見からは想像できないほどクールな演奏です。
 ベースも渋く決めてくれましたが、気になるのは第二ヴァイオリン!かなりの腕前にも関わらず、とっても控えめで、生まれながらの第二ヴァイオリンという感じ。スタープレイアーをしっかり支える縁の下の力持ち的存在なのです。
ラカトシュがメインなだけに、同じ楽器の彼にはなかなかソロが回ってこないのですが、まわってきた時にもしゃしゃり出ることはなく、スポットライトを浴びてもそそくさとその光の中から外れていくような、何だかシャイにも見える謙虚さがとってもいいのです。
 そして、そして。全員がとにかくお互いをアーティストとして認めていて、心から音楽を楽しんで演奏している!それがダイレクトに伝わるコンサートなのです。もう長年演奏活動を続けているのに、いつまでも新鮮味を失わないというのは本当に大変な事です。
秋の夜長に、大人だけが楽しめる贅沢。そんな素敵なコンサートでした。

 それにしても、ラカトシュさん。これ以上お太りになるとヴァイオリンが弾けなくなるのでは?と私が気を揉むのは老婆心でしょうか?再来日が楽しみです。


◆10月9日◆BOOK◆
『ダレン・シャン 1・奇怪なサーカス、2・若きバンパイア』
ダレン・シャン著 小学館 各1600円◆

 一部の本読みの間では「スティーブン・キング氏絶賛!」又は「スティーブン・キン グ氏推薦!」という本は面白かった試しがない(本人の本は面白いけど)ので要注意 と言われてますが、この本の帯は「J.K.ローリング激賞!」だったので、はずれ ないだろうと信用して購入してみました。
J.K.ローリングは、言うまでもありませんがハリー・ポッターの原作者です。

 ハリーのシリーズと同じくカテゴリー的には児童文学になるのですが、どうしてどう して。このダレン・シャン。なかなかに毒があり、大人でも十分というより、大人が 楽しめます。だいたい、2巻目でR・Vが食べてるマジックマッシュルーム(とは書 いてないけど、絶対にそう)なんて子供には分からないもんね。
これから読む人には完全にネタばれになるので、ここからはご注意を。

 主人公はダレン・シャンという小学生の男の子。でも、原作者の名前もダレン・シャ ンというのが、またなかなかに謎めいていて楽しませてくれます。
ダレンはある日、あるチラシがきっかけで、学校の親友と二人で「シルク・ド・フリ ーク」という見世物小屋にもぐりこみます。そこでは蛇少年、ひげ女、毒蜘蛛使い、 狼男といった奇怪な人々が次々にショーを繰り広げるのです。
 まずここで気持ち悪い・・・読むのをやめてしまおうか・・・と思う人は多いと思いますが、何がなんでも我慢して読み進むべし!ここを乗りきれば、とってもおもしろい世界が待ちうけているのです!(私の言葉を信じて読み進んだ挙句、そう感じなかったら、ごめんあそばせ)

 紆余曲折の末、最終的にダレンは親友を助けるためにバンパイアになってしまいます 。という訳で、何の事はない。この話しは昔から手をかえ品をかえ書かれ続けている バンパイアものなのですが、でも、面白いのっ!!!
 耽美派ヴァンパイアの宝庫、アン・ライスおばさんの世界とは全く違う、 人間くささが微笑ましいバンパイアものなのです。現に彼らは年をゆっくりだけど とっていき、不死身ではありません。そして、 親子愛に似た、でもそれだけではない愛情の物語が繰り広げられるのです。
とにかく、ダレンと彼をバンパイアにしたバンパイア、クレプスリーの関係が最高なのです!自分をバンパイアにしたクレプスリ―は憎い、でも憎めないダレン・シャン。愛憎の度合いを考えると、むしろ愛の方が勝っているのでは?という展開に、今後ますます注目してしまいます。

 原作者はブリティッシュのくせに日本のマンガファンで、お気に入りは「子連れ狼」 とか。それが作品にも反映されているのかもしれないという説に、うんうんとうなず いてしまうような愛の物語です。
 ダレンを背中にしょって走ったり、友達が欲しいといわれれば心を砕き、ダレンが人 間の血を飲むのを嫌がれば、死んでしまうと必死になって飲ませる努力をする。 助手が欲しいと言ってダレンをバンパイアにしたのに、今では完全に保護者で愛情 たっぷりにダレンを育ててしまっているクレプスリー。

 この物語の映画化権をハリーと同じくワーナーが買われたそうですが、キャスティン グには十分ご配慮くださいませ。間違っても、同じバンパイアもの、「インタビュ ー・ウィズ・ザ・ヴァンパイア」の二の舞は踏まないように・・・
 レスタトがかなりダイエットをしてシークレットブーツを履いたトム・クルーズ、バンパイア達がパートナーに欲しがる魅力的なバンパイア、ルイには下膨れに見えてしまったブラッド・ピット、そして極めつけ。美少年アルマンをアントニオ・バンデラス(もう、ここまで来ると、原作無視ですな)という聞いただけでひっくり返るようなおっそろしいキャスティングには絶対しないでね。

 ダレン・シャンはさすが大手が手がけてるだけあって、次々に翻訳出版予定の ようです。12月には3巻目が発売されます。このシリーズ。聞くところによると2 0冊ぐらいになる予定とか。少なくとも二桁にはなりそうです。
 読みはじめるなら今ですよ。現在も執筆中のシリーズ。今後も根気良く付き合っていくつもりです。と言っておいて、アン・ライスのシリーズでは「 肉体泥棒の罠 」で挫折したのよね・・・・。
えっ?話しの長さではなく、話しの面白さが問題だって?そうとも言うわね。

 最後に。私、ブラッド・ピット、アントニオ・バンデラスが嫌いな わけではございません。念の為。あれ?一人欠けてた?


◆10月6日◆MOVIE◆陰陽師◆

 言わずと知れた(と私は思っている)夢枕獏原作、岡野玲子コミックで有名な「陰陽師」の実写版、映画「陰陽師」!
邦画を映画館に見に行くなんて、本当に珍しい(と言っても今年は既に「千と千尋の神隠し」も観ているので2本目)のですが、岡野版のファンである私は、友人2人と何と初日に観に行ってしまいました。

 あの晴明ワールドの雰囲気を味わえるだけでいいっ!と何が起こっても怒るまいと自分に言い聞かせながらいざスタート。
 博君役のこの俳優。どっかで見た事が・・・そうか、深夜ドラマ「YASHA- 夜叉-」で静をやってた子ね。1回見て原作とイメージが違う〜っと見るのをやめたあのドラマの。うーん・・・この変な間。これってあの、世離れした「良い漢(おとこ)」天才博雅君の間を出そうとしているんだろうけど、これではただのぼーっとした子になっちゃってるわね。それにしても、これは・・・晴明の友達というより、晴明の「わんちゃん」って感じがしちゃうのは、私の目がおかしいのかしら。人懐っこいかわいい「わんちゃん」って感じだわっ。驚いたり、駆けだしたりした時の「はあはあ」いう音も、とってもわんちゃんぽいの。笑うともっとわんちゃんぽくってかわいいんだけど、これは博雅君ではないわね。

 萬斎さんの晴明は、姿がいいわ。この姿を見られただけでも、この映画を見て良かったと思えるほどに。でも、顔のアップは右からばっかりなのね。しつこいぐらい、右からなのね!晴明って左ばっかり向いてるのね!!

 蜜虫は触覚があったんだっ!今井絵里子はこの映画に必要な役なのかしら。
ところで、某CMで「さびない人」の小泉今日子は、何だかとっても「さびてる人」なんですけど、これは、私の目の錯覚?!

 それにしても真田さん。あなたのキャラクターがなくては、この映画は成り立ちません!もう、私の笑いのツボをぎゅっ、ぎゅっ、ぎゅぎゅーっと押してくださり、ありがとうございます。
作り物丸見えのカラスとの会話、さぞかし大変だったでしょう。燃えた後の「マタギ」のような姿、目に焼き付いて離れません。そして、親王復活の時、ひどい地震が起こる中、建物の下敷になってしまわれるのではないかと心配致しました。そしてそして、博雅君に額を矢で射ぬかれた折り、その矢をぐぐぐっと押して額に全て収納された段階で、私吹きだしてしまいました。「これじゃ、奇術師じゃないか」と。更にその矢を口の中から取り出すとは!もう、イリュージョンでございます。
最後の最後、真田さんも陰陽師役でありながら、晴明のはった結界のど真ん中に立って下さるというお茶目っぷり。もう、見事としか言いようがございません。 真田さんには、今後ぜひぜひ「だはは」笑いの菅公を演じて頂きたいものです。

 それにしても、あの「ウルトラマン・コスモス」のような虹色のCGと、最後の闘いでワイヤーで吊られまくり、飛びまくりの晴明の「マトリックス」ぶり。
製作者はハリウッドの流行りもの、CGとワイヤーは入れておかねばと思われたのでしょうか。 普通に立ち回りされたら、きっと美しい絵が撮れた事でしょうに。

 晴明の雰囲気を壊さず、終始おすましで通された萬斎さん。今、晴明を演じられるのはあなたしかいらっしゃいません。
でも最後に思いっきり笑われた顔、おぼっちゃまらしいかわいらしさが出てしまいました。もうちょっと控えられた方が良かったかもしれませんね。そうそう。夏川結衣さんは良かったです。

 とにかく、これほどに笑いが止まらない楽しい映画は久々です。その後友人と3人で「陰陽師」をネタに食事をしながら3時間も盛り上がってしまいました。これで1800円は絶対に安い!


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